経営を発展させる
これが同友会の役員の役割
福谷 正男氏 (資)豆福商店(第一支部長)
三月八日に行われた第三回目の全県の役員研修会での福谷男氏と鋤柄修氏の報告要旨を掲載します。
二十一世紀型企業とは、私のとらえ方では『全国区の会社になろう』ということです。全国区とは、日本の津々浦々に商品が宅急便で届くという意味ではありません。商品やサービスが全国レベルにあるという事です。
私は中同協の「中小企業家しんぶん」に登場する企業が、全国区型の企業だと思っています。
全国区型の企業とおつきあいをして
わが社は豆菓子のメーカーで、原料に帯広産大豆を使用している関係上、北海道同友会帯広支部の農業経営者部会も見学させてもらいました。 また明太子の商品化に初めて成功した業界のトップメーカー「ふくや」さんという会員が博多にいます。福岡の全研でも見学コースに入っていましたが、あいにく参加できなく、後日見学をお願いしたところ、快く見学させていただきました。
豆に巻く青のりは四万十川の天日乾燥物を使用しています。これも「しんぶん」に大阪の業者の方が紹介されたのがきっかけで、おつきあいをするようになりました。
先週の土曜、社員と大田区の機械メーカーを訪問しました。大田区には昔から海苔問屋が多く、省力化機械の開発も盛んに行われてきました。これも「しんぶん」に紹介された企業で「大田二十一研」のメンバーでした。
「同友会ってこんなところだよ」と社員に話しながら帰ってきましたが、同友会へ行けば、いろんな智恵を授かれるということだと思います。
支部の仲間との経営指針づくり
同友会では第一支部の支部長を三年やらせて頂きましたが、時間を取られる仕事です。社員は社長が会社にいる時間が短くなったとか、聞く耳を持たなくなった等、何か感じているようでした。
そこで昨年九月、親しくしている経営者方にお願いして、『社長への苦情を語る会』を開きました。「思いがよく分からない」「いつもコロコロ変わって長続きしない」「何がやりたいのか不明」など、ビックリするほどの苦情が飛び出しました。
こんな事もあり、私の長年の願望であった有志メンバーでの「経営指針の勉強会」を第一支部で実施しました。一月に最後の合宿を行い、十一名が成文化できました。
これが非常に勉強になりました。講演などで人の話を聞くだけでは、いくら良い話を聞いても「ヤルゾ!」くらいのものです。「自分の会社をどうするのか」を考えることが経営者の一番の勉強です。
「どんな経営理念でやるか」「計画を立てるか」が明確になった時に、初めて勉強した成果が身になります。
「社員の顔が見えない」
素直な批判を受けて
昨年九月に、経営指針の社長案を作成しました。ところが一月の合宿では「社内でどう発表しましたか」と聞かれ、「まだ発表していません」としか言えませんでした。
合宿では「なぜ発表できないのか」「まず社員に発表してみて意見を聞くべき」など率直な批判が出て、「同友会では率直でないと勉強にならない」と感じました。
その後、二月十七日の朝礼で社長案を発表。五人が休んでいたので、別の機会にその人達にも話しました。その時も一人休んだので、残りの一人にも話しました。
またこの合宿で「あなたの発表を聞いても社員の顔が見えてこない」と言われ、「何もしていない事は人の目には分かるんだな」と感じました。
大切なのは「社員をどう巻き込むか」「どう参画させるか」であり、経営指針づくりを通じて、肌で理解させてもらいました。
再度問う! 同友会の役員とは
まず一月の正副支部長研修会で宮城の佐藤さんが言われた「経営に役立つ同友会でなければいけない」という当然の事が、役員の頭の中にあるかという点です。
「会社で神経をつかい、くたびれているので、夜の会合に来た時くらい気楽にやりたい。難しい事をやるから出席率も悪くなる」と考える役員が、意外に多いのです。
会社を良くしたいという願いは義務感ではなく『喜び』のはずです。同友会も企業も、生きいきと働く喜びに溢れた集団にする責任は、役員にあると思うのですが。
二つ目は「同友会はアメリカ合衆国か」という事です。同友会は地区の連合体で、各地区が独自に運営している組織かという事です。
これも「わが地区は、わが地区」と考える役員が意外に多いと思います。役員の方々は、もっと視野を広く持てないものでしょうか。
三つ目は、二月の新地区会長研修会で大阪の岡本さんが「地区例会は投網(とあみ)だ」と言われたことです。地区例会は一回一回で完結し、十二カ月間良い例会をつくる事が大切です。
例会に何人参加したか、発言できたかも大切ですが、会員の抱えている経営課題や関心事をつかみ、次の例会に生かし発展させられるかが、地域会づくりの鍵です。
