座談会35周年は何だったのか?
会員による研究会活動に新たな展望が研究者との協力や情報発信の課題も
出席者
佐々木正喜氏(会長)
鋤柄修氏(代表理事)
沼波一郎氏(創立35周年実行委員長)
福谷正男氏(フォーラム実行委員長)
鈴木孝典氏(副代表理事)
【司会】福島敏司氏(事務局長)

「地味だ」の声もあるが・・・。中身があった35周年
【司会】
本年四月二十九日の「あいち経営フォーラム」で愛知同友会の三十五周年事業はひとまず幕を閉じました。二十五周年の時の「ストップ・ザ・交通事故」や三十周年の「リボーン・ギャラリー」や演劇「萌黄色の季節」の取り組みと比べ、会員の皆さんから「三十五周年では何をやったのか」「見えにくかった」と言った声も聞かれましたが……。
内部充実の年として
【沼波】
準備段階ではまず、中小企業を取り巻く状況や愛知同友会の現状などを踏まえ、三十五周年の意義・目的から入りました。五年という節目には内部充実に重点を置くこと、また十年単位の周年には、会外に向けた花火を打ち上げていくという基本的な考え方を整理しました。そして三十五周年は、三十周年でスタートした活動改善を支援する事業を、また厳しい経営環境の中で、経営者にとって実質的に身になるようなことをしようとスタートしました。具体的には二本柱で、一つは全県をあげたオール愛知の研究集会、もう一つは愛知同友会の将来展望に生かしていけるような出版物を残すことでした。ですから、「印象に残らなかった」という話も聞きますが、そもそも三十五周年の主旨はそういうふうで、スタートしたからです。
【司会】
今回初めて「あいち経営フォーラム」が開催されましたが、その目的と成果についていかがでしょうか。
経営者らしい学びの大いなる刺激に
【福谷】
フォーラムの狙いのひとつは、支部での研究会づくりのきっかけを作ることにありました。
活動改善では支部の活動を重視していますが、「では支部活動の中身はなんだ」とよく言われてきたわけです。それは一つのテーマを継続し、深めて行く「研究会」ではないか。そういったものを充実し、スタートさせていく。このきっかけをつくるのがフォーラムでした。愛知が設営をした二年前の全国研究集会では質の高い学びがあり、大いに刺激になりました。もう一度このような催しをやって、会員に突っ込んで勉強することの大切さを掴んでいただこうとしたわけです。それは体験してもらうしかないわけです。
三月には初めての支部総会を抱え、支部役員の皆さんは大変だったと思います。最初盛り上がりに欠けましたが、連休中にもかかわらず、五百名以上の方に参加頂き、支部や地区だけでは味わえないレベルの高さを感じて頂けたのでは。本当にやってみてによかったなと思っています。

【司会】
活動改善の話が出てきました。三十周年から中心的なメンバーとしてかかわってきた鈴木さんいかがでしょう。
新たなスタートの記憶すべき年として
【鈴木】
三十五周年という年は、五年後に振り返った時、「あの時が愛知同友会の再スタートになったんだな」と思う年になると思います。それは、三十周年の時はそれまでの会組織のあり方に問題点が山積していました。支部の性格や活動の目的など、随分不明瞭でした。それで、私を含め当時の副支部長五人が何も分からないまま集められ、議論を始めたのが活動改善のスタートでした。「自分達は何を求めて活動してきたのか」「今の会員の要望はどこにあるのか」、そして「こういった要望を受け入れるだけの組織になっているのか」など、いろいろな課題が、腹を割った議論の中で見えてきました。以降、「入会資格の申し合わせ」や「地区・支部活動の手引き」の改訂版の作成、「理事定数是正」、そして「常任理事会の廃止」など、より会員から見えやすく、よりリーダーシップの発揮しやすい組織づくりの提案を行ってきました。現時点での私の評価は「道なかば」というところです。しかし、スタートの年になると言ったのは、支部総会がやっと実現できたからです。どうしても総務会や理事会では「組織が遠い」と感じられます。一人一人の会員に近い支部が指導性を発揮していくことが、見える形で提起された最初の年なのです。この意味で新しいスタートの年と位置づけられ、今後五年間は、同友会の三つの目的の総合実践に向け、ステップアップしていく時代になるだろうと思います。
十年に一度は組織の大掃除が必要
【鋤柄】
