活動報告

第18回 あいち経営フォーラム特集(第1分科会~第6分科会)

第1分科会

社員が輝く経営
~「経営姿勢の確立」から「労使見解」へ

湯澤 剛氏  (株)湯佐和(神奈川同友会)

「問題が続出しても、全ては経営者の責任」

第1分科会では湯澤剛氏に「社員が輝く経営とは何か」を自身の体験を元に語っていただきました。

父親の他界により借金40億円の会社を突然継ぎ、33店舗の居酒屋に店長が2名という、まともな人材がいない状況下でのスタート。強みを生かした店舗展開をすることで売上と利益が大幅にアップした繁盛店ができ、お客様からの激励の声によりやる気に満ちた社員が出てくるも、利益優先の経営をしてきたため大きな問題が続出。湯澤氏は、全ては経営者の責任であり、人材こそが大事だと気づき、同友会に入会します。そして何のために経営するのかを学び、人が輝くためにどんな取り組みをしたかを報告いただきました。

グループ討論では、(1)社員(あなた自身も)は輝いていますか、(2)中小企業だからこそできる社員の輝かせ方とは、について活発な意見交換ができました。座長のまとめより、今日の学びを明日からどう取り組むかを考え、学びの多い分科会となりました。

土地家屋調査士法人シーエス  牧田 篤

第2分科会

同友会理念を受け継ぐ事業承継
~創業者、後継者のそれぞれの想い

鋤柄  修氏  (株)エステム(南地区)
塩崎 敦子氏  (株)エステム(南地区)

「後継者育成は経営者の責任」

第2分科会ではエステムの鋤柄修氏と塩崎敦子氏に、創業者、後継者それぞれの立場から経営に対する想いを語っていただきました。

創業者で名誉会長の鋤柄氏からは、事業承継の様々なパターンの紹介から同社での後継者選びの方法について語っていただきました。鋤柄氏はあらかじめ10年社長をやると宣言し、一番経営能力が優れた者へとタスキを渡す駅伝経営を行っています。専門家の意見を聞き、自分より優れた後継者を育て、理念の承継を行って初めて一人前の社長であると話しました。

理念を受け継ぐ覚悟を語る

後継者で代表取締役の塩崎氏からは、新卒で入社し現場一筋で9年間仕事漬けの状態であったこと、主体者意識の高さから管理職になり、前社長から「そろそろ辞める宣言」を受けて経営の勉強を始め、お客様に選ばれる会社づくりに邁進していることが話されました。永続する会社には理念が不可欠であり、事業承継には日々の経営の「見える化」が必要であるとも語りました。

グループ討論では「今後、自社でどう事業承継を進めていきますか」をテーマに意見交換しました。参加者は自社の承継問題を解決するためのヒントに結び付け、明日からの実践に繋げることのできる分科会となりました。

信濃工業(株)  江尻 春樹

第3分科会

地域と中小企業と金融機関の未来
~共通価値の創造・リレバンの実現へ向けて

近藤 実氏  西尾信用金庫・理事長

長い目で見て取り組む

当分科会は西尾信用金庫理事長の近藤実氏を報告者に、中京大学教授の由里宗之氏を解説者に迎え、「地域と中小企業と金融機関の未来を考える」をテーマに開催しました。

以前に「ハイスクール起業家コンテスト」を開催した西尾信用金庫は、今は「ものづくりコンテスト」などを開催しています。その中で取引先中小企業に高校生の就職が決まるなど、地域の発展に融資以外の活動もされています。近藤氏は「種を落としておくと、何か良いことがあるんじゃないか」と考えやっているとのことで、その長期視点に立った長期事業融資は中小企業のことを知り、取引先のことをよく知っているからこそのサービスと感じました。取引先をよく知っているのは、取引先に補助金や制度を紹介し、申請の手伝いをしていることもあります。金融機関と中小企業のリレーションシップバンキングが機能している好例と思います。

