景況調査

第95号-2017年8月
製造業の好調に牽引され、景気は緩やかに回復

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景況調査報告(2017年8月)第95号(PDF:1.42MB)


【概況】

「よい」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「今月の状況DI」は、前回の23から25へ小幅な改善となりました。昨年11月調査の32をピークにこのところDI値は低下傾向を示してきましたが、今回調査で再び緩やかながら回復に転じたことになります。昨年11月以来3回連続で6と「横ばい」状態にあった「前年同期比DI」も、今回は2ポイント上昇して8となりました。また、こうした足元の回復が「強気」の見通しを生んでいるようで、11月時点を予測する「次期見通しDI」は37と近年見られない高い数値となりました。

「今回の改善」や「強気の見通し」の要因としては、「製造業の好調」を挙げることができます。製造業の「今月の状況DI」は前回の15から25へ10ポイント、「次期見通しDI」も26から37へ11ポイントと大幅な改善となりました。

製造業の好調ぶりは経営者へのヒヤリングによっても確認できました。その背後には一つには自動車やスマホ向けの電子部品への高い需要、今一つは半導体製造装置を中心とした工作機械への高い需要があるようです。近年は自動車のエレクトロニクス化が急速に進行し、それが電子部品への高い需要を生み、下請け製造業の活況に繋がっているようです。また、そうした新しい機能を装備した自動車が新たに売り出されたことで買い替え需要が刺激され、自動車の国内販売も順調のようです。

また海外からの需要を中心に工作機械の受注も伸び続けており、とくに中国からの需要は前年比倍増に近い状況が続いています。現在は材料不足のために納品が大きく遅れているという業界関係者の声も聞かれました。こうした状況がやはり様々な関連分野の中小製造業に好調をもたらしているようです。

今回のDIの改善には建設業も寄与しています。建設業の「今月の状況DI」は、28から35へ7ポイントの改善となり、「次期見通しDI」も41と非常に高い数値となりました。ただし、すでに住宅の売れ行きが落ち始めているという不動産関係者の指摘もあり、来年には建設業界にも転機が訪れるのではないかとする予測も聞かれました。

流通業の「今月の状況DI」は前回の18から17へと1ポイントの悪化、サービス業も29から27へと2ポイントの悪化となり、これらの業種の景気は「足踏み状態」が続いているようです。

景況分析会議では、製造業好調の要因となっている自動車のイノベーションについて、それがEV(電気自動車)化へと収斂しつつあることへの警戒感が中小企業経営者にいまだ希薄なことを懸念する声が聞かれました。EV化が引き起こす自動車部品の大幅な減少やトヨタをはじめとする日本の自動車メーカーの優位性の剥落など、EV化は愛知経済に多大な影響を及ぼします。経営者の「先を見る目」が求められています。

[調査要項]

調査日 2017年8月21日~8月31日
対象企業 愛知中小企業家同友会
調査方法 会員専用サイト「あいどる」
回答企業 会員企業より1700社の回答を得た。業種内訳は以下
(建設業313社、製造業354社、流通業473社、サービス業560社)
平均従業員 21.5名(中央値7名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。

【業況判断】 全体は緩やかな改善
すべての局面で製造業が好調

「今月の状況」DIは前回の23から25とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、建設業が28から35と7ポイント、製造業が15から25と10ポイントと二ケタ改善した。一方、流通業は18から17とほぼ横ばいで3期連続に後退傾向を示し、サービス業も29から27とほぼ横ばいで推移した。前年同月比も前回の6から8とほぼ横ばいだった。業種別でみると、製造業が0から9と9ポイント改善した。建設業は5から6とほぼ横ばいで、流通業も2から4と横ばいで改善した。サービス業は14から12と2ポイント悪化した。3ヶ月後の次期見通しは前回の32から37と5ポイントの改善となった。製造業は26から37と11ポイント、流通業は27から34と7ポイント改善し、建設業は39から41、サービス業は35から37と緩やかな改善となった。

業況推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【売上高】・【経常利益】 横ばいで推移
売上高、3カ月見通し改善
経常利益、業種ごとに明暗分かれる

