活動報告

第17回 あいち経営フォーラム(第1~第8分科会)

第1分科会

小規模経営者の成長とは ~企業成長のための第一歩

河合 盛生氏  三和木工(株)(豊川・新城地区)

会社発展と自己成長を目指して挑戦し続けたい

創業113年を迎える建具屋の4代目である河合盛生氏は、同業他社での修業時代に職人の魅力を感じ、自社に戻ってからもその技術に磨きをかけてきました。

ゲストとして参加した同友会で「経営の勉強」の重要性に、河合氏は気がつきます。また、当時社長であった父親の急逝により会社を継ぎ、責任の大きさを自覚するとともに自分が成長する必要性を感じて入会。経営指針を作成し実践していくことで、自身だけでなく従業員との関わりも徐々に変わり、身内以外の従業員を採用することもできました。

同友会活動を通じて「仲間の大切さ」「行動する覚悟」「変化への気づき」を得た河合氏は、さらなる発展のために自己の成長を目指して「挑戦」を続けたいと語りました。

討論では「自社の成長のために必要なこと」として、社内環境の整備や経営者自身が人間として成長することの重要性が討議されました。

(有)晃新  山田 晃弘

第2分科会

「永続企業」になるために ~「守るもの」と「変えていくもの」

各務 雅博氏  (株)武市ウインド名古屋(守山地区)

「病気の父を見て覚悟が決まった」と各務氏

第2分科会では、商業施設の設計・施工、不動産を営む武市ウインド名古屋の各務雅博氏の報告を聞き、「永続企業」になるために何をなすべきかを学びました。

先代である父から事業を承継した各務氏は、幼少期に見た、お客さまの店の繁盛のために鉛筆を一心不乱に走らせる父の背中に、自身の経営者としての原点があると語ります。転機は、父が病気に倒れたとき。父の震える背中から事業を引継ぐ覚悟が決まったといいます。また、社員から「社員をなんだと思ってるんだ」と言われた時が、「労使見解」を理解できた瞬間だったと解説しました。

印象的だったのは、各務氏が第2創業として取り組んでいることが、父が創業時に取り組んでいたことと「似てきている」という話でした。100年企業を目指して、他人承継に対する思いにも言及した中身の濃い報告となりました。

グループ討論では、「守るもの」と「変えていくもの」について、参加者が先代・後継それぞれの立場で、自社に置き換えた具体的な討議を行うことができました。

トライアローズ税理士法人  西本 尚史

第3分科会

金融の課題を避けては、事業承継は成り立たない
~現経営者・後継者共に必要な金融の学びと実践

石井 元博氏  東海EC(株)(瑞穂地区)
木全 哲也氏  (株)三恵社(北第2地区)

左から石井氏、木全氏

第3分科会では事業承継を切り口として、金融課題について学びました。

事業承継には親族内承継、他人承継があり、渡す側、受け取る側それぞれに難しい課題があります。

40歳で承継した石井元博氏は、その2年前から金融に関わり始め、取引先の銀行をメガバンクから地方銀行中心に変えていったといいます。ポイントとして、銀行への情報開示の必要性、相談相手の大切さ、経営理念の引き継ぎの重要性などを挙げました。

木全哲也氏は、先代社長が倒れた際に事業を引き継いだ母親に地銀の励ましがあり、また自身の承継においても地銀の理解でスムーズに運んだといいます。覚悟を示すためあえて経営者保証を提供していること、複数行と関係をつくっていること、長男を後継者として40歳頃を目途に承継を計画していることなどを語りました。

親族内承継も相続をめぐって多額の現金が必要になるといいます。討論では、銀行に相談できる環境づくりの大切さや、渡す側・受ける側とも経営の方向性を明確にしておく必要性が確認されました。

千種土建(株)  三好 正勝

第4分科会

激変の情勢を読み解き、自らの力に
~地域からの期待と信頼に応える中小企業へ

鈴木 誠氏  愛知大学地域政策学部教授
犬塚 晴久氏 愛知県産業労働部産業労働政策課主幹

今後の経営にあたっての愛知県の現状を学ぶ(写真は鈴木氏)

報告者の鈴木誠教授からは、現在の社会情勢の中で、地域における中小企業の存在がどうあるべきかを提起いただきました。そのなかで鈴木教授は、(1)産業自治を通じた地域づくり、(2)まち(コミュニティ)・ひと(市民)・しごと(産業)をどのように結んでいくか、(3)それぞれの地域に即した条例づくりとその活用が大切であることを強調。豊富な事例から、現在の地域や中小企業が直面している情勢と、その変化への向き合い方が報告されました。

愛知県の犬塚晴久主幹からは、愛知県についての現状や課題、生産性や雇用環境の変化、それらへの対応策としての「あいち産業労働ビジョン2016-2020」について報告いただきました。

