- 【概況】
- 【業況判断】 「今月の状況」後退局面。サービス業、次期見通し過去最高
- 【売上高】・【経常利益】 総じて売上高が増加。「今月の状況」経常利益は減少傾向
- 【在庫感】 流通業は適正で推移
- 【取引条件】 「悪化」超過幅が縮小
- 【資金繰り】 「窮屈」超過幅は拡大
- 【設備過不足】・【施設稼働率】 設備過不足、「不足」超過幅は縮小。施設稼働率、次期見通しは「低下」傾向
- 【雇用】 人手不足感、深刻な水準で推移
- 【価格変動】 製造業、仕入価格「上昇」。販売価格、ほぼ横ばい傾向
- 【借入金利】 短期金利、ほぼ変化なし。長期金利、製造業でやや上昇
- 【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」・「人件費の増加」が上位に
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景況調査報告(2018年2月)第97号(PDF:1.44MB)
【概況】
「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた「業況判断」の「今月の状況DI」は、前回の34から29へ5ポイントの悪化となりました。業種別では、建設業は前回43から今回は40へ下落、製造業も36から28へ、流通業は30から24、サービス業は30から27へと下げ幅に大小はあるものの、全業種で「良い」超過幅の縮小がみられました。しかし、「前年同期比DI」については前回調査の11から13へ2ポイント上昇し、「次期見通しDI」も31から35へと4ポイントの改善となっています。足下で減速感は見られるものの、総じて好調であるというのが景気の現況のようです。
景況分析会議の席上でも、「1~2月の好調さが3月に入り減速しつつある」と、4月以降の不透明さを案ずる声が聞かれましたが、現在の好調さが当面は続くとの声が大勢を占めました。今回調査結果ならびに分析会議での意見からは、目先の景況感は悪くないものの、仕入価格の上昇、人手不足と人件費の高騰が中小企業経営を圧迫してきている様子がうかがわれました。
建設業では、「公共事業の入札に企業が大企業から中小企業までひしめき合っている」や、「東京方面の仕事が減少しているのか、名古屋地域への大手営業所の進出が依然として続いている」など、競争の一層の激化を懸念する声が聞かれました。
この間際立った好調さのさなかにある製造業は、とりわけ半導体製造装置やロボットを中心とした工作機械への需要が依然として高水準で継続しており、人手不足と相まって部品納入の遅れが恒常化している状況が報告されています。名古屋管内の中国向け輸出も3カ月連続で増加しており、中国需要に支えられた好調さとなっています。この中国の旺盛な需要がいつ終わりを告げるのか、不安は拭えません。またEVシフトの直接的影響は現在のところは見られていませんが、研究開発向けの機械工具の需要が見られ始めるなど、確実に変化は進みつつあります。
全業種通じて指摘されたのが人手不足の問題です。文書回答からも「人手不足のため、受注を断念しなければならない」、「人手不足が慢性的で、それにともない外注費も右肩上がりで上昇しているため、利益の確保が非常に難しい」など、人手不足が成長の阻害要因となっている様子が浮かび上がります。とりわけ流通業では、業界そのものが維持できなくなるのでは、との深刻な不安も囁かれています。
長期トレンドとなりつつある人手不足のなかで、企業を維持・発展させるには、人が集う魅力ある企業づくりが不可欠です。中小企業経営者として、目先の繁忙のみにとらわれず、幅広い情報収集と先を見た企業づくりを着実に進めたいものです。
[調査要項]
調査日 | 2018年2月19日~2月28日 |
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対象企業 | 愛知中小企業家同友会 |
調査方法 | 会員専用サイト「あいどる」 |