売上高DI(前年同月比)は前回の10から10と横ばいで変化がなかった。業種別でみると、製造業は1から7と6ポイント改善したのに対して、建設業が7から8とほぼ横ばい、サービス業が16から14とやや悪化、流通業が11から7と4ポイント悪化している。次期見通しは前回の16から23と7ポイント改善した。業種別でみると、製造業が8から21と13ポイント改善したのを始め、建設業が15から22、流通業が17から24とそれぞれ7ポイント改善した。サービス業では20から22とほぼ横ばいで改善した。

売上高推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の24から23とほぼ横ばいとなった。業種別でみると、建設業が20から25と5ポイント改善し、製造業が18から19と横ばい傾向となった。流通業は26から18と8ポイント悪化し、サービス業が29から28とやや悪化した。前年同月比は前回の6から4と2ポイント悪化傾向を示した。業種別では、製造業が△1から3と4ポイント改善した以外は、建設業が3から1、流通業が6から5、サービス業が12から7と5ポイント悪化した。次期見通しは前回の24から30と6ポイント改善した。業種別でみると、製造業が17から31と14と二ケタの改善をみたほか、建設業が24から28、流通業が21から29と見通しを改善させた。サービス業は31から30とやや悪化した。

経常利益推移DIグラフ(クリックで拡大表示します)

【在庫感】 製造業、流通業で相反する傾向

今月の状況DIは、前回調査の7から7と横ばいで推移した。業種別でみると、製造業(9→4)は「過剰」超過幅が縮小し、流通業(5→10)では「過剰」超過幅が拡大した。前年同月比は前回の2からほぼ横ばいで3となった。業種別でみると、製造業(5→3)は「過剰」超過幅が縮小し、流通業(△1→3)は「過剰」超過幅が拡大した。次期見通しは前回の4から4と横ばい傾向を示した。業種別でみると、製造業(5→3)、流通業(2→4)と業種間は同じ傾向を示した。次期見通しは4と前回と変化はなかった。業種別では、製造業(5→3)は「過剰」超過幅が縮小し、流通業(2→4)は「過剰」超過幅が拡大し、前年同月比と同じ傾向を示した。

【取引条件】 横ばい傾向が続く

前年同月比DIは3と2期連続で変化がなかった。業種別でみると、建設業(5→4)・サービス業(4→5)はほぼ横ばいで推移した。製造業(0→3)は3ポイントの「悪化」超過幅縮小となった。流通業(3→1)は2ポイントの「悪化」超過幅拡大となった。次期見通しは、前回の2から3と大きな変化はなかった。業種別でみると建設業(6→7)・製造業(△1→1)・サービス業(3→4)で、「悪化」超過幅は縮小した。流通業(2→2)では見通しに変化はみられなかった。

【資金繰り】 製造業、サービス業は「窮屈」超過幅が縮小

今月の状況DIは、前回の△21から△20と「窮屈」見通しの超過幅に大きな変化がなかった。業種別でみると、製造業(△19→△15)は「窮屈」超過幅が縮小する結果となった。これは3期連続の傾向である。サービス業(△22→△18)も「窮屈」超過幅が縮小したが、建設業(△26→△27)・流通業(△19→△21)ともに「窮屈」超過幅が拡大した。次期見通しは前回の△20からやや改善し△17となった。業種別では、製造業(△23→△17)・サービス業(△19→△14)と「窮屈」超過幅が縮小する結果となった。建設業(△23→△23)・流通業(△16→△16)は変化がなかった。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、建設業で「不足」超過幅拡大
施設稼働率、すべての局面で「上昇」傾向

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△17から△16と「不足」超過幅がやや縮小した。業種別でみると、サービス業は△20から△15と「不足」超過幅が縮小した。製造業(△20→△20)・流通業(△11→△10)は大きな変化がなかった。建設業(△17→△21)は4ポイント「不足」超過幅が拡大した。次期見通しは前回△15から△16とやや悪化傾向が見られた。業種別でみると、サービス業(△17→△15)が「不足」見通しの超過幅を縮小させたが、建設業(△19→△21)・製造業(△17→△18)・流通業(△10→△12)では反対に拡大させた。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の0から3と3ポイントの「上昇」超過幅拡大となった。業種別でみると、製造業(0→6)も「上昇」超過幅拡大となった。流通業(△1→△1)は変化がなかった。次期見通しは前回の△2から8と10ポイントも大幅に「上昇」超過幅拡大となった。業種別にみると、製造業(△3→11)・流通業(△1→6)ともに「上昇」超過幅を拡大させた。

