日本経済再生の道筋
~中小企業が目指す企業
吉田 敬一氏 駒澤大学経済学部教授
日本の経済情勢
駒澤大学経済学部教授の吉田敬一氏を報告者に迎えて東尾張支部例会が開催され、全体で71名が参加しました。吉田氏からは、近年の経済情勢と、日本が目指すべき経済の在り方についてお話しいただきました。
国内生産・輸出が増えていないにも関わらず、大企業は為替によって巨額の利益を得ています。しかし、発生した利益は株主への配当や内部留保に充てられており、国民や中小企業へのトリクルダウンは生じていません。さらに、賃金は増加していないのに税負担が増えているため、個人消費が伸びず景気回復が国民の実感となっていないことが指摘されました。
中小企業の目指す姿
日本がこれまで発展させてきた文明型産業(自動車・家電などの近代的機械工業)は限界を迎えており、経済の2本目の軸として文化型産業(衣食住などの生活必需品産業)の重要性が高まっています。そして、文化型産業の中で力を発揮できるのは、技術力のある同友会型の地域密着中小企業です。しかし現在の日本では、文明型産業に偏っているため、ドイツやイタリアのように両者が共存できるライフスタイルを確立する必要性を指摘しました。
実際、イタリアでは小さな村でも衣食住を地域の中小企業が賄っているので、地消地産の経済循環ができています。それに対し日本は外産地消の状態になっているため、お金は外部に流出してしまい、地域経済の発展につながっていません。さらには、地域でものをつくるだけでなく、販売のできる仕組みづくりに中小企業が関わることが大切だと吉田氏は強調しました。
経営者として「判断」ではなく「決断」すること。また同友会の3つの目的について、自分の言葉で「良い経営者・良い会社・良い経営環境とは何か」を語れるようになることの大切さが述べられ、報告を締めくくられました。
新年最初の支部例会として、自社だけでなく、地域の未来を展望する学びを得られる機会となりました。