真価が問われる同友会新年度の活動の重点は

鋤柄修潟Gステム(代表理事)
九八年度の活動方針素案がすでに発表されています。「来年度、どんな活動を重点に展開していくのか」について、鋤柄代表理事に語っていただきました。(編集部)
サバイバル戦の中で真価が問われる
来年四月二十九日に開催される愛知同友会第三十七回定時総会の方針素案をお届けします。詳細は「同友Aichi」(一月号号外)をご覧いただければわかりますが、特に「会方針をどう自社で生かすか」について述べたいと思います。十一月末の愛知の景況調査では、業況判断を「悪い」とする企業の割合が四〇%まで達し、「景況感の急速な悪化、見通しも弱き」と報告書で特徴づけています。加えて九八年四月からの「金融ビッグバン」が進行する中で、銀行、証券、生命保険などの大改革は、私達中小企業の行く先に大きな不安感を投げかけています。
経営指針の作成と変化への適応
昨年春からの消費税率の引き上げ、特別減税の廃止、秋以降の医療費の引き上げなど、九兆円の国民負担増が国民生活に及ぼす影響は大きく、昨年の愛知同友会の景況調査でも「景況感は急速に悪化し、先の見通しも弱気になっている」という結果がでています。東証一部上場企業の打ち続く倒産や銀行・証券・生保の経営破たんなど、金融神話とか、大企業神話とかが崩壊し、証券業界の不正取り引き、大手企業各社の総会屋対策、各界での官民癒着など、まさに激動の状況です。昨年十一月末に同友会が実施した「貸し渋り調査」の結果、七二・三%の会員が「すでに貸し渋りを経験した」「今後が心配」と回答しています。十二月十日にこの事を記者会見で発表したことが、東京、大阪に次いで、「愛知でも貸し渋りがある!」という世論形成になりました。愛知同友会として政府系金融機関の「国民金融公庫」に対し,支援を要請しました。規制緩和・構造転換が進行する中で、このことは中小企業経営にとって二重、三重に厳しい経営環境といえます。
長期的視点で地域とともに
身の周りでも、「お客様が減った」「商店街が歯抜けになった」「あそこは廃業してしまった」「社員数を半減させて、持ちこたえている」などの会話が、日常茶飯事になっています。同友会が会員の経営の安定と、経営環境の改善をめざして行なった九七年度後半期の活動は、会員企業のサバイバルを支援するという点で、その真価が問われました。今後の課題として、「中小企業や国民生活の安定のために何ができるか」を前提にしながら、崩壊していく「街」をどうするか、地域社会と共に中小企業はどう生き残るのかなどで、大須や瀬戸地域ではすでに研究活動がスタートしています。従来の地区で「良い例会づくり」を進めてきたことに加え、支部の段階で「地域社会と共に歩む同友会づくり」を展望することになります。東京・大田の支部活動(「二一研」など)も教訓にしながら、先の長い視野で取り組みます。
「指針」「求人」「教育」三位一体で体質強化
今まで述べてきましたように、中小企業を取り巻く環境はまさに激動の状況です。しかし、企業家精神としては「激動こそチャンス」とも言えます。この時期に発展する企業の条件は何かを考えてみますと、@自社の独自製品やサービスについて戦略をもって臨んでいるか、A経営者が他の業界の人達とも広く接して、ネットワークを構成しているか、B企業経営の過程で人が育っているかなどです。つまり「問題解決型企業」「ネットワーク型企業」「学習型企業」の「二一世紀型企業」を本気になって実践するしかないということです。まず、現在がどういう時代なのか、お客様が何を求めているのかという「情勢認識」を一致させ、「経営指針」で理念、戦略、方針、計画を明らかにして、全社に徹底することです。次に「求人」や「教育」という「人」に関わる問題では、「共育」の考えを貫くことです。実際には「昨年採用できたので今年は要らない」とか、「中途採用で間にあうから新卒はいらない」など、各社様々な対応が聞えてきます。しかし「少しづつでも毎年必ず・・・。新卒を採用して、自社の風土で若者を育てる」という取り組みが、「経営指針」の確立・実践とあわせて問われています。新年度では、支部や地区の活動、委員会の活動や部会・グループなど、あらゆる活動を通じて、会員は広く深く学んで実践する。実行したことを自分だけのものにとどめず、広く還元していく。そんな日常活動の推進が求められています。
会費は値上げせずに、攻勢展開の会づくり
昨年秋以降、すでに三年前から財政的に厳しい状況であり、「今後の活動展開をどうするのか」を会内で討議してきました。一月十二日の理事会ではこうした議論を持ちより、真剣な意見がかわされました。結果、『九八年度は会費値上げはせず』という方針を固めました。(詳細は下記の第九回理事会報告参照)一千万円の経費削減は大変な作業です。しかし、会員の皆さんが、それぞれの企業で大変な努力を重ねておられるのと同様、同友会も例外ではありません。理事の発言にもありましたが、資金不足を財政問題としてだけ捉えるのではなく、事務局を含む「活動改善」の仕上げ問題として、「会員増強で跳ね返していく」という企業家精神の問題として、会全体の体質改善のチャンスとしていきたいと考えています。
