情報ネットワーク委員会同友ネット共催情報化セミナー(12/11)より
産廃管理を電子メール化処理の流れが一目瞭然に

平沼辰雄氏兜ス沼建設工業
廃棄物処理法の改正
今年の六月、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)が改正され、産業廃棄物の流れを把握するマニフェスト(管理伝票・文末注を参照)適用が、すべての産廃に義務付けられるようになりました。ゴミが適正に処理されているのか、ゴミが不法に処理されていないかを管理するもので、この書類は五年間各社で保管義務があります。マニフェストの電子情報化を考えたきっかけは、経営者である私がコンピュータを使い出し、社員の中に三人ほどコンピュータが少しわかる、また関わりたいという者がいて、会社のなかで社内LAN始めたことからです。その三人が中心となって、他の社員にも教えて、わりあい早く会社の中にコンピュータが普及しました。
ゴミ業界の現実
私どもの業界は、新聞紙上をにぎわしている不法投棄や不法処理というのが非常に多くあります。また産廃を出す業者の意識も非常に低く「コストを下げるために許可書さえあればいい」というようなこともあります。六月の産業廃棄物処理法改正で、罰則規定が非常に重くなりました。不法処理については法人は最高一億円、個人でも一千万円、マニフェストについては、強制されていなかったのですが、九八年十二月からは法律で義務づけられることになりました。全国的にも行政で情報センターをつくると言ってはいますが、なかなか進んではいません。この情報センターにアクセスするのは、今のコンピュータ技術を使えば簡単にできるのですが。まずは愛知県の建設業界の中で、マニュフェストのやりとりを始めたいと思いました。しかしこのシステムは、本来は産廃を出す方がやらないと下請けである私達の足並みは揃いません。けれど、コンピュータを解った方が部署になかなかいません。例えば環境対策室とか、安全機材部なんとか、大手ゼネコンにはあるわけですが、そこの方が非常にコンピュータに疎く、話がなかなか通じません。そこで、コンピュータの画面に、電子マニフェストを電子メールで送る通信ソフトを業者と開発しました。私も今回画面をつくりながら、社内で戦略的な意味で、どう使えるのかやってみようということになりました。
自然との共存共栄
一番根底にあるのは環境問題で、自然との共存共栄をどうしていくのかです。また私達の業界は中小零細企業が多く、競合する部分が多いのですが、共生をどう考えていくのか、一つの業界が結束する媒体として、この問題を考えていきたいのです。そして、排出業者に意識を持ってもらうということです。ゼネコンは建てる事には非常に興味をもっているわけですが、ゴミのことについてはまだまだで、「何で自分たちがゴミの処理までやらねばいけないのか」という気持ちがあります。ですから、官公庁への報告は、今までは全部関連業者がやってきました。法律では「排出企業責任」というものがあります。出したところがすべて責任を負うというものです。しかし、私達下請業者が処理報告からマニフェストまで書いて判子をもらいにいっていました。解体工事では、木造の三十坪くらい壊しますと、マニフェスト六〜七枚分の廃棄物がでます。すると、マニフェストを管理するためだけに人を雇わなければいけないということが実際に起こります。
情報電子化で展望が
私はゼネコンも巻き込んでのシステムづくを提起しています。コンピュータ画面を作って、換算計算のネットワークもつくりながら構築して、互いに情報の電子化をしていこうというものです。ゼネコンの反応はというと、歓迎してくれる部分もあるのですが、現場単位で端末も持ち支店などに集めるシステムが必要ということで、まだまだ普及しにくい部分があります。情報のコンピュータ化は日本ではまだ根づきにくいのかもしれませんが、産業廃棄物の情報を管理し、行政に報告したり、ゼネコンに返したりしたりする商売も成り立つのではないでしょうか。私ども中小企業一人一人が持っている力は小さいのですが、その力をトータルに発揮できるようなシステムをつくれば、大きなメリットになるわけです。今後、産業廃棄物とか、建設関連で情報システムでマネージメントができるような会社に、また廃棄処理だけではなく、建設からでる土、コンクリートなど、リサイクルしたものの情報サービスができるような会社にならないかと思っています。法律もかなり環境を重視したものになっています。そして、リサイクル法にしても新たな規制が入ります、来年は家電関係、OA器機などがリサイクル法に入ってきます。そう考えると、いわゆる情報ネットワークを使ってやる仕事がどんどん増えます。わが社の戦略としてさらに活かしていきたいのです。
【マニフェスト】
四枚つづりの伝票。産廃の種類や量、処分方法を記載した上で排出事業者はA票、収集運搬業者はB票、処理業者はC票に押印し保管する。最後のD票は排出事業者に返送し、適正処理を確認する仕組み。廃酸や廃アルカリ、感染性医療廃棄物などの特別管理廃棄物だけに義務付けられていたが、九八年十二月からすべての産廃に適用される。愛知県などの多くの都道府県は、すでに廃棄物指導課で実施するよう指導している。
【文責事務局・内輪】