活動報告

合同入社式 記念講演(4月1日)

どんな目的で働くのか
~ライスワークからライトワークへ

杉浦 敏夫氏  スギ製菓(株)

杉浦 敏夫氏

杉浦 敏夫氏

4月1日、会員企業92社から209名の新入社員、経営者など総勢338名が参加し、合同入社式が開催されました。記念講演として行われたスギ製菓の杉浦敏夫氏の報告概要を紹介します。

自分を売る気持ちで

私は以前、ダンボールの製造会社で働いていました。自分の成果が給料に結び付く営業職を希望していましたが、商品を売る知識を身につけるため、まず研修で製造の仕事をし、それから営業に移ることになりました。

ある時、工場長から「安く売るなよ、自分を売ってこい」と言われました。商品を安く売ることは誰にでもできます。しかし、簡単に安く売ってしまうと利益が減り、経営が成り立ちません。そうした意味を込めて、伝えてくれたのだと思います。

営業では多くのお客様に会いました。「怖い」「行きたくない」と感じる時もあり、壁を作ってしまうこともありましたが、先輩から、「自分から嫌うな」という言葉をもらいました。自分から壁を作ると、相手との関係が発展することはありません。これから社会に出るみなさんにも、自分から可能性を狭めることはしないでほしいと思います。

中小企業とは

日本にある事業所の99.7%は中小企業です。そして労働者の約7割が、中小企業で働く私たちの仲間です。これだけでも、日本経済における中小企業の存在の大きさが伝わるでしょう。つまり、中小企業が良くならない限り、地域が元気になることはありません。

また中小企業は、社員と経営者との距離が近く、共に助け合い、学び合い、育ち合いながら人生を送ることができる場でもあります。これは中小企業ならではの魅力です。さらに、一人ひとりの役割が大きく、大企業では何百人も入社した中の1人であるのに対し、中小企業では新入社員の存在は、それだけで価値があります。努力が成果に直結するため、仕事にやりがいを感じやすいといえます。

当社でも、「東北に工場を作ろう」という社員の意見をきっかけに、宮城県塩釜市に工場を建てました。課題はありますが、震災復興の力になれるよう頑張っているところです。このように、中小企業では会社への思いを経営者と一緒に形にしていくことができます。社員のみなさんの頑張りが、企業の成長につながります。入社した会社に自信と誇りを持って働いてください。

学生との違い

学生時代は“先生と生徒”という、一方的に教えられる関係でした。しかし社会人では、立場に関係なく互いに成長し合うという関係になります。ただ教えられるだけでなく、疑問に思うことをどんどん質問することが、先輩社員の成長の機会にもなります。遠慮せずに、「なぜ」と感じたことを大切にしてください。

私は、「社員は育てるのではなく育つもの」と考えています。「人は人で磨かれる」という言葉があるように、人は良くも悪くも互いに影響を与え合う存在なのです。

新入社員のみなさんには、まず挨拶をしっかりすることを心がけてほしいと思います。良い挨拶は、周りの人にも良い影響を与えます。相手が気持ち良くなる、元気な挨拶をすることが新入社員の役割です。

社会人としての決意を胸に

社会人としての決意を胸に

夢と目標を持とう

社会人になると、仕事に関わる時間が1日の大半を占めるようになります。つまり、「どう働くか」がその人の人生に大きく影響するのです。いやいや働くのと、生き生き働くのとでは、得られる成果が全く違います。夢や目標を持つことは仕事とプライベートの充実にもつながります。入社してすぐ仕事について夢を持つことは難しいかもしれませんが、まずは仕事に興味を持つことから始めてください。分からないことは臆さず尋ね、会社への理解を深めてもらえると嬉しいです。

私は「適材適所」ではなく「適所適材」という言葉を使っています。適材適所では、自分の得意分野の部署に入れてほしいという考えになりますが、与えられた仕事に100%の力を発揮する努力をしてほしいと思っています。確かに、好きな部署を任されれば、より良い結果を出すことができるかもしれません。ですが、条件が揃ったらやろうと考える人は、得てしてほとんど行動に移さないものです。与えられた仕事で活躍できるよう、行動を起こしていってほしいと思います。

ライスワーク ライフワーク ライトワーク

「ライスワーク」は、生活をする(飯を喰う)ために働くこと。「ライフワーク」は、仕事とプライベートのどちらも充実させて働くこと。そして「ライトワーク」は、人間として成長し、自分が輝くことで周りを輝かせて働くことです。

今ある仕事は、色々な形で世の中の役に立っているから残っています。会社の理念を学び、その仕事が存在する理由を知ることで、仕事にやりがいが感じられます。会社のことを知らないままでは、ライスワークを続けることになりかねません。会社の理念と自分の生き方を重ね合わせ、仕事ではなく『志事』―自分の欲を超えて、周りに喜ばれる仕事、周りを幸せにできる仕事―を目指してもらいたいと思います。

主体者になろう

私は「主体者なら知恵が出る。傍観者なら愚痴が出る」という話をすることがあります。前者は問題意識と責任を持って仕事に向き合うため、仕事をやりきることができ、次の目標につなげていくことができます。後者の場合、一歩引いた立場から仕事を「やらされている」ととらえがちなため、自分の成長につながらないのです。

当社では50kmウォークを研修に取り入れています。これは感謝の気持ちを心と体で学ぶことが目的です。人生と同じで、サポートする人がいなければ、50km歩くという目標は達成できません。主体者として参加した人は、サポートしてくれた人に感謝の気持ちを持ち、自分に何ができるかという思いを次の目標につなげます。しかし、傍観者の場合は「やらされている」としか感じず、ゴールしてからも次につなげることはできないのです。目的を履き違えてしまうと、同じことをしても得られる成果が全く違います。みなさんには、主体者として仕事に取り組み、愚痴ではなく知恵を出してもらいたいと思います。

この研修のもう1つの目的は、辛抱する力を付けることです。今は、分からないことはインターネットですぐに調べられますし、欲しい物は簡単に買うことができます。一方で、辛抱する機会が減っていると思います。辛抱できると心の中心に棒ができ(心棒)、精神的な柱になるのです。心棒がある人には“信望”が集まり、会社にとっても、地域にとっても本当に必要な存在となっていきます。辛抱から心棒を作り、信頼される人を目指しましょう。

新入社員のみなさんへ

私の座右の銘は「不易流行」という言葉です。変えてはならない大切なものを守るためには、時代に応じた変化を取り入れることが大切という意味です。「企業は人なり」というように、100年、200年と続く企業を目指すために、根となる社員が本当に大切です。みなさんは会社の新しい変化の主体者として、まずは元気な挨拶を通じて会社に良い影響を与えてください。

主体者となるには、自ら考える癖をつけることも大切です。何も疑問を持たずに右から左へ流さないでください。そして、一番大事なことは「感謝力」を磨くことです。自分は運が良いと思える人は感謝する気持ちを持つことができます。感謝することは、相手のことを考え、期待に応えよう、喜ばせようと考えて行動するエネルギーになります。会社の歴史を作る主体者として、共に頑張っていきましょう。

【文責 事務局・佐藤】