愛知県下で初めて「障害者就業体験支援制度」(労働省)を活用して
田中誠氏巨i工舎・専務(千種地区・障害者問題委員会)

進工舎は1938年の創業で、電力関係の部品の加工を主力としている会社です。「取引先に喜ばれる価格で、迅速で丁寧な加工技術を、密なネットワークでどんな仕事も請け負える」をモットーに、誰でも働ける共生の会社をめざしています。その進工舎が緊急雇用対策の1つで、昨年からスタートした労働省の「障害者就業体験支援制度」を活用し、4月5日から精神障害者の体験実習を始めています。愛知県下でこの制度を利用した第1号であり、経過や制度活用のポイントを3代目経営者である田中専務にうかがいました。
2年前から実習生を受入れて
2年前から障害者問題委員会では、精神回復のリハビリ施設「わかばの里」に通っている方達の1週間の実習を受け入れています。進工舎でも、毎年1名から2名を受け入れてきました。この中の1人Mさんは、実習を体験した後も「もう少し自分の力を試してみたい」と長期の就職訓練を希望。専門機関がこの相談を受け、Mさんにはどんな制度がいちばん適切なのかを検討し、決まったのが「就業体験支援制度」でした。実習先は、本人の希望があり、進工舎になりました。
雇用予約なしで「あせり」なし
他の制度と違って、この制度では雇用予約がないので、「採用に至らなければ」というあせりが、企業側にも実習者にもありません。6カ月から1年の間、ゆっくりと「わかばの里」の職員など専門家の協力を得ながら、Mさんの成長や企業の受け皿づくりを進めることができます。また専門家からのアドバイスは、会社全体の企業風土づくりにも大いに役立ちます。勤務は月に170時間以内で、配分は自由に決められます。Mさんが頑張りすぎる人なので、最初の1カ月間は午前中3時間の勤務、仕事はNC旋盤とし、頑張りすぎない方法でスタートしました。今後は、社員と同じ8時間にできるよう徐々に変えていく予定です。実習委託費として企業に月53000円、実習者には奨励金2万円が支払われます。実習受け入れに対して企業側の負担は、今のところありません。「委託費は、企業風土づくりへの激励だと思っていただいています。特別な事はないから、委託費はなくても構わないくらい」と田中専務は語ります。
意外なほど簡単な手続き
最初は、職安や「わかばの里」など、4つの関係機関の方が来社され、1時間くらい説明を受けました。「『手続きは煩雑』と想像していましたが、皆さんの指示のもと、書類作成に手こずることはありませんでした」と田中専務はやや意外気に語ります。必要な書類は、実習の契約書、会社概要、委託費振込先、ケガをした場合の傷害保険の申請(掛け金6カ月分で18710円は事業所が1時立て替え)でした。
専門機関と共に
今回、この訓練を開始する当初は、各機関の人達のほとんどがこの制度のことを知なかったようです。専門家の人達もすべてを網羅しているわけではなく、制度を調べながら活用していることがわかり、受け入れる企業の立場からは、自社の実状や希望をはっきり伝える事が大切です。そんな中から具体的に何ができるか、そしてどんな社会資源が使えるかが見えてきています。(事務局・岩附)
あと半年、あなたの会社は大丈夫?コンピュータ2000年問題を考える(1)
徳永憲治鞄ソ永鉄工所若原誠一若原国際特許事務所
西歴2000年まであと半年を切りました。マスコミでは「飛行機が落ちる」「ミサイルが飛んでくるのでは」など、一般市民の危機感をあおるような報道も一部に見受けられます。4月には中小企業庁からこの問題に対して「中小企業の対応はおくれている」との調査結果が発表されましたが、まだ「自分のところでは…」と考えている会員もいるようです。この経営課題についての研究会づくりをすすめている若原誠一氏と徳永憲治氏の両氏に寄稿していただきましたので、今月号より3回にわたり連載いたします。(編集部)
2000年問題って?
コンピュータ内の日付処理として西暦年をその下2桁で表現しているこのに起因する種々の問題です。代表的な問題が西暦2000年を西暦1900年と誤認してしまい、日付による情報管理にエラーが生じてしまうことです。(下の表(1)参照「中小企業家しんぶん」第755号より)したがって、日付機能のないコンピュータではこの問題は発生しません。予想されるエラーは納期遅れ、集計金額の誤りのほか、最悪の場合にはシステムの全面停止もあり得るのです。
では具体的に企業ではなにを?
(1)担当者を決定
自社内のコンピュータ2000年問題担当者をまず決めるとよいでしょう。コンピュータが「好き」という人であれば、コンピュータの専門者である必要はありません。
(2)自社のコンピュータのリストアップ(意外なものまでも)
次に自社のコンピュータ機能のある機械の「機種名」「製品番号」などをリストアップしてください。通常のパソコンやオフコンなどのOAシステム以外にも、NC機などのFAシステム、ホームバンキング端末機、キャッシュレジスタ、ワープロ、ファクシミリ、社内電話交換システム、テレビ、ビデオなどなど、予想外に日付機能付きコンピュータは内蔵されています。しかし、このなかで日付機能のまったくない機械は問題ありません。日付機能があるかないか不明のときは、念のためリストアップに加えてください。
(3)業者への確認
リストアップしたらそれぞれにつき、日付機能があるかという点と、2000年問題に対応済みかの点とを、メーカーやディーラーに問い合わせてください。旧式のMSーDOSタイプのコンピュータで解決済みのものもあれば、新しいウインドウズタイプのものでも未解決のものもあります。ウインドウズタイプだから安心だとは、必ずしも言い切れません。
あなたも研究会に
現在、私達2名が呼びかけて、「2000年問題危機管理研究会」(仮称)を立ち上げつつあります。コンピュータの使用目的が各企業、各業種によって種々様々であるため、個別の問題をこの研究会で解決することは困難ですが、業種・業界を越えてこの問題について考えていく場としていきたいと考えています。興味のある方は事務局までご一報下さい。