活動報告

金融アセスだより(第131回)

経営者の高齢化問題

中小企業経営者の年齢はここ20年で急激に高齢化しており、現在、66才がピークになっています。一方、経営者の平均引退年齢は約70才と変化がなく、今後5~10年の間に、全国380万社のうち100万社前後で事業承継が実行される計算となります。

60才以上の経営者に対するアンケート調査によると、約半数が廃業を予定しています。その理由のうち「当初から自分の代でやめようと思っていた」「事業に将来性がない」が一番多くて計66.1%ですが、「子どもがいない」「適当な後継者が見つからない」という回答が計28.6%にも達しています。

中小企業の事業承継をスムーズに進めないと、廃業等により多くの会社がなくなり、ひいては我が国の雇用問題に大きな影響を与えることが必至です。そうした危機感からか、中小企業庁は昨年12月、10年ぶりに「事業承継ガイドライン」を改訂しました。

事業承継ガイドライン

事業承継の類型を、親族内承継、従業員による承継、社外への引継ぎの3つに分類する手法は従前通りですが、改訂版には幾つかの特徴があります。

第1は、事業承継に向けた準備として、経営状況・経営課題の把握(見える化)、事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)の必要性を強調していることです。第2は、社外への引継ぎ、すなわちM&Aに重心を移しているように思えることです。第3に、廃業という問題を正面から受け止め、その際の諸問題や事前準備を説いていることです。

また、これは主として親族内承継の場合と思われますが、事業承継の円滑化に資する手法として、種類株式や信託、生命保険の活用や、持株会社の設立などテクニカルな手法についても、かなり踏み込んだ記述がされています。

「事業承継ガイドライン」は活字中心で96頁に及びますが、他に「事業承継ガイドラインマニュアル」も発行されており、こちらは絵が中心で読みやすいものです。いずれも中小企業庁のホームページから見ることができます。是非ともご活用ください。

岩崎法律事務所  岩崎 光記