労働実態調査を始めて10年
厳しい経営環境の中でもふんばる経営者の姿が
労務労働委員会
「目安数字」として
一九八九年十月から始めた「労働実態調査」が、昨年十月の調査で十回を数えました。労務労働委員会では、過去十回の調査データを整理し、愛知同友会会員企業に見る労働実態面(主に賃金面と労働時間面)での十年間の変化を分析しました。残念ながらアンケートの回収は最高で会員数の一四%(二百六十四社)、時には一〇%を切ることもあり、全会員企業の実態を正確に反映しているとは言えません。また回答いただいた企業規模は、会の平均よりやや上のクラスの企業(最近のデータでは平均正社員数三十数名)が多く、平均的企業像とはなり難いとは言え、「目安になるべき数字」として参考にして頂ければ幸いです。この一〇年間を見ると、八九年には消費税の導入とバブル崩壊の兆しから始まり、九六年以降には不況は極めて深刻になっています。当然のこととは言え、調査結果はこれらの変化を、労働実態という角度から、ものの見事に反映しています。
(1)賃金関係の変化
(A)平均給与
一番分かりやすいのは平均給与ですが、不況の中でも、毎年上昇しています。不況の中で、頑張っている経営者の姿が見え、さすが会員企業だと敬服しました。ただ、九六年には僅かに下降していますが、これは不況が深刻化し始めた時で、翌年にはまた上昇しています。さすがに昨年は支え切れず、また少し下降しました。
(B)賃上額
給与が上がっても賃上額は上がるとは限らず、九一年をピークに、賃上額は毎年減少を続けています。一時的に、額が増えた年(九四年)もありますが、これは統計の問題もあり、不況が本格的に深刻化する直前だからと理解できます。
(C)賞与
残念ながら賞与も九一年の夏期をピークとし、下がり続けています。
(D)初任給
初任給も平均給与額と同様に僅かながらとはいえ、上がり続けています。特に学歴が低いほど上昇しています。しかし、これも昨年に入り、部分的に下がるか、横這い状況になって来ています。
(E)給与関係のまとめ
九八年の男性の平均給与(平均年齢三十七歳)は三十一万円となり、世間相場的にも悪くない金額であり、大卒初任給も二十万円弱で悪くはありません。中小企業は大企業に比べて福利厚生などが弱く、人財を集めるためには、「せめて給与くらいは良くしたい」との表れだと委員会では判断しています。
(2)労働時間の変化
多くの会員企業が苦しみながらも時間短縮を進め、九三年をピークとし、以後、確実に短縮しています。特に週四〇時間制については、九八年には最高となり、約七割の企業で達成しています。残念ながら不況で人員削減の影響だと思われますが、労働時間は九七年に比べ、九八年は、年間で二十三時間ほど増加しています。
(3)経営理念・経営計画
この十年間、苦しみながらも以上のように平均給与を僅かでも引き上げ、時間短縮を積極的に進めてきたのは、やはり同友会会員だからこそでしょう。それを端的に表しているのが「経営理念の成文化」「経営計画の策定」で、多少の上下はありますが、毎年、ほぼ確実に増え、昨年は六八%が理念を成文化し、七一%が計画を策定しています。この経営理念・経営計画での評価で、以上のまとめとします。