回答企業 | 会員企業より1464社の回答を得た。業種内訳は以下 (建設業251社、製造業316社、流通業414社、サービス業483社) |
平均従業員 | 25.4名(中央値8名) |
なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議での検討を経てなされたものです。
【業況判断】 「今月の状況」後退局面。サービス業、次期見通し過去最高
「今月の状況」DIは前回の34から29と5ポイント悪化した。この傾向は全業種に渡り、業種別でみると、建設業が43から40と3ポイント、流通業が30から24と6ポイント、サービス業が30から27と3ポイント悪化した。なかでも製造業では36から28と8ポイント業況感が悪いと判断された。
前年同月比は前回の11から13と2016年5月期調査より緩やかながら改善傾向を示した。業種別でみると、製造業は12から11とやや悪化傾向を示したが、建設業が前回と同じ17と横ばい、流通業が7から9と2ポイント、サービス業も10から15と5ポイント改善した。3ヶ月後の次期見通しは前回の31から35と4ポイント改善した。建設業が43から42とやや後退したが、製造業が29から30とほぼ横ばいだった。特徴的なのはサービス業で、29から40と11ポイント二ケタの改善傾向を示した。これは1994年の調査始まって以来の数値である。
【売上高】・【経常利益】
総じて売上高が増加
「今月の状況」経常利益は減少傾向
売上高DI(前年同月比)は前回の11から15と4ポイント増加傾向を示した。業種別でみると、建設業が13から20と7ポイント業種別では最も改善した。その他、製造業が8から10、流通業が10から12とほぼ横ばい。サービス業では12から17と5ポイント改善した。次期見通しは前回の14から20と6ポイント改善した。業種別でみると、サービス業が13から15ポイント二ケタの改善で28となったほか、流通業が15から18と3ポイント改善した。建設業では21から22とほぼ横ばい、製造業は10と変化がなかった。
経常利益DI(今月の状況)は前回調査の28から25と3ポイント後退した。業種別でみると、唯一、建設業が33から36と3ポイント改善した。製造業は31から22と9ポイント悪化したのを始め、流通業が24から22とやや悪化し、サービス業が26から23と3ポイント悪化した。前年同月比は前回の8から変わらず横ばいで推移した。業種別では、建設業が13から10と3ポイント悪化したほか、流通業でも10から4と6ポイント悪化した。一方、製造業は1から6と5ポイント、サービス業が8から12と4ポイント改善傾向を示した。
【在庫感】 流通業は適正で推移
今月の状況DIは、前回調査の1から3と「過剰」超過幅が拡大した。業種別でみると、製造業(6→6)は変化が見られず、流通業(△4→△0)では「過剰」超過幅が拡大し均衡がとれた。前年同月比は前回の3から5とほぼ横ばいとなった。業種別でみると、製造業(5→5)は変化が見られず、流通業(0→4)は「過剰」超過幅が拡大した。次期見通しは0から2とほぼ横ばいで推移した。業種別では、製造業(3→4)もほぼ横ばいで、流通業(△3→0)は「過剰」超過幅が拡大して均衡がとれた。
【取引条件】 「悪化」超過幅が縮小
前年同月比DIは2から4とほぼ横ばいで推移した。業種別でみると、建設業(3→9)が6ポイント「悪化」超過幅が縮小となったのを始め、流通業(1→5)も「悪化」超過幅が縮小した。サービス業(2→4)はほぼ横ばいで、製造業(2→1)はやや悪化した。次期見通しは、前回の4から3ポイント「悪化」超過幅が縮小して7となった。業種別でみると建設業(7→11)・流通業(3→8)・サービス業(4→7)はそれぞれ「悪化」超過幅が縮小した。製造業(1→3)はほぼ横ばいだった。
【資金繰り】 「窮屈」超過幅は拡大