【雇用】 人手不足感、さらに深刻化

今月の状況DIは前回の△39から△44と5ポイント「不足」超過幅が拡大した。前回調査で人手不足感に緩和傾向が見られたが、深刻な人手不足感がまた高まってきた。業種別でみると、サービス業(△40→△39)がほぼ横ばいで推移したが、建設業(△49→△59)・製造業(△33→△43)は「不足」超過幅が二ケタ拡大した。製造業の△43は1994年からの調査始まって以来の深刻な数値である。流通業(△37→△42)も5ポイント人手不足感が増した。次期見通しは前回の△37から△39と2ポイント「不足」超過幅が拡大した。業種別にみると、建設業(△49→△55)・製造業(△29→△40)・流通業(△32→35)はいづれも「不足」見通しの超過幅が拡大した。サービス業(△38→△34)は深刻な人手不足感ながら縮小傾向で推移した。

【価格変動】
製造業、仕入価格「上昇」超過幅縮小
販売価格では「上昇」傾向

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の24から22と2ポイント「上昇」超過幅が縮小した。これは4期ぶりの事である。業種別でみると、製造業(34→28)では6ポイント「上昇」超過幅が縮小し、建設業(23→22)・流通業(25→23)・サービス業(16→17)は大きな変化がなかった。その中でサービス業のみほぼ横ばいながら「上昇」超過幅が拡大した。前年同月比では前回の23から24とほぼ横ばいながら「上昇」超過幅が拡大した。これで4期連続の拡大傾向である。業種別でみると、建設業(23→26)は「上昇」超過幅が拡大した。サービス業(16→18)は穏やかながら「上昇」傾向を示した。製造業は(35→35)横ばい、流通業(24→22)だけは「低下」傾向で推移した。次期見通しは前回の18から変化がなかった。業種別でみると、建設業(18→18)も変化がなく、製造業(21→24)は「上昇」超過幅が拡大した。流通業(20→18)・サービス業(15→13)では「上昇」見通しの超過幅が縮小した。

販売価格変動DI(今月の状況)は前回の5から3ポイント「低下」超過幅が縮小して8となった。業種別でみると、建設業(4→10)・製造業(0→5)は「低下」超過幅が縮小した。サービス業(6→8)もやや横ばいで「低下」超過幅が縮小した。流通業(9→8)だけは、大きな変化ではないが「低下」超過幅が拡大した。前年同月比は前回7から大きな変化はなく8だった。業種別でみると、建設業(5→6)はほぼ横ばい、製造業(1→6)・サービス業(8→11)は「低下」超過幅が縮小したが、流通業(10→8)では大きな変化が見られないものの、「低下」超過幅が拡大傾向を示した。次期見通しは前回の4から6と2ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(△3→2)が5ポイント「低下」超過幅が縮小し、流通業(8→9)・サービス業(7→8)では「低下」超過幅が縮小傾向を示した。建設業(4→4)は変化がなかった。

【借入金利】
短期金利、製造業以外「低下」超過幅が拡大
長期金利、「低下」超過のなか、じわり上昇

短期借入金利DIは△5と横ばいで推移し、2期連続変化がなかった。業種別でみると、建設業(△4→△7)が「低下」超過幅が拡大し、流通業(△5→△6)・サービス業(△3→△4)でほぼ横ばいながら短期金利が低下した。製造業(△11→△5)では「低下」超過幅が縮小した。

長期借入金利DIは前回の△8から△6と小幅ながら「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(△15→△7)・サービス業(△6→△2)も「低下」超過幅が縮小した。建設業(△7→△8)では穏やかながら「低下」超過幅が拡大した。流通業(△7→△7)では大きな変化がみられなかった。