林哲夫中日印章印刷梶i中区錦・丸の内、会暦32年)

一対一で腹を割って
早いもので同友会い入会して三十二年が経ちます。一九五六年に昭和区の自宅で林印半印刷店を開いてから十年目。従業員も十名近くになり、少しは「経営の勉強を」と思っていた時に、知り合いの弁護士から、「まあ入っておいた方がいいよ」と言われ、なにも考えずに入会しました。名古屋同友会(当時)は創立されたばかりで、会員は百人もいなかったと思います。しかし、人数の少ない分だけ一対一で腹を割ってお互いの悩みなどを大いに語りあえました。このことが自分の経営者としての自覚を目覚めさせてくれました。今日でも事業を営んでいられるのは会のおかげだと思います。
広く世間を見るように
私が板金加工機バイブロシャーを作るために、一年余り居候をさせて貰った会社の工場長が今井保さん(故人)で、偶然にも私の母校浜松高校機械科の十二年の後輩でした。それから数年過ぎ、今井さんも私もそれぞれ独立し、工場を持ったある日、今井さんから、名古屋中小企業家同友会(当時)設立の話がありました。その時は「"どうゆう"会かよく分からないから、分かってから入る」と言うのが、私の返答であったと思います。それが三年後の一九六五年、結局よくわからないまま、自然に入会となりました。当時の事務局は名鉄名古屋球場前駅の近くにあり、仲野正事務局長が女子事務局員と二人で頑張っていました。
全国一の愛知同友会
当時は、経営環境をめぐってずいぶん討議もしましたが、早急に結論を急がず、十分に討議していく中で、「なにが正しいのか」探っていきました。こんななかで、広く世間を見ること、世の中で正しいことついて、自分なりに考えられるようになったと思いますし、「あせらず、あわてず、あきらめず」という同友会の考え方が気に入っています。地区会長や会の広報委員長など、役員も随分とやらせて頂きました。地区会長時代には連絡網を使って例会への参加を呼びかけたり。広報委員長時代は原稿が集まらず、随分と苦労した思い出があります。
再入会をして
ほとんど現在、会合には出れないのですが、マスコミでも随分と取り上げられるようになり、当時からは想像もできません。大病をしたせいで、休会もしましたが、病状も安定し、また入会させてもらいました。現在は専務と私の二人が会員になっています。休会をしただけに,同友会のありがたさがよく分ります。同友会にいると「生きているな」という実感が湧いてきます。
第9回理事会報告(1/12)
◆会場愛知県勤労会館◆参加二八名/三五名
【討議事項】
議題(1)第37回定時総会方針素案の検討・全体的に経済状況の厳しさをもっと盛り込むべき。・経済団体として「国の経済政策の不十分さにこの不況の原因がある」ことの明記を。・スタッフ組織である委員会は調査や研究活動は率先してできても,実践活動は難しい。ぜひ新年度方針で支部活動とのタイアップを強調して欲しい。
◎四月理事会までに加筆修正をし、正式文案としていくことを確認。
議題(2)会費値上げ問題について
★各支部での意見集約・新年度の資金不足(約二千万円)の解決策としての会費値上げは「会活動に対する士気がそがれる」ため反対。予算削減で対応すべき。・会費値上げの前に活動の見直しがあるべき。そのための検討時間がもっと欲しい。
★理事の意見より・九七年四月より消費税が五%となったことで、同友会会費の収入は実質目減りしているはず。本来の会費金額に見あう分の値上げは必要。・受益者負担の原則で、支部や地区活動などは独立採算で資金不足を解消し、会費値上げの回避を。
・「事務局員一名/会員百五十名」の考え方を改める時。予算編成の考え方を一新し、大きな柱(事務所の統合、事務局の人員問題、機関紙の減行や廃止、各種郵送物廃止)を立てて、検討すべき。・単に財政問題として捉えるのではなく、「事務局改善」「会員増強」「財政問題」の三位一体で「会としての全体像」を持って、対応すべき。
◎これらの意見を踏まえた上で挙手採決し、以下の結論となった。
@九八年度は会費値上げは行わない。
A九八年度の約二千万円の資金不足に対しては、一千万円は会費積立金を取崩し、一千万円を予算削減で対応する。
B一千万円の予算削減内容は、次回理事会までに基礎資料を財務委員会が作成。各組織でも検討し、その結果を踏まえて新年度予算を作成する。
議題(3)「役員選考」と「規約検討」
◎委員の構成、会議日程、検討内容などについて、以下の会議で行う。
・役員選考委員会2月3日
・規約検討委員会1月29日
【報告・承認事項】
◎入退会承認●入会者一二名●退会者一四名●現会員数二二二六名
【文責・福島】