今月の状況DIは、前回の△19から△21と「窮屈」超過幅が拡大した。業種別でみると、流通業(△18→△22)では「窮屈」超過幅が拡大した。製造業(△16→△18)・サービス業(△20→△22)では、やや「窮屈」超過幅が拡大した。建設業(△22→△22)では「窮屈」見通しの超過幅に大きな変化がなかった。次期見通しは前回の△18からやや「窮屈」超過幅が縮小し△17となった。業種別では、建設業(△20→△18)・サービス業(△19→△17)は「窮屈」超過幅が縮小する結果となった。一方、流通業(△16→△14)では「窮屈」超過幅が拡大した。製造業(△17→△17)は大きな変化がなかった。
【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、「不足」超過幅は縮小
施設稼働率、次期見通しは「低下」傾向
設備過不足DI(今月の状況)は△18と設備過不足の見通しに大きな変化はなかった。業種別でみると、流通業(△11→△16)は5ポイント「不足」超過幅が拡大した。一方、建設業(△24→△21)が3ポイント、サービス業(△18→△13)が5ポイント「不足」超過幅が縮小した。製造業(△24→△24)は変化が見られなかった。次期見通しは前回△20から△18とやや「不足」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(△27→△23)・製造業(△27→△25)・サービス業(△18→△15)が「不足」見通しの超過幅を縮小させた。流通業(△12→△14)は「不足」見通しの超過幅をやや拡大させた。
施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の6から変化が見られなかった。業種別でみても、製造業(7→7)と変化がなかった。流通業(6→5)は「上昇」超過幅の大きな変化はなかった。次期見通しは前回の4から2と2ポイント「上昇」超過幅が縮小した。業種別にみると、製造業(3→2)は「上昇」超過幅の大きな変化がなく、流通業(5→3)は「上昇」超過幅をやや縮小させた。
【雇用】 人手不足感、深刻な水準で推移
今月の状況DIは前回の△47から△48と「不足」超過幅の拡大が継続している。この数値は、1994年の調査始まって以来、2番目に深刻な人手不足感を示している。業種別でみると、建設業(△66→△61)は深刻な人手不足が続き65%が人手不足と回答している。その他、製造業(△46→△43)は3ポイント「不足」超過幅が縮小するものの、流通業(△42→△44)は2ポイント、サービス業(△42→△46)は4ポイントといずれも「不足」超過幅が拡大した。次期見通しは前回の△44から△43と、こちらも深刻な人手不足感を継続する予想を示した。業種別にみると、建設業(△62→△61)は深刻な水準が変わらず、サービス業(△40→△43)は3ポイントさらに「不足」超過幅が拡大した。製造業(△42→△37)は5ポイント「不足」見通しの超過幅が縮小した。流通業(△38→△37)は大きな変化がなかった。
【価格変動】
製造業、仕入価格「上昇」
販売価格、ほぼ横ばい傾向
仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の31から30と「上昇」超過幅に大きな変化がなかったが、仕入れ価格の高止まりの状態で推移した。業種別でみると、建設業(34→32)・流通業(35→33)は「上昇」超過幅がやや縮小した。製造業(40→43)は3ポイント「上昇」超過幅が拡大した。サービス業(17→18)はほぼ横ばいで推移した。
前年同月比では前回の29から31とやや仕入価格の「上昇」超過幅が拡大した。これで6期連続の拡大傾向である。業種別でみると、建設業(29→33)・製造業(41→45)は共に4ポイント「上昇」超過幅が拡大した。その他、流通業(33→35)はやや「上昇」傾向を示し、サービス業(19→18)は大きな変化がなかった。
