「けん引役」なき世界経済
~試される「読む力」「問う力」
山口 義行氏 立教大学経済学部教授
中国失速で経済のけん引役が不在に
立教大学の山口義行教授を講師とする金融講演会が、今回は「けん引役なき世界経済の幕開け」と題し、150名の参加で開催されました。
山口氏はまず、マスメディアから「真実」が報道されにくくなっていること、スマートフォンにより既存製品がスマホの1機能に置き換わってきたことに触れ、経営者自らの「時代を読む力」が問われる時代だと指摘しました。
次に昨今の世界経済情勢を解説。リーマンショック後、アメリカに替わって世界経済のけん引役となったのは、急成長を遂げてきた中国でした。しかし、その中国経済も、土地・建築バブルの崩壊と、消費の減速によって生産設備が過剰となり、明らかな失速を迎えています。山口氏は、中国政府が「経済が現状を打開するまで最低5年間はかかる」と述べていることを紹介し、戦後初めて世界経済は「けん引役」を失うという局面に入ったと指摘しました。
ごまかせない経済停滞の実態
日本に目を向けると、メディアでは日経平均株価の値上がりを主な根拠に「景気回復」の文字が躍ってきましたが、現実の経済は、外需の失速に加えて個人消費など内需も弱く、GDPは2期連続でマイナスです。
また、日本政府が主導してきたGPIFの年金基金による株価高値維持も限界を迎え、日経平均は1万7000円を割る水準に下落。山口氏は日本経済も「ごまかし」が効かなくなったと指摘しました。
こうした背景の中、現実の日本経済について山口氏は、愛知同友会の2月期景況調査において、各指標の急激な悪化に言及。特に製造業において悪化が顕著であることを挙げ、「景気は回復どころか停滞、すでに本格的な不況も始まりつつある」と憂慮を示し、危機感を持って自社の存在意義を問い、変革することが必要であると警鐘を鳴らしました。