チャレンジ!経営指針成文化
書くと企業はその方向に
社員の成長なしに、指針の実現はない
林 永芳 兜l木綿 (昭和地区)
ビジョンづくりは 具体的数字から
経営指針に取り組むようになって六年になります。経営指針とは社員や関係者に「社長の意志とビジョン」を伝えるものだと思います。
当時、私が所属する昭和地区の例会では「あなたは会社をどうしたいのですか?」というテーマで、会員発表を行っていました。この例会でとても大きな刺激を受けました。
「良い会社にしたい」「大きな会社にしたい」とか「社員が活き活きと働ける会社にしたい」という漠然とした意見はでます。しかし、具体的なビジョンはなかなかでてきませんでした。 具体的な目標数値を決めなければ、ビジョンをだすことができないと、その頃気が付いたのです。
例えば、売上を五年後に十億目標とします。すると、そのために何が必要で、何をしなければいけないのかが見えてきます。
何でもよいので、一つ具体的な目標を決めることが大切です。目標に向かって考えていく中で、ビジョンが当然、必要になってきます。
理念やわが社の存在価値というものも、はっきりさせなければならないことがわかってきます。それが、経営指針づくりだと思います。
発表して始めてわかる指針の真価
経営指針の素晴らしさは、それを発表すると分かります。社員も関係者も「いま社長は何をめざしているか」を理解してくれます。
自分も励みになるし、周りも協力しやすくなるのです。たった一枚の紙に自分の想いを書くだけで、いろいろな人が協力してくれるし、反応してくれます。
今まで隠れていた問題も見えてきます。「実現するための方法は?」「方針は?」聞きもされるし、考えもする。とめどもなく問題がでてくることを保障します。
不思議なのですが、一枚の紙に書いた想いによって、ついてきてくれるようになる社員も出てきました。これが、私が経営指針を成文化した実体験です。
社内研修で基本を学ぶ
わが社では年一回、社員総会を開催し、そこで経営指針の発表をしていますが、最初は大変でした。
「どうしてこんなことも分からないのだろう」とよく思ったものです。よくよく考えてみると、要するに基本的なことを知らないのです。
中国料理のレストランなのでコックさんもいます。損益計算書も見たことがない、その人に数字を読めといっても無理な話です。自分の給料は売上からではなく、社長のポケットからでると思っている社員もいました。
これは大変だと思い、社員教育にも力を入れて取り組みだしました。幹部の人たちの「リーダーミーティング」、次の時代を担う若い人たちの「ミドルリーダーミーティング」や、サービス部門・調理部門ごとの研修、仕事場の枠を越えた「人間ゼミ」や「個別目標面接」などです。
これを続けることによって仕事のやり方や、何をやらなければいけないかが、しだいに分かってきます。そこではじめて、経営指針の中身や社長の考え方を理解できるようになります。経営指針を理解して、社員教育の大切さがわかってきました。
社員自らつくったサービス理念
最近、わが社に新しくサービス理念が誕生しました。サービス部の人たちが、何度も何度も話し合ってつくったものです。
<浜木綿のサービス理念>
私達はおいしい料理とお客様の要望するサービスを通じて、居心地の良い店を目指します。
そして、私達はお料理を通して、人の優しさ、暖かさが大事だと考えています。
「居心地の良い店」をつくることが目的で、そのためにおいしいお料理と素晴らしいサービスがあります。そのお料理とサービスをつくるために暖かい、優しい心が大切ですよといっています。
なんとも整然として、かつ会社のサービス目標を成文化しているではないでしょうか。これは経営指針づくりや、社員教育に取り組んできた六年間の成果だと思います。
成長する経営理念
いま私は、経営理念が変わらないものだとは思わなくなりました。それは「理念は成長という変化をしていく」と思えるようになったからです。
社員も成長します。時代も変化するし、環境も変化していきます。「とにかく今、理念がある」ことに意味があると考えています。 ある意味で理念とは「こうありたい」という目標ですから、目標の数値が成長していくように、理念も社員と共に成長させていくことができるのです。
つくる時には、難しく考えすぎて、なかなか考えがまとまらないと思いますが、このように考えれば、もっと気楽につくれるのではないでしょうか。
経営者の自己実現の強力なサポート役
経営指針は「自分がどこへいきたいのか」を考えさせてくれる道具でもあると思います。目標でも、目的でも、どこから考えても、最後にはそこに行き着くような気がします。
また、私たちが経営者であるということは、会社で自己実現しようということです。まず、実現するべき自分を見つける必要があります。
そのためにも経営指針は強力なサポートをしてくれます。本当に経営指針は、便利な道具だと思っています。
五年計画で指針に取り組む昭和地区
いまから考えると、昭和地区の「あなたは会社をどうしたいのですか」という例会があったことが、わが社の発展の大きな要因になっています。そんな例会に出あえて本当にラッキーでした。
いま昭和地区は五年計画で「全員が経営指針を持とう」と頑張っています。五年後、地区のメンバーに、どんな素晴らしい経営指針ができるのか楽しみです。 ぜひ、一枚の紙に自分の想いを書いて、張り出して下さい。その時から経営指針は成長していきます。
◆創 業 1967年
◆資本金 4000万円
◆年 商 14億円
◆社員数 86名
(平均年齢26歳)
(他パート200名)
◆店舗数 8店舗
◆事業内容 中華料理レストラン