【売上高】【経常利益】 売上高、前年同月比で1年ぶりの「増加」超過。 経常利益、前年同月比で改善傾向続く
【設備過不足】【施設稼働率】 施設過不足、製造業で半年ぶりの「過剰」超過。施設稼働率、両業種で「上昇」見通し超過
【価格変動】 仕入価格変動、わずかながら上昇傾向続く。 販売価格変動、サービス業のみ「低下」超過幅拡大
【借入金利】 短期金利、「低下」回答企業の割合若干の増加。長期金利、全業種で「低下」超過に
【経営上の力点など】 経営上の問題点、力点の順位前回と変わらず
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景況調査報告(2013年8月)第79号(PDF:1.38MB)
【概況】
業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回の15から16へとわずかな動きにとどまりました。これで3期連続の改善ですが、その足取りは鈍くなりつつあります。前年同月比DIも5となり、前回調査から3ポイントの改善にとどまりました。前回は前々回に比して8ポイントの改善が見られましたから、前年同期比DIでみても回復の足取りが鈍化してきていることが指摘できます。他方、3ヶ月後の次期見通しは22から27と5ポイント改善し、先行きへの期待が依然として強いことが示されました。
今月の状況は横ばいでの推移となりましたが、業種別で見るとそれぞれの状況は大きく異なっており、ヒアリング調査はこのことを裏付ける結果となりました。今回も数値が大幅に改善した建設業からは、好調が維持されている要因として、公共事業の増加に加えて、福祉施設や賃貸マンション、商業店舗の建設といった民需の活発な動きが挙げられました。先行きについては、名古屋駅前の再開発事業などにより繁忙期は続くと予想されています。しかし、前回も指摘されたように職人不足による労務費の上昇や資材価格の上昇などコスト高によって利益が圧迫されており、手放しで喜べないのが実情のようです。さらに、深刻化する職人不足や資材不足のため、仕事があっても受注できない事態に陥っているとの声もありました。
他方、消費に関わる業界からは、個人消費の回復は見られず、円安によるコスト増を価格転嫁できない状況が続いているという声が聞かれました。今回の調査でも、流通業の経常利益DIが前回調査の3からマイナス1へ4ポイント減少し、サービス業でも23から14へと9ポイントも大幅に減少しています。
景気の先行きについては、消費増税前の駆け込み需要や増税後の反動減をどう読むかで、予想が大きく変わってしまう局面にあります。好調な建設業界でも、10月から消費増税の影響が現れるため、住宅関係ではすでに受注がピークアウトしつつあるという声が聞かれました。また、製造業からは設備投資関連の需要が増えてきたという指摘もありましたが、これも消費増税前の駆け込み需要の可能性が否定できません。自動車関連では、来年1~3月期の増産と4月以降の大幅減産計画がすでに発表されており、下請け企業にとってはブレの大きさにどう対応するかが課題になっています。
消費増税は円安によるコスト増で利益が圧迫されている中小企業を直撃します。増税は「積極的かつきめ細かい中小企業支援策とセットで」実施されるべきです。中小企業団体はこのことを政府に強く要望すべきでしょう。また、中小企業経営者は、消費増税の影響による業況のブレに細心の注意を払いつつ、しっかりとした経営計画や企業戦略をあらためて作成すべきでしょう。
[調査要項]
1.調査日 2013年8月19日~8月30日
2.対象企業 愛知中小企業家同友会会員企業
3.調査方法 会員専用サイト「あいどる」(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
4.回答企業 3,311社より、873社の回答を得た(回収率26.3%)
(建設業157社、製造業239社、流通業262社、サービス業215社)