【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」・「人件費の増加」が上位に

全業種でみた経営上の問題点は、第1位は前回から変化なく「従業員の不足」(46%)であった。「人件費の増加」(27%)も前回同様第2位となり、「民間需要の停滞」(20%)が第3位となった。業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(46%)が、サービス業で「新規参入者の増加」(29%)、「人件費の増加」が流通業(22%)、製造業(32%)といずれも第2位に入ったことである。文書回答では「経費節減も限界」「内定辞退者の続出」「さらなるコストカットの動き」があった。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(55%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(50%)、第3位「人材確保」(35%)で前回から変化がなかった。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●業況判断DIは、「今月の状況」(28→35)、「次期見通し」(39→41)共に改善傾向が見られ、経常利益DIも20→25と黒字幅が拡大しています。対して「前年同月比」の売上高DIは7→8とほぼ横ばいで推移し、雇用動向DI(△49→△59)は、人手不足感がさらに高まっている状態であることから、仕事量に変化はないものの、人材確保が困難で多忙な現場の様子が垣間見えます。資金繰りDIでは、△26→△27と「窮屈」感が依然として深刻で、設備過不足DIは△17→△21と設備の「不足」の割合が増えています。

「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の誤った解釈で、任意適用の小規模事業者や一人親方が、社会保険未加入を理由に現場から排除されている事例があげられています。建設就業者数は20年間も減少傾向にあり、高齢化や後継者不足などで今後も労働人口は増えていく要因がありません。建設業の環境整備や社会的位置づけも含めて現場の実態を踏まえ、地域経済に寄り添った対策が望まれます。

(事務局 八田)

1.総合工事

  • 官庁工事の受注が出来ていない。競争入札だがほぼ入札価格が同じなので抽選に漏れる。民間工事は少なく先行きが読めない。競争激化、景気のムラ、建設単価の高騰により手控える施主の増加などが原因。リフォームも定期的にないので、営業活動もままならない状態である。
  • 大手ゼネコン等は非常に良い決算をしているが我々中小企業は景気が良いとは感じられない。

2.店舗、リフォーム

  • 店舗内装業は名古屋の物件でも大阪や東京の業者が来て施工するという事が多くなった。よって名古屋の物件なのに名古屋の業者が暇という不可思議な現象がある。百貨店もほとんどが海外什器が多く、クオリティも日本より高くなってきているので抜かれたと感じた。
  • 今年の建築業界は全体がずっとバタバタしていて、落ち着くヒマがないが、その反動なのか、現時点で2018年の案件が非常に少ない。また東京オリンピックの余波で、出張の話が増えてきている。周りでは倒産の話をよく聞くようになった。

3.基礎、土木

  • 建設業の実情も知らずに、大手企業の視点だけで改正された建設業法の改正により、業界の人材確保が困難になり、窮地に立たされている企業も多い。また、企業の問題ではなく働き手の事情から社会保険加入等がネックとなり失業してしまうケースも多々ある。結局どこも状況は同じで、働ける場所がなく行き着く先は生活保護になり悪循環を生んでいる。
  • 新規工事が減少し、維持管理事業が多い中、工事原価の大半を労務費が占めるため、会社に残せる利益が少ない。慢性的な人材不足で、外注できる土木系業者も減少しており、仕事の依頼が来ても思うようにこなせない。

4.鉄筋

  • 鋼材費高騰中。去年末から値上げ予想が的中し、先買いで凌ぐ。見積書単価とのタイムラグは想定内とし、値上げ幅はさほど大きくはないが、年末にむけて値上げ幅が広がれば注意が必要(スクラップがコンスタントに値上げしている)工事受注はやはり夏前から増えている。毎年気温上昇に伴い、受注も増える。応援作業員が確保困難な状態(毎年のことだが気温上昇に伴い人手不足が加速する)
  • 例年通り暑い時期の稼働率の低下により人手不足になっているのか、受注過多で活況が原因なのか、技能工不足はまた今年も始まったばかり。地元の工務店からスーパーゼネコンまで受注格差は依然として片寄ったまま推移している。受注過多のゼネコンも業者も「技能工の将来」をよく考えて価格を設定して欲しい。

