活動報告

金融アセスだより(第149回)

金融機関の目利き力

金融庁は昨年12月18日付で金融検査マニュアルを廃止しました。今後、金融機関は融資先の将来のリスクに応じて柔軟に引当金を積めるようになり、人口減や産業構造の変化を踏まえた審査の目利き力が問われるといえます。

目利き力とは融資の審査において顧客の技術力や販売力などの定性面を含め、事業価値を適切に見極める能力を指します。定性面でのポイントは市場動向、経営理念、社歴、経営者の人柄、社員構成、技術力、販売力、取引先などで、競合や地域経済の状況も勘案した成長性を見極めます。後継者の有無や承継予定も重要なポイントです。

また、2016年には金融仲介機能のベンチマークが作成され、金融機関は自己審査し公表する義務を負っていますが、公表する内容は選択できるものもあります。これらによって、金融機関の姿勢に変化が出てきています。

引当積み増しの動き

先日、預金だけのお付き合いをしていた信用金庫に融資について相談したところ、「以前はともかく今は無理な競争はしない。別の金融機関が頑張っているのでそちらでどうですか」と言われてしまいました。担当者は、「当金庫のルールにより、どうしても金利が下げられない。これまで悔しい思いを何度もしてきたが、今は1つひとつのお取引を大切にし、どれだけ利益が出るかを重視している」と話してくれました。

最近、金融機関の融資コストが上がってきています。なかでも貸倒引当金部分が増えていることが大きな原因で、これは融資先企業の返済能力に疑問を持ち始めたからでもあります。

20年ほど前に問題になった「貸し剥がし」のような事例はないかもしれません。しかし、簡単に融資が受けられる時代とは異なり始め、しっかりと金融機関とのコミュニケーションをとることが、今まで以上に重要になっています。

安藤不動産  安藤 寿