5.平均従業員 34.1名(中央値 10.0名)
なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものである。
【業況判断】
今月の状況、業種間で異なる動き
今月の状況DIは前回の15から16と横ばいでの推移となった。全体では横ばいであるが、業種別でみると、建設業が30から43と13ポイント、製造業が8から13と5ポイント改善したのに対して、サービス業は24から16と8ポイント悪化した。流通業が前回の3から変化なく業種間で異なる動きとなっている。前年同月比は前回の2から5と3ポイント改善した。これで3期連続の改善である。業種別でみると、建設業が22から31と9ポイント、製造業が△13から△10と3ポイント改善した。流通業は△4から△3、サービス業は11から12と横ばいで推移した。3ヶ月先の次期見通しも前回の22から27と5ポイント改善した。業種別では、建設業が34から46と12ポイント、製造業が22から26と4ポイント、流通業が13から19と6ポイント見通しを改善させた。サービス業は25から24と横ばいで推移した。今月の状況、前年同月比、次期見通しともに建設業の改善が顕著なものとなっている。
【売上高】【経常利益】
売上高、前年同月比で1年ぶりの「増加」超過
経常利益、前年同月比で改善傾向続く
売上高DI(前年同月比)は前回の△1から4ポイント改善して3となり、2012年8月調査以来、1年ぶりの「増加」超過に転じた。業種別でみると、建設業が15から21と6ポイント、流通業が△6から△3と3ポイント、サービス業が7から17と10ポイントの改善となったが、製造業だけは△15から△14と横ばいでの推移となっている。次期見通しも前回調査の9から17と8ポイントの改善となった。業種別では、建設業が18から29と11ポイント、製造業が8から14と6ポイント、流通業が0から20と20ポイント見通しが改善したのに対し、サービス業だけは14から8と6ポイントの見通し悪化となった。
経常利益DI(今月の状況)は前回調査の10から変化がなかった。業種別でみると、建設業が14から23と9ポイント、製造業が4から10と6ポイント改善した一方で、流通業が3から△1と4ポイント、サービス業が23から14とポイントの悪化となった。流通業で赤字超過となったのは2011年8月調査以来、2年ぶりのことである。前年同月比も前回の△4から0と4ポイント改善した。業種別で見ても、建設業が6から15と9ポイント、製造業が△15から△12と3ポイント、流通業が△8から△5と3ポイント、サービス業が4から8と4ポイントと全業種で改善が見られた。この1年ほど全業種で改善傾向が続いている。次期見通しも前回の12から9ポイント改善して21となった。業種別では、建設業が16から26と10ポイント、製造業が10から22と12ポイント、流通業が5から21と16ポイント見通しが改善したが、サービス業だけは21から6ポイント見通しを悪化させて15となった。
【在庫】
「増加」超過幅拡大
今月の状況DIは、前回の11から6ポイント「過剰」超過幅が拡大して17となった。業種別で見ると、製造業は13から15と横ばいで推移したが、流通業は8から18と10ポイント「過剰」超過幅が拡大した。前年同月比も前回の6から3ポイント「増加」超過幅が拡大して9となった。業種別でも、製造業は5から8、流通業は8から10と両業種で「増加」超過幅が拡大した。次期見通しも前回の7から4ポイント「過剰」見通しの超過幅が拡大して11となった。業種別では、製造業(11)は前回調査から変化がなかったが、流通業(2→10)は8ポイントもの「過剰」見通しの超過幅拡大となった。
【取引条件】
2期連続の横ばい
