景況調査

第88号-2015年11月
3期ぶりの業況改善も広がる先行き警戒感
~海外景気の悪化による景気下振れリスク増大~

【概況】
【業況判断】 今月の状況は3期ぶりの改善も、次期見通しは1年ぶりの悪化
【売上高】・【経常利益】 売上高、全業種で見通し悪化。経常利益、今月の状況1年ぶりの改善
【在庫感】 製造業で大幅に「過剰」超過幅縮小
【取引条件】 前年同月比、調査開始以来の「好転」超過
【資金繰り】 今月の状況、「窮屈」超過幅縮小
【設備過不足】・【施設稼働率】 設備過不足、全体では横ばいで推移。施設稼働率、今月の状況は「上昇」超過になるも、次期見通しは「低下」超過に
【雇用】 今月の状況、2期連続の「不足」超過幅拡大
【価格変動】 仕入価格、全業種で「上昇」超過幅の縮小続く。販売価格、「上昇」超過幅の縮小傾向続く
【借入金利】 短期・長期ともに横ばいで推移
【経営上の力点など】 経営上の問題点、今回も第1位は断トツで「従業員の不足」

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:532KB)

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景況調査報告(2015年11月)第88号(PDF:1.31MB)


【概況】

業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回調査の20から29と9ポイントの改善となりました。これは「良い」と回答した企業が5%増加したことに加えて「悪い」と回答した企業が4%減少したためで、改善は3期ぶりです。前年同月比も前回の7から10と3ポイント改善しましたが、3ヶ月後の次期見通しは30から25と1年ぶりの悪化となりました。

今回の改善に大きく貢献したのは、サービス業での改善(19→35)です。今回調査でサービス業の業況が大幅に改善したのには、マイナンバー制度の施行に伴って関連業界に一種の「特需」が発生したことが背景にあると推察されます。そうだとすれば、今回の改善は景気の「トレンド」を示すものとはいえません。この点に留意しておく必要があります。

ヒアリング調査では、むしろ景気の先行きに懸念を示す声が多く聞かれました。建設業からは現状は繁忙であるものの、マンション販売などに陰りが出はじめているなど先行きを心配する声が聞かれました。

製造業では中国向け輸出の落ち込みの影響が出ているとする指摘があった一方、自動車関連企業から業界全体でみると生産台数に大きな落ち込みは出ていないとする声もありました。ただ、自動車関連下請け企業ではどの車種に関わっているかによって仕事量に大きな格差が生じており、業績が悪化している企業の中にはこれを機に廃業に踏み切る企業も出てきているようで、二極化が深刻化してきています。また仕事量が増加している企業でも人件費などの増加などで、「忙しいわりには利益が増えていない」とする声もあがってきました。

個人消費関連企業からは今回も状況が改善したという話は聞かれませんでした。

先行き警戒感の高まりの背後には、中国経済停滞の長期化やアメリカの金利引き上げによる海外景気の落ち込みによって、いずれは国内景気が下振れするのではないかという懸念があります。予断を許さない景気状況が年明け以降も続きます。

[調査要項]

調査日 2015年11月19日~11月29日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1411社の回答を得た。業種内訳は以下。
(建設業231社、製造業325社、流通業419社、サービス業436社)
平均従業員 24.5名(中央値8名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものです。

【業況判断】 今月の状況は3期ぶりの改善も、次期見通しは1年ぶりの悪化

「今月の状況」DIは前回の20から29と9ポイント改善した。これは3期ぶりの改善である。業種別で見ると、製造業は15から25と10ポイント、流通業が10から18と8ポイント、サービス業が19から35と16ポイント改善したが、建設業だけは46から44とわずかながら悪化した。前年同月比も前回の7から3ポイント改善して10となった。しかしこれはサービス業が13から23と10ポイントもの改善となったためで、それ以外の建設業では17から13と4ポイントの悪化、製造業では3から4で横ばい、流通業にいたっては0から△2と3期ぶりの「悪化」超過となっている。3ヶ月後の次期見通しは前回調査の30から25と5ポイント悪化した。見通しの悪化は2014年11月調査以来、1年ぶりのことである。業種別では29から31と横ばいで推移したサービス業を除いて、建設業では43から35と8ポイント、製造業では31から22と9ポイント、流通業では23から15と8ポイント見通しを悪化させた。

