●第3分科会
企業資源の再構築により市場創造へ社長の頭も再構築…その前に?
独自に新分野を開拓して
新美文二氏(株)コムライン・社長
(株)コムライン 創業:1984年 資本金:1000万円 年商:17億円 社員数:230人
業種パソコンショップOA機器販売・ビデオレンタル・回転寿司テイクアウト寿司販売、和食レストラン縁
鉄工所からスタート
パソコン、ビデオ、回転寿司など様々な事業をやっておりますと、「どうして多業種を手がけているの?」とよく聞かれます。しかし最初からいろいろな業種を手がけようとしたわけではありません。1971年に鉄工所を始めたのが出発で、その後、テイクアウト寿司のフランチャイズの話があり、78年に「あいデリカ」1号店を開店。弟にやらせるつもりだったのですが、私自身が手がけることになりました。経営について特に専門的に勉強したわけでもなく、手当たり次第にセミナーや勉強会に出かけていき、とにかく勉強しました。その時初めて、経営に対する心構えを教えられました。

商品にはこだわらない
「流行商売に手を出す」と言うとあまり印象がよくありませんが、言い換えれば流行(はや)らなければ「商売」にはなりません。商品にこだわらず、楽しんでやればよいと思うようになり、1982年にビデオレンタル店を始めました。物を貸出すわけですから、当然、管理業務が発生します。その管理業務をパソコンでということでレンタルシステムを開発し、それを「売る」パソコンショップを1984年に開店しました。これが現在のコムラインです。「色々なところで色々なことを学びたい」と、同友会をはじめ、いろんな団体に参加し、「自分より知識技術が上の者は使えるが、自分より志・人間性の上の者は使えない。経営者は人間性の向上をめざせ」ということを学びました。
ニーズは変化する
新分野へ進出する時には、その社員の人間性を重視し、私の目から見た資質・能力・やる気・適性をピックアップし、どんどんやらせています。私自身は、料理もビデオもパソコンも素人ですが、だからこそ「お客様」と同じ視点で物を見ることができると思っています。世の中は様々に変化していきます。例えば「寿司」で考えてみると、立ち食いの専門店では主なお客は男性で、女性のお客は少数でした。それが女性の社会進出が進むと、「スーパー寿司」となり、核家族化が進み中間食の時代には郊外型の「テイクアウト寿司」、そして今は車社会で、広大な駐車場を有した「回転寿司」が中心です。「寿司」という商品は変わらなくても、これだけ提供方法が変化してきています。人が生活している以上ニーズはあり、生活に変化があるからニーズも変化し、新しいニーズ、市場が生まれます。時代の変化をよく見ていけば、必ずそこに生き残るチャンスがあると思います。
競争しない「オンリーワン」
今時代はグルメや本物思考から健康指向へ、さらに環境を考えて物を大切にするようになっています。「物」から「事」へ、「事」から「心」へと変わってきています。今までは、一生懸命他社と競争し、運良くここまでやってこれましたが、「競争で勝つ」のではなく「競争しない」ことを考えるようになりました。「物」ではなく、空間、安らぎ、たのしさ、快適さ、ゆとり、健康、等を「売る」ような、自社しか持っていない土俵で勝負するように、今、努力しています。
協業化で新市場をめざす
浅井章博氏アルファフードスタッフ(株)・社長
アルファフードスタッフ(株) 創業:1924年 資本金:1500万円 年商:38億円 社員数:26人 業種:食品・菓子用原材料の卸販売、食品・菓子の企画開発及び製造管理、環境関連商品の企画開発及卸販売
「砂糖」から「砂糖以外」へ
当社は創業から75年目を迎えますが、1987年に私が入社した時は、砂糖卸売り専業で、1円単位の価格競争の商売をしていました。このような商売に限界を感じ、原料として従来の得意先に販売できる新たな糖質以外の取扱い品目を増やしていきたいと考えていました。小麦粉であれば、国産小麦の粉というように、とにかく、皆がやらないことを見つけて,企画・提案をするところから始めました。
安心・安全をコンセプトに
自分の考え方が大きく変わったのは1990年頃です。「国民栄養調査」という日本人の食べ物の調査報告を見ていると,年々脂肪の摂取量が増え、反比例して炭水化物がぐっと下がっていました。同時に、アトピーやアレルギー、虚血性心疾患、今でいう生活習慣病といったものが,ぐっと増えているのです。たまたま息子がアトピーだったということもあり、健康や安心・安全を配慮した食品原材料の充実、そして原材料だけではなく,家庭用のこだわりのある製品(食品)の企画提案をやってみようと思いたったのです。営業担当の社員には、得意先を訪問した際、「こだわりをもった企画提案」「稼動していない設備を使っての新製品の開発提案」を主軸に営業活動するようすすめましたが、期待した数量が売れませんでした。顧客の多くは地元中小企業ですが、製造はできても、こだわり商品の販路をなかなかお持ちでなかったからです。そこで、わが社でこれらの商品の販売まで手がけるようになりました。
「食」から「暮らし」へ
この関係でお付き合いのできた無店舗販売・共同購入方式をとっておられる得意先から、欲しいものはこの商品以外にもいっぱいあるということを教わりました。消費者も、環境や安全面に非常に敏感になってきています。そうであるなら、どんなものでも「ここが恐い、不安だ」と感じながら使っている家庭用品は、その部分をなくすことから商品開発ができるのではないか、と考えたのです。ところが、わが社は食品分野では実績があっても家庭用品は未知の分野です。いろんな人に、自分の想いをあうたびに話していますと、色々な解決方法が出てきました。もっと掘り下げていくと「これは面白い。1社1社別々に扱うのではなく、一緒に同じブランドで作ったらコストダウンにもつながる」ということで、今日の協同組合の準備が始まりました。
協同組合との関わり
現在、参加企業の社長とそれぞれの担当社員1名が出席して毎月2回の会議を開催しています。一緒の仕事をしているということで、今までになかった人間関係が生まれてきました。社員同士も行き来しますので、社員同士の親密な関係もできてきました。このような関係は今までになかったものです。このことが他の社員にも伝わり,新しく始めた事に関心を持つようになり、自然と社内に活気が出てくるようにもなりました。協同組合で一緒にやろうとしている企業同士は、業種も業態も得意先にほとんど共通性はありません。お互い紹介したり紹介されたりしていくうちに、既存の取扱い商品においても新たな販売チャンネルが生まれつつあります。
新たな市場創造を目指して
それぞれの企業の分野を、「人にとって地球にとって安心・安全か、そうでないか」という視点で見ると、いろんな商品が今後も開発できそうです。環境問題、高齢化社会、医療費問題、輸入食料の増加、ポストハーベスト、遺伝子組み換え問題、本物志向、健康志向など、切り口はいろいろあります。ごくありふれた物でもこの「安心・安全」のジャンルで商品を作れば、新たな市場が拓けると思っています。
【文責事務局・浅井】