鈴木さんの発言にもあるように、三十周年の「リボーン」を合言葉に五年。理事会のあり方が整理され、リーダーシップを発揮するような総務会になり、支部が中心になった活動に転換し、支部総会もスタートしました。そして活動改善に関連し、いろんな会内の課題が浮き彫りになってきました。会社でも一緒なんですが、ルールや取り決めなどは、作った時はこれしかないと思うのですが、五年も経てば,時代にあわなくなります。私は、十年に一回は会社でも組織でも、大掃除の様なことをやる必要があると思います。そういう意味で、この三十五周年は四十周年に向かって一つのスタートがきれたと思います。
それから、「貸し渋り」問題に端を発し、マスコミが私たちの団体を大いに注目するようになったことです。三十周年は非常に派手にやった割には、あまり注目されませんでしたが。今度はマスコミ受けを意識せず、ただ会活動の積み重ねや、考えていることをマスコミが聞きつけ、興味を持ってくれたことが思わぬ成果だったと思います。
「目に見えない」が
【佐々木】
先日講演に行った静岡同友会の島田支部の方から礼状が届き、「『萌黄色の季節」の原作者に会えて嬉しかった。沼津支部の十周年で『萌黄色の季節」をやる案が出ている」と書いてありました。三十周年から丸六年経って、まだ見て頂いているかと思うと悪い気はしませんが。今回、「三十五周年とは何だったのか?」という疑問が出ているというのは、一つは「目に見えない」という点にあると思います。二十五周年で「ストップ・ザ・交通事故」のスッテカーを作ったなど、ビジュアルな部分に力をいれました。今回は経営フォーラムと出版です。これから先,どうその内容を生かして行くかが問題なのです。また今回の三十五周年は、不況のど真ん中でやったということで、会員が日常の経営に注意を集中せざるを得なかったという側面もあり、会への力の注ぎかたが少し薄かったと思います。
逆にいえば、こういう時こそ「同友会は頼りになる会なんだ」という意味での活動改善が必要だと思います。
時代の流れをふまえ同友会に求められるもの
中小企業の本音を素直に発信しょう
【福谷】
これからは同友会の三つの目的や考え方、そして、中小小企業家の本音に基づく政策提言が必要です。これは行政だけでなく、マスコミの協力も得て、「同友会の発言は違うな」ということを発信していかなければいけないと思うのです。それと「中小企業の本当の実態を掴むには同友会なんだな」という認識をマスコミが持ってくれるように、定期的に景況調査などで情報提供していく必要があります。新聞は話題になったら載りますが…。中小企業家は情報をいち早く掴み、自分達が置かれている状況をどうにかしたいと思っています。同友会は一番信用できる情報を持ち、自分達がどうしていきたいのか、率直に発信できる団体になっていかなければと思います。
学者・研究者の協力を
【鈴木】
同じ流通業として言えば、大店法問題など、歴史的背景が同友会の中で語られ、研究される「システム」を作らなければ情報発信もできないと思います。私の言う「システム」づくりには、学者・研究者の協力が不可欠です。課題を一つ決め、それを掘り下げるのは、私たち経営者には時間的にも難しいので、それを定点的に研究している学者の協力を得ないとできません。このセクションをどう作っていくかが重要になると思います。
【鋤柄】
例会はやっていても蓄積がなく、一つが終わると次の例会の準備せざるを得ないのが、地区活動の現状です。ひとつのテーマを継続して追求する研究会ができていくと会の大きな財産になるし、事務局員の専門性も必要になってきます。四・五名でも真剣に学ぼうとする集まりが今こそ必要なのです。それが研究会なのです。
研究会の課題とリーダーの役割
【鈴木】
研究会という言葉が出ましたが、今の課題として二つあると思います。一つは、今日の不況は政策不況的色合いが非常に強いと思います。消費税五%や金融破綻は政策で、非常に変わってしまったという側面があります。同友会が何ができるかといえば、今こそ中小企業の課題を捉え、政策を発表するということをやっていかなければいけないと思います。二つ目は、構造不況という側面が非常に強い不況だと思います。愛知は機械産業が強いですが、これからグローバル化が進み、工場が海外に移転していくなかで、どう生き抜いていくかというところで研究し、解決策を提起することです。そうでないと同友会の提起している二十一世紀型企業も「絵に描いた餅」になってしまいます。
【福谷】
山口先生は「第一分科会は新しい試みです。経営者が、この情勢を学ぼうと、まず誰かに聞くのではなく、会員同士で経営情勢を分析し、自分達のすべきことを考える。それは同友会運動の新しい展望だ」と言われました。鈴木さんのイメージする研究会に近いのではないでしょうか。