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】
売上高、全業種で見通し悪化
経常利益、今月の状況1年ぶりの改善

売上高DI(前年同月比)は前回の9から10と横ばいで推移した。業種別で見ると、建設業が16から13と3ポイント悪化したが、サービス業は17から23と6ポイント改善した。製造業は5から3、流通業は△1から0と横ばいでの推移となっている。次期見通しは17から9と8ポイント悪化した。業種別で見ても、建設業が23から18、製造業が12から4、流通業が15から2、サービス業が20から13と全業種で見通しが悪化した。

経常利益DI(今月の状況)は5割の企業が「黒字」と回答したことから、前回調査の18から30と12ポイントの改善となった。これは1年ぶりの改善である。業種別で見ても、建設業が32から41と9ポイント、製造業が15から29と14ポイント、流通業が8から20と12ポイント、サービス業が22から36と14ポイントと全業種で大幅な改善となっている。前年同月比も4から9と5ポイント改善した。業種別で見ても、建設業が8から13と5ポイント、製造業が△2から3と5ポイント、流通業が△1から2と3ポイント、サービス業が9から18と9ポイント改善している。製造業は5期ぶり、流通業は7期ぶりの「好転」超過となっている。次期見通しは前回調査の23から25と大きな変動はなかった。業種別で見ても、建設業が29から28、製造業が21から23、流通業が16から19、サービス業が28から30と大きな動きは見られなかった。

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 製造業で大幅に「過剰」超過幅縮小

今月の状況DIは、前回調査の12から5と3期ぶりの「過剰」超過幅縮小となった。業種別で見ると製造業(14→1)は大幅に「過剰」超過幅が縮小したが、流通業(10→9)は横ばいで推移した。前年同月比も前回の8から3と5ポイント「増加」超過幅が縮小した。業種別で見ると、ここでも製造業(11→0)は「増加」超過幅の縮小、流通業(5→6)は横ばいとなっている。次期見通しも前回の6から3ポイント「過剰」見通しの超過幅が縮小して3となった。業種別で見ると、製造業(8→2)は「過剰」見通しの超過幅が縮小したが、流通業(4)は前回から変化がなかった。

【取引条件】 前年同月比、調査開始以来の「好転」超過

前年同月比DIは前回の0から1とわずかな変化にとどまったが、調査開始以来、初めての「好転」超過となった。業種別で見ると、建設業(4→8)・サービス業(0→3)では「好転」超過幅が拡大したが、製造業(△1→△4)では「悪化」超過幅が拡大した。流通業(△1→0)は横ばいでの推移となった。次期見通しも前回の0から1と小幅な動きにとどまった。業種別で見ると、サービス業(0→3)で「好転」見通しの超過幅が拡大したが、建設業(4→3)・製造業(△2→△2)・流通業(△1→△1)では変化は見られなかった。

【資金繰り】 今月の状況、「窮屈」超過幅縮小

今月の状況DIは前回の△24から3ポイント「窮屈」超過幅が縮小して△21となった。業種別で見ると、製造業(△23→△18)・サービス業(△28→△20)では「窮屈」超過幅が縮小したが、建設業(△19→△23)では反対に拡大した。流通業(△23→△25)は横ばいでの推移となった。次期見通しは前回調査の△20から△21と大きな変動はなかった。しかし業種別で見ると、建設業(△14→△25)・流通業(△21→△25)で「窮屈」見通しの超過幅が拡大したが、製造業(△23→△20)・サービス業(△20→△17)では縮小と反対の動きを見せている。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、全体では横ばいで推移
施設稼働率、今月の状況は「上昇」超過になるも、次期見通しは「低下」超過に