次期見通しは前回の24から25と「上昇」超過幅に大きな変化がなかった。業種別でみると、製造業(29→36)が7ポイント「上昇」超過幅が拡大し、業種別では唯一大きな変化があった。その他、サービス業(16→17)・流通業(27→27)は大きな変化がなかった。建設業(27→25)はやや「上昇」超過幅が縮小した。
販売価格変動DI(今月の状況)は前回の9から大きな変化がなく11となった。業種別でみると、製造業(6→9)・サービス業(6→9)と共に3ポイントで「低下」超過幅が縮小した。建設業(9→10)はほぼ横ばいで推移した。一方、流通業(16→14)は唯一「低下」超過幅が拡大した。
前年同月比は前回8から大きな変化はなく10だった。しかし上昇傾向は5期連続である。業種別でみると、建設業(6→9)・製造業(6→8)はほぼ横ばいながら「低下」超過幅が縮小した。流通業(8→13)は5ポイント「低下」超過幅が縮小した。サービス業(11→9)では大きな変化が見られないものの、「低下」超過幅が縮小傾向を示した。次期見通しは前回の6から8と大きな変化がなく「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、建設業(4→11)は7ポイント「低下」超過幅が縮小した。製造業(2→4)は大きな変化が見られなかった。流通業(9→9)・サービス業(8→8)では横ばいで推移した。
【借入金利】
短期金利、ほぼ変化なし
長期金利、製造業でやや上昇
短期借入金利DIは前回調査の△4から変化がなかった。業種別でみると、建設業(△3→△3)・製造業(△3→△3)が共に横ばいで推移した。サービス業(△2→△4)では、やや「低下」超過幅が拡大した。逆に流通業(△6→△4)では、ほぼ横ばいながら短期金利が上昇した。
長期借入金利DIは前回の△5から△4と僅かに「低下」超過幅が縮小した。業種別でみると、製造業(△7→△2)では5ポイント長期金利が上昇した。流通業(△7→△6)でも穏やかながら「低下」超過幅が縮小した。建設業(△6→△6)・サービス業(△3→△3)では変化がなかった。
【経営上の力点など】 経営上の問題点、「従業員の不足」・「人件費の増加」が上位に
全業種でみた経営上の問題点は、「従業員の不足」(51%)が前回同様の第1位で人手不足の比率が更に上がった。「人件費の増加」(28%)も前回同様第2位となったが、今回は「取引先の減少」(20%)が第3位となった。企業の倒産・廃業が進んでいる事がうかがわれた。
業種別でみて特徴があったのは、建設業で「下請業者の確保難」(43%)が、サービス業で「新規参入者の増加」(27%)、「取引先の減少」が流通業(25%)、「熟練技術者の確保難」が製造業(28%)と回答した。文書回答では「社員の世代交代への対応」「EV化やAIに対するビジョンが描けない」「知的生産性の停滞」があった。
全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(54%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(47%)、第3位「人材確保」(39%)で前回から変化がなかった。
<会員の声(業種別)>
(1)建設業
●建設業の業況判断など各DI値はジグザクながらも高水準で推移継続しています。鋼材・資材・物流・外注など仕入価格が今後も上昇傾向にあり、利益圧迫要因になり得ることがヒアリングでわかりました。また業界全体の人手不足や技術者育成は最大の課題です。国保等滞納者への相談支援対策も必要です。金利、為替、税制、中国特需景気、大型開発、その一方で相続や空家や空室率など多様な要素が錯綜しつつ無政府的バブルが継続しているともいえます。長期に持続できる地域インフラ整備など国民全体が豊かになる政策ビジョンと秩序ある景気対策を期待したいです。
(事務局 加藤)
1.総合工事
- 人手不足で昨年から受注調整をしている。受注を断念しなければならない案件が増えてきている。
