7月9日岐阜大学で
中小企業の魅力と求められる人物像
服部勝之氏(株)丸竹・社長(共同求人委員会・副委員長)

各学校では、就職活動を始める前に「就職」についての心構えや活動の方法をレクチャーするガイダンスがおこなわれています。共同求人委員会では学校訪問や就職懇談会の折、「中小企業の経営者の立場から、就職や職業観についての話をさせて欲しい」と要望してきました。これを受け、4月15日には岡崎女子短期大学に(株)ホニックの高坂社長が、4月21日には東京会計専門学校に山田共同求人担当事務局員がそれぞれ招かれ、レクチャーをおこないました。今回、岐阜大学地域科学部からの要請を受け、共同求人委員会の副委員長の(株)丸竹の服部社長が、地域科学部3年生120人を前に、約1時間のレクチャーを行いました。
20年以上前から合同企業説明会を
私は愛知同友会の中で共同求人委員会に所属しておりますが、この委員会は皆さんのように就職を希望する学生の方に、「いろんな会社があるよ」と紹介させて頂いている組織です。今ではいろんな業者が企業展や合同企業説明会を行っておりますが、20年以上前に初めて行った団体です。「中小企業とは何か」という事ですが、資本金で1億円以下、社員数で製造業では300人以下、卸売業では100人以下、小売・サービスで50人以下というように一応決っています。全国660万社のうち92%が、また社員数で80%、売上高では75%が中小企業だと言われています。つまり「石を投げれば中小企業にあたる」くらいの、言い換えれば、それだけ大きな社会的な役割を持っているのです。
小さいイコール弱いか?
会社を選ぶ基準として、大きいからとか、有名だからということは、理由にはなりません。なぜその会社を選ぶかは、自分のやりたいことができるかどうか、自分と価値観が共有できるかどうかで探して欲しいと思います。価値観も多様化してきていますが、それだけに数の多い中小企業のなかには、自分の価値観にあった企業が見つかるはずです。中小企業というとどうしても「小さいイコール弱い」というイメージがありますが、小さくともすばらしい会社がたくさんあります。例えば三河のある中小企業の例です。得意先に「売上げが下がって大変だ」と言うと、この得意先から「社員の首を切ればよい」と言われ、「社員は財産だから首を切る事などできない」と反論。逆に、そんなことを提起した一番の得意先との取り引きをやめてしまい、社員と共に新規開拓を行い、会社を維持させただけでなく、さらには社員からの提案で本社工場も新築してしまいます。このことが、先ほど言いました「社長と社員が価値観を共有する」ことにより会社を発展させている実例です。

キラリと光る技術を持つ中小企業
皆さん、缶詰のフタがポコンと手で取れる「プルトップ缶」というのをご存知だと思います。しかし、この切り口に手を掛けると切れる事があります。この切り口で絶対手が切れないものをと、大企業が何億円もの開発費をかけても実現できなかったものを開発したのは、東京大田の中小企業です。また、コンビニで冬になるとレジの近くに、缶コーヒーやお茶、また肉マン、アンマンを暖める「缶ウオーマー」という機械がありますが、このほとんどを作っているのは、社員数20数人のN社という中小企業です。私の会社(納豆をつくっています)も小さな会社ですが、東海3県ではシェアーは1番です。
社会人として求められるもの
みなさんが社会に出るに際して何が求められるかという事ですが、まず、人と積極的に関わる事の大切さです。社会へ出てから人と関わる事を避けていたら、自分を成長させる事はできません。自分から関わっていかなければ学ぶ事はできないのです。次に目標を持って生きて欲しいと思います。目標のある人は「仕事」をします。目標の無い人は「作業」しかしません。作業とは決められた事をそのまま行うのですが、仕事は自分なりの思いが入ります。作業だけしかしない人には成長はありません。「仕事」とはお客様に喜んで頂ける事だと思います。お客様が喜ぶ姿を見て、自らの喜びとなり、達成感になります。つまり、お客様に喜ばれ感謝されるように目標を作って欲しいと思います。第三にはみなさんが就職した場合、自分で選んだ会社は、自分で責任を持って欲しいという事です。例えば、上司から与えられた仕事で失敗してしまったとします。その場合素直に自分の責任だと思えますか。実力も無い自分に仕事をさせた上司が悪いと考えませんか。でも上司はあなたに期待をして仕事を出したのです。その期待に応える事ができなかった自分の責任なんですね。そのことを素直に認めてもう一度機会を下さいと言えば、また期待をしてもらえると思います。

社員の成長は企業の成長
会社というのは人の集まりですが、命令でしか動かない人、つまり作業員だけだったら会社は大きくなりません。ゆっくりでも一つひとつ目標に向って成長して行く、そんな社員がいてこそ会社も成長するのです。社長一人の能力はたかが知れています。それよりも社長と社員が価値観を共有し、社員一人一人が目標に向って成長していけば、自然と会社も強く大きくなって行きます。同友会では、社長と社員がいっしょに成長していこうと共に育つと書く「共育」という言葉を使っています。
会社を選ぶ視点
皆さんが会社を選ぶ視点として、どんな社風の会社なのかを見ることも大切です。「同じ価値観を持って一緒にやって行こうよ」という考え方なのか、「社員は命令通りに働けばよい」という考え方なのかは、社風として現れます。会社訪問をした時にそこの社員さんの顔付きや立ち居振舞いなど、じっくりと見てきてください。この事は会社の規模や業種といった数字や文字ではわからない事です。最後に、これから日々の行動を変えるように心掛けてください。例えば髪の毛の色は例えマッ黄色でも一日で黒く変える事が出来ますが、言葉づかいは急には変わりません。無理をして敬語を使おうとして間違えるより、丁寧な言葉を使うよう心掛けてください。「ありがとうございました」という一言も本当に心がこもっていれば、例えそれが電話であっても自然に頭が下がるものです。
【文責・事務局山田】