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△15から△16と横ばいで推移した。業種別で見ると、建設業(△18→△22)・製造業(△10→△18)で「不足」超過幅が拡大した。反対に流通業(△14→△9)では「不足」超過幅が縮小し、サービス業(△18→△17)は大きな変化がなかった。次期見通しも前回の△16から△15と横ばいでの推移となった。業種別で見ると、建設業(△19→△22)では「不足」見通しの超過幅の拡大、流通業(△14→△11)では縮小となった。製造業(△16→△15)・サービス業(△16→△16)は横ばいで推移した。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の△7から1となった。2014年8月調査以来の「上昇」超過である。業種別で見ると、製造業(△6→5)は「上昇」超過に転じ、流通業(△8→△4)は「低下」超過幅が縮小した。次期見通しは前回の1から△1となった。業種別で見ると、製造業(2→0)はわずかながら「上昇」見通しの超過幅が縮小し、流通業(0→△3)は「低下」見通しの超過幅が拡大した。

【雇用】 今月の状況、2期連続の「不足」超過幅拡大

今月の状況DIは前回の△43から3ポイント「不足」超過幅が拡大して△46となった。これで2期連続の拡大である。業種別で見ると、建設業(△58→△62)・製造業(△32→△42)・サービス業(△44→△47)で「不足」超過幅が拡大し、「不足」と回答した企業が製造業・サービス業では5割、建設業では6割を超えた。流通業(△42→△39)だけは「不足」超過幅が縮小した。次期見通しは△40から△42とわずかに「不足」見通しの超過幅が拡大した。業種別で見ると、建設業(△54→△58)・サービス業(△38→△44)では「不足」見通しの超過幅が拡大したが、製造業(△34→△35)・流通業(△38→△36)は大きな変動がなかった。

【価格変動】
仕入価格、全業種で「上昇」超過幅の縮小続く
販売価格、「上昇」超過幅の縮小傾向続く

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の27から20と7ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。2014年5月調査をピークに横ばいをはさみながらも「上昇」超過幅の縮小傾向が続いている。業種別では、建設業(36→23)・製造業(27→18)・流通業(27→21)・サービス業(23→16)の全業種で「上昇」超過幅が縮小した。前年同月比も前回の31から8ポイント「上昇」超過幅が縮小して23となった。業種別で見ても、建設業(40→29)・製造業(33→20)・流通業(29→24)・サービス業(25→19)の全業種で「上昇」超過幅が縮小している。次期見通しも前回の23から15と8ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。業種別では、製造業(29→17)・製造業(18→12)・流通業(27→18)・サービス業(21→15)とここでも全業種で「上昇」見通しの超過幅が縮小している。

販売価格変動DI(今月の状況)は前回の8から3ポイント「上昇」超過幅が縮小して5となった。販売価格変動DIも「上昇」超過幅の縮小傾向が続いている。業種別で見ると、建設業(15→11)・流通業(11→4)は「上昇」超過幅が縮小したが、製造業(2→0)・サービス業(5→6)は横ばいで推移した。前年同月比も前回の10から6と4ポイント「上昇」超過幅が縮小した。業種別で見ても、建設業(16→11)・製造業(4→0)・流通業(13→5)で「上昇」超過幅が縮小した。サービス業だけは前回の7から変化がなかった。次期見通しも前回の8から3と5ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。業種別で見ると、建設業(11→3)・流通業(14→0)で「上昇」超過幅が縮小した。製造業(1→1)は変化がなく、サービス業(8→6)は横ばいで推移した。

【借入金利】 短期・長期ともに横ばいで推移

短期借入金利DIは前回調査の△5から△6と横ばいで推移した。業種別で見ても、建設業(△4→△6)・製造業(△6→△7)・流通業(△6→△5)・サービス業(△3→△4)の全業種で大きな変化は見られなかった。

長期借入金利DIも前回の△6から△7と横ばいでの推移となった。業種別で見ると、長期金利においても、建設業(△5→△6)・製造業(△7→△8)・流通業(△8→△8)・サービス業(△4→△6)の全業種が横ばいで推移した。

【経営上の力点など】 経営上の問題点、今回も第1位は断トツで「従業員の不足」

全業種で見た経営上の問題点は、第1位が45%で「従業員の不足」となっている。それに「民間需要の停滞」(24%)と「人件費の増加」(23%)が続いた。業種別で見て特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(52%)、製造業で「熟練技術者の確保難」(30%)、サービス業で「新規参入者の増加」(30%)がそれぞれ第2位になっていること、流通業で「取引先の減少」(25%)が第3位になっていることである。文書回答では「設備の老朽化」や「販売不振」などがあった。

