活動報告

第19回 あいち経営フォーラム特集(第1分科会~第6分科会)

第1分科会

同友会の根幹を学ぶ
~過去から未来への道筋を描く

加藤 明彦氏  エイベックス(株)(天白地区)

労使見解の重要性を説く加藤氏

第1分科会ではエイベックス会長の加藤明彦氏を報告者に迎え、同友会の根幹について学びました。

加藤氏は、我流でやっていた取り組みの失敗例と同友会で学んだこと、労使見解から学ぶべき点である(1)経営者の姿勢の確立(社員との信頼関係の出発点)、(2)経営指針の成文化と全社的実践(労使見解の展開の前提)、(3)社員をもっとも信頼できるパートナーと考え、高い次元での団結をめざし、共に育ちあう教育の重視(人として認める)、(4)外部経営環境の改善にも労使が力をあわせる(地域づくりと企業づくり)についての取り組みと考え方、そして同友会理念についても触れました。

質疑応答やグループ討論では、質問や自社の課題が労使見解のどの部分と結びついているかを意識し、自社に置き換えて考え、実践するイメージを持つことを目標としました。

学ぶことや気付くことだけで終わるのではなく、課題の解決のために同友会の基本を学び、人を生かす経営の総合実践に具体的に取り組む決意を持つきっかけとなりました。

羊商(有)  宮本 浩之

第2分科会

事業承継は経営者の責任
~魅力ある企業づくり

藤田 彰男氏  赤津機械(株)(熱田第1地区)

「事業継承は会社の喫緊の課題」

4代目社長である藤田彰男氏は、アニメ「サザエさん」のマスオさんの状況で会社を承継しました。当時の会社はのれんを優先する現状維持の経営を行なっており、従業員の高齢化と採用難、財務の課題も多かったそうです。

やがて次女が入社し、株式の納税対策を検討したことを契機に事業承継計画に取り組みます。同友会の金融委員会での情報収集やコンサルタントとの相談を重ねる中で、中小企業の廃業理由に「後継者不在」と同じくらい「事業に将来性がない」というデータがあることを知ります。そこで改めて主要事業の改革や新規事業の取り組み、人事労務では採用チャンネルの多角化や若手社員の能力開発等に着手したといいます。

現在は次女を後継者と決め、魅力ある企業づくりと価値ある企業に変革できる後継者・社員育成に取り組んでいるそうです。藤田氏は冷静な自社分析と身の丈に合った対策を呼び掛け、「『ロマン』と『そろばん』の両方が大切。魅力ある企業であるための10年ビジョン。中小企業が存続できる環境づくりには同友会運動が必要です」とまとめました。

一栄(株)  矢田 真示

第3分科会

人を大切にする組織づくり
~社員が輝く強い企業へ

後藤 伸氏  (株)リクラス(北第1地区)

社員に任せることで育つ環境をつくる

報告者の後藤伸氏は前社で一緒だった仲間と換気扇フィルターの訪問販売業を立ち上げ、当初は儲けることが仕事の目的だと感じていたそうです。同友会に入会し、役を受けたり仲間と関わったりするうちに、その考え方が変わっていきました。転機となったのは、2004年に高知で行われた青全交でネッツトヨタ南国の横田英毅社長(当時)の記念講演を聞いたことでした。そこでは、マズローの欲求5段階説や従業員満足(ES)と顧客満足(CS)などの話を聞き、仕事でお金を儲けるのは手段であり、本当の目的は幸せな人生を送ることだと気付いたそうです。

顧問税理士に依頼して作った経営指針書が社員に全く浸透しなかった反省から、1から学び直して作成し直し、指針発表会を10年以上も毎年継続しています。さらに社員全員で行動指針となるクレドを作成。住宅インテリア関係の事業にも進出しながら、新卒採用活動も積極的に行い、共に育つ社風を築きました。