前年同月比DIは前回調査の△6から△8と横ばいでの推移となった。2期連続の横ばいである。業種別でみると、建設業(0→△4)・流通業(△7→△11)ではともに4ポイント「悪化」超過幅が拡大した。製造業(△9→△10)・サービス業(△5→△6)は横ばいで推移した。次期見通しは前回の△5から変化がなかった。業種別でみると、建設業(△2→3)で「好転」見通しが超過となったが、流通業(△6→△9)で「悪化」見通しの超過幅が拡大した。製造業(△7→△6)・サービス業(△5→△6)では大きな変化はなかった。
【資金繰り】
サービス業のみ「窮屈」超過幅拡大
今月の状況DIは前回の△26から△27とわずかな変化で推移した。業種別では、建設業(△37→△31)で「窮屈」超過幅が縮小したが、サービス業(△18→△23)では拡大した。製造業(△27→△27)・流通業(△27→△26)は横ばいでの推移となった。次期見通しは前回の△27から△25と横ばいで変化した。業種別では、建設業(△32→△25)・製造業(△28→△24)で「窮屈」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業(△22→△27)は拡大した。流通業(△28→△26)は横ばいで推移した。
【設備過不足】【施設稼働率】
施設過不足、製造業で半年ぶりの「過剰」超過
施設稼働率、両業種で「上昇」見通し超過
設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△13から3ポイントの「不足」超過幅が縮小して△10となった。業種別で見ると、製造業(△2→2)では約4分の1の企業が「過剰」と回答しており、半年ぶりの「過剰」超過となった。サービス業(△20→△12)では「不足」超過幅が縮小し、建設業(△23→△24)・流通業(△11→△10)は横ばいで推移した。次期見通しも、前回の△13から4ポイント「不足」見通しの超過幅が縮小して△9となった。業種別では、製造業(△7→3)で「過剰」見通しの超過に転じ、サービス業(△17→△13)では「不足」見通しの超過幅が縮小した。建設業(△21→△22)・流通業(△11→△9)は横ばいで推移した。
施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の△12から△6と6ポイントの「低下」超過幅縮小となった。業種別でみると、製造業(△15→△6)で「低下」超過幅が縮小したが、流通業(△6)は前回調査から変化がなかった。次期見通しは、前回の△4から2と2011年8月調査以来2年ぶりの「上昇」見通し超過となった。業種別で見ても、製造業(△1→3)・流通業(△7→1)と両業種で「上昇」見通しの超過となっている。
【雇用動向】
建設業で不足感がさらに高まる
今月の状況DIは前回調査の△22から△29と7ポイントの「不足」超過幅拡大となった。業種別では、サービス業(△30→△27)を除き、建設業(△45→△57)・製造業(△3→△16)・流通業(△19→△25)では「不足」超過幅が拡大した。次期見通しも、前回の△23から△28と5ポイント「不足」見通し超過幅が拡大した。業種別で見ると、サービス業(△29→△27)は横ばいで推移したが、建設業(△48→△55)・製造業(△7→△13)・流通業(△18→△26)は「不足」見通しの超過幅が拡大した。今月の状況・次期見通しともに建設業の「不足」感は著しく、ともに約6割の企業が「不足」を選択している。
【価格変動】
仕入価格変動、わずかながら上昇傾向続く
販売価格変動、サービス業のみ「低下」超過幅拡大
仕入価格変動DI(今月の状況)は前回調査の38から40と横ばいでの推移となっている。仕入価格は横ばいをはさみながらも1年以上「上昇」超過幅が拡大している。業種別では、建設業(45→53)・製造業(41→44)・サービス業(23→27)で「上昇」超過幅が拡大したが、流通業(42→38)は縮小した。前年同月比は前回の37から4ポイント「上昇」超過幅が拡大して41となった。これで3期連続の「上昇」超過幅の拡大である。業種別では建設業(44→57)・製造業(42→48)・サービス業(20→23)で「上昇」超過幅が拡大したが、流通業(40→38)は横ばいでの推移となった。次期見通しは前回の38から37と横ばいで推移した。業種別で見ると、建設業(44→46)・製造業(44→43)・流通業(39→38)は横ばいで推移し、サービス業(23→19)は4ポイントの「上昇」見通し超過幅の縮小となった。