全業種における経営上の力点は、前回と変わらず第1位が「付加価値の増大」(55%)、第2位が「新規受注(顧客)の確保」(54%)、第3位が「人材確保」(36%)であった。文書回答では「仕入れ品の在庫確保」などがあった。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●建設業のDI値は、水面上高位で推移していますが今回は若干減速へ振れました。格差を内包しつつ足元は忙しい状況が多く、雇用動向DIの不足感が消費増税直前期の過去最高数値に及んできています。一方で値下げや価格変動と人件費の板挟みに苦しむ声が多数ありました。また中堅企業からは「総じて後退局面入りした感」の声がいくつか上がっています。官公需の一段落感、中国系不動産投資市況の変化と在庫増、新規着工数減少などが指摘されました。職人など圧倒的な人材不足と請負業者不足が、景況局面の変化を吸収している感があり注意が必要です。また偽装問題もありましたが建設下請関係や価格圧力および技能工育成など将来に向けた構造的根本的な対策がのぞまれます。(事務局 加藤)

1.建築設計、不動産

  • 土地物件は出てきているが建物も含めて高値安定。もう少し値段が下がらないと流通できないだろう。設計依頼は多いが協力業者と自社の人材確保が難しくなってきている。3月頃まで続きそう。建設会社も3月末で一段落し次年度の仕事の受注に向けた営業活動が積極的になってきた。
  • これまでの受注で現在業務は忙しいが4月以降が不透明。実需ではなく開発投資案件が多く建設着工できればやるという話ばかりになっている。大手ディベロッパーが分譲から地元業者分野である戸建に移行参入する動き。介護老人保健施設の仕事がなくなりビジネスホテルの話がボンボン出ている。土地は都心部など一部の活況地域と良くないところが両極端。全体ではそんなに動いていない。
  • 不動産売買自体の鈍化、売上げアップがなかなか見込めない。

2.総合工事、一般建築

  • 先行き不透明感。新築物件も少なく計画自体が手探りな感じがあり確実なものがない。
  • 建築偽装問題で若干受注に影響が出ているもよう。信頼回復が望まれる。
  • 慢性的な人材不足、職人不足、下請け業者確保難が続いている。

3.土木、鉄筋・鉄骨

  • 土木業界は活況にあると感じるが下請け業者および人材確保が本当に厳しい。公共工事では見積もり段階で市場価格と合わず入札を差し控えるケースが多い。市や県は状況をしっかり把握して欲しい。
  • 維持補修工事の仕事がかなり出ており入札が不調になることが多く、やっと受注金額が上向き始めた。
  • 建設会社や一次下請けの受注量格差がかなり開いているためなのか、値下げ受注の情報が飛び交っている。依然として技能工不足の状態で対応可能なのか?労働保険や社会保険は一企業として当然の対応をしてきたが、加入義務のペナルティで2次3次の現実が見え工事現場がより厳しくなってきている。
  • 業界内では、受注の薄い一部業者が簡単に値下げする傾向にあるため、安値単価が一人歩きしていて破格の単価をつきつけられる場合がある。

4.電気・通信工事

  • 官公需は年度内はほぼ終了。経年劣化や耐震など修繕整備が必要な橋梁や建築物などかなり増えているが予算がついていない。大手は自家発電が主になり電力使用量が変化しなくなっている。電力小売り自由化の影響、省エネ化未着手分野が7割あり新ビジネスのチャンスも考えられる。
  • 駅前開発、伊勢志摩サミット開催インフラ整備、消費税増税、東京オリンピック、リニア開通と大型プロジェクトが相次ぐ。地元や中小企業にどれだけの利益となるかは過去の検証も必要。通信業界は通信料値下げなど骨肉の競争でますます厳しくなるだろう。
  • 人手不足が継続し工事遅れが出て工程管理に大きな手間がかかっている。忙しくなっても人工単価は上がってきていない。

