【概況】
【業況判断】 8期連続で改善する
【売上高】【経常利益】 経常利益の改善がストップ
【在庫】 在庫過剰感和らぐ
【価格変動】【取引条件】 価格「低下」超過幅縮小
【資金繰り】 「窮屈感」高まる
【設備過不足】【施設稼働率】 設備は「過剰」超過に、稼働率は「低下」超過に転じる
【雇用】 「不足」超過状態続く
【経営上の力点など】 引き続き「新規受注(顧客)の確保」がトップ
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)
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景況調査報告(2000年8月)第27号(PDF:972KB)
【概況】
業況感の改善が依然として続いていますが、その勢いは急速に衰えてきています。業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は2と、前回調査に比べ1ポイント改善しました。これにより業況感の改善は98年11月調査以降8期連続となりましたが、改善幅を見てみると、99年11月調査時には20ポイント、その後18→6→1と大きく縮小しており、回復力の衰えが鮮明化してきています。
他方、こうした足元の状況とは裏腹に「見通し」はますます強気化しており、11月時点の予測をたずねた「次期見通し」DI値は、調査開始以来最も楽観的な18という結果になりました。とりわけ製造業では46%の企業が次期を「よい」と予測しているなど、明るい見通しを示しています。その背景には、トヨタ自動車の相次ぐモデルチェンジがもたらす好影響や、携帯電話などIT(情報技術)関連製品の売上の増加が今後も続くとの期待感あるようです。
こうした強気見通しにもかかわらず、回復力鈍化の背景や将来への懸念要因として、やはり以下の三点を指摘しないわけにはいきません。第一は、前回の調査報告でも指摘しましたが、設備投資は拡大しているものの、それが依然として個人消費の拡大には結びついていないということです。個人消費に近い流通業やサービス業ではいまだ業況の改善がみられません。第二は、依然として「利益なき繁忙」が続いていることです。個人消費の伸び悩みはもちろん、下請企業間の系列を越えたはげしい「サバイバル競争」の継続、大手企業の再編成を背景にした原材料価格や資材価格の上昇等が背景にあります。すでに原油価格上昇の影響なども出はじめており、利益環境はなかなか改善していないのが現状です。第三は、設備投資の増加がいわゆるIT供給産業やそれに関連した分野に限定されており、製造業全体や非製造業にまではなかなか拡大していかないことです。
こうした点を考慮に入れると、今回調査で示されたほどの楽観的な見通しは成立しにくいようにも思われます。いずれにしても順調な景気回復が続いてきた愛知の景況がいよいよ踊り場にさしかってきたことだけはたしかです。
[調査要項]
1.調査時 2000年8月24日~8月29日
2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
4.回答企業 990社より、209社の回答をえた(回収率21.1%)
(建設業39社、製造業77社、流通37社、小売・サービス業56社)
5.平均従業員 29.8人
なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。
【業況判断】
8期連続で改善する
「今月の状況」DIは前回の1から1ポイント改善し、2となった。これで業況は1998年11月調査以降8期連続で改善する結果となった。業種別では、前回調査で唯一悪化した建設業が△19→11と30ポイントの大幅な改善を示した。一方、流通業は20ポイントの大幅な悪化を示し、業況は△8とマイナスに転化した。またサービス業も6→2と4ポイント悪化した。製造業の業況判断DIは前回と変わらず3であったが、「よい」と答える企業と「悪い」と答える企業がともに増大する「二極化現象」が見られた。前年同月比DIもまた前回の1から2ポイント改善し、3となった。製造業は12と調査開始以来最高の結果となったが、「今月の状況」DI同様「二極分化現象」が確認できた。サービス業は4ポイント改善し(0→4)、建設業は前回調査同様「好転」「悪化]同数の0であった。流通業だけが△4→△15と11ポイントの悪化を示した。一方、次期については強気見通しが多数を占め、DI値は調査開始以来最も強気な18という結果になった。とりわけ製造業で強気見通しが多く、46%の企業が次期は「よい」と見ている。
【売上高】【経常利益】
経常利益の改善がストップ