販売価格変動DI(今月の状況)は前回の△2から△3と横ばいで推移した。業種別では、建設業(3→7)で「上昇」超過幅が拡大したが、サービス業(0→△8)では「低下」超過幅が拡大した。製造業(△15→△14)・流通業(6→6)は横ばいでの推移となった。前年同月比は前回の△2から変化がなかった。業種別では、建設業(11→8)が「上昇」超過幅縮小、流通業(7→8)が横ばいでの推移となった。製造業(△20→△17)は「低下」超過幅が縮小したが、反対にサービス業(0→△5)は拡大した。次期見通しは前回の3から4と横ばいで推移した。業種別でも、建設業(11→13)・製造業(△8→△7)・流通業(13→14)は横ばいで推移したが、サービス業(1→△3)は「低下」見通し超過に転じた。
【借入金利】
短期金利、「低下」回答企業の割合若干の増加
長期金利、全業種で「低下」超過に
短期借入金利DIは前回調査の0から△2と横ばいでの推移となった。この1年ほど「低下」回答企業の割合は減少傾向にあったが、今回は1年ぶりにその割合が増加している。業種別で見ると、建設業(1→△1)・製造業(△2→△2)では横ばいでの変化となったが、流通業(0→△6)では「低下」超過幅が拡大した。サービス業(4→1)で「上昇」超過幅が縮小した。
長期借入金利DIも前回の△1から△2と小幅な動きとなった。業種別では、建設業(3→△2)・流通業(3→△2)・サービス業(3→△1)が前回調査から一転、「低下」超過に転じた。製造業(△8→△5)は「低下」超過幅縮小となった。
【経営上の力点など】
経営上の問題点、力点の順位前回と変わらず
全業種で見た経営上の問題点は、前回調査と変わらず、第1位が「民間需要の停滞」(31%)、第2位が「従業員の不足」(29%)、第3位が「仕入単価の上昇」(23%)であった。業種別で特徴的であったのは、建設業で第2位に「下請業者の確保難」(44%)、サービス業で第2位に「取引先の減少」(30%)があったことである。文書回答では「電気代の上昇」や「円安による仕入れ価格の上昇」などが多く見られた。
全業種における経営上の力点も、前回調査と同様「新規受注(顧客)の確保」(58%)、「付加価値の増大」(56%)、「社員教育」(32%)が上位を占めている。業種別で特徴的であったのは、建設業で第2位に「人材確保」(46%)があったことである。
<会員の声(業種別)>
(1)建設業
●業況判断DIの「今月の状況」は30→43、「次期見通し」34→46、「前年同月比」22→31ととても好調の数値を示しています。経常利益DIでも「今月の状況」14→23、「次期見通し」16→26、「前年同月比」6→15と、こちらも良い数値が目白押しです。しかし仕入価格DI「今月の状況」は45→53と過半数の企業の原材料が値上がりし、対する販売価格DI「今月の状況」は3→7となっており、内訳は8割以上の企業は販売価格をあげられない状況が示されています。加えて雇用動向DI「今月の状況」は、△45→△57と激しい人手不足の傾向が続き、6割の会社で大きな経営課題となっています。
官需・民需とも仕事の引き合いは強いものがありますが、労務費の20~30%の上昇や、円安による強烈な建築資材の高騰は、販売価格に転嫁できていません。活況を呈す建築市場ですが、今後の先行きは不透明といえます。消費税導入後の市場の冷え込みや、TPPであらゆる参入障壁が取り除かれることを視野に入れた戦略を練ることが求められます。 (事務局 八田)
1.総合建築