- 残業時間削減と賃金上昇で生産性向上が課題になる。
- 新築物件が少なくなってきてリフォーム改修工事に頼る経営になってきた。リフォーム改修は工事が多くの人手を必要とするため実情と合わない。政府の言っているような景気が上向いている感がない。積極的に小工事でも受注につなげる努力をしている。先行き不透明な状況の中現状の社員の待遇を改善することが先決で、社力を向上させ何とか社員の確保を継続したい。
- 慢性的な人材不足で外注費が右肩上がり。利益の確保が非常に難しくなってきている。
2.基礎、土木
- 昨年までは非常に仕事が多く忙しかったが、2018年1~2月は急激に受注が落ち込んでいる。
- 仕事量減少による価格競争が激化しており、その価格がもはや適正価格ではない。リーマンショック後のあの悲劇的な状況を経験してきているはずなのに、また同じことを繰り返そうとしている頭の悪い同業者が多すぎる。元請ゼネコンについても、価格重視で技術を買ってくれるという感覚が欠落しつつあるように感じる。職人の高齢化が進む中、人材確保、技能者育成に対して元請は危機的状況だというが、職人を育てるのに時間もお金もかかることをわかっていないのでは?と疑問に思ってしまう。すべての元請がそうというわけではなく、中には説明してきちんと理解して頂ける方もいるので日本の未来を考えて訴え続けようと思う。
- 去年末から現在までは、稼働率が悪く受注案件は春以降に集中。春以降の人手不足が業界内で懸念されている。鋼材費高騰中(上げ止まりか?)。支給材での受注に関しては問題ないが自給材での受注案件では、見積書提出時と受注・着工とのタイムラグでの鋼材費の差額負担が発生し、手間単価からの補てんが必要。今後の鋼材費上昇の影響は大きい。今夏以降の受注数量はかなりアップしているが、現場作業員不足が暑さが増すごとに深刻になるもよう(毎年のことではあるが)。
- 国保等滞納者の中途採用が増えている。もう一度しっかりやり直してちゃんとした生活をしようとしている人に対して役所の相談が不十分。高額支払や差し押さえで悩む社員に、会社が立替や貸付等で対応しているが当社の規模では限界がある。大変な人手不足の中で働く意欲がある人がいるにも関わらず、対策が何もとられていない。業界や政府がこの問題をどのように解決していくか真剣に考えて頂きたい。
3.内装、外構
- 仕入単価が上昇傾向。慢性的な人手不足で仕事はあるものの自社のみで回すことができなくなった。
- プチバブルの影響もあり財務体質の強化は図れたが、徐々に取引条件も厳しくなってきている。東京オリンピック特需以降の展開が早急な課題になっている。
4.設備、電気工事、管工事
- メーカーの仕事が少し落ちているのか中小市場の物件まで仕事を取りに来ている。一方でリニア、駅前、栄開発に向けて愛知へ大手出店競争ラッシュが続く。発電機関連工事は凄い勢いで集中している。
5.不動産
- 不動産取引における地価の上昇傾向への衰えは感じない。高止まりとなったにせよ、下落に転じる流れは感じられない。不動産需要に対し、供給は減少。
- 一般住宅や工場・倉庫は購入や賃借の意欲が強くあるようだ。一方で店舗系は振るわない。
- 人材の確保が困難。関東圏から大手が参入し不動産市場を荒らしている。新規参入者との競合も増加。
6.建築設計
- 建設需要は堅調に推移している。昨年春以降一時落ち始めたもののまた引き合い数が上昇してきた。建設価格はピークを過ぎて高値安定、土地価格は落ち着き始めたが下がる方向へは行かない様子である。ただ地域差が激しく、賃貸マンション系が中心部で激増しており入居が心配される。木造住宅の価格は安定しているが分譲マンション価格はかなり跳ね上がり、これも竣工時の売れ行きが心配されている。
- 中部地方では新築戸建住宅に根強い人気がある。1棟1千万円以下の建売戸建がよく売れている。
- 建築業界は好況で、求人をしようとするとほかの業界よりも紹介料が極めて高く、大手と競合するため、求人がとても難しくなっている。
(2)製造業
