中小企業を巡る金融情勢
~銀行を味方につけ会社もがっちり
由里 宗之氏 中京大学総合政策学部教授
中京大学教授の由里宗之氏を報告者にお迎えし、全体で82名が参加するなか東尾張支部例会が開催されました。由里教授からは、近年の金融情勢変化について、自身が金融機関に勤務していた体験を交え報告されました。
処分庁から育成庁へ
金融庁はかつて「金融処分庁」と呼称されるほど厳しい政策を採用していましたが、現在は「金融育成庁」へと方針を転換し、金融機関と企業とが、日常的な関係づくりに基づくリレーションシップ・バンキング(以下、リレバン)を推進しています。
しかし、金融庁と現場の金融機関の間に温度差があること、金融機関の人員が減少しているためにリレバンを十分に実行できていないことが指摘されるなど、現状の困難さが明らかにされました。
金融機関との関係づくり
金融機関はお金のプロであっても、事業のプロではありません。そのため、金融機関がその会社や事業を正しく理解していなければ、資金の流れが滞ってしまいます。
例えば、静岡県の島田信用金庫は、お茶の商流を理解していなかったことから生じた失敗を反省し、支店長・職員全員がお茶のことを勉強することで、地域から認められる金融機関となっています。
この事例から、「金融機関が会社を理解することが、リレバンの本来の役割」と由里教授は強調します。金融機関が企業を訪問することが少なくなり、企業を深く知る機会が減少するなかで、企業自らが自社や業界の情報を発信し、金融機関と共有することが求められています。
そして、本当の意味でリレバンを進めるには、信頼できる金融機関・担当者の見極めも大切です。経営指針(理念・方針・計画)を確立し、それに基づいた経営を金融機関とのパートナーシップのもとで推進することこそが、現在の金融情勢を味方につけることにつながります。
日々の学びと実践で自ら襟を正す経営の意味を、改めて確認する例会となりました。