- 消費増税だけでなく建築関連法規の改正も迫っているので、会社存亡リスクを回避するためには中長期的なビジョンとアジェンダとロードマップに基づく事業計画が不可欠である。また、古くからの協力業者が社業を閉めるなど専門業者の数が減っている。 仕事があっても、それを施工する人がいない。 インターネットの普及と共に、材料の値崩れが起こり、資材等分離発注という責任の取れない仕事を押し付けてくる。
2.土木・鉄筋
- 国民健康保険から社会健康保険、国民年金から厚生年金への移行が4年後を目標に進められています。5年前のリーマンショック以降、受注単価の下がった状態でこれ以上の会社の負担増は死活問題である。建設労働者への説明が十分にされないと、いわゆる潜り業者の温床に繋がる。アベノミクスの高揚感の裏側では、切り捨てられる厳しい現実に直面されている方が多いと思う。
3.リフォーム・改築
- 建築業界の業界ルール(暗黙ルール)にとらわれない新規参入者が増えてきた。中間を間引く事により仕入れ価格の値下げに成功しているので、自社のみの企業努力では太刀打ちできない。グループを作るなり、自社も独自路線に向かうなりしていかないと、今後利益を出すのが困難になる。
4.設計・施工管理
- 一部の資本力のある大企業が、地域の中小企業のわずかな経済領域まで進出してこようとしている。よほど大企業にも負けない商品・技術を開発するか優秀な技術者・職方等の人材の確保などで差別化ができなければ、力のある一部の大企業に取り込まれる。市場は活性化しているが、地方および実態経済の回復までは程遠く、色々な意味で格差が広がっていく。
5.舗装工事
- 円安の影響をダブルで受けている。あるガス会社が、天然ガスの輸入代金の高騰で、リストラをしていて工事量が減少している。自社も燃料費高騰で利益が出ない状態なのに、受注価格を下げないと仕事が取れそうもない。
6.給排水設備
- 消費税増の駆け込み需要で仕事は大忙しだが、思うように利益は上がらず、人手不足で困る。来年を考えると不安が残り、仕事は来年の3月まではありそうだが、その先はどうなるかわからない。おそらく大きな谷間が来ると思う。
7.電気設備
- アベノミクスの恩恵は一部の大企業だけで、我々零細企業は何も変わらない。価格競争が激しいだけである。顧客の設備投資控えのため仕事量の減少に不安があり、見積もりの先送りが気になる。大企業や国外と比べて、中小零細の税制優遇や設備投資や研究開発費の補助がなさ過ぎる。行政のバックアップが必要だと感じる。
8.建築設計
- インフレを期待して、販売数を絞っているため、分譲マンションの成約率は高い。工場の耐震工事は多く聞かれるが鉄骨などの材料が間にあわない状態である。労務費が20~30%高騰しているため、事業計画の修正を余儀なくされている。仕事の引き合いは多い。しかし、採算ベースが決まっているので、受け負け覚悟の中小企業が目立つ。2020のオリンピック東京開催が決まったが、東京に「人・物・金」が集中し、日本中が深刻な人手不足に晒される恐れがある。
(2)製造業
●中小製造業のDI値は全般的に改善傾向を示しましたが、前年同月比では業況判断、経常利益、売上高いずれの指標もいまだ水面下にとどまっています。
しかし会員の声からは中小企業の厳しい実情が多く聞かれました。同じ業界でも、客先や取扱分野および機種や個別企業の状況により大きく隔たり二極化がさらに拡大。円安下でも海外現地調達化の流れは着々と進行し、そのためのバックアップ的需要も一部プラス要因に傾いているようです。本格的な海外稼働が見込まれる2017年以降への懸念も表明され、設備や人材などの投資決断は重く経営戦略や情報収集力の内容が問われます。需要変動もコストアップ要因でしかなく、一方で販売価格は依然厳しい中で消費税対応や内示割れなどのマイナス要因も多々出てきており正念場にあるといえます。
短期ではなく長期的視野で中小企業の発展を安定的に支援する政策を求める声があがっています。 (事務局 加藤)
1.金属加工・樹脂加工、樹脂製品
