調査・研究・提言

各政党への愛知同友会からの質問状に対する回答(2025年7月参議院議員選挙)

愛知同友会の髙瀬喜照会長名で各政党(政党要件を満たし、かつ愛知県内に県連等の本部機能を持つ政党)に対して公開質問状を提出し、以下の回答をいただきました。なお、当地(愛知県および名古屋市)との関係を踏まえ、日本保守党へも例外的に公開質問状を送付しました。

1.明らかな誤植については、修正の上掲載しています。
2.質問については各400字以内でお願いしました。
3.到着順に上段より掲載しています。
4.社会民主党愛知県連合、日本保守党からは、残念ながら期限までに回答を頂くことはできませんでした。ご了承ください。

質問趣旨

世界経済は、不安定な政治状況を背景に金融市場や政策運営をめぐる不確実性は高まっており、今後金融市場を中心にどのような影響を及ぼすことになるのか見通すことは困難な状況です。とりわけトランプ政権発足による、米国内のインフレ再燃、国際貿易の萎縮が顕著になれば、株価の大幅な下落が世界に波及し、世界経済はリセッションに向かいかねません。そこへ、失速した中国経済が世界経済に悪影響を拡大させる恐れもあり予断を許しません。

現状の日本経済は、マクロレベルでは景気が緩やかに持ち直していると評価されていますが、日本経済の屋台骨を支える中小企業を取り巻く情勢は厳しさを増しています。経済全体が需要不足状況から抜け出していない中、引き締めに舵が切られた金融政策の下、借入金利の上昇はすでにリーマンショック前の水準に達しようとしています。また、最低賃金水準の引き上げとかつてない人手不足を背景とした賃上げ圧力は、適正取引が十分に確保できない中小企業にとって激烈な淘汰の波となりかねません。

当会では日本経済・日本社会における中小企業の役割を正当に評価し、豊かな国づくりに向けた諸政策の柱に中小企業を位置付けることを謳った「中小企業憲章」の制定を政府に提案し、同憲章は2010年6月18日に閣議決定されましたが、現実の諸政策への反映は十分ではなく、中小企業は困難を深めています。中小企業の直面する困難は、地域経済、日本経済の落ち込みと疲弊に直結し、国力の減退に拍車をかけます。疲弊した地域経済を立て直し日本経済を再生させるためには、事業所数の99%、雇用の70%を占める地域の中小企業へのより実効性ある政策展開が不可欠です。その意味で今後は一層「中小企業憲章」の理念を政策全般に具体的に反映させることが求められると考えます。以上の趣旨を踏まえ、ご質問させていただきます。

質問事項と事項別回答PDF

質問事項タイトルをクリックすると、その質問への各党の回答(PDF)が表示されます。

(1)需要不足克服策(需要拡大策)について

日本経済は緩やかな回復基調にあるとの見方がされていますが、輸入物価の上昇を起点とした物価高により実質賃金はマイナス域から出ていません。また税や社会保険料の負担増は、可処分所得を減少させ、需要不足を引き起こしています。こうしたなか、現在の需要不足状況からの脱却には逆進性の指摘される消費税負担の軽減、ないし消費税そのものの撤廃をも視野に入れた大胆な政策転換が求められると考えます。

長く続く需要不足は、物価高、労務費上昇、金利上昇などの多重の困難に直面している中小企業の体力を奪い、持続的に物価と賃金が上昇するインフレ経済定着の阻害要因でもあります。景気を安定的に回復させるには、地域経済に根差し、雇用の圧倒的多数を支える中小企業の持ち直しと強化が決定的に求められると考えます。こうした観点から、御党としてどのように需要拡大を実現していくかお考えをお聞かせ下さい。

(2)中小企業の持続的賃金引き上げを担保する商慣行の確立(公正取引の実現)について

賃金上昇は、国民生活の向上に寄与し、内需拡大、経済の活性化において歓迎すべきことと理解しています。しかしながら、企業とりわけ中小企業を取り巻く取引環境は依然厳しく、利益状況は著しく圧迫され続けています。中小企業が持続的に賃上げを実行していくのは早晩限界に直面することは間違いありません。雇用者の7割が働く中小企業が持続的に賃金を引き上げていくことができれば、国民の消費購買力は高まり、内需拡大に大きく寄与することは間違いありませんが、現実には、企業間取引において労務単価の上昇分を取引価格にすべて転嫁することは、取引の力関係に左右されるため容易でなく極めて困難です。

このようななか、一部識者の主張してきた「中小企業再編論(中小企業の低生産性の原因はその規模にあり、規模拡大が見込めない小規模企業は退出すべきとする理論)」に依拠した政策的見解が、昨今再び注目されています。この見解の依拠する日本の低生産性の要因を中小企業の量に求める主張は、すでに多くの研究者により理論的誤りが指摘されています。その大要は、①日本の中小企業数は、他の先進国と比較しても人口比では多くはない、②中小企業の多寡と一国経済の「生産性」の高低には因果関係はない、③歴史的に見れば、中小企業の量的拡大と生産性向上は正の関係にあった、との三点に要約されます。日本の中小企業の実質労働生産性(物的労働生産性)は世界でもトップクラスであるにも関わらず、名目の労働生産性は伸び悩んでいるのが現実です。つまり一国レベルでの生産性向上、GDP拡大の前提は、中小企業を再編することではなく、市場環境における不公正な取引条件(しわ寄せ、低工賃での取引)の是正を徹底して進めることをおいて他にないと当会では考えています。貴党のお考えをお聞かせ下さい。

(3)企業倒産が激増するなか、日本経済の持続的発展を実現するための中小企業支援策について

新型コロナウイルス対策として実施された中小企業向けの資金繰り支援を巡り、政府系金融機関が貸し付けた約20兆6000億円のうち、7.6%にあたる1兆5000億円超が「返済困難」となっていることが会計検査院の調べにより明らかとなりました。金利上昇や物価高で中小企業の経営環境が厳しさを増すなか、膨らんだ債権の回収が課題となっています。さらに今後は、金利上昇が体力の乏しい企業に追い打ちをかけることは必至です。そこへ米トランプ政権の関税措置により、国際貿易の萎縮のみならず、サプライチェーンの米国シフトによる国内投資のさらなる抑制が懸念されます。中小企業に影響が及ぶのは時間の問題といえます。中小企業の弱体化は国力低下と同義です。貴党のお考えをお聞かせ下さい。

(4)東京一極集中の是正と、自立した地域経済の再生政策について

東京一極集中に歯止めがかからないなか、地域経済の衰退が加速しています。日本経済は地域経済の集合であることからも、自立した日本経済は自立した地域経済の再生をおいて他にないと考えます。この点について貴党のお考えをお聞かせ下さい。

(5)現行の「中小企業憲章」の見直しと国会決議、ならびに「中小企業担当大臣の設置」について

当会では、中小企業が直面している様々な困難や矛盾を克服し、豊かな日本経済を実現するためにも「中小企業憲章」を現在の閣議決定に留めず、国民の総意である国会決議とすることが重要と考えています。その観点から、現行の憲章を日本国民の総意とするために改めて全国民的議論に付し、そのなかで取りまとめられた「中小企業憲章」を「新たな」ものとして国会決議していく道筋を求めています。さらに、経済の大部分を占める中小企業を、政府の政策の中軸に据え、総合的に展開していくためにも中小企業担当大臣の設置が必要と考えています。この点について、貴党のお考えをお聞かせ下さい。

回答一覧PDF

全質問・全回答の一覧(PDF)です。