5.設備、電気工事、管工事

  • 建設業における一人親方の実質排除が現実化しており、一人親方の現場入場のハードルがどんどん上がっていく。スポットでの応援体制に影響が出ており今後の対応も含め懸念している。
  • 通信建設業において人材不足が続いている為、申込みから施工までの待ち日数が2ヶ月程度。元請けからの規則・要望は多くなっていく一方だが、受注金額が増える事が無い。これにより多事業へ行く作業者が増え業界全体に負荷がかかっている。人を人と見ぬ元請けに対し嫌気がさしたのではないかと分析。自社については社員・社業者の減少は全く無く他社より強みを一つ確保できたと感じている。
  • 2018年の新卒採用は内定辞退者の続出で苦戦している。一方で転職も容易にできる状況のため、今いる社員が辞めないように対策を練っている。人材不足は当分の間続く。
  • 下請け業者の(高齢化により)確保難の為受注出来ない事が最近増えている。なかなか信頼出来る下請け業者が見つからない。忙しさの余り社員教育も疎かになって来ている。
(2)製造業

●製造業の業況判断DIは、今月の状況では3期ぶりの回復(15→25)となり、前年同月比では15年11月調査以来のプラス値(9)に転じ、次期見通しでは13年11月調査以来の高値(37)となっています。経常利益DIも、前年同月比では15年11月調査以来のプラス値(3)に、次期見通しでは06年8月調査以来の高値(31)となっています。これは、仕入れ価格は依然として高止まりしているものの、販売価格が上昇しており、今後も上昇が見込まれていることが一因とも思われます。一方で、それに伴って雇用の不足感が高まっています(今月の状況△33→△43、次期見通し△29→△40)。経営上の問題点でも、「従業員の不足(45.7%)」「熟練技術者の確保難(34.1%)」が上位の2回答となり、雇用の不足が浮き彫りになっていると同時に、第3位回答の「人件費の増加(32.4%)」は、文章回答にも多数みられた最低賃金の上昇幅を売り上げでカバーできない実態も新たな課題となっています。

(井上一)

1.金属加工・樹脂加工

  • 世の中の仕事の業態がどんどん変化している(AI、IOT)のを感じるが、製造業でどのように対応していくべきか苦慮している。
  • 自動車業界は、国内生産が徐々に減ってきて海外シフトしている。自動車部品の輸出も減少傾向にあり、事業の方向性を考えなければいけない。
  • 客先も仕入先も全体的にバタバタしており、短納期発注が入るものの、それに対応するのが困難になってきている。
  • 最低賃金が上昇するが、中小企業は、大手得意先の下請け単価が上昇しないまま、給与の上昇をどこから捻出するのか。下請け企業の経費節約ももはや限界を超えていると思う。
  • 最低賃金の上昇に伴う製品単価の価格交渉が業界内では非常に厳しい。現状はまだ良いが今後数年先を見据えていくとどこかで交渉しなければいけない製品が出てくる。政府には中小企業が生産性の向上に積極的になれる施策を実施してほしい。中小企業の生産性が上がれば国際競争力も上がり、結果賃金も増えると思う。
  • 人手不足は深刻である。特に現場作業員の不足が酷い。見かけの景気回復としか思えない。大企業優先の景気対策としか思えない。

2.機械部品・機械製造

  • 客先や仕入先における後継者問題により、残る会社と廃業する会社がはっきりしてきた。また、残る会社でも、新しい経営者の価値観の違いで、長くお付合いしてきた経営者の考え方から一転して、方向転換が図られることもあるため、ふるい落とされないように、自社のサービス向上につとめていかなければならないと感じている。
  • 最低賃金の上げ幅が大きいので弊社のように工賃のみの売り上げでは先行き利益が望めなくなるのをどうしていくか、大きな課題である。
  • 設備投資が下半期に集中している。したがって、上半期の動きが予想以上に悪かったような気がする。また、半導体関係がAIに伴い動き出していることもあり、そちらの設備関係が爆発的に忙しく一部の部品関係が品薄状態。そのため、下半期の生産体制に影響がありそうで不安がある。