- 自動車関連2次以下では数量が増えておらず苦しい状況が続く。過剰品質要求のコスト負担も厳しい。
- 2016年までは需要予測ができているが内示割れが懸念。海外が本格稼働する2017年以降が問題。
- アベノミクス効果の実感はなく、消費税が増税された来春以降の景気が心配。
- 自動車6割、インフラ設備2割、その他2割で消費税増税までは受注が増える傾向を予測。中国との関係悪化や政府の経済政策による影響、短期的には現場スタッフの確保困難などがある。いずれも政策に大きな影響を受ける。日本経済の安定的でなだらかな成長戦略を強く望む。
2.鋳造、鍍金
- 海外現調化の流れは変わらない。但し、今は現調化前のバックアップ生産が増えている状況。コスト削減要請の厳しさは変わりなし。
- ここ数カ月、受注が急増。変動が大き過ぎ、設備や人員が追従できず効率悪化で問題も多発。各国の動向や政策による変動が大きく、事業計画が非常に立てにくく困っている。
- 大企業は利益が出て給料アップを行っているが、中小企業に対しては値下げ要請をしてくる。
- 自動車関連は中京圏はずしが確定しているようで、新規開拓をしていかないと仕事は徐々に減っている。
3.金型、治工具、設備部品関連
- 自動車部品メーカーの倒産が相次ぎ多くの部品がばらまかれ忙しくさせてもらっているが、廃業、倒産が後を絶たない。現地生産といっていたが金型技術は海外ではまだ遅れを取っており、日本で金型製作し海外に送るといった流れが加速しているように思う。安く作れる国で作るという流れは変わらない。
- 国の経済ビジョンはお金が絡む政策優先が主になっているが、我々が望むことはお金優先でなく、いかに仕事をつくる経済システムを構築するかに力点を置いていただくことだ。
- あらゆる業界で集約化が進み、隣の異業種による参入や競合化が加速している。
4.専用機械、装置
- 建設業界は消費税増税前と東北復興需要により今年度限定で良い様子。来年度は国内需要現象で新興国の需要頼みの感である。
- アベノミクスによるインフレの進行は目に余る。社員の給料を上げたいと真剣に考えるが、先行きが非常に不安。売値ダウン要請が頻繁に来る中で、仕入は上がる一方。インフレによる経済上昇に夢を託す政策では到底将来が見えない。円安で、自動車関連製造が日本に戻る期待もあったが、逆に世界で競争を促しダンピングが始まっている。そろそろ車から離れる時期かもしれない。
- リーマンショック以降、円高を理由に値下げ要求してきた企業が、円安で決算が良くなったにもかかわらず値下げさせたままの状態はいかがなものか。公正取引ではないのではないか。
5.印刷、建材・家具
- 印刷機の更新時期だが、中古機か新型機か、受注見通しの関係で決断が非常に難しい。
- ジンワリ静かに確実に状況は悪化。業界はたいへん厳しく、隣接業態への進出は一斉に動き出し混乱が生じている。国内消費型中小企業は新規事業への進出がより厳しくなっている。
- リーマンショック以前から低迷が続くが、紙の卸売業者によると全国的販売量は減っていないとのこと。一部の印刷業者に仕事が集中しているようだ。秋頃から紙の価格が上がる模様。
- 消費税アップ前の駆け込み需要が確実に起きている。反動を考えると設備投資や採用ができない。
- やや明るい兆しはあるように思うが、受注にどれだけ結びつくかはこれから。値上げの話もチラホラ出てきたが、コストプッシュ型のインフレであり、需要は相変わらずデフレ心理で価格転嫁はままならず体力消耗を招くだけの結果になりそうだ。
(3)流通業
●今月の業況判断DIは3→3、経常利益DIは3→△1と2年ぶりのマイナス転化、売上高DIは前年同月比で△6→△3、経常利益は△8→△5へと回復基調で推移し、収益につながっていない状況が見てとれます。次期見通しは、売上高DIが0→20、経常利益DIが5→21、業況判断DIが13→19と、主要景況指標において改善傾向にありますが、一部海外での好況感を除けば、「物価上昇で商品の動きは良いように思えるが、「給料は上がらず消費につながらない」「売上は増加しても燃料高騰など諸経費が上がり、収益は減少する」「秋からの好況感はあるが、一次的な収益の見込み」など本格的回復にはつながっていません。
