●第8分科会
経営者はなんのために、どう学ぶのか〜あなたは今のままでよいのですか〜
林永芳氏(株)浜木綿・社長
(株)浜木綿 創業:1967年 資本金:2億252.5万円 年商:20億円 社員数:108名 業種:中国料理レストラン
なんのために経営者は学ぶのか?
創業した父から事業を継承し13年目になります。経営者は「会社が永続するため、社会に貢献するため、存在価値を高めるため」学ぶのだと何度も囲りから聞かされましたが、昔はとても納得できませんでした。経営者は、家を抵当に入れて大きな借金をし、一つ間違えれば何もかも失うリスクを抱えています。その上、税金は高い、給料も払わなければならない。その家族もちゃんと生活でき、取引会社にも儲けていただき、地域にも貢献をしなければいけません。これをやろうとすると莫大な能力がいりますし、多大な犠牲も払います。私は、経営者は大変な仕事だというのが実感で、とても「なんのために」という目的に対し、納得できませんでした。

納得のためには3つの要素が必要
納得の要素には、「目的」「理由」、そして「成果」という3つが必要です。「なんのために経営しているのか」「誰のために経営しているのか」「何を得たいのか」……。これらを自分に納得させるには、ものすごくパワーがいりますし、勉強も必要ですが、クリアーしておかないと先へは進めません。経営指針も計画や方針は数字がベースなので比較的楽に書けるのですが、結局は、なぜこれをするのかという『経営者の哲学』の部分に引っかかってきます。会社がうまくいかない時には「何でこんなことまでやらなければいけないんだろう」と思います。だからこそ、考え方をきちっとこなしておくことが大切なのです。しかし、つい『とはいうものの…』と言いたくなります。今思えば、さまざまな方に教えていただいたことは、私が納得するための道だったのでしょう。
自らを納得させる旅
同友会では、諸先輩から会社とはこうあるべきなんだ、経営とはどういうことかを学ばせていただきました。当初、経営理念は壁にかけてあるものだと思っていた私にとっては、本当に劇的なことでした。昭和地区では「あなたは会社をどうしたいのですか」というテーマで報告し、初めて経営指針を作りました。その時、「5年後に20億円を狙う」と皆さんの前で発表したことで、常に意識しながら経営することができました。ちょうどバブルが弾けた時です。どんどん売り上げが下がり、社内もうまくいかなくなりました。一方で私は「俺は何のためにここまでやらないけないのだろうか」と考えている始末です。会社はメチャクチャでした。その頃、何よりも大きなことは芳村思風先生の哲学「生きるとは」を自分なりに納得したことでした。心の中に残った詩を紹介します。
『人間において生きるとは、ただ単に生き長らえることではない。人間において生きるとは、何のためにこの命を使うのか、この命をどう生かすかということである。命を生かすとは、何かに命をかけるという事である。だから生きるとは、命を賭けるという事だ。命の最高のよろこびは、命をかけても惜しくない程の対象と出会う事にある。その時こそ、命は最も充実した生のよろこびを味わい、激しくも美しく燃え上がるのである。君は何に命をかけるか。君は何の為になら死ぬ事が出来るか。この問に答える事が、生きるという事であり、この問いに答える事が、人生である』(芳村思風「前章命題」より)
命よりも大切なものがあるのか?わかりませんでした。けれども、もし、たとえば社員に「社長のおかげで本当に素晴らしい人生を送らさせて頂いています」と言われたらどうでしょう。そう考えると、世の中には命よりも大事なものがあるのだなあと納得できました。ずいぶん重かった気持ちが軽くなりました。それはやはり自分で納得しているから、リスクをかけてもこのためにやっているのだと思えたからです。
私の学び方5か条
私は、自分で考えたことは少なくて、いつも他人の経験の知恵や知識をお借りしていますが、その中でまとめた学びの5か条があります。
(1)わからないことは知っている人に聞くのが一番早い
あたり前の事ですが、やったことのある人に聞けば、絶対わかります。同友会は大概の事は聞けますから、必要な人を探して聞くのが一番早いし、絶対にいいと思います。
(2)教えてもらうときは異見を言わない
相手の言うことを全部聞くまでは途中では絶対異見をはさまずに、全部聞いてから自分で消化します。
(3)教えていただく相手を本当に尊敬すると知ろうとする。
(4)知らないことを恥じない
こんな事を聞いたら格好悪いと思うことがたくさんありますが、相手が知らないこともありますから、気にする必要はないと思っています。
(5)素直に聞くこと、聞いたらやること
部下の人達を見ていると、ものすごく伸びる人と、ちっとも伸びない人がいます。その差は、やるかやらないかです。ただし、「やる」ためには「納得」が必要です。
納得の3要素を持っていますか?
まず、哲学を学ぶことが必要だと思います。なぜ経営するのかという答えは人によって違うわけですから、この問題だけは、やはり経営者が出さなければなりません。だから、どうしても勉強する必要があります。それが辛ければ経営者をおりればいいわけです。「経営することは自分にとって本当に必要なことかどうか」、そして「なんのために」「誰のために」経営するのか、「成功したら何を得るのか」を最終的に自分がどう納得できるかが、鍵ではないでしょうか。
【文責事務局・岩附】