活動報告

金融アセスだより(第137回)

疲弊する金融機関

日銀が大規模な金融緩和を始めて5年が経過しました。日銀総裁は黒田東彦氏の留任が決まり、この施策はまだ続きそうです。ただ、この施策のなかで金融機関は体力をすり減らしていると報道されています。

昨年夏、弊社の目の前にある金融機関の支店が移転しました。移転先は別の店舗内なので、実質的な閉鎖です。また、別の金融機関は店舗を建て替え、見た目は大きくなりましたが、別の店舗の営業部門を取り込みました。その一方で、同じ市内に新しく金融機関の支店ができます。

積極的に出店する金融機関、縮小し店舗を減らす金融機関。対照的な経営戦略は興味を引きます。

企業は「環境適応業」

先日、おつきあいのある金融機関の方と話していた時、昨年秋からこの金融機関の方向性が変わったと聞きました。リーマンショックから10年。しかし、未だリーマンショック前の売上や利益を回復できていない企業は多くあります。

中小企業金融円滑化法の適用を受け、それ以来、リスケ(条件変更)の状態のままという企業も多いといいます。そういう企業に対して、この金融機関は円滑化法終了後も「雇用維持」を大義にリスケに応じてきました。また、雇用の維持が見込まれる前提のM&Aを仲介したこともありました。

しかし、業績は上がらない、将来性も見込めない、M&Aもできないという企業については「廃業」を勧めることも増えてきたといいます。その経営者にも従業員にも、「まだ人生はあるから」というのが大義なのです。

時代のトレンドは目まぐるしく変わり、金融機関の大義も変わります。また経営戦略も、常にこれが正解といえるものはありません。ドラッカーは「企業は、環境適応業」と言っています。環境の変化を知るのに、金融機関とのコミュニケーションは有効です。

安藤不動産  安藤 寿