実践!二十一世紀型企業づくり
問屋の原点にたって情報を活かす経営戦略
(株)丸政(東中村地区)
「挑戦・前進・情熱の心でお取引き先・社員が誇りを持てる丸政を目指します」を経営理念に掲げている(株)丸政(鬼頭宏治社長・東中村地区)は戦後間もなく金物・工具中心の卸問屋としてスタートし、現在に至っています。
丸政は三年後に迫った二十一世紀までにさらに脱皮して、オンリーワンカンパニーを目ざしています。
問屋不要論が叫ばれるが
昨今、問屋不要論が叫ばれますが、はたしてそうでしょうか。確かにPOSシステムなどの普及によって、商品の価格や在庫が的確に管理されるようになっています。
現在、丸政が扱っている商品アイテムは約四万点。これらを各店舗ごとに個数を数え、値札をつけて出荷しています。十五年前から業界に先駆け、コンピュータを導入して対応していますが、大変な作業で、現在約四〇名の社員で行っています。
メーカーは煩雑な出荷管理から解放され、小売店は在庫管理から解放されます。この点で、双方がメリットを感じています。ここに問屋としての丸政の存在意義があります。
社員の判断を活かし新製品へ対応
また丸政にはいろいろなメーカーの新商品が入ってきます。この新商品を売り手である小売店の地域性や客層などを考えて向き・不向きを判断し、営業を行っています。
新商品一アイテムについて一千万円までは、事業部長の権限で仕入れることができます。社長の選択した商品だから売れる、ということはありえません。
むしろ、若い社員の方が新しい物に対する感覚が優れていることもあります。鬼頭社長が「売れない」と思った商品でも、営業マンが「売れる」と判断。結果は大ヒット商品になりました。
小売店の苦情を聞きオリジナル商品を
小売店からメーカーへは苦情を言いづらいものですが、問屋を通すことで言いやすくなります。色合いや使い勝手など、改良を求める声が自然に集まってきます。そこで昨年から企画部門を設けて対応するようになりました。
営業が持ち帰った情報を基に企画会議を開き、メーカーに提案します。試作の段階では小売店にもこの情報を流し、より完成度の高い商品を追求しています。
しかし、こうして作った商品も三割ヒットすれば良い方です。時には金型代まで負担することもありますが、お得意さんから「丸政さんだからできた」と言われることが、喜びになっています。
「建築用の巻尺で右起点で使用できる商品」は、このようにして生み出された代表作です。より良い商品が市場に出回れば、メーカーにとっても、小売店にとっても、大きなメリットなのです。
プロの金物屋さんとより豊かな情報交換
朝早くから現場に入る職人さんは、工具類の整備や機械類の調整は「明日の朝までに」という仕事で、とてもホームセンターでは用を足せません。このプロのニーズを満たしているのが町の金物屋さんで、様々な対応に迫られます。それを陰でサポートするのが、丸政の仕事です。
営業の六五%は、町の金物屋さんで、主人は、豊富な商品知識を持つプロです。こういう人と対等の話をするためには、営業マンに高い商品知識が必要です。
事業部制を導入し、営業マン一人当たりが扱うアイテム数を減らし、より高い商品知識を身につけることができるようになりました。その結果、一つの店に最低二人以上の営業マンが行くことになり、持って行く情報も、持ち帰る情報も二倍になっています。
会社は社員と社員は家族と共に育つ
社員や社員の家族のために何ができるか、ということを考えて、現在四つのことを実行しています。
まず、営業車は一人一台の専用車です。通勤はもちろん、私用も認めています。社員はリース料の一部を給料から引かれるだけで、ガソリン代まで会社が負担しています。また全車をセダンにし、社章も小さくしてから好評で、利用者が増えました。
第二に、会社の負担で社員の誕生会を毎月開催し、お祝いの品を渡しています。一年で全社員と会話を交わすことができ、いい効果が出てるそうです。
第三に、社員の結婚記念日に手書きカードをつけ、奥様に花を贈っています。社員簿を見ながら、家族のこともよく分かると言います。
最後に、給与明細に、社長の手書きの「おたより」を同封し,会社の動きや社長の想いなどの話題を提供し、家族全員で会社への認識を共有してもらっています。
「家族も含めて、丸政のファンが増えれば。『うちの息子もお父さんの会社に』という社員が出れば最高」と鬼頭社長は語ります。
(記 事務局・井上)