活動報告

金融アセスだより(第136回)

「貸し剥がし」の嵐の中で

バブル経済が崩壊した90年代は金融問題が国民的焦点となった時代でした。金融ビッグバンで銀行は不良債権処理に奔走。中小企業へは「貸し剥がし」の嵐が吹き荒れ、国民も「金融機関への公的資本注入の是非」に議論や関心が高まっていました。同友会では、その背景や影響、銀行経営者の責任、金融機関の本来の役割と公共性、新しい金融システムの必要性を強く社会に発信し、「金融機関のあるべき姿」を求める運動が湧き上がりました。

愛知では、まだ金融アセスメント法という名称も決まっていない頃から、若手経営者を中心に金融アセス推進の自主的勉強会を始めました。その後、福岡でまとめられた6つの方針「(1)中小企業家自身の運動にする、(2)現在の金融慣行(物的担保主義・連帯保証制度)の是正、(3)経営環境改革の行動を起こす、(4)中小企業中心の施策への転換、(5)地域の金融システムを守る、(6)経営指針づくりを軸とした経営改善運動」に基づき街頭署名活動等に取り組み、13万筆余りの署名を集め、全国的な運動推進への発火点となりました。

アセス法制定運動の軌跡

その後、100万名の署名、550を超える自治体決議は重みを与え、国会でも討議がなされました。この運動により政・官・マスコミの目が中小企業に向き、同友会が注目される存在となりました。私たち経営者も、自分たち次第で世の中を動かせるという自らの存在への誇りや確信が持てた瞬間でした。

国吉昌晴氏(中同協顧問)は「『金融アセスメント法』制定運動の軌跡」の中で、「歴史的意義を持つ運動」「全国同友会連帯の成果」「政治的課題に真正面から取組んだことは同友会の歴史上画期的なこと」とまとめています。この運動により「リレーションシップバンキング」の指針が打ち出され、日本経済は大きな転換がなされました。

先輩たちが起こした運動のおかげで、今日の経営環境があります。物的担保優先や個人保証による融資割合を減らし、中小企業の潜在能力や事業性を評価する提言が「事業性評価」として、金融行政の柱となる方針になっています。

しかし金融仲介機能の発揮のためには、経営者が事業性を評価される状況にしなければなりません。自らの襟も正し、委員会では運動の軌跡を正しく伝え、経営環境を考えていきます。

日研工業(株)  出原 直朗