異次元金融緩和やフィンテックなど
野崎 哲哉氏 三重大学・教授
「現代金融の課題~異次元金融緩和などの金融行政とフィンテックなど新たな金融の動向をふまえて」と題し、野崎哲哉氏(三重大学・教授/金融論)を迎えた学習会が開催されました。
ニュースに見える激変
冒頭、老後2000万円不足問題、「貯蓄から投資へ」の政策誘導、異次元金融緩和による地域金融機関(以下、地銀)の危機的状況、米中貿易戦争の長期化と世界経済の減速、フィンテック(ファイナンス+テクノロジー)の進展と暗号資産の台頭、そしてESG投資といった「持続可能な開発目標(SDGs)と金融の問題など、昨今のニューストピックスを紹介。激変する金融経済情勢の具体的表れを提示しました。
その上で野崎氏は、こうした現象に表れている現代日本の金融経済情勢の混沌を、(1)異次元金融緩和の理論的誤りと困難さが増す出口戦略、(2)金融行政の方針転換と地域金融機関の危機、(3)技術革新がもたらす経済・金融の変化に整理します。
金融の直面する困難
本来、実体経済の底上げに向けられるべきだった政策が、金融政策に振り向けられたアベノミクスの第1の矢で、市場に過剰供給されたマネーにより経済危機の火種は拡大し続け、出口戦略は一層困難となってきています。また、地域密着型金融のビジネスモデル化を迫る金融行政の変化に、地銀が対応できずにマイナス金利も相まり、経営の危機的状況が深刻化しています。
さらには、急速な技術革新によるフィンテックの広がりと進行、IT系ベンチャー企業や巨大IT企業が金融面でも存在感を増していることにより、既存の金融システムの安定性が脅かされている現実が明らかにされました。
金融の公共性の回復を
困難に直面するなか、現代の金融に求められるのは、「金融の公共性」の回復です。その意味で、マネー資本主義に踊らず、ネット社会の進展に惑わされることなく、金融アセスメント法の議論に立ち返りつつ、中小企業振興基本条例の取り組みと合わせることにより、「新しい安定した金融システムを、私たち自身で創ることが持続可能な社会の土台となる」ことが強調され、学習会は締めくくられました。