売上高DI(前年同月比)は4→8と「増加」超過幅が4ポイント拡大した。これにより売上高DIは5期連続で改善する結果となった。これは「増加」したと回答した企業の割合が3%増加したことに加え、「減少」したと答えた企業の割合が1%減少したためである。とはいえ、全業種押し並べて改善したわけではない。サービス業で17ポイント(△10→7)、製造業で6ポイント(13→19)、建設業で3ポイント(△9→△6)の改善を示したものの、流通業では23ポイント(23→0))の大幅な悪化が見られた。次期見通しについては、建設業のDIがマイナス(「減少」見通し超過)であったものの、他の三業種では「減少」を見通す企業よりも「増加」を見通す企業の方が多かった。
前回調査で12期ぶりに「好転」超過へと転じた経常利益DI(前年同月比)は、今回5→3と「好転」超過幅が縮小する結果となった。98年8月以降続いていた経常利益DIの改善は7期でストップした。業種別に見ると、製造業が5ポイント(13→18)改善した以外は、サービス業が2ポイント(6→4)、建設業が3ポイント(△13→△16)、流通業が12ポイント(4→△8)悪化する結果となった。一方、「今月の状況」では、「黒字」と答える企業が97年2月調査以来14期ぶりに4割を超え、DI値は7→17と10ポイント改善した。次期見通しついては明るく、DI値は23と、「増加」を見通す企業が「減少」を見通す企業を大幅に上回る結果となっている。
【在庫】
在庫過剰感和らぐ
在庫感DI(今月の状況)は22→14と「過剰」超過幅が8ポイント縮小した。また、前年同月比でみてもDI値は6→△5と「増加」超過から「減少」超過に転じている。業種別(今月の状況)に見ると、製造業が21→7と14ポイント「過剰」超過幅が縮小した一方で、逆に流通業は24→33と「過剰」超過幅が9ポイント拡大する結果となった。次期見通しについては、製造業(4)、流通業(15)ともに、先行きの在庫「過剰」を見通す企業が「不足」と見る企業を上回る結果となっている。
【価格変動】【取引条件】
価格「低下」超過幅縮小
価格変動DI(前年同月比)は、△52→△42と10ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別では、流通業で「低下」超過幅が△44→△50と6ポイント拡大したものの、サービス業で19ポイント(△45→△26)、建設業で16ポイント(△61→△45)、製造業で8ポイント(△56→△48)、「低下」超過幅が縮小した。次期見通しにおいては、全業種押し並べて「低下」を見通す企業が多い。とりわけ流通業では、5割以上もの企業が先行きの価格が「低下」すると見通している。
取引条件DI(前年同月比)は、△18と前月からの変化は無かった。業種別では、建設業で9ポイント(△30→△21)とサービス業で8ポイント(△20→△12)の「悪化」超過幅の縮小が見られた。その一方で、流通業は0→△21と21ポイントの大幅な悪化を示した。製造業もまた△18→△20と2ポイント悪化している。次期見通しも全業種押し並べて「悪化」を見通す企業が多く、全体のDIは△15であった。
【資金繰り】
「窮屈感」高まる
資金繰りDI(今月の状況)は△24→△31と7ポイント「窮屈」超過幅が拡大した。これは「余裕」と答える企業が4%減ったことに加え、「窮屈」と回答する企業が3%増えたためである。業種別に見ると、流通業は13ポイント(△18→△31)、建設業は12ポイント(△41→△53)、サービス業(△33→△38)と製造業(△11→△16)は5ポイントと、全業種押し並べて「窮屈」超過幅が拡大した。「窮屈」と答えた企業の割合は、製造業(30%)と建設業(58%)・サービス業(54%)・流通業(49%)との間で格差が見られる。先行きの資金繰り見通しについては、「窮屈」になると見る企業が46%を占めており、資金繰りの厳しさが解消する見通しが立っていないことを示している。
【設備過不足】【施設稼働率】
設備は「過剰」超過に、稼働率は「低下」超過に転じる
前回調査で9期ぶりに「不足」超過へと転じた設備過不足DI(今月の状況)であるが、今回調査では△1→1と再び「過剰」超過へと転じた。業種別では、サービス業で15ポイント(△17→△2)、流通業で12ポイント(△15→△3)の「不足」超過幅の縮小が見られた一方で、建設業は10→△8と「不足」超過に転じ、製造業は13→8と「過剰」超過幅が縮小した。次期見通しについては、製造業とサービス業で「過剰」を見通す企業が多いのに対し、建設業では△17と「不足」と予想する企業が多かった。
前回調査で12期ぶりに「上昇」超過へと転じた施設稼働率DI(前年同月比)は、今回調査で11→△4と「下降」超過へと再転化した。業種別では流通業が22→△20と「下降」超過に転じ、製造業は7→0となった。次期見通しについては、製造業で稼動率が上昇すると見る企業が多い(7)一方で、流通業では低下すると予想する企業が多数(△18)を占めた。
【雇用】
「不足」超過状態続く