さらに、消費税の増税に対し「収益の減少、賃金や仕入価格の上昇、価格転嫁は困難」など経営への圧迫感を募らせています。今月の仕入価格DIは42→38、販売価格DIは6→6と仕入価格は若干低下しましたが、次期見通しは、仕入価格DIは39→38、販売価格DIは13→14と仕入と販売のDI差に改善は見られず、価格転嫁は今後の重要課題の一つと言えます。 (事務局 岩附)
1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
- 全量買い取り制度による太陽光発電設備販売増やLED等の付加価値商品の販売増がプラスアルファとなっている。しかし、太陽光発電設備は来年以降、買い取り価格の低下により、今期までの一時的な利益になりそうだ。抜本的に新規事業・顧客獲得を図らねばならない。
- 自動車関係は国内だけを見ると、低いところで安定している感じ。今までの流れの商品はそれなりに動いているが、損益分岐程度の売上程度。海外案件がなければ、昨年並みの売り上げ確保もできない。一方、タイ、インドネシアは2016年に向けて増産を控え、設備投資も活発。
- 関西方面から当地区に営業攻勢をかけてくる同業者が目立つ。 デリバリーなどを無視した、激安の数字だけをばらまいていくので、価格下落の一因になっている。
2.建築資材、家具、什器
- 公共工事の発注が遅く、入札があっても安値で落札しているため、我々下請け業者は採算割れ寸前になっている。適正価格と安値とを勘違いしているのではと思う。
- 急激な円高の際には国指導の借入プランがいろいろあったように思うが、逆の場合には一切無い。政治主導で円安になっているのだからそれに対する救済プランを行ってほしい。
- 最近、異業種の参入が増えてきている。また、店頭販売においても異業種が出店をしたり、大型スーパーが参入し「まとめ買い、ついで買い」で、専門店の当社は苦境にあえいでいる。
3.飲食料品
- 大手量販店から消費税8%を見込んだ価格の見積もり要請が来ている。販売価格は改定されるにしても、実質の減量を強いられ、包材・製造コストは変わらないので、収益の減少が懸念される。
- 青果卸売の為、各産地での野菜の高温障害、病気、重油(燃料)の高騰などで、かなりの影響が出はじめている。秋~冬の仕入れ値の増加、車両経費が上がる予想。
- 仕入業者より、9月より輸入商品(ワインなど)の値上げの連絡がきている。販売価格にうまく転嫁できるかが問題。
- 賃金上昇・円安で仕入れ上昇などがあり、消費税アップが決定すれば、経営的にダメージが大きい。業界全体がほとんど内税方式となっているので、なかなか消費税分を価格に転換しにくい。
4.運輸、情報通信
- 3年程前から物流業界の繁忙期は車両不足が問題視されてきたが、今年のお盆休み前には過去に例がないほどの車両が不足、直ユーザーの受注すら断らなければならないケースが全国的に見受けられた。この要因は、燃料高騰、運賃が上がらない、中型免許問題を背景にした労働力不足にある。このままでは、5年以内に30歳未満の運転手は不足し国内は大混乱に陥る。
- 円安による仕入れ価格の上昇により、販売価格が上がってしまい、お客様より値下げ要請に応えられない状況。
5.不動産、保険
- 消費税増税を前にした駆け込み需要がおこると言われていたが、結果はさんざんな状況。
- TPP問題で今後、保険・金融関係の状況が激変する可能性が高く、それに対応できるよう今から手を打たなければ廃業は免れない。また需要の低下、業務の負担増、メーカーからのコストダウンがどんどん加速している。
(4)サービス業