後藤氏は人を大切にする組織づくりについて、理念やクレドを通して仕事のやりがいを伝えるとともに、何のための組織かを伝えていくことが重要だと語ります。そして社員が生き生きと働ける環境をつくることが経営者としての重要な役割だとまとめました。

(株)オアシス  早川 佳吾

第4分科会

“あって良かった”と言われる企業へ
~「地域のインフラ」になれるか

原田 晴夫氏  (有)原田電工社(岡崎地区)

地域と自社の関わりを語る原田氏

電気工事業を営む原田電工社の原田晴夫氏は、ある時、元請建築会社から値引き要請を受けます。その仕事は当時の売上からすると大きなボリュームでしたが、利益が少なく社員がやりがいを持てない取引はやめるという決断をしました。

そこで原田氏は地域に目を向け、自社と地域住民の交流を目的とする「はらでんフェスタ」を隔月開催することを決めます。少ない人数ながらも、普段の業務と並行してこれを続けていくと、地域の課題が見えてきました。また、同じ年に「はらでんビジョン」を発表し、「電気工事もできるサービス業になろう」とスローガンを掲げ、地域に根差す企業として今に至っています。

グループ発表では、「地域と経営を繋げて考えることができるようになった」「地域に誇れる会社になろうと思った」など、自社と地域に対する考え方が変わったとの声が多く聞かれました。座長の浅井勇詞氏は「強靭な地域をつくることが強い中小企業をつくる」とまとめました。

はらでんフェスタは次の3月で50回目を迎えます。「地域と共に歩む中小企業」を地で行く原田氏の、素晴らしい報告でした。

(株)アドバンス  永井 隆実

第5分科会

ロマンを追い求め結果に繋げる
~ビジョン経営でワクワクする会社に

津田 康行氏  (株)オムニツダ(中村地区)

「ビジョンに向かっている実感が必要」

第5分科会ではオムニツダの津田康行氏より、10年ビジョンをテーマに報告していただきました。

1997年、父親の後継者として入社した津田氏は様々な困難に遭遇します。創業当時から先代を支えてきたベテラン社員の一斉退社や、社長就任後には幹部が社員を引き連れて独立。そして、リーマンショックの影響から売上は激減します。

同友会に入会後も、社内の現実に打ちのめされる日々が続きました。そんな時、指針講座道場編に参加し、経営者の責任について改めて考え、指針書を作成しました。ビジョンは、達成するべき目標として、会社が進むべき方向性を描いている希望であること。この3要素を追い求め、社員の個性をオムニバス(乗り合いバス)にして、全員で進む会社を目指していきたいと語り、報告を締めくくりました。

(株)KOUSEI  伊藤 雅章

第6分科会

変化を見定め、将来を展望
~情勢・社会の動きを経営に活かす

小川 康則氏  (株)北斗(一宮地区)

「社員がワクワク感を持てるビジョンを」

北斗の小川康則氏は、設立当初は屋根工事業だった会社の業務を、エクステリア、不動産、介護事業等と展開させ、次々と新事業に進出してきました。その際、人口減少はもとより世帯数の推移や新設住宅着工戸数の実績や予測結果などの詳細なデータを入手して科学的な戦略を立て、自社が行う業種の将来的な見通しを描き、将来に希望が持てる新しい業種に業務を拡げてきました。

小川氏は、情勢を見るときには現在の業種への悪影響があるところから目を逸らさずネガティブに見ることにより自社の立ち位置を徹底的に知り、今後のビジョンを立てるときにはポジティブに捉えて社員がワクワク感を持てるようにすることが重要だと強調します。また、数多くのデータを分析するだけでなく、自社に活かし実行することが大切だと述べました。

このような小川氏の姿勢の表れた経営指針書を開示までしていただき、情勢分析について実践的に学ぶことのできる分科会となりました。

グループ討論では、会社や業界の今後の変化や展望をどう描き行動していくかを話し合いました。展望を描くためには経営理念を持つことが大切であり、経営指針の重要性を再認識し、自社の方向性が明確になりました。

弁護士法人鈴木・上野総合法律事務所  上野 浩