●第7分科会
働く側の考えが分ると企業は儲かる…〜いざという時に冷汗をかかないために〜
冨田耕司氏エムジー製版・社長
エムジー製版 創業:1981年 資本金:100万円 年商:0.8億円 社員数:13名 業種:マック出力サービス・写真製版業
太陽を見て帰ろうや
私が就職した1966年はちょうど日本が高度経済成長で、所得倍増政策に入った時でした。学生時代、写真に興味を持ち、将来はカメラマンになりたいなと思っていました。しかし,カメラマンでは収入が不安定だからということで、就職先を探していたところ、写真製版という仕事がみつかり,ある印刷会社に入りました。そこで労働組合との出会いがあったわけです。当時の印刷業界の特徴は、他の産業と違って、まず一時金(ボーナス)と退職金が低いということでした。そしてもう一つの特徴が,労働時間が長いということでした。当時の印刷労働者の合言葉は、「太陽を見て帰ろうや」で、陽のあるうちに何とか家に帰りましょうという意味でした。ある時、上部団体からの指導があり、「今の労働組合の体質では闘えない。本当に闘える労働組合にしなくては」ということになり,私が書記長になり、5年間その職を務めました。その後、委員長も引き受けました。10年間の労働組合活動の中で働いているものの立場から見た会社を,グループ討論の参考にしていただければと思います。

リストラの嵐の中で
今、働いている人は何を思いながら働いているのでしょうか?給料が多いか、少ないか?労働時間が長いか、短いか?当時もそうですが,大体みんなそんなことを考えながら、働いているのではと思います。しかし、何をどうしたら給料アップにつながるとか、時間短縮できるかということはなかなか考えません。彼らが自分でそういうことを考え、働いてくれるかが,経営者ことって、重要な点だと思うんです。それには会社に対する信頼とか愛着がなければ,絶対にできません。最近のマスコミ等で報じられている中高年のリストラの問題、特に大企業の場合をみると、大胆なリストラ策を打ちだしていたりします。できることなら少ない退職金でリストラしたいようで、今までの仕事内容とはまったく関係ない職場に配転し、何とか本人の口から「やめたい」と言わせ、自己都合による退職とし、退職金を軽減しようとしています。
会社と共に人生を歩んできた労働者達への大企業のやり方を、今の若い人達はどんな思いで見ているのでしょう。労使の信用関係などあるのでしょうか。
中小企業でいかに能力を発揮させるか
先日、労務労働委員会が主催した会合に出席し,ある労働組合の書記長の方のお話を聞きました。中小企業労働者の特徴として「大企業のようにエリートの集まりではなく、むしろ社会に対する敗北意識を持っていたりし、仕事や職場に対する誇りも低い」「いい職場があったら変わりたいと常に思っている」などという人達が多いという話をされていました。要は、そんな人達の集まりである中小企業がいかにして彼らの能力を発揮させていくのかということです。
適材適所、その人のいい部分、一番能力を発揮できる場所や環境を社長が一緒になって考える事だと思います。会社の都合だけで人事を考えるのではなく、本人をまじえて充分話し合うこと、もちろん会社にとってプラスになる事が,前提になっていますが…。
もっと経営者は勉強を
皆さんの会社に就職規則はあると思います。労働組合をやっていた時,「就業規則はというのは,会社が勝手につくったものなんだ」と教えこまれたことを思い出します。会社の都合のいいように一方的につくられたのが就業規則であり、労働協約は労使双方の合意によってつくりあげられたものですから、労働協約がもっとも優先するんだとも教えられました。そうは言うものの、中小企業では組合のない会社が多い中で、就業規則を作成する時に、「少しでも労働時間を短くしたい」「1日でも休みを増やしたい」と思っている労働者とどう話されますか。その想いが実現できるか、互いにプラスになる方法を一緒につくっていくシステムづくりが大切になってきているのではないでしょうか。最近の事例でもあるのですが、ある日突然、労働組合のメンバーが団体交渉のためにたずねてきたりしています。また社内に労働組合が結成され、団結権が揚げられたりもしています。冷汗をかかないようにしたいものです。働く人達の気持ちがわかる経営者になって、儲かるシステムづくりを一緒にできる社員と経営者になる努力を共にしていきたいと思います。
【文責事務局・内輪】