活動報告

2020年度 賃金・労働動向アンケート

社員と共に難局を乗り越える

賃上げの可否(2016年~2020年)

1日も早い終息を願う

新型コロナウイルス感染症拡大による経済への影響が日に日に増すなか、この難局を社員と共に乗り越えようとする必死な中小企業経営者の姿が浮かび上がりました。

愛知同友会では定点観測として4月中旬に「賃金・労働動向アンケート」を行い、531社が回答しました。調査期間中の4月17日に緊急事態宣言が全国に拡大され、県をまたぐ移動の自粛が求められたり、客先への営業も控えたりするなど各社で感染防止に努めつつも、社員の生活は保障せねばなりません。全業種で軒並み売上が減少し、「1日でも早く新型コロナが終息してほしい」という声が多く寄せられました。

安心して暮らせる賃金

今回の調査で特に顕著だったのは、厳しい状況に置かれても賃上げをしようと決断した経営者が半数以上いたことです。その理由でとりわけ多かったのは「士気向上」でした。社会が不安定さを増すなかで、それを社員と共に乗り越えていく、雇用は守ることをきちんと伝え、今できることをしっかりとやっていく姿が垣間見えました。

一方で、4月よりも5月、6月以降の売上の減少や先行き不透明感を訴える中小企業経営者が多いのも事実です。原資が減少しても雇用を守ろうと努めるも、助成金や融資の手続きの煩雑さや申請から実際に現金が入るまでの期間の長さに苦慮しています。

中小企業は雇用の7割を占め、そこで働く社員やその家族が安心して暮らせる賃金にしたい想いは中小企業経営者も同じです。愛知県でも緊急事態宣言が解除されましたが、予断を許さない状況は続きます。そんな時でも安定して賃金が支払える社会が望まれます。

時代の変化に対応を

「同一労働同一賃金」の準備× 業種

世間が新型コロナウイルス感染症拡大の話題1色になるなかでも、働き方改革関連法の中小企業への適用は待ったなしで始まっています。昨年から始まった「有給休暇最低5日取得」は、有給休暇取得率が上がっていることから、休みやすい環境整備が各社で進められていることが推察されます。また、残業時間も29時間以下と答える企業が8割弱を占め、働き方改革が進んでいると見える一方で、今回の新型コロナ感染拡大に伴う営業時間の短縮や自粛などの影響ではないかと考えることもできます。

来年4月からは「同一労働同一賃金」が中小企業に適用されます。これは、正規社員と非正規社員の不合理な待遇格差の解消を目指し、同一企業内でどのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにするものです。この法改正に向けて「準備している」と回答した企業は20.7%と少数で、半数以上は「特にしていない」「わからない」と回答しており、この1年で理解を深め、各社で対応できるよう取り組む必要があります。

価値観が一変するコロナ感染拡大

正社員の時間外労働(月平均)(2018年~2020年)

記述回答では、「在宅勤務などのテレワーク導入を進めた」という声が多く見られました。また、公共交通機関での通勤から自家用車にシフトするなど、各社で感染しないための工夫や、「このピンチをチャンスに変える」「否応なしに働き方改革が進む」という意見もありました。一方で、生産現場でのテレワーク導入の限界を訴える声や、パソコンが品薄で手配困難という企業も散見されました。

コロナ禍が収束した後の世界は、これまでの世界とは一変するでしょう。それは、働き方にも同じことが言えるかもしれません。同友会理念の本質を改めて学び直し、社員が安心して働くことを企業としてどう実現していくのか、先行きが見えないなかでも私たちは考える必要があります。

●期間:4月13日(月)~4月19日(日)
●回答数:531社(建設:90社、製造:146社、流通・商業:85社、サービス:210社)