由里教授からは、金融仲介機能のベンチマークとローカルベンチマークについて解説いただきました。

参加者からは、金融についても勉強になったとの感想もいただきました。

安藤不動産  安藤 寿

第4分科会

同友会らしい経営指針の実践
~社員と創る会社の未来

岩山 佳代氏  (株)大喜工務店(名古屋第4青同)

社員への想いを熱く語る

当分科会は「同友会らしい経営指針の実践とは」と題して、大喜工務店の岩山佳代氏に報告いただきました。

建設業である同社にはいろいろな過去を持つ社員が多い中、以前は事件や事故があったけれど、岩山氏は「社員を守りたい、そして社員たちを守れるのは私だけだ」という思いで経営をしているそうです。同友会に入会した頃は指針書は必要ないと思っていましたが、社員を守るために勉強をして指針書を作り、社員一丸となった会社にする必要性を感じたといいます。

そこで指針書を作り、「大喜八箇条」で大事な考え方を示したり、月給制や有給休暇制度について面談を実施したりして会社を変えてきました。また、条件面や働く環境面などではお客様との粘り強い交渉もしました。その結果、社員が成長し、会社の業績も安定しました。岩山氏は、指針の実践で大事なことは、社員との信頼関係を築くことと、指針書に記載したことは必ず守る、諦めずにやり続けることだと強調しました。

経営者本位ではなく、社員を思いやった姿勢が指針の実践に、そして会社が良くなっていく原動力になっていることを実感しました。

(株)オムニツダ  津田 康行

第5分科会

ビジョンは希望へのかけ橋
~夢を語って未来を創る

鈴木 学氏  スズキ&アソシエイツ(有)
(碧南・高浜地区)

10年ビジョンを基に未来を創る

鈴木学氏は2005年に同友会に入会後、経営の柱を求めて経営指針や5年ビジョンを成文化し、実践してきました。しかし、順調に思えたなか、社内の人間関係が原因で新入社員が9カ月で退職してしまう出来事がありました。

そして、同友会の経営指針実践講座で、「社員の自主性・主体性が育たない」と悩みを打ち明けると、社員が主体性を発揮できる土台となる大きな目当て(何のためにどこへ向かって頑張ればよいのか、頑張った先には何があるのか)が不明確ではないかと指摘されます。

そこで、改めて社員と共に10年後の自社のありたい姿を考え、10年ビジョンを成文化しました。「このビジョンができたことで、社員が主体性・創造性を発揮できる土台が出来上がった。あとはこのビジョンに基づいてロードマップを作っていきたい」と今後の展望を語りました。

グループ討論では、各社の10年先を見据え、自社のありたい姿を交流しました。

第6分科会

情勢と経営は不離一体
~取り巻く環境を認識していますか

丸山 博氏  (有)第一コンサルティング・オブ・ビジネス
(東京同友会)

歴史・時代・情勢の認識を説明

丸山博氏を報告者に迎え、「自ら考える情勢」という主旨で作られた第6分科会。丸山氏の報告は、冒頭から「流されるままの経営で良いと思っているなら、情勢分析しなくてOK」、「メモ(インプット)していない時点でダメ」、「すぐに具体例を聞きたがるのは、何を聞いても学べない」など手厳しいものでした。

その理由は、現代は技術、政治、金融、雇用・労働そして消費すべてが「大転換期」を迎えており、この潮流に乗り遅れる企業は淘汰されるという危機感からでした。

このピンチともチャンスとも取れる変化の時代に生き残っていくためには、自らの頭で考え、学びと実践を通して“自社のやり方”に合った情勢分析力(チューニング力)を磨かなければなりません。

同友会は会社経営を通じて、より良い社会づくりを目指しています。この目的を座標軸の中心に置き、「わが社はどうあるべきか」を問いながらチューニング力を磨いていきたいと思います。

(株)太閤  西川 正孝