調査・研究・提言

各政党への愛知同友会からの質問状に対する回答(2022年7月参議院選挙)

愛知同友会の高瀬喜照会長名で各政党(政党要件を満たし、かつ愛知県内に県連等の本部機能を持つ政党)に対して公開質問状を提出し、以下の回答をいただきました。

  1. 明らかな誤植については、修正の上掲載しています。
  2. 質問については各400字以内でお願いしました。到着順に上段より掲載しています。

質問趣旨

新型コロナウイルス感染症による経済危機からの回復が始まるなか、原材料の不足、価格上昇が世界レベルで生じています。とりわけ日本においては、企業物価と消費者物価との乖離、円安が生じていることにより、企業経営は極めて厳しい経営環境に置かれています。こうした状況は、愛知県の中小企業にとっても重い足かせとなっています。そこへ追い打ちをかけたのが、ロシアによるウクライナ侵攻です。原材料とエネルギーの不足、価格上昇がコロナ危機で傷ついた中小企業をさらに追い込んでいます。

中小企業の直面する困難は、地域経済、日本経済の落ち込みと疲弊に直結し、国力の減退に拍車をかけることになります。こうしたなか、地域で雇用を守り安定させ、疲弊する地域経済を再生していくためには、事業所数の99%、雇用の70%を占める地域の中小企業へのより実効性ある政策展開が不可欠です。

当会は日本経済における中小企業の役割を正当に評価し、豊かな国づくりに向けた諸政策の柱に中小企業を位置付ける「中小企業憲章」と、各自治体での「中小企業振興基本条例」の制定を提案するとともに、これらの具体的実行、内容の実現を求めています。以上の趣旨を踏まえ、以下のご質問をさせていただきます。ご多忙の中恐縮ですが、ご回答いただけますようお願い申し上げます。

質問事項と事項別回答PDF

質問事項タイトルをクリックすると、その質問への各党の回答(PDF)が表示されます。

(1)電力不足、価格上昇に対する中小企業支援について、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

ロシアによる隣国ウクライナへの軍事侵攻が発生したことを受けて、原油価格が3月7日に1バレル=130米ドルを13年8ヶ月ぶりに超えるなど、エネルギー安全保障上の危機が生じています。

2年以上におよぶ新型コロナウイルス禍により、すでに多くの中小企業は体力を損耗してきたなか、抑制されてきた供給と需要行動の巻き返し、物流網の乱れが世界レベルでの原材料価格の上昇を引き起こし、中小企業の収益状況は大きく圧迫されている渦中に生じている今回の電力問題は、中小企業経営への過重な重石であり、中小企業の存亡にかかわる危機的要因です。早急な中小企業への直接的支援をも検討すべき状況にあると当会では考えております。貴党のお考えをお聞かせください。

(2)食料やエネルギーの自給率について、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

日米の金利差拡大を背景に、為替相場は急激な円安に流れました。連邦準備制度理事会(FRB)は、今後も徐々に金利を引き上げていくことを表明しているなか、日本の金融政策が転換しない限り、日米の金利差は今後も拡大し、一層の円安傾向が進むことも予想されます。現在の円安は一般に「悪い円安」と呼ばれるように、国民生活、多くの企業経営にとって円安のデメリットがメリットを上回る状態です。日本は、石油や食料などの多くを輸入に頼っているなかで、これ以上の円安が進行することは、需給両面にわたる悪影響がさらに深度を増し、日本の経済社会をさらなる苦境へと陥らせかねないと危惧しています。

とりわけ、その多くを輸入に依存している食料やエネルギーといった国民の生命にもかかわる財の安定的供給は、安全保障上の重要課題の1つです。こうした点に関して当会では、現状の過度な輸入依存体質からの転換を図り、各地域ごとでの地消地産(地域の需要を地域内の供給によって満たしていく)考え方に立ち、地域の1次産業の積極的振興とともに、休眠発電施設の有効活用、中小規模発電設備の整備により石油やガス、大規模発電依存体質から再生可能エネルギーによる地域エネルギーの自立化を戦略的に進めていく必要があると考えています。貴党のお考えをお聞かせください。

(3)中小企業の円滑な賃金引き上げを担保する商慣行の確立(公正取引の実現)について、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

賃金上昇は、国民生活の向上に寄与し、内需拡大、経済の活性化において歓迎すべきことと理解しています。しかしながら、急激に進む原材料価格の上昇分を企業とりわけ中小企業は十分に価格転嫁できておらず、利益状況が著しく圧迫されている状況にあるなか、中小企業が持続的に賃上げを実行していくのは早晩限界に直面することは間違いありません。

雇用者の7割が働く中小企業が持続的に賃金を引き上げていくことができれば、国民の消費購買力は高まり、内需拡大に大きく寄与することは間違いありません。しかし現実には、企業間取引において労務単価の上昇分を取引価格に加味することは、取引の力関係に左右されるため容易でなく、ほとんどの場合は不可能です。

当会では、原材料価格の上昇分の円滑な価格転嫁を進めるとともに、賃金問題は人権にかかわる問題であるととらえ、企業規模間での賃金格差(しわ寄せ、低工賃での取引)を是正する政策を展開し、真の公正取引の実現に向けた政治的行動を期待しています。公正取引の実現に向けた貴党の政策やお考えをお聞かせ下さい。

(4)「中小企業憲章」の国会決議、ならびに「中小企業担当大臣の設置」についてお考えをお聞かせ下さい。

当会では、中小企業が直面している様々な困難や矛盾を克服し、豊かな日本経済を実現するためにも「中小企業憲章」を現在の閣議決定に留めず、国民の総意である国会決議とすることが重要と考えています。また経済の大部分を占める中小企業を、政府の政策の中軸に据え、総合的に展開していくためにも中小企業担当大臣の設置が必要と考えます。この点について、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

(5)中小企業の持続的発展に向けた中長期的な道筋について、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

コロナ危機下での緊急制度融資は、多くの中小企業に急場を凌ぐ猶予を与えることに寄与しました。今後は、この膨張した債務の返済と企業体力の回復の両立が求められます。しかし中小企業をめぐる経営環境は追い打ちをかけるように厳しさを増しており、回復、そしてその先の発展に向けては相当の時間を要することになると考えます。そうしたなかにあっては、事業を断念する企業も多数生み出されることも危惧されます。傷ついた中小企業が回復軌道に向かい、さらなる発展を実現していくには、各社の自助努力は当然としながらも、中小企業経営の先行きに展望や希望を持つことのできる、国家としての明確なビジョンが不可欠です。この点について、貴党のお考えを聞かせください。

回答一覧PDF

全質問・全回答の一覧(PDF)です。