我がまち同友会づくり
地域の中で共生する21世紀型同友会
小川 正昭氏(大阪同友会・専務理事 中同協・広報委員長)
広報委員会(5/29)
「激変消滅」の時代 同友会も消滅?
昨年十二月に決定された大阪同友会「組織中期展望」の中で、核心をなすのが「我がまち同友会づくり」で、政策的課題と、強大な同友会づくりという組織課題をあわせ持っています。 作成過程での問題意識としては@「空洞化」「価格破壊」が叫ばれる中で、生き残っていける中小企業像とは、A「減変消滅」の時代、同友会自体が消滅してしまう恐れもある、という点でした。
以上を踏まえ、「二十一世紀型同友会づくり」とは「会の周囲の中小企業家にも同友会理念を理解してもらい、広げる運動である」と考えてきました。
具体的には「カオと企業がみえる同友会」「地域に密着した同友会」として位置づけています。
同友会らしい 地域密着とは
地域で活動する経営者団体は他にもありますが、「同友会らしい地域密着とは」が論議になり、結論として、「自社と他社が企業経営を媒体として訪問しあい、連帯する活動である」という整理をしました。
これは同友会理念の一つである「国民や地域と共に歩む中小企業」の実践です。同友会でこのことを言い始めたのは意外に最近で、一九九一年に出版された「同友会運動の発展のために」の中が初めてです。
「地方の時代」から「地域の時代」へ
一九七〇年代後半から八〇年代の前半にかけて「これからは地方の時代」という言葉がよく聞かれました。この時期は、高度成長から低成長時代へ移行期にあたり、内需への転換により、市場の細分化傾向が生じました。
大企業の商品の販路づくりのために、にわかにクローズアップされた「地方の時代」で、真の地方の時代ではありませんでした。
では現在はどうでしょう?大企業はますます多国籍化し、空洞化の動きがすすんでいます。これで疲弊するのは地域です。
これまでは国内を中心とした枠内での変化でしたが、今日では枠そのものが根本的に変化し、その脈絡のなかで「地域の時代」と言われています。
現在の成熟化した社会では、地域に依拠した経営を「余儀なく」されており、そうでないと企業そのものが消滅する時代である点を、押さえておく必要があります。
静かに進行する「生活者」への意識革命
もう一方で見ておかないといけないのが、進行する国民の意識変化です。単なる消費者から脱却し、自己主張する「生活者」へ変わりつつあります。
彼らの重視するのは「日常的に人々が徒歩や自転車で行ききでき、そして広がりと行動が保障された空間」である地域なのです。
大切なのは、中小企業経営もそのさ中に置かれているという点です。たとえ商品は海外に、仕入れは他県から、と言っても、会社の所在地ではこの人たちとかかわらざるえないのです。
地域特性の調査を 同友会自らの手で
大阪同友会では「我がまち同友会」を推進する意味で、その地域の中小企業施策や産業構成など、詳細なデータを事務局が中心になって、まず集めています。 調査活動には人手と時間がかかりますので、一朝一夕にはできませんが、地道にやっています。
行政としても数少ないケースですが、東京の墨田区では地域振興策の一つとして、区役所の職員が地元の業者を訪問し、業者や住民の立場に立ったヒアリング活動を行っています。
自治体に頼るのではなく、同友会独自で調査・研究し、自治体に提言していけるようにしていきたいというのが、大阪同友会の願いです。 「金融ビックバン」で、大手銀行も地域に入ってきます。今後、地元銀行とさらに激烈な競争が繰り広げられるでしょう。この点も、今後の調査内容になるでしょう。
「カオと企業がみえる」 同友会の組織づくり
「我がまち同友会」づくりの組織課題は、同友会を大きくすることと、強い経営体質をつくること、この二つを結合していくことにあります。
要点は「その地域に組織的に対応できる同友会をつくろう」であり、煮詰めていくと「カオと企業がみえる」ための草の根運動です。 詳しく言うと「同友会理念をもって『カオと企業がみえる』ように会社訪問をし、同友会理念を話し合い、同友会理念を共通のきづなとし、企業経営を前進させていく運動」です。
岡本利雄増強委員長は「志を同じくする仲間づくり運動を地域で展開していく」ともいっています。
支部の特色を生かして
生野天王寺支部では、支部メンバーの「カオと企業」が見えるようにと、パネル展を行いました。特徴的なのは、「企画の成功は同友会づくりである」との役員の意思統一がはかられたこと、そして参加する中で、各企業が経営指針づくりの必要性に気づいていったことです。
一方平野支部では、地元の製造業の業者団体とともに、空洞化問題や地域産業政策をテーマに「平野区産業振興フォーラム」を開催しています。
八尾支部では発足総会で市長が参加。同友会への共感のあいさつをされるなど、行政とのかかわりを深めつつあります。
「我がまち同友会」運動に取り組んできた支部では、いづれも例会への参加者が増え、退会者も減っており、活性化しつつあります。
このように個々の実践例が生まれていますが、まだまだ十分とは言えません。しかし、真剣に「我がまち同友会づくり」に取り組んでいかないと、会自体が消滅してしまう危機感をもっています。
【文責 事務局・内輪】