◆地域開発委員会◆
地域に根ざした中小企業経営を学ぶ(第四回)
葬祭業界再編の中で地域密着をすすめて
三島 一美氏 中日典礼(株)
2月21日 地域開発委員会では今年度「地域に根ざした中小企業経営を学ぶ」をメイ
ンテーマに、経営者の体験報告を行なってきました。今回はその最終回、大須地区の
中日典礼(株)の三島一美社長をお招きしました。
専用式場のラッシュ業者は三分の二に
ご存知の様に、五〜六年ほど前からあちらこちらに専用式場ができました。高齢化社
会や世相を反映し、農協や生協、くらしの友、そしてホテルなどから続々と新規参入
し、私どもの業界自体がガラッと変りつつあります。
その再編の真っただ中で業者は三分の二に激減し、今後「専用式場があるかないか」
が企業の盛衰の大きな分かれ目となるでしょう。
業界は十〜二十人程の小零細企業がほとんどで、営業やPR活動もできず、一般にわ
かりにくく、特に諸外国に比べ社会的地位が低いのが特徴です。ヨーロッパのように
ライセンスや尊敬される業界をめざして、組合で資格制度やIf共済、イメージマー
クなどに取り組んでいます。
役員が自らが「信頼一筋」に
創業から十五年、信頼を第一に人間関係のネットワークづくりから始め、地域団体や
業界団体の福利厚生事業を重視して展開してきました。
全盛期は二十五人のスタッフをかかえましたが、実は最近大変な痛手があり、今は三
分の二の人員で心機一転、巻返しの最中です。
七年程前、わが社は情報事業に乗り出しました。苦楽を共にしたナンバーツーが、情
報の将来性を熱く語ることから、社内でさんざん議論した上で投資を決定しました。
しかし三年のめどで投資が年商の五%になった頃から、専用式場ができ始め、業績に
かげりが見えてきました。
当社は、その時点では専用式場化の波に乗ることはできず、逆に別の方向のニーズに
も応えられない、現場との不協和音が目立ち始め、一番苦しい時期を迎えることにな
りました。
結局、情報事業については最後までうまく行かず、ナンバーツーも退職ということに
なってしまいました。
社長自らが腹をくくり、もう一度創業時に返った気持ちで心機一転。役員自らが夜間
体制を強化し、理念の原点である「信頼一筋」に頑張っています。
時代は変っても心は変えられない
今後はますます高齢化が進み、人間関係も希薄となり、相談する相手もいなくなると
葬儀社のニーズは高まります。アフターサービスや料金の明瞭化などは確実に求めら
れてきます。
便利性を満足させる専用式場の利用は高まっています。しかし「個の存在」を大切に
した葬儀の見直しの動きも実際に起こってきています。時代は変っても、人の心は変
えられません。
これを柱にして営業相談活動を多彩に展開し、中日典礼のファンを大切にし、より地
域に密着し、人々の暮らしに根づいた企業づくりで、この困難な時期を乗り切ってい
きたいと思います。
【文責 事務局・加藤】
◆障害者問題委員会◆
2月25日 委員長の企業を訪問
人間性を抜きにした21世紀型企業はない
信濃工業(株) 江尻 富吉氏
「人間性を抜きにして二十一世紀型企業づくりはありえない」と自信を持って言いき
る江尻社長。
企業見学とあわせて障害者雇用を通して会社や社員がどう変わってきたのか、知恵遅
れ(知的障害)のT君と共に成長したこの五年間を振り返り、話をしていただきまし
た。
採用当初は、人見知りのT君にとって緊張の毎日。握力も弱く、身長も低いためなか
なか任せる仕事が見つからず、ほぼ二年間は製品の箱詰めがおもな仕事だった。
しかし環境になれるに従って落ちつきがみえ、四年目からはNC旋盤を扱う事ができ
るようになり、T君を見る社員の目も変わってきた。
「この世に百パーセントの人間などいない。欠けた部分を補い合うことで、それぞれ
が百パーセント以上の力を発揮できる。自分の弱さを知り、互いに助け合うことの大
切さをT君から学んだ」と力強く語る江尻社長。まさに共育の考えそのもの。
しかし、低成長時代に入りT君の仕事も減った。社員の受けとめ方も変わってきた。
「このままではいけない」と考え、中堅ベテラン社員が会社を去る危険をあえておか
してまでも、自分の理想を貫くため職能給制度を実施。平等ではなく公平な給与シス
テム(能力を客観的科学的に評価)を導入する。
一時期は社員数も減り、経営状況も悪化したが、現在は社員数も売上も増え、あの時
の決断は間違っていなかったと語る江尻社長であり、さらに「障害者と共に働く福祉
工場」建設に向け、夢は膨らんでいく。
二十一世紀に生き残るために何かをするのでなく、人間を大切にした経営を実現した
企業だけが二十一世紀型企業なのだ、とハタとひざをたたくことしきりの私だった。
(有)進工舎 田中 誠