雇用動向DI(全業種)は、「不足」と回答する企業が2%増えたものの、「過剰」と答える企業もそれと同程度だけ増えたため、前回と変わらず△6であった。業種別に見ると、建設業で△13→△19と6ポイントの「不足」超過幅の拡大が、製造業では16→4と「過剰」超過幅の縮小が見られた。一方で流通業が△15→6と「過剰」超過に転じ、サービス業で△24→△20と「不足」超過幅の縮小が見られた。次期見通しにおいては、建設業(△21)とサービス業(△11)で「不足」を見通す企業が多いものの、製造業(4)と流通業(8)では過剰を見通す企業が多かった。
【経営上の力点など】
引き続き「新規受注(顧客)の確保」がトップ
「経営上の力点」としては、前回調査同様「新規受注(顧客)の確保」を指摘する企業が最も多かった(62%)。それに「付加価値の増大」(57%)、「社員教育」(36%)が続いた。業種別では、製造業(69%)と流通業(62%)では「新規受注の確保」を、建設業(69%)とサービス業(55%)では「付加価値の増大」を指摘する企業が最も多かった。
「経営上の問題点」としては、前回調査同様「民間需要の停滞」と「販売先からの値下げ要請」が最上位を占めた(45%)。業種別では、流通業(57%)と建設業(54%)とサービス業(39%)では「民間需要の停滞」を、製造業(58%)では「販売先からの値下げ要請」を指摘する企業が最も多かった。
<会員の声>
(1)建設関連
(総合建設業)
現在は仕事が手一杯の状態です。しかし売上高は各工事の規模が小さくなっており、逆に減少しております。また職種によっては職人の確保が厳しくなってきました。
(空調・衛生設備)
仕事量の減少、工事費単価の低下、経費の捻出もままならず、借入金等融資も限界で苦しい。
(電気工事)
建設業はスーパーゼネコンが先頭になってマンション等の受注競争が激化(公共事業も同様)しており、安値受注したものを専門業者に押しつける(競争させられる専門業者は数カ月前より倒産が増加している)ことによって自分たちは生き残ろうと必死である。名古屋のゼネコンで銀行管理になっている会社が数社あり、上場会社も同様のところが10数社あるといわれている。
(外装工事)
建築現場が少ないため価格競争になり、低価格での受注になる。
(2)製造業
(印刷全般)
構造の変化が一気に噴出した感じで、正に淘汰の荒波に揉まれています。
(繊維製品製造)
輸入品の増加による圧迫が激しい。我々繊維業界での輸入品は95%以上とも言われ、今後国内での生産ができなくなっていき、繊維製品の生産能力が失われていくことに不安がある。
(機械製造)
新聞等の報道とは実感はかけ離れている。特に最近になって身近で会社整理や廃業の現実が多く、もう一段のリストラの必要性を感じている。
(電気機器製造)
大手メーカー機械に投資が増え、古い設備での生産性より高める動きにより外部へ出ていた仕事を内製化へ切替えが多くなっているため、取引高は低下する方向になっている。
(ばね成形)
単価切下げ要請の一方で末端製造者への管理業務移管による管理費、間接費の増加の問題がある。これをどう克服し、対応していくかが問題である。
(プラスチック成形)
忙しくなってきているが、儲からないというのが実情です。
(省力化設備)
設備投資が活発になってきたと感じています。IT関係では納期(1000万円位の設備で2ヶ月弱)さえ折合が付けば、他は後回しして注文が決まる状況です。
(金属加工)
仕事の量は増加傾向にあるが、価格の競争が激しく受注して黒字にするのが大変。
(工業用ゴム製造)
以前より生産量は上がっているが、コスト競争が大変。厳しさが増しています。
(3)流通
(事務機器卸)
通販、インターネットなど販売形態が変わってきている。接客(訪問販売など)している我が社(小売業)では先行きが不透明。
(歯科材料卸)
政府や新聞等では景気が良くなったとの報道だが、中小企業レベルでは非常に厳しいとの話はよく耳にする。報道のレベルではあまり信用できないような気がする。
(包装材料販売)
雪印に端を発して異物混入問題、企業不信感が末端にあり、全体の動き予測以下。またユーザーの商品受入れ時のチェックが厳しくなる。
(4)サービス
(新車・中古車販売)
去年の夏に比べてかなり悪い(特に8月)。中古車業界今一つさえない。毎月の波が大きい
(不動産)
仕事の内容が小さく細かい。受注件数増加はありますが、月別売上が減少している。
(鈑金・塗装)
政府、日銀は中部地区の景況は好転しつつあると発表しているが、我々零細企業にとってはまだまだ厳しい状況が続くと思われる。
(OA機器販売)
大企業は良くなっているかもしれませんが、小は大変になっているように感じる。
(求人広告)
この8月だけ見ると当社では昨年と同じであるが、昨今の景況感は上向きに感じる。
(工作機器販売)
マスコミがいう景気回復ほど実感はありません。昨年より若干(10%位)良い程度です。インターネット全盛といえどもFace to Faceの商売にポイントをおいています。
(貸おしぼり)
消費税をアップする話が出ているが、これを許してはならない。
(工業用プラント施工)
人件費率の高い我が社では賃金体系の変更が当面の課題です。定期昇給という考え方を外していく方向で新しい賃金体系づくりに入りました。