【鋤柄】
新会員はさまざまな経営の悩みを抱えてるがゆえに同友会に入ってきます。地区ではいい人にめぐり合えないと、一年は我慢しますが、二年目になってつまらなかったりすると、退会してしまいます。そうならないためにも私は各研究会でやったことを、全県的な今回のフォーラムのような分科会でやっていただきたいと思っています。そこへ会員が自らの経営課題を解決するヒントを求めてやってくる。これを数年続ければ、相当レベルの高い研究会ができ、会員の多様なニーズに応えられると思います。
【福谷】
会員が経営の各分野で、経営指針とか、労務問題とかでの専門家を目指せばいいと思います。経営者であると同時にそれぞれの分野の専門家をめざす、これが研究会のめざすものだと思います。
【鈴木】
継続的な研究会にはかなりのリーダーシップが必要です。現状ではまだ支部に体力がなく、将来的にはできるような支部もありますが、そのままで絶対に熟しません。熟すためには、リーダーが仕掛けるような、そういった仕組みをつくらないと。
【司会】
東京同友会の大田二一研が十三年にわたり、一五〇回を超す勉強会を重ねてこれたのも、リーダーシップによるところが大です。会内でも、地域問題研究という議論がでてきていますが,それを進めていく地域のリーダーの存在というのが、一方で課題になってきます。
今後に生かしたい大田視察と記念出版
【佐々木】
今度私の工場を移転拡張するのですが、そこでのコンピュータのネットワークで、大田視察の結果が役立っています。
【鋤柄】
愛知県の産業構造は垂直型、上から下へ流れる構造です。大田は水平型の構造になっています。愛知でも垂直型が崩れつつあり、大田のネットワークが参考になります。
その意味で愛知同友会のこれからの課題は,コーディネートのできる会員や事務局員を育てることだと思います。
【沼波】
記念出版の最後に「視察に学んで」という項目を入れたおかげで、随分引き締まりました。単なる視察記ではなくなり、これからの愛知同友会の方向を示しています。
【福谷】
内容は製造業中心に書かれていますが、発想の仕方など、小売業の私の会社でも、ヒントになることが随分ありました。

【司会】
これまでの論議の中では、余り組織の枠にしばらられない、そして、広い意味での経営課題を継続していく研究会づくりの必要性が共通認識になったようです。
お隣りの岐阜同友会では、常任理事が率先して二十五の研究会をつくり、その内の五つが現在も継続して活躍していると聞いています。皆さんも愛知同友会を代表される総務メンバーとして、率先してこの課題にチャレンジしていただければと思います。
【文責事務局・内輪】
理事会報告
第2回理事会報告(6/19)
◆会場愛知県勤労会館◆参加二六名/三四名
【討議事項】
議題(1)「がんばれ社長シンポジウム」のまとめ
●参加者の感想
・極めてタイムリーな企画。この種の企画の定期的に開催を。会員はこういう企画を求めている。
・貸し渋りに片寄りすぎ。
●実行委員会の感想評価
・マスコミが大きく取り上げた事で会のPRとなった。企画としては成功。
・会員と会外の参加比が予想外で、増強の位置づけと実際との落差が大きい。
●理事会として
・理事として、支部や地区へ広げていく過程で、具体的イメージが掴みきれず、充分な説明・呼び掛けができなかった。これが「全会企画が地区に伝わらない」状況を起こしたのでは。
・「増強の意識」が理事会と各支部増強委員会の間で非常に温度差がある。
・マスコミに取り上げられた事は、会外だけでなく会内にもインパクトがあった。
◎アピール文については会員全員にこの内容を知らせる。また首相や各政党にも発信する方向で。最終判断は代表理事と政策委員長に任せる。
◎「社長の対策マニアル」(当日資料)について
◎各支部ごとに一冊五〇〇円で希望冊数を注文頂き、一〇〇〇円で販売・普及活動を進める。(理事会討議に基づき、その後の実行委員会で提案を修正し、調整の結果)
議題(2)中同協総会
◎中同協幹事として佐々木正喜氏、鋤柄修氏、鈴木孝典氏の三名の方々を推薦。
議題(3)支部会計会議
◎現状では各支部バラバラの会計ルールであり、今後の課題として、共通ルールづくりを行なう。
議題(4)総会・フォーラムの収支報告
◎三七総会余剰金一、一〇〇、七四二円を本会計に繰り込む。
◎フォーラム仮収支として六三六、六六六円を本会計に繰り入れる予定。
◎上記収支報告を了承。
【報告・承認事項】
◎入退会者承認
●入会者二三名●退会者八名●現会員数二一九一名
【文責事務局・福島】