調査・研究・提言

各政党への愛知同友会からの質問状に対する回答(2023年4月統一地方選挙)

愛知同友会の高瀬喜照会長名で各政党(政党要件を満たし、かつ愛知県議会議員選挙に候補者を擁立する政党のうち、愛知県内に県連等の本部機能を有する政党)に対して公開質問状を提出し、以下の回答をいただきました。

  1. 明らかな誤植については、修正の上掲載しています。
  2. 質問については各400字以内でお願いしました。到着順に上段より掲載しています。

質問趣旨

新型コロナウイルス感染症の流行に出口が見え始めるなか、経済社会活動はこの間徐々に平常化に向かってきました。しかしパンデミックとその後発生したロシアによるウクライナ侵攻が影響し、世界的なサプライチェーンの乱れ、欧米を中心とする労働力の偏在と労働参加率の低位安定によって引き起こされた賃金上昇、エネルギー価格の高騰により、欧米経済は高インフレとの戦いのさ中にあります。海外中央銀行の金融政策変更により日本円との金利差は拡大し、実質実効為替レートは1970年代水準にまで落ち込みました。結果、日本の交易条件は極度に悪化し、国内所得の海外流出が発生すると共に、輸入物価の上昇が国内中小企業の利益状況を大きく悪化させ続けています。さらに2023年はコロナ危機下で実施されたゼロゼロ融資の利払いが開始されます。中小企業の利益状況が毀損されているさなかに開始される利払いがサイレントキラーとして作用すれば、2023年はパンデミックによる経済危機が債務危機に転化する恐れが高まる年とも言えます。こうした状況のなかで国民生活は実質賃金の大幅減に直面し、暮らし向きを悪化させています。

愛知県内の中小企業はこうした影響をより顕著に受けています。愛知県経済に大きな影響力を持つ自動車産業は、半導体の供給不足により生産調整が断続的に発生し、関連する中小企業は休業や雇用調整をせざるを得ない状況です。また全国平均よりも大きな光熱費上昇に直面していることで、企業のみならず家計も重い負担を強いられています。3年におよぶコロナ禍で消耗した中小企業の経営体力は限界に追い込まれつつあるなかで、海外中央銀行のインフレ退治のための利上げによる景気のオーバーキルが発生すれば、愛知県内中小企業はさらなる苦境に立たされることになります。

中小企業の直面する困難は、地域経済、日本経済の落ち込みと疲弊に直結し、国力の減退に拍車をかけます。こうしたなか、地域で雇用を守り安定させ、疲弊する地域経済を再生するためには、事業所数の99%、雇用の70%を占める地域の中小企業へのより実効性ある政策展開が不可欠です。当会では日本経済・日本社会における中小企業の役割を正当に評価し、豊かな国づくりに向けた諸政策の柱に中小企業を位置付けることを謳った「中小企業憲章」の制定を政府に提案し、同憲章は2010年6月18日に閣議決定されました。また各自治体で取り組んできた中小企業振興基本条例は、全国47都道府県と1741市区町村(2023年1月27日時点)で施行され、中小企業に基軸を置いた政策展開を進め得る環境が整いつつあります。愛知県でも2012年に「愛知県中小企業振興基本条例」が施行され、県内24市町が中小企業振興基本条例を保有するに至っています。今後は政策全般にこの精神を具体的に反映させることが求められると考えています。以上の趣旨を踏まえ、以下のご質問をさせていただきます。

質問事項と事項別回答PDF

質問事項タイトルをクリックすると、その質問への各党の回答(PDF)が表示されます。

(1)「愛知県中小企業振興基本条例」を具体化する方策をお聞かせ下さい。

2012年10月、愛知県中小企業振興基本条例が全会一致で可決され、昨年10年を迎えました。当会では愛知県と連携し記念の集いを開催するなど、本条例制定以後、その実質化をめざし運動を進めて参りました。

本条例では中小企業を「経営者と従業員の創意工夫によって、新たな事業や商品、サービスを生み出すとともに、地域における新たな雇用を創出するなど、地域経済の活力の維持向上の源となる存在」と位置付けています。この主旨をより実効性あるものにしていくためには、中小企業個々の経営努力のみならず本条例の理念に基づく具体策が必要と考えています。御党のお考えをお聞かせください。

(2)食料やエネルギーの国内・域内自給率引き上げについて、御党のお考えをお聞かせ下さい。

2022年は日米の金利差拡大を背景に、為替相場は急激な円安に流れました。欧米各国の中央銀行がインフレ退治に向けた急激な利上げに動くなか、日本の金融政策が転換しない限り、一層の円安傾向が進むことが予想されます。日本の諸産業における輸入浸透率が従来と比べて高まっているなかで、円安の進行により需給両面にわたる悪影響がさらに深度を増し、日本の経済社会をさらなる苦境へと陥らせかねないと危惧しています。

とりわけ、その多くを輸入に依存している食料やエネルギーといった国民の生命にもかかわる財の安定的供給は、安全保障上の重要課題の一つです。こうした点に関して当会では、現状の過度な輸入依存体質からの転換を転換し、各地域ごとでの地消地産(地域の需要を地域内の供給によって満たしていく)考え方に立ち、地域の一次産業の積極的振興とともに、休眠発電施設の有効活用、中小規模発電設備の整備により石油やガス、大規模発電依存体質から再生可能エネルギーによる地域エネルギーの自立化を戦略的に進めていく必要があると考えています。御党のお考えをお聞かせください。

(3)物価高や社会保険料、税負担の増加による実質賃金の下落が問題視されるなか、賃金引き上げは国家的課題です。当会では十分な価格転嫁政策だけでなく、賃金問題が人権問題の側面をも持つものであるととらえ、企業規模間での賃金格差(しわ寄せ、低工賃での取引)是正に向けた政策展開と、真の公正取引実現に向けた政治的行動を期待しています。公正な競争環境実現に向けた御党のお考えをお聞かせください。

賃金上昇は、国民生活の向上に寄与し、内需拡大、経済の活性化において歓迎すべきことと理解しています。しかしながら、急激に進む原材料価格の上昇分を企業とりわけ中小企業は十分に価格転嫁できておらず、利益状況が著しく圧迫されている状況にあるなか、中小企業が持続的に賃上げを実行していくことは極めて困難です。

雇用者の7割が働く中小企業が持続的に賃金を引き上げていくことができれば、国民の消費購買力は高まり、内需拡大に大きく寄与するとともに、長期にわたるデフレ経済から脱却していくことも期待できます。しかし現実には、企業間取引において賃金の上昇分を取引価格に転嫁することは基本的に不可能です。こうした実情を踏まえ、中小企業における持続可能な賃金引き上げを担保する公正取引実現に向けた御党の政策姿勢をお聞かせください。

(4)御党の考える愛知県内中小企業に対する重点政策についてお聞かせください。

ここまでお聞きしたことにとらわれず、御党のお考えになる愛知県内中小企業に対する重点政策についてお聞かせください。

回答一覧PDF

全質問・全回答の一覧(PDF)です。