謹賀新年
経営者の哲学が一層試される時代に

会長 佐々木正喜
激変消滅の一年
明けましておめでとうございます。昨年一年は大変な経済環境でしたが、こうして年が新たになり、新たな希望を持つ決意で新年を迎えられたことと思います。昨年を振り返ってみますと、北海道拓殖銀行、山一証券を筆頭に、ゼネコンなど東京証券取引所の一部上場企業の倒産があいつぎました。拓銀のある札幌市や徳陽シティ銀行の仙台市などの中小企業で一行取引をしていたところは、かわりの金融機関から融資を受けられないところもあり、大変苦労をされているようです。金融機関の情報開示がもっとも適切に行なわれていて、企業も一行取引の危険性を認識していたならば、このような悲劇は避けられたかも知れません。
金融機関の社会的役割と私達の経営責任
愛知同友会が昨年十一月末に行なった「銀行の貸し渋りアンケート」は、マスコミの関心を呼び、テレビや新聞などで大きく取り上げられましたが、「貸し渋り」は非常に微妙な問題があります。それは、貸す側と借りる側との間の認識の違いといえます。しかし、現実には経営が悪化してもいないのに貸してもらえなかった企業がかなりあるということは否定できません。多額の不良債権にあえいでる金融機関としては、早期是正措置での自己資本比率の達成のため、やむを得ないこととはいえ、金融機関の社会的な役割からいって、もう少し弾力的な融資態度を切望するものです。しかし、一方ではこのような貸し渋りに遭わないよう、日頃の経営努力も必要ではないでしょうか。基本は経営指針の確立です。経営理念、経営方針、経営計画、そして社長の熱意によって、融資を受けられたという実例も耳にしています。
常識と経営計画の見直しが必要
昨年の出来事で、もう一つ印象に残るのは、金融機関など大企業の総会屋への利益供与です。総会を短時間で難なく終了させるために総会屋を利用して、その謝礼として多額の金を渡していたのは、まさに犯罪であり、株主を欺く行為といっていいでしょう。ここにも情報開示の過度の不足が感じられますし、経営者としての哲学・理念に欠けているのでは。「こんな会社にしたい」「こんな経営者でありたい」、そんな経営者としての人生観が欠落しているように感じます。さて、今年私たち中小企業経営者はどのように行動すべきでしょうか。一つは過去の常識が通用しなくなったことを認識すること。そして経営計画の見直しを常に考え続けることです。このように経営者には柔軟な思考が求められている時代だと思います。
どうゆうき
昨年十一月末の景況調査では「先行き不安」のDI値がマイナス四五を示し、「銀行の貸し渋り」調査では回答者の約六〇パーセントが「今後が不安」と答えています。しかしこんな時にこそ、余裕を持ちたいと思います。今年は虎年、虎は獲物を見定め、ねらいをつけたら姿勢を低くし、茂みに身を伏せてチャンスを待ちます。そして二メートルの体を踊らせて襲いかかり、狩をします。経営者は経済の行方の見えない時は、爪を研ぐ余裕を持ち、この気持ちがあれば、チャンスもくるのでは。そのためにも同友会に出席し、仲間からヒントを得たいと思います。「ドリルが欲しいのではなく、壁の穴が欲しいのだ」という言葉を理解するため、マーケティング的近視眼に落ちいらないためにも。さて今年は年始から箱根駅伝、二月には長野オリンピック、そして夏にはサッカーのワールドカップと、スポーツ界では話題がいっぱいです。こんな時こそスポーツを。日頃のゴルフだけでなく、新しいものにチャレンジしてみませんか。二十一世紀まで後二年。準備するには少ない期間ですが、思いついたら吉日と実行を。女子マラソンのように層を厚く、量も濃くするため、経営者は「夢」を持ち、計画を練り、年頭の夢を語り合いましょう。山口先生は「十年先に行って、今を振り返れ」と説きましたが、それは現状との距離が見えるからです。厳しい年と言われる今年こそ「規制緩和」や「金融ビッグバン」を正しく理解するためにも、同友会で正しい情報交換を求めていきましょう。
報道部長 舟越信三