5.屋根、塗装防水、給排水設備、サッシ建具

  • 請負単価はついにデフレ時代のローコスト住宅の請負単価を下回るビルダーがあらわれた。一方で人材の確保が難しく、値下げ圧力と人件費値上げ圧力の板挟み状態。いよいよ外国人労働者を採用するしか道はないのか。
  • 建設は好転しているように見えるが例年より早く繁忙期が訪れただけで12~2月は冷え込むだろう。
  • 仕入価格の改定が多く、現状単価に合わなくなっている。
  • もうどうしようもない。国のルールに潰される、ついて来れない業者は廃業しろといわんばかりだ。
  • 業界内の格差が広がっている。企業力ある売り先業者の値下げ要求、企業力ある仕入商品の値上げ告知が強くなっており収支のバランスが厳しい。

6.内装、リフォーム、エクステリア

  • 消費増税の影響がいまだ続いている。再来年10%になると益々景気が悪くなると予測されとんでもない。会社として無駄な消費はしないように節約していきたい。
  • 足もとは割と良いが人材不足によりこなせる量が変わらず売上に反映できない。
  • 消費税が上がるまでは良いが10%になってからが怖い。
(2)製造業

●「今月の状況」の全業種DI値が今年初めて上昇(20→29)し、製造業(15→25)はサービス業に次ぐ高い伸びを示しています。また、売上高DIが、製造業で5→3と下がっているにもかかわらず、経常利益DIが15→29と伸びを示しているのは、仕入価格が2014年5月の61をピークに27→18と低下傾向にあることが要因と考えられます。雇用動向DIも流通業を除く全業種で不足感(製造業では▲32→▲42)が高まっています。しかし、販売価格DIは、サービス業を除き、今月の状況・前年同月比・次期見通しの全てにおいて低下が予想されるなど、先行きは不透明です。(事務局 井上一)

1.金属加工・樹脂加工

  • 年末に向けて慌ただしく、社内的には好況感を感じているのだが、来年の受注等はまだない状態。
  • 中小企業の業績は、マスコミで報道されているほど良くないと感じる。勝ち組負け組がある訳でなく全体として悪いイメージ。他社が得意先や仕入先へ事実でない情報を言ったり薄利多売をしたりして弊社の営業活動に支障が出ているのもあり、業績が悪い企業が形振り構わず対応をしている感がある。
  • 鉄鉱石・石炭など鋼材価格の為替変動について、自動車業界や建設業界は国際価格で変動するが、我々の使用しているブリキについては、値動きがおかしい。業界には中小企業が多いため、鉄鋼大手の都合で価格談合をしているのではないか。

2.機械部品・機械製造

  • 自動車業界はまた値下げの動きが出ている。利益が上がっているのに、中小企業にはコストダウン要求をしてくる。「断ると数パーセントのコスト改善ができないような会社とは取引しない」というような横暴さが目立っているよう。国の政策として何か考えてほしい。
  • 自動車業界は、新車種による増産は有るものの全体的に伸びていない。消費税増税前の生産増に期待したいが反動が怖い。
  • 建設業界は、杭打ちデータ偽装の問題が徐々に影響し始め、停滞気味。姉歯事件の再来のように思われる。
  • 車・工作機械は、愛知のモノづくりを支えてきた産業ではあるが、価格破壊と計画のなさで工場がてんてこ舞い、その結果は利益率を下げる要因になってしまう。15年先を考えたとき、この産業から身を引くことも考えている。

3.電子部品

  • 9月頃より、顧客の生産調整(顧客を通じて輸出)で大幅に受注が落ち込んでいる。顧客からの強い値下げ要求がきている。中国を初めとした設備投資減速の影響が出ているものと思われる。

4.印刷・包装関連

  • 印刷業は、需用減少傾向が向こう5年間続き、淘汰の時期と予想する。市場の一般動向を見据えながらも、各社の身の丈に応じた、有利な戦いが可能な限定分野を発見して、その中での地位向上を図れなければ、生き残れたとしても傷だらけ。注力ドメインの限定と、同業者も含めたネットワークを実現させなければ、消耗戦の中、疲弊するだけ。
  • 材料費が上昇しているのに販売価格が上げられないので、売上げに対する利益率が悪くなっている。従業員が不足しているが、なかなか利益が上がらないので従業員を増やせない。
  • ネット通販が常識化、業者の存在意義が薄くなっている。
  • 受発注・見積もり・問い合わせなど、全般的に動きが悪いと感じます。月によって受注が集中したりして、売上げの増減が激しい。少しでも内製化するための設備も検討していますが、見込み客も含めて心配な部分もある。
  • 食品用パッケージの製造販売を事業としているが、包装資材だけでなく、中身や売り場、売場での販促方法などを含めた提案が必要と感じる。