3.印刷・包装関連

  • 業界関係者と会うと暗い話ばかり。確実に市場が縮小していく中、みんな次の打つ手がわからないでいる。
  • 現状はとりあえず仕事があるのですが、先行きは全くわからない状態である。
  • お客様から弊社への要望などを聞く機会があり、評価されている部分を強みとして、今後どのようにモノやサービスに活かしていけるのかを考えなければならない。

4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業

  • 農業の性質で、仕入れから換金までのスパンが他産業と比べて長いため、資金繰りがやや厳しい。雇用労働を拡大・維持するためには、規模の拡大による売上の拡大と、新規事業の開拓によってキャッシュフローを年間を通してフラットに保つ必要がある。
  • 年によって魚の漁獲量に変化が生じてきている。魚種・水揚げ・時期・価格等の先を読む力がこれからさらに重要になってくると思う。
  • 家具製造業界としては業況がかなり悪い。愛知の数社は調子良く、今の時代、事業規模ではないと感じる。需要の掘り起こし、購買意欲の喚起方法も新しく次の一手を打っていかねば、海外勢に食われてしまう、という危機感はこの20年のデフレからまだぬぐい去られず、ずっと続いている。
(3)流通業

●今月の業況判断DIは18→17、経常利益DIは26→18と、5月景況調査結果と比較して悪化しました。前年同月比の販売価格変動DIは10→8という結果からも、適正価格で販売できない価格競争による利益確保が難しい状態が続いています。また今月の雇用動向DIは△37→△42と、人手不足も一層悪化しています。さらに今月の在庫感DIは5→10と在庫も増加しており、今月の資金繰りDIは△19→△21という結果からも、資金繰りがますます窮屈になっています。しかし、このように業況が悪化している一方で、次期見通しについては全体的に上向き傾向が続いている状態は、注意が必要だといえます。今後も正しい情報の収集をすすめ、付加価値を高める具体的な経営戦略が必要になります。

文章回答からも、同業他社の価格競争が激化し続けていること、従業員不足で人材確保が必要であること、法改正による影響が予見されるなどの回答がありました。経営上の力点としては、「付加価値増大(60.0%)」や「新規受注(顧客)の確保(48.9%)」に注力しているとの回答が多く占めました。

(事務局 墨)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 自動車は全体的には安定しているが、車種によって必要な部品や生産財の需要に差がある。ロボット業界は相変わらず絶好調。特に中国EMSのiPhone製造向けの需要が大きい。
  • トヨタとマツダの業務提携で北米の生産体制の見直しが部品メーカーへどのように影響するか注視している。現時点でメキシコ進出案件について準備ストップの打診が出ているメーカーもある。
  • 1枚当たりの納品書単価が減少している。忙しいが、売り上げが減少している。仕入先からは、返品不可や、配送の減少、商品の引取不可、専用システム使用料の値上げなど、仕入れ価格以外での圧力が激しい。
  • 自動車部品メーカーや工作機械メーカーの活況はこれまでの通り続いてはいるものの輸出のウエイトが多く、今後のアメリカ,中国の動向次第で下振れするのは時間の問題。
  • 民間企業の設備投資は、増加傾向になってきたと感じられる。個人向けは、弊社では減少している。官需は、昨年よりは減っているが、8月に入って増加傾向。ただ、今までなかった業者の参入が見受けられる。

2.建築資材

  • 工事単価が厳しいこともあり、購入顧客がシビアなところも増えている。
  • 昨年売上がよかった月の売上が激減したり、悪かった月が上がったりと、売上数字の浮き沈みが激しくなってきている。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 大手量販店を中心に値下げ傾向が続いている。
  • 全国的にオーダースーツの需要が増え、業界の景況は上昇しつつあるが、それに伴い、縫製工場のキャパが間に合っておらず、以前よりも納期が遅くなってしまい、その結果が顧客満足度に悪影響を与えるのではないかと心配に思っている。
  • 物販はますますネット・通販に浸食されて苦境が続く。

