就業規則に魂を込める
吉田 昌容始氏 (株)エースベーキング
新卒採用にも好影響
10月の労務労働委員会ではエースベーキングの吉田昌容始氏に報告いただき、16名が参加しました。
同社は業務用食パン・菓子パンを中心とする食料品卸売業をしており、4つの営業所と岐阜県可児市にカフェを展開しています。
吉田氏は、就業規則を見直すことは新卒採用にも繋がっていると言います。2009年、リーマンショックを受けて給料を削減しようとしたところ、労働組合が結成され、「就業規則の開示」を求められました。就業規則はあったものの社内に周知徹底がされておらず、実態に伴うよう見直しを行いました。
併せて、5年前より始めた新卒採用をきっかけに、社員の生涯年収や年齢別賃金カーブを考え、現行の給料が適正なのかを見直しました。昔は「いつから来られて、いくら欲しいか」という採用方法で、給与体系は無いも同然だったため、同年齢でも入社時期の景気動向によって給料にばらつきがあったのです。
今後は新卒者も増えていくので、年齢給・勤続給・成長給の3つの柱で評価をし、若手のやる気や成長を引き出す工夫を賃金制度とリンクさせていきたいと考えています。
経営者の意識改革
世間では人手不足が叫ばれていますが、最近の学生の就職観は変化しており、土日休み、残業なしの条件を満たしていなければ、その先にある仕事のやりがいを見てもらえないと吉田氏は言います。
添加物を極力減らし、美味しさを追求したパンを取り扱い365日体制で稼働していますが、年間休日を世間並みにしたいとの想いから、社員が有給休暇を消化できる仕組みをいかにつくるかを意識しています。ただし、人が定着しないことには交替制ができず、会社側が長時間労働や休日に対する意識改革をしなければならないという結論にたどり着きました。
労働時間短縮のための増員や機械化、社員の意識を変える「全力早帰りデー」の取り組みなどで、仕事のメリハリや社員のモチベーションに繋げる工夫をしています。また、長時間労働やストレスで健康を損ねては本末転倒と考え、健康診断の内容も検討しながら、心身共に豊かになれるよう配慮しています。
そして社員の声に耳を傾け、月に一度改善提案を出してもらいながら、みんなにとって働きやすい職場を目指しています。吉田氏は、会社側が一方的に決めたやり方ではなく、働く社員同士が互いを思いやりながら、協力していくことが労働環境改善への近道であると言います。
最後に、「経営指針には当たり前のことだが、就業規則にも経営者の魂を込めていくべきだ」とまとめました。