●製造業の業況判断DIは、前回36から今回28と少し落としたものの、依然として高い水準で推移しています。この下げ幅は全業種がやや落ち込む中でも最大の下げ幅となっています。しかし、次期見通しもほぼ横這いで、高止まり傾向が続いています。また売上DIはほぼ横這い(8→10)も、経常利益IDでは31→22となっています。これは、仕入れ単価の上昇に加え、人材確保難からくる人件費の高騰が大きな要因と考えられます。ヒアリングでは、依然として半導体及び半導体製造装置の需要が伸びていることに支えられている現状が報告されました。しかし需要の大部分は中国向けで、今後、中国国内での生産が増加すると、雇用・設備とも一気に過剰になる恐れも指摘されています。
(事務局 井上一)
1.金属加工・樹脂加工
- 現状、大きな問題には直面していないが、将来的には自動車の電動化(産業構造自体の激変)による受注の減少が非常に懸念される。新規分野への参入は必要不可欠と考える。
- 廃業した同業者が行っていた、安い単価の加工の話が流れてくるが、断っている。
- 受給バランスに合わない、仕入れ先からの値上げ要請と、販売先からのコストダウン要請の中で、合理化を進め収益改善を計っているが、世の中の変化のスピードについて行けないもどかしさを感じる。
- 半導体関連業界はまだ盛況が続きそうだが、先行きの予想も様々なので逆に不安になる。また、若者世代が製造業離れしているので、一部大企業を除いて採用が難しいと予想される。会社を強くし、独自性を打ち出すことが早急に求められると感じる。
- 従業員の確保ができない、或いは無理な残業はできない中で、納期の長期化が起こっている。ただ、この状況がいつまでも続くという確信は誰も持っていないので、設備投資や人の増員にはなかなか踏み切れないでいるのが多数派である。
- 材料の値上げの話が頻繁に聞こえてくるようになってきた。材料メーカーも需給はひっ迫しているが、先が見えない為に設備投資や増員の予定は計画していないとのことである。
- 自動車業界では部品の共通化が進んできたため、新規部品・試作品が減少している。秋に投入された高級車の売れ行きが怪しく3月以降の受注があやしい。品質要求は上がるため経費が増え、価格は不変のため採算性が悪くなる。
2.機械部品・機械製造
- 建設業界は、都心部の一極集中により、郡部での仕事量が減り出した。客先同士の合併による統廃合が今後増える模様。廃業という面では、客先の事業承継問題が、今後の環境変化として脅威と感じている。
- 仕入材料の高騰分を価格に転嫁できない。
- 目先の景況感は悪くないと思う。部材調達の難しさ、人材不足による工程遅延は慢性化している感じがする。大事がなければあと1年半から2年ぐらいはこのような状況が続くと思うが、その先は何か揺さぶられそうな気がする。
- 仕事量に関しては、4月頃まではどこも横ばいとの話を聞くが、それ以降に関しては2極化しており、先行きが少々読めない
3.印刷・包装関連
- 中国の技術が上がってきているため、価格競争になるとまず勝てない。
- ノンペーパー化の波が続き、パイの縮小が止まらない感じがする。同業者と話してもなかなか将来に向けて明るい話が出ないのが現状。数量・ターゲット等、よりニッチなマーケットを探していかないと企業として生き残っていけないような気がする。
- 印刷業界には好景気の風が吹いていないように感じる。新しいビジネスモデルの確立のため、補助金申請の準備をしたり、隣接異業種への情報収集を行ったりしている。
4.食品・繊維製品・雑貨・身の回り品製造業
- 大手参入が増え、小規模の業者が少なくなってきた。
- 食品を扱う上でのルールの強化が行われる。対策に先行投資。
- 業界的には一番売上が多い3月だが、鉄板や段ボールなどの原材料の高騰・配送する運転手不足であるとか、価格は相変わらず厳しいので、増収でも減益というような事態になっている。今後が非常に不安である。