4.飲食料品

  • 同業間での競争が熾烈である。また、後継者不足に悩んでいる同業が多い。
  • 天候不順の影響がとても大きく関係しており、厳しい状況。

5.運輸、情報通信

  • 風営法の改正により業界の開発案件の遅延が増加、激化。遊技機業界は縮小の一途。来年以降、風営法の影響で倒産するパチンコホールが増加。開発案件も大幅に減少する見通し。
  • 他業種同様、人手不足が続いている。数年先には景気は悪化&モデルが変わり、今のままのビジネスをしていては取り残される。

6.保険、不動産

  • 自動車の自動運転と、AIによって仕事の50%が今後無くなる可能性有り。
  • 業界全体の高齢化が進む一方で、新規の参入も増えてくると思われる。
  • 新築を建てるお客様そのものが減ってきているということで、ハウスメーカーなどからの土地照会の問い合わせが減ってきている。
(4)サービス業

●今月の業況判断DIは29→27、経常利益DIは29→28、前年同月比売上高DIは16→14と僅かに悪化しました。サービス業の3業種の動向を見ると、業況判断DIでは、専門サービス業38→32、対個人サービス業20→19、対事業所サービス業18→27。経常利益DIは専門34→34、対個人25→18、対事業所24→24。前年同月比売上高DIは専門18→20、対個人15→6、対事業所14→14と対個人と対事業所の差が大きくなっています。

人手の過不足感を示す雇用動向DI(今月の状況)は△40→△39と若干緩和しましたが、経営上の問題点では「従業員の不足」が45%となっており、人材不足が事業運営に大きな支障をもたらしていることを示しています。次期見通しは、売上高DI20→22、経常利益DI31→30と減少を見込んでいます。「経営上の力点」では「付加価値の増大」55%、「新規受注(顧客)の確保」が53%と上位を占めています。先を見据えた新たなサービスで売上を維持、拡大し、人材採用と育成の決定的課題への対応が必要です。

(事務局 伊藤)

1.飲食業

  • 最低賃金の引き上げ、人材不足による時給上昇で経営が圧迫されている。
  • 外食産業自体が大きく後退しているように感じる。また、営業時間中の豪雨等、悪天候の影響による売上の落ち込みが顕著。

2.産廃・環境

  • 景気の停滞による顧客の経営状況の不安定感が心配。
  • 国内消費の低迷が樹脂原料使用低迷に繋がりつつ有る。CFPなどのプレミアを付けても業界は単価優先で、値打ちで良い樹脂を使用する傾向に有る。PETボトルを粉砕加工したフレークも中国より受け入れ中止の話が出ている。10月以降の下期樹脂単価に対しても値下げが叫ばれており、業界的に良い情報は少ない。
  • 景気浮揚に関わる個別対策が殆ど打ち出されていない。中小企業の製造業、サービス業の実情、実体が見えず、今後の動向、対策がつかめない。

3.洗濯・理容・美容

  • 業界全体の慢性的な人材不足により、閉店を余儀なくされる店舗が増えている。顧客はいるが、働く人材を確保できないのが現状。
  • 毎年の事ではあるが猛暑ということもあり、客足の動向が鈍く、売り上げも厳しい。秋は繁忙期なので多少は期待しているが、根拠がないだけに不明確な業況は続くのではと感じる。

4.広告、印刷業

  • 広告の媒体が、大きく変化している。動画制作ができる環境整備が必須。
  • 働き方改革の影響で女性や若者の就労意識が大きく変化している。

5.物品賃貸、リース業

  • 今後更なるコストカットの動きが出てくる予測。その時に備えて、現段階から新分野の開拓や提供するサービスを変える動きをしていくという危機感は持って取り組んでいる。

6.専門サービス業

  • 何でも出来る税理士だけでは、この先の新規受注・規模拡大に対してかなり厳しい状況。より専門性に特化した確固たる方向性を築くことが生き残っていくためには必須。
  • 情勢不安定で何事にも確信が持てなくなりそうな状況。各企業の自力強化と中小企業家層の意識的な「経済基盤」の構築が運動として作り上げなければ、中小企業の存在は不必要な社会構成になりかねない。