チャレンジ!経営指針成文化11
人間力を大切にして 父の背中から学んだ経営理念
各務 雅博 (株)武市ウインド(第一青同)
兜錘sウインドの経営理念と経営方針
●経営理念●
為に生きる
●経営方針●
顧客や協力者の皆様、私達に関わって頂ける
すべての人達の為、社会の為に
事業を通じてよい関係を築き、
よい影響を与えることのできる
人となり、企業となる
ひいてはそれが
私達自身の自己実現につながることを信じ、
私達は自らを大切に成長し続ける
父親の突然の病で
三年前、当時社長であった父が突然病に倒れ、医師から命の保証がないことを告げられました。あまりに突然のことに、ただうろたえるばかりでした。手術の前に、医師からはっきりした告知があり、気丈な父もさすがに言葉もなくなりました。私は、それまでの父の人生を想い、涙がとまりませんでした。創業以来、身を粉にして会社を築いてきた父です。こんなに簡単に命をとられてしまってはあまりに不憫でなりませんでした。同時に「俺が父の意思を引き継いで素晴らしい会社にしていくんだ」という強い決意が、自分のなかに芽生えてきました。早速、役員を呼んで、「父は助からないかもしれない、役不足かもしれないが、私が社長となってがんばるから、どうか私を支えてほしい」と話したら、役員も涙しながら応じてくれました。父は奇跡的に助かり、会社にも復帰しました。しかし体調もままならず、以前のようには働くことはできません。私としても、一度決意をしたことです。早期に社長交代をしようと父と話していました。
理念は自分の言葉で
すでに社長就任の半年前から、自分の想いであった経営指針づくりを幹部社員と共に取り組んでいました。そのなかで、経営理念には特にこだわりました。それまでは父がつくった経営理念があって、そのまま継承してもよかったのですが、どうしても理念だけは、私自身の言葉でつくってみたかったのです。最初は、他社の例を参考にしながら書いてみたのですが、どうも自分で納得がいきません。事業をやっていく意味を何度も何度も問い詰めてみました。そんなある日、ふと父の人生を想いながら決意したことを思い出しました。そこに答えがありました。父親が背中で教えてくれたことで、一番大切なことを言葉にしました。自分自身も理念が実践できる人になりたいと思いました。ビジョンも大切にしました。社員とこれからどんな会社にしていくんだと話をしていく内に、私自身が明確な夢のないことに気づかされたからです。そんなことを指針づくりのなかで確かめながら、いつしか「全国レベルで取りざたされる会社にしていこう」と熱っぽく社員に語っていました。
一生懸命やらなきゃ夢が達成できない
私の社長就任と同時に経営指針の発表会をおこない、取引先の皆さんや私の同友会の仲間に来ていただきました。私自身はもちろん、社員にも決意表明をしてもらいました。皆、何かに感じ入ってくれたようですし、社員も感動していました。社員全員が内緒で社長を退いた父に花束を贈ってくれた気遣いに、なによりも感動しました。理念や指針の浸透度は決して数値で測れるものではないですが、作成後、幸い業績は順調に推移しています。そして何よりも社員に変化が生まれました。病気がちで会社を休むことが多かったある社員が、休まなくなり、それどころか仕事に対してとても真剣になりました。意外だった私は本人に、その理由を素直に聞いてみたら、こう答えてくれました。「社長、僕はあの発表会のことが忘れられない。一生懸命やらなくちゃ、夢が達成できない」と言ってくれました。本当にうれしかった瞬間です。また、今年の社員採用の会社説明会で、若手の社員が学生に「この会社には感動がある。嘘だと思うなら、僕が教えてあげる」と言ってもくれました。社長の話より、この社員の話に感じ入って入社したいという学生が多数でてきました。ただ、良いことばかりではありません。指針をつくり実践していく中で、ついていけない社員も出てきました。結果、その人たちは会社を去っていきました。それを冷静に見れば、まだまだ全社員にまで理念が浸透していないのも確かです。
すべては志から
そんななかで、青年同友会の仲間に会うことで非常に勇気づけられます。互いに会社の話をしながら「俺も負けずにがんばろう」といういい意味でのライバル意識を戦わせています。私は同友会で学んだなかで、とても好きな言葉があります。「人間はその気になったから二本足で立ったんだ」という言葉で、すべては志から始まると思います。いくら経営能力が高くても、志が高くなければ駄目なんだと思うようになりました。今、私は第一青年同友会の活動を預かっています。地区会長を務めることも、私自身の肥になっています。来年は会社設立三十周年を迎えます。一層飛躍の年にするべく、九月より経営指針の作成を理念に立ち戻って、社員と共に新たに始めます。一歩づつ、理念と夢に近づくようにがんばることが経営者として最も幸せなことだ、と思うこのごろです。
◆本社名古屋市守山区
◆創立1963年
◆資本金2000万円
◆年商15.5億円
◆社員数38名
◆事業内容商業施設の企画、設計、施工
討論に経営者自らも参加して
4年目を迎えた「実践リーダー研究会」(共育委員会)
経営指針を理解し、部下を指導しながら率先して実行していく。そんな職場のリーダーを育てる為に行なわれている「実践リーダー研究会」も今年で四年目(第四期)を迎えました。一泊二日で年間四回のステップアップ方式で行なわれていますが、今回は一日目の夜のグループ討論に会員経営者が参加。「自己の動機づけ」や「リーダーとしていかに自分のやる気を引き出すか」をテーマに徹底的に話しあい、あるグループでは深夜二時まで及びました。これも同友会の「共に育つ」の考え方の具体化と、受講生のみなさんには大変好評でした。
次回十一月は公開講座で
十一月七日〜八日に行なわれる最終講座(第四講)は公開講座です。「百聞は一見にしかず」です。ぜひ多くの会員の方に実際にも集合研修の現場を見ていただき、さらに派遣企業のの輪が広がることを期待しています。八日(最終日)は通常の研究会は午後四時までに終了。その後、修了式・パーティを行ない、参加者全員のスピーチを予定しています。多くの方のオブザーバー参加をお待ちしています。