●「今月の状況」は、業況判断DIは24→16と5期ぶり、経常利益DIは23→14と4期ぶりに悪化しました。仕入価格DIは23→27と4期連続で「上昇」し、販売価格DIは0→△8と低下、資金繰りDIは△18→△23と「窮屈」超過幅が拡大しました。「次期見通し」も売上高DIが14→8、経常利益DIが21→15とそれぞれ6ポイント悪化、資金繰りDIは△22→△27と5ポイントの悪化を予想しています。
対個人向け・対法人向け・専門サービスと、様々な業種で多岐にわたるサービス業では、詳細に分けていくと数社の回答数となるので動向は掴みにくく、今回の悪化要因として決定的な回答は見られませんでした。しかし「経営が行き詰っている会社が増えたと思う。未収金の増加が問題」「エンドユーザーを対象とした仕事の価格競争が激しい」との声が寄せられると共に、殆どの文章回答で消費税増税による景況悪化の懸念が示されています。
経営の問題点は、(1)従業員の不足34%、(2)取引先の減少30%、(3)新規参入者の増加28%で、経営上の力点は先回に引き続き、(1)新規受注の確保58%、(2)付加価値の増大56%、(3)社員教育32%でした。 (事務局 浅井)
1.飲食関連
- 和牛の頭数が減っており牛肉価格は高止まりとなっている。12月は年末需要での品薄により、さらに値上がるのではと懸念している。
- あらゆる原材料・食材の値上がりに対して、現状では価格転嫁できないので青息吐息の状況。今後の消費税増税で「値上げ」対応ができるのかどうか、非常に厳しい選択に迫られている。
2.生活・健康・美容関連
- 顧客の大半を占める中流以下の消費者の景況感は、報道されている程にはアベノミクス効果は強いものではないと感じている。消費税増税が決定する頃の景況感の悪化を懸念している。
- 大手では販売価格の下落が続いている感が否めない。自社としては価格競争に巻き込まれない為にも、独自のサービスや商品アイテムを構築していく。
3.印刷・広告関連
- 前年に比べ大幅に業績を伸ばした企業はいずれもインターネット広告を主とする企業だった。われわれ中小企業が生き延びていくには、多様化する消費者の嗜好をとらえたマーケティングや店頭の活性化を図るPOP、キャンペーン、ブランド構築など特化した商品・サービスを持つことで、経営の力点としては質を上げて差別化するのみである。
- 出版印刷業界では市場が縮小しており、東京の業者が仕事を求めて名古屋にも営業に来ているが、見積もりを取ると名古屋の業者では太刀打ちできない低価格で、東京の業者の方が圧倒的に安く、結果として名古屋の業者から出版印刷の仕事が消えてしまう。
4.自動車関連サービス
- 消費税増税、アベノミクスの停滞に関してのマスコミ主導の情報により、お金を使う側が迷っている感があり、サービス業にとってはマイナスだと思われる。
- 中古車市場は、価格の下落と海外への自動車の流出、大手の経営体質の変化により圧迫感がある。新車販売はカーディーラーの独り舞台で、車検整備もカーディーラーによる「整備料3年間無料」などの顧客抱え込み戦略が出され、民間車検数が減っている。カー用品などの分野は、量販店(オートバックスなど)が専門分野の部品を販売し始め、専門店へは時間がかかってお金にならない仕事が回ってくる。月末の資金繰り(時間がかかる仕事で集金が月内にできない)対策が急務となる。人財も、ゆとり教育ベースの若い社員には厳しい指導もできず、採用・教育は難しいが何とかしたい。
5.産廃・環境関連
- 仕事量はそこそこ出ているが相変わらずの受注競争で利益を確保するのが大変で、人件費などの上昇は期待できない。今でも消費税込みでの発注業者は後を絶たず、来年4月からの消費税引き上げに際して今から発注ルールとして外税発注を明確にして欲しい。
- 下水処理場の資源に対する発電や堆肥化というリサイクルへの技術開発研究が始まり、自社の若手も興味を持って取り組んでいる。当社も含め「3K」といわれる仕事の現場では、技術力のある人材・有資格者に希少価値が出てきて、自社で人育てをしてきてよかったと思っているが、絶対数は少なく人手不足は解消されない。