グループ討論は「地域社会の期待に応えるため、どう企業づくりに取り組むか」をテーマに意見交換し、今後の経営を考える上で、愛知の現状を学んだ分科会でした。

(株)CHERRY STONE  尾ノ上 智美

第5分科会

経営指針の成文化と共有
~思いを伝えるために必要な経営者の姿勢

小嶌 貴満氏  GROWTH(株)(北第2地区)

「お客様に120%の恩返しを」

報告者の小嶌貴満氏は水道工事業者として創業するも、クレームが多発し、お客様に謝るのが日課でした。「会社を何とかしたい」との一心から同友会に入会します。そして、経営指針講座を受講し経営指針を作成しました。

当初は社員に指針が浸透せず反発を買いましたが、小嶌氏は固定観念を捨て、社員の立場に立つことにより共有化に成功します。「豊かな心を持つ経営者・社員になって、お客様に120%の恩返しをすること」、これが小嶌氏の経営指針の根底です。

グループ討論では、(1)何のために経営指針を成文化しますか、(2)社員との夢の共有のために必要な経営姿勢とは、の2点を討議。経営指針講座の受講者も多く、活発に意見交換ができました。座長の中島雅継氏の明瞭な主旨説明とまとめも手伝い、心揺さぶる学びとなりました。

「学びは即実践」、さあ今日から共に行動しましょう。

(有)セトセラミック  鈴木 重成

第6分科会

同友会らしい人を生かす経営とは
~労使見解から学ぶ人間尊重の経営

加藤 明彦氏  エイベックス(株)(天白地区)

「元は自分」と言い続ける

第6分科会では、加藤明彦氏に自社の経営体験を中心に語っていただきました。

加藤氏は同友会に入会して労使見解と出合い、経営者の経営姿勢を確立することが、社員との信頼関係を築くことだと気付きます。社員が自由にものを言えない社風を改善し、社員に任せ、自らの手で成長する状態をつくり、責任は経営者がとる覚悟で臨みました。

リーマンショック時も、他社よりも早く利益を出せるよう雇用を守る覚悟を決め、銀行と掛け合いました。またその間、会社を社員に任せたことが信頼関係を深めることにもなったそうです。いずれは社員もいなくなるので、採用と育成を継続し、学んだことは後輩に教え「やらされ感」をなくすなど、社員の能力開花に取り組んでいます。

「元は自分」であると言い続けている加藤氏。経営者が社員の姿を見て自らを振り返ることが、会社の発展に繋がるという学びを得ました。

(株)ユニオンサービス  松原 正治

第7分科会

人が豊かに成長できる採用と共育
~人がいきいき働く会社に

吉田 昌容始氏  (株)エースベーキング(西春日井地区)

経営者の成長が会社の前進に

採用と共育を題材にした当分科会では、新卒採用を行うもののなかなか定着せず、新卒者の退職が続いた苦労とその改善までの経緯について、エースベーキングの吉田昌容始氏が報告しました。

企業を永続させるためには新卒採用は不可欠であり、その存在が企業の発展にもつながります。また、経営者と社員が共に育つ「共育」の考え方が大切です。社員だけに変化を求めるのではなく、経営者が学び育つことで課題を共有し、解決していく。これを実践することで会社が好転し、前進していることが感じられた報告でした。

「人がいきいき働く会社にするために採用・共育をどう考えるか」のテーマのグループ討論では、仕事を伝える側・伝えられる側双方の課題を話し合い、課題を前向きに捉える姿勢が感じられました。

中小企業は経営者と社員の距離の近さが強みです。両者の意思疎通が良いほど企業が抱える問題を早く把握でき、人が辞めない会社、いきいき働ける会社へと近づくことを学べた分科会でした。

(有)まごのて  岩森 健一

第8分科会

仕事に誇り、やりがいが生まれる就業規則
~社員同士が気持ちよく働ける職場づくり

川中 英章氏  (株)EVENTOS(広島同友会)

空振り三振ができる社風

川中英章氏は、若い社員の意見が一切通らない職場に嫌気がさし起業しました。少ない退職金を元手に店舗を持たずに始められるイベント向け飲食業から始め、レストランを経営するまでに成長。しかし、社員が他人事(ひとごと)のように自社の不満を言い、中途採用社員の給与の格差が原因で次々と辞めていきました。

そんな中、川中氏は創業当時の想いを思い出し、理念、ビジョン、就業規則を作って共同求人に参加しました。給与規定に従った雇用をし、社員にチャンスを与え、安心して空振り三振ができる社風をつくり、社員との信頼関係を築いた結果、社員が我が事として自社を語るように変わっていったと言います。

最後には、社員がいきいきと働き、心からの笑顔が溢れる現在の様子を動画で紹介。常に社員のことを考えながら人情ある就業規則として改変を続ける川中氏の弛まぬ努力が、社員に愛される会社、一緒に成長する会社をつくるのだと感じました。

(株)くむ  向井 真人