- 商業施設内装工事業会の2月は創業以来はじめて仕事が少ない。名古屋圏の仕事が停滞している模様。大型物件も控えているものの消費が伸びていないので先行きは明るくないと思う。店舗数はどんどん増えているので改装も含め仕事はあるが、その分消費が増えて続けるわけではないので数年後には、アメリカのように、閉店する商業施設も増えるのではないかと考えている。
(3)流通業
●前回の11月景況調査の結果と比較して各項目の今月の状況を見ると、業況判断DIは30→24、経常利益DIは24→22、仕入価格変動DIは35→33、販売価格変動DIは16→14という結果となりました。業界全体は8月から若干の改善が続いてきたものの、現在は横ばいの状態になっています。また、前年同月比の売上高DIは10→12とポイントが上がっていますが、例年、年度末に向けて上昇するものの、その後は緩やかに下降していく傾向があるので注意が必要です。前年同月比の取引条件DIは1→5と若干の改善はありましたが、今月の状況の資金繰りDIは△18→△22の状態にあり、長期にわたり資金繰りが窮屈な状態が続いています。また今月の状況の雇用動向DIも△42→△44という状況にあり、依然として人材不足が続いています。
経営上の問題点(文章回答)では、第1位「従業員の不足(46%)」、第2位「人件費の増加(25%)」、第3位「取引先の減少(25%)」となりました。また、経営上の力点(文章回答)では、第1位「付加価値増大(58%)」、第2位「新規受注(顧客)の確保(46%)」、「人材確保(37%)」という結果となりました。
(事務局 墨)
1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
- 自動車は引き続き順調。従来のクルマに加え、次世代自動車向けの生産の準備で様々な部品の需要が増えつつある。半導体製造装置、ロボットは絶好調。部品供給が追い付かず、納期が延びつつある。モノによると10カ月以上必要とのこと。受注は伸びているが、売り上げが伸びない状況が昨年11月ごろから慢性的に続いている。
- 2月以降に国内及び北米向けの新規車種の立ち上がりが控えているため、年明けの新規金型案件が低調になっている。車両生産自体は年度末もあり堅調に推移しているが、受注案件に関してはすべからく「相見積」となり収益を確保するのが難しい。
- 昨年末頃から送料値上げ理由による商品値上げが続いている。逆に販売価格は、ネット販売による安売りが復活し猛威を振るっている。
2.建築資材
- 4月に樹脂製品の一斉値上げが予想され難しい経営判断に迫られる。
- 原油価格の高止まりにより供給メーカーの値上が相次いでいる。
3.繊維、衣服、雑貨
- 冬は寒さの影響もあり良かったが、消費者の購買意識が上がっている感じはない。
- 経済産業省の調査・EC化率(市場に占めるEコマース売上の割合)が各分野で益々高まっている。大手企業のEC参入が進む一方、ニッチな分野でも例外なく競争が厳しくなっている。
4.飲食料品
- シラスウナギの漁獲が少ないことで夏場の国産鰻が極端に少ないことが予想される。鰻料理専門店は輸入鰻を使うのか、また採算割れしても国産鰻を使うのかの選択に迫られている。
- 米業界は農政改革=農家保護の国の政策により相場が不安定感かつ一変する。自然な需要と供給バランスが崩れている状態。
5.運輸、情報通信
- 大手企業も大幅な運賃改定に動いている。
- 相変わらずの人手(乗務員)不足で、年明けの一時閑散から3月期末の繁忙に向けて仕事が請けきれない状況になる予測。燃料価格も上がり、路線業者も軒並み値上げ要請を継続している。
- 相変わらず人材確保難が続いている。仕事量は膨大にある為、協力会社への発注も増加している。全国的な車両と人材不足の為、外注費が高騰しているが、受注金額が普遍的な為、利益を圧迫する状況がしばらく続く見込み。
6.保険、不動産
- 一般の住宅購入意欲は比較的強い様子。工場・倉庫を購入・賃借しようという意欲も強いように感じる一方で、店舗は振るわない。