役員の役割は「会員の共通の関心やテーマは何か」「会員の不満や知りたがっている事、勉強したがっている事は何か」をつかみ、次に発展させる。このことを心掛ける事だと思うのですが…。いかがでしょう。
【文責 事務局・福島】
規制緩和と業界 @
大競争時代を迎える保険業界日本版ビッグバンに備えて
舟越 信三 名東保険事務所
自分の顧客はライバルの顧客
保険業界では九六年四月より「新保険業法」が発効し、昨年十月から生保と損保会社が相互乗り入れし、従来の棲み分け時代から、大競争時代に入りました。
十一月には橋本総理の「日本版ビックバン構想」が発表され、十二月には日米保険交渉が決着しました。これにより、今までは生命保険と損害保険を別々の会社に契約していた一軒の顧客が、一社ですべてを任せることができるようになりました。つまり、自分の顧客は、ライバルの顧客でもあるのです。
そして九八年七月までには自動車保険、火災保険などの保険料も自由化され、価格競争の時代に突入します。すでにマイカーを対象に割安の保険を新聞広告に掲載している会社もでてきています。
今後は通信販売を中心に、クレジット販売による電子マネー取引も考えられます。
総合的な能力アップをめざして
大競争時代とは競争相手の増大、販売商品の多様化、販売形態の変化、価格の自由化などなど、全く今まで経験のない事が一挙に、それも急速に訪れることです。
私達のような小さな保険代理店では、生命保険販売はもちろんの事、今まで以上に専門化する中で総合的能力を更にアップし、周辺知識にも気配りしながら合理化、組織化、さらに大型化を進めなければならないのです。
そして、企業や家庭のオウン・コンサルタントとして地位を確立し、大競争時代に生き残り、顧客から指名される総合保険代理店になっていくことが、生き残る道だと考えています。
経営指針の確立は企業づくりの入口
鋤柄 修氏 (株)エステム(代表理事)
ここ四〜五年の間、会方針で「二十一世紀型企業づくり」を強調してきました。
わが社でも日本福祉大学の小栗崇資先生が言っている、@勉強もせずに注文をもらってこなすだけはダメ、新しい研究に取り組み、社内がみんな共に育つ「学習型企業づくり」、A中小企業一社ではできないことも強みのある各社でグループをつくったり、必要なときに握手をして情報を共有化する「ネットワーク型企業づくり」など、自社で実践しています。
役員全員が経営指針を
今年始めないと遅いのですが、二十一世紀型企業づくりのために必要なのが「経営指針」です。
「経営理念・方針・計画を成文化しよう、その経営指針に基づき社員教育をしよう」と会方針は述べています。
社長一人がつくって額に入れて飾っておいても「萌黄色の季節」になってしまいます。少なくとも「会の全役員の会社には経営指針が存在する」という状況をつくりたいと思います。
そして、作成や浸透状況について互いにチェックしあうことが、同友会の言う「連帯」の一つの意味ではないでしょうか。
「同友会の企業は会社も経営者も違うなぁ」というわけで、こんな企業が地域にたくさん登場してくれば、同友会の地域への影響力も違ってくると思うのです。
これを『代表理事の話』と受けとめるだけではなく、皆さんが確実に実行すれば、会社は必ず良くなるし、社員も自社に誇りを持てるようになります。
モノまね型から未来志向型へ
大量生産・大量消費の時代は右肩上がりで、キャッチアップ型の経営であり、欧州のモノマネでやってこれたのです。しかし、「今後は日本のルールは世界では通用しない、認められない」という構造転換の時代です。
新年度の方針の大見出しは「実践二十一世紀型企業づくり」です。考える時期はもう終わり、アクションを起こすという事ですから、例会や支部活動では「実践」をどんどん始めて下さい。
二十一世紀にどんな企業にするかは過去の体験の発表でなく「未来志向型の例会づくり」「提案型の企業づくり」だとも書いてあります。
そんな姿を東洋大学の吉田敬一先生は「フロントランナー型の企業づくり」と言っています。キャッチアップの時代はすでに終わり、生き残れない時代です。
地域活性化は中小企業の力で
企業は本来他人が守ってくれるものではありません。自分で守らないと。誰のせいにもできません。政治が悪いから…、業界が悪いから…と言ってみたところで問題は解決しません。
どの業界でも二極化の時代を迎えており、正しい対策を講じれば成長企業になり、「助けてくれないのが悪い」と言ってばかりだと、ジリ貧企業になってしまします。
企業が地域と共に地域の再興に関わっていく、こんなことに大企業が関わった話など聞いたことがありません。私達がやらないと誰もやってくれない。私達がやらないと、地域が活性化しない時代に入っているのです。
【文責 事務局・福島】