活動報告

金融委員会-金融講演会(2月19日)

経営者はマクロ経済に強くなれ!

山口 義行氏  立教大学経済学部教授

150名が参加した金融講演会

150名が参加した金融講演会

「アベノミクス」では景気は回復しない

立教大学の山口義行教授を講師に招いて金融講演会が開催され、150名が参加しました。

中小企業経営者に必要な力として山口教授は、経済を正確に「読む力」、自社経営を常に「問う力」、自社の限界と可能性を知り他分野へと「つなぐ力」を基本認識として挙げたうえで、マクロ経済の現状について解説しました。

2014年の日本経済は最終的にマイナス成長と、「アベノミクス」で期待された景気回復・経済成長効果はありませんでした。にも関わらず、アベノミクス効果が「いずれは波及してくることを期待」するような世論が強い背景には、マスメディアのミスリードが大きく、新聞やテレビの報道内容と実際の経済状況には大きなかい離があると指摘しました。

報道などには景気に関して「3つの勘違い」があり、アベノミクス効果をいくら待っても庶民や中小企業に良い効果は来ないといいます。

1つ目は「大企業が儲かれば景気が良くなる」ことで、実際トヨタなどは過去最高益を上げました。しかし経済はマイナス成長であり、大企業の利益が全体に行きわたる「トリクルダウン」は起こっていないことと、大企業の儲けは必ずしも景気に連動しないことを示しています。

2つ目は「円安になれば輸出が増えて景気が良くなる」ことです。2012年に1ドル80円だった円ドル相場が、現在は120円近くになっています。これによって例えば自動車1台当たりの輸出額は大幅に上がりましたが、輸出台数は増えていません。仕事そのものを増やすことには結びついていないのです。円安政策も、全体として景気を良くすることにはつながっていないのが現実です。

「貢献」から新ビジネスへ

3つ目は「物価が上がると消費が増える」ことです。これは「物価が上がると通貨の価値が下がるので、現金資産の目減りを嫌って消費が増える」という理屈です。しかし常識的に考えて、消費者は物価が上がれば生活防衛のために節約をします。このため売れ筋商品も安くなり、企業の利益は圧縮されます。物価を上げることで景気が良くなることはないのです。

金融緩和や公共事業乱発でかなり無理をして経済の高揚感を煽ったのがアベノミクスであり、2015年は無理をした反動がくる「潮目が変わる」年になるのではないかと警鐘が鳴らされました。

こうした不透明な情勢の中で中小企業が発展していくためのキーワードとして、山口教授は「貢献」「時代との対話」「不満」を挙げます。それぞれの事例として、カンボジアでの貢献を機に東南アジアの長粒種米市場に展開した精米機メーカー、温浴施設の省エネ・コスト削減のコンサルをビジネスにした事業者、何でもいいので「不満」を買い取って他の業者へ売るという新発想が紹介されました。