- 不動産取引における地価の上昇傾向への衰えは感じない。高止まりとなったにせよ、下落に転じる流れは感じられない。
(4)サービス業
●今月の業況判断DIは30→27と昨年8月調査時の数字に戻り、経常利益DIは26→23と、前回よりやや悪化しています。仕入価格変動DIは17→18、資金繰りDI△20→△22と、経営環境が徐々に厳しくなっています。
3業種に分けると、業況判断DIは、専門サービス業36→33、対個人サービス業15→18、対事業所サービス業35→27。経常利益DIは専門29→32、対個人12→14、対事業所36→11と、専門・対個人が変わらず、もしくは緩やかに改善しているのに対し、対事業所の落ち込みが目立ちます。設備過不足DIも、専門が△7、対個人が△13に比べ、対事業所が△27と、仕事はあるものの、設備がそれに追い付かない状況は共通していますが、中でも事業所はその傾向の強いことが伺えました。
次期(3ヶ月先)見通しでは、業況判断DIが40と少なくとも過去5年で最大の数字、売上高DIも13→28と大きく向上し、業種毎でも同様の数字が見られます。ただ、雇用動向DIは△42→△46、次期3ヶ月先見通しも△40→△43と、改善が見込めません。直近の景況や売上に左右されず、長期的な採用・定着を意識していくことが、事業の継続に繋がります。
(事務局 橋田)
1.産廃・環境
- 行政からの委託業務を行っているが、委託費は8~10年据置き。近年は愛知県の最低賃金の上昇もあり、委託費値上げに関し前向きに検討頂いている。しかし、こちらが要求する額とはかけ離れており、適切な委託費が頂けるとありがたい。
- 業界全体が人手不足であり、仕事をこれ以上受けられない状態も多くある。弊社はまだやれてはいるが、今後が不安である。
2.自動車整備
- 2020年度以降、盤石な経営体質にしなければ厳しい状況になるのは必至。自動車の自動化が整備業界にどこまで影響を与えるか、不安な思いがある。
- 高齢者が自動車免許を返納すると、車検、保険が不必要となり、事故も無くなるのでやがては修理も無くなる。現状維持をするのにも新規顧客が必要である。
- 大手がなりふり構わず顧客を取りに来ている。
3.業務請負
- 最低賃金は毎年増加しているのに、販売価格の値上げは厳しい。常に価格交渉が出来るような体制が欠かせない。
- 人材不足は感じるのだが、景気が良くなっている実感は乏しい。高年齢者の引退が進み、労働力が減っている。また管理者が引退し、経営の痛手になっている気がする。
4.医療
- 政府が医療費の削減を打ち出し、支払い条件の幅を著しく絞っているので、保険治療から自費治療に切り替えが必要となり、顧客獲得が困難な状況が続く見通し。
- 子連れ出勤や副業OKの働き方を導入してからは、女性スタッフに関しては採用に困ることがなくなってきた。今後の課題は幹部層の採用である。
5.専門サービス業
- 建設需要は堅調に推移している。昨年春以降一時落ち始めたが、また引き合いの数が上昇してきた。建設価格は、ピークを過ぎて高値安定。土地の価格は落ち着き始めたが、下がることはない。ただ、住宅の売れ行きは地域差が激しいようで、賃貸マンション関係は中心部で激増しており、今後の入居が心配になる。分譲マンションは、価格がかなり跳ね上がり、これも竣工時の売れ行きが心配である。
- 建築業界は好況で、求人をしようとすると他業界よりも紹介料が極めて高い。大手と競合するため、とても難しい状況となっている。
- 中部地方の住宅関連では、新築戸建住宅はどこか根強い人気がある。
- 受注数の不足は無いが、元請けか下請けかで受注内容に変化がある。納期の短縮によるコスト削減や、発注業務内容の委託による、発注者側の社内労務費削減の動きが見られる。
- 顧客の状況から考察すると、建築関係は順調に推移しており、他の小売業も売上を伸ばしている。しかし、ネットビジネス関係は頭打ちの状態の顧客が多く、業種により景況感は相当変わるものと思われる。