5.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • パート社員が集まらないので、今まで無理に行ってきた単価の安い仕事をやめる会社が出てきている。
  • 輸入原料の高騰が落ち着かないでいる。原料を見直すか、値上げをするか悩みどころ。
  • 業界は名駅の開発で賑わっているが、特需のため図面が遅く、じれったい状況。数年後を考え今のうちに、設備投資し、機械化を促進しておきたい。
  • 三州陶器瓦業界は厳しい状態が続いています。ソーラーパネルの関係で本物の瓦が使われない、また、家一軒あたりの屋根面積が小さくなってきたことなど要因はある。
(3)流通業

●「今月の状況」は、業況判断DIが10→18、経常利益DIが8→20と大幅に上昇しました。価格関係の指標では、仕入価格変動DIが38→27→21、販売価格変動DIが13→11→4と、今回両方とも大きく下落しています。その他、資金繰りDIは△23→△25と小幅ながら厳しさを増し、雇用動向DIは△42→△39と少し改善しつつも深刻な人手不足が続いており、経営上の問題点として「従業員の不足」を挙げた回答者は4割にのぼりました。他の問題点としては「民間需要の停滞」を挙げた回答者が3割近くにのぼり、国内の実体経済はいまだ回復していないのが実情のようです。(事務局 政廣)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 新型プリウスの12月生産開始に伴う生産準備で部品メーカー各社は、不測の事態に備えて保全予算を増額しており、受注増加の恩恵を受けた。しかしながら2016年においては新規金型の大型案件が少なく中小金型メーカーの統廃合が進む可能性がある。
  • 売電単価値下がりにより、ソーラー発電の大型物件は激減している。来年の電力小売りの自由化など、電気関係は国の施策に需要が大きく変化するので対応に苦慮している。

2.建築資材

  • 国内景気の回復が待たれるところだが、そもそも、現在の財政赤字や国の借金を減らす計画を早々に練らないと将来の不安は払拭されない。これが国内景気の回復(この事由は主に内需であるが、、、)に至らない。国際情勢が不安定な中、外需に頼りづらい傾向と海外移転が進んでいる現状からは前述の根本要因を解消する計画を早々に期待したい。
  • 円安で仕入価格が上昇し業績を直撃している。価格転嫁ができず、チキンレースの様相となっている。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 今まで主力販売商品が、総合スーパー・通販・コンビニ等に流れて行き、基盤的な商品での売り上げ減になり、その分をいままで取り扱っていなかった商材へとシフトしてきたし、変えざるを得ない状況になってきている。
  • 天候の影響も大きいと考えられるが、業況はあまりにも悪い。消費者の購買意欲が感じられない。
  • 9月末から消費者の買い控え感が大幅に増加していると感じる。

4.飲食料品

  • ファンシー雑貨事業においては業界全体的に客単価のアップはあるものの、客数の減少が3年ほど続いている。ターゲットエイジの人口数が減少している事も一因ではあるが、ショップコンセプトの再構築も含めて取り組む必要があるように思う。
  • 食材販売事業においては、今年のコメ市場が値上がりであるものの、原価アップ分の値上げ要請は業界全体的に苦戦しているイメージがある。
  • 民間需要の停滞により商品の消費量が減少、仕入れ単価はかなり下がっているが受注数量が少ない。

5.運輸、情報通信

  • 燃料単価の下落により業界全体は大きな恩恵を受けている。ここにきて大手元売りの統合が紙面上に発表され、今後の燃料価格が適正に市場に回るかが不透明となる「可能性があり、懸念している。荷動きはゆるやかに回復しているように感じるが、業界全体の人手不足により仕事が回ってきているだけで、現状はさほど良くないと思われる。
  • ソフト開発業務においては、マイナンバー等の導入により、システム改修等の引き合い案件は多いが、具体的な受注売上に結びつくまでに結構時間が掛かり、資金的に逼迫感が出てきている。

