加藤 明彦氏 エイベックス(株)
第20期役員研修大学・第1講座の加藤明彦氏の報告を紹介します。
同友会理念は歴史にあり
戦後の復興期、大企業優先の政策支援や経済の「二重構造」を背景に中小企業問題が発生する中で、全日本中小工業協議会(全中協)が設立されました。その姿勢である、(1)特定の政党や団体に偏らず、経済的に依存しない、(2)民主的な運営に努める、等を受け継ぎ、1957年に日本中小企業家同友会(現在の東京同友会)が誕生しました。
1973年には同友会が進む方向性を示した「3つの目的」が、1975年には社員との関係に関する考え方をまとめた「労使見解」が発表されました。どちらも経営者の姿勢と覚悟に言及しており、同友会の考え方の軸となっています。
自分の間違いに気づく
私自身、社員との関係について苦悩がありました。同友会で学んだことを実践すればするほど社員と心が離れ、30人いた社員がいつしか10人にまでなってしまったこともあります。しかし、同友会の本を読んだり、例会・グループ会で悩みを話し合ったりと、「労使見解」を学び続けたことで、経営者の責任について自分の間違いに気づきました。現在では、パートも含め約380名の社員が働いてくれていて、経営者の役割としての「育つ風土づくり」、その整備に必要な信頼関係の構築を大切にしています。
労使見解は同友会の本質であり、また「人間尊重の経営」の基本となる「自主・民主・連帯の精神」が結実したものです。同友会で学ぶ者として、労使見解を学び実践することが非常に大切です。そして、労使見解を理解するためには、それをまとめた戦後の先輩経営者がどのような苦悩を持ち、何を考えたかを知ることが必要だと思います。
例会前に同友会の理念を唱和する地区もあるかと思いますが、本当に意味を分かって唱和していますか。社員には「本を読み勉強せよ」と言いながら、自分は同友会の本も読まずにグループ討論で満足していませんか。今一度、私たち経営者が労使見解や同友会の理念とじっくり向き合っていく必要があると思います。