6.保険、不動産

  • 来年春の改正保険業法でより一層の淘汰が進む中、相対的に小規模になってしまい仕入先メーカー(保険会社)取引条件は必ず悪化する。どう戦うのか、しっかり戦略・方針を建てなければならない。
  • 関東では、不動産は全般的にかなり値上がりしており、名古屋も駅裏はかなりの上昇率。収益物件なども、ブームの後押しもあり供給が足りない状況。仲介業としては、値上がりは歓迎だが、物件確保競争の熾烈化が予測されるので、それに対しての対策を講じていかなければならない。
(4)サービス業

●前回調査で悪化した主要指標が一転して上昇、今月の業況判断DIが19→35、経常利益DIが22→36、前年同月比売上高DIが17→23と全業種で一番の伸びとなりました。カテゴリー別では、今月の業況判断DIは、専門サービス業18→34、対個人サービス業11→32、対事業所サービス業25→33。今月の経常利益DIは、専門22→34、対個人12→33、対事業所31→41。前年同月比売上高DIは、専門16→24、対個人17→17、対事業所16→24となっています。規模別では、今月の業況判断DI・経常利益DIとも、従業員2~5人と21~50人で高い値を示しました。記述回答では、季節変動による需要増加はあるものの新規参入者の増加や価格競争激化等厳しく、特に人材確保は、今月の雇用動向DIが△47、次期見通しDIが△44と前回調査を下回り、サービス業全般で深刻さが増しています。主要指標の次期見通しは、売上高DIが20→13と減少、経常利益DIは28→30、業況判断DIは29→31と横ばいで推移しています。(事務局 岩附)

1.飲食業

  • 人が確保しにくくなっている。日本のライフスタイルが新しくなっているように感じ、急いで制度をリニューアルする必要がある。
  • 12月に、地元にまた多数の新規出店があるようで、お客の流出だけでなく、時給などの給与面でもかなり差を付けられ、さらに人材の確保が難しくなる状況になりそうだ。

2.クリーニング

  • 新規案件が多く、売上、利益ともに増加した。既存においても周年イベントにより好調だった。しかし、慢性的人材不足は続いており、求人に経費がかかるのが問題。2月の見通しは新規案件により増加だが、閑散期で赤字は確定的。

3.自動車整備

  • 自動運転技術の向上で事故が減少し、仕事の確保が困難となるため、新規事業への転換期だと考えている。

4.物品賃貸業

  • 年末にかけて最需要期に入るため景況感は良好。単価もしっかり上がる時期で、売上及び利益とも上昇見込みだが、大型展示会がなくなり四半期では昨年対比で不変。お客様の動向も、昨年に引き続き上昇傾向にある。来年は新規事業のキックオフとなるため、新たな売上軸の確立も楽しみだ。

5.ビルメンテナンス

  • 価格の競争で低料金案件が多く、発注側も金額しか考えず、品質・サービスなどを加味した金額とは考えてもらえない。断る案件が増えている。

6.産廃・環境

  • 取引先自体の仕事が減っているのと、昔と比べてロスが出ないような製作方法になっている。一番つらいのは、スクラップ価格が極端に下落し、物が集まっても以前のように適正な利益を確保できない。
    (金属リサイクル業)
  • 国内需要の低迷と原油安により、当社で作った樹脂原料の販売単価が4月以降に下がる見込みのため、新規販路拡大を進める。原料のプレミア度を確立する為に、カーボンフットプリント等を取り入れる事を思案中。新規事業に対し市況調査など従業員と協力し学びあう体制を確立しつつ有る。
    (ペットボトルリサイクル業)

7.ビジネス支援・専門サービス業

  • 先行き不安定、特に各地紛争の拡大傾向、大手企業の寡占化と中小企業の整理淘汰が進む中、それに対してどの様に対応するのかが問われる時代になってきたようだ。
  • 地震対策や消費税アップの前兆で住宅のリフォーム需要は増えているが、供給業者も増え競争が激化している。優良企業の設備投資が増えているように思う。
  • 新規参入者の増加による仕事量の減少、報酬等の低下等はあるものと考えられる。自社の強み等を生かし新規案件を受任する必要があると考えている。
  • 士業はもはや「中流」ではなく90%以上が「下層」ではないか。中流が没落すると国内消費が減り日本のGDPは伸びない。中流を復活したほうがGDPは伸びるし景気もよくなる。