活動報告

第49回青年経営者全国交流会from岐阜 第16分科会(9月9日)

変革し挑戦する企業へ
~人間尊重の経営から生まれた新たな企業風土

柴田 潤氏  (株)JT

柴田 潤氏

第49回青年経営者全国交流会from岐阜がオンラインで開催され、第16分科会でJTの柴田潤氏(東尾張第2青同)が報告者を務めました。その概要を紹介します。

かつての「本気・本音」

私は、水道、電気、サイディング工事業など様々な仕事の経験を経て、2008年にサイディング工事業として独立しました。

創業1年目はとにかくがむしゃらに働き、2年目は、その働きが認められて工務店を担当するまでになれました。しかし当時の私は、「社員は俺の言う通り仕事をしていれば問題ない」「俺の考えていることを読んで動け」と本気・本音で考えていたため、友人や先輩など多くの方が入社してくれたものの、全員辞めていきました。

経営指針書の重要性を実感

自分のやり方の限界を感じていた頃に同友会の存在を知りました。ここには自分が学ばなくてはいけないものがあると感じ、2014年6月に入会したのです。

入会後、私よりも年下で社員を何人も雇用している同業種の会員と出会いました。その方に、自分もここで働きたいと思うほどワクワクする経営指針書を見せられ、指針書の必要性を認識しました。

その後、先輩会員に教えてもらいながら経営指針書をなんとか成文化します。まず自社の社員が幸せになれる会社を目指したいという思いから「社員がやりがいと生きがいをもって幸せになる」と経営理念を掲げました。

これと同時期に、私より10歳下の方が仕事を探しているという話が舞い込みました。その方は他社からも声を掛けられていたそうですが、当社に入社してくれました。

入社後に「なんでうちに入ってくれたの?」と聞くと、「他社は、仕事面や待遇面の話はしてくれましたが、将来のことを話してくれたのは柴田さんだけでした。だから入社を決めたんです」と言ってもらえたのです。経営指針書をもとに対話する大切さを実感しました。

意見をまとめる練習

入会2年目には、例会づくりの担当者を任されました。ただ、どうにもうまくいきません。参加者は自分の言いたいことだけを言い、「あとは柴田さんがまとめといてね」という有様なのです。

困り果てて先輩会員に相談したところ、「柴田さんの会社の社員はみんな同じ考えで同じ方向を向いているの?」と問われ、「いえ、みんな考え方は違います」と答えると、「じゃあ社員のバラバラの意見をまとめる練習だと思って取り組んだらいいんじゃない?」と言われ、とても心に響きました。

入会3年目、会社では外国人技能実習制度を利用して2名のベトナム人に来日してもらいました。しかし、3カ月経過した頃、2人して「国に帰りたい」と急に泣き出したのです。説明を丁寧にしたつもりでしたが、彼らにとっては想像以上の環境だったことがわかりました。

せっかく日本に来てくれた彼らに、後悔は絶対させたくないという思いで話し合いました。結果、1人はそれでも帰国を選びましたが、1人は残ってくれました。この経験が生き、現在では技能実習生は誰1人脱落することなく働いてくれています。会社にとって、とても大きな力です。人と本気で向き合い、話し合うことの重要性を実感した出来事でした。

それぞれの居場所を

入会4年目のある時、過去に一緒に働いていた先輩社員から、今の会社でうまくいっていないので雇ってほしいという話があり、入社してもらいました。彼は、災害があるとボランティアに駆けつけるような素敵な方ですが、仕事に対してはなかなか情熱が入らず、現場で携帯電話を触っているのを注意すると、「じゃあ給料を下げれば良いですよ」と言うような一面がありました。

社内に彼の居場所をつくりたいと思い、向き合って話し合いを重ねました。現在では若い社員も増え、周りから頼りにされる中で、以前より楽しそうに見えます。彼が居場所を見つける助けを少しはできたと思っています。

入会5年目の当社では、間接業務はすべて私が行っていました。組織が形になり、社員も増えてくる中でしたので、間接業務のための人員を採用することにしました。

そこで知り合いをパートに雇おうと考え、小さな子どもがいても働きやすいように在宅勤務やフレックス制度を導入していきました。働きたいと思える環境づくりを進めたことで、活躍できる人の幅が広がりました。

一人ひとりの人生と本気で向き合う

入会6年目には、30人ほどが所属する地区の会長を務めました。この経験から、社長(地区会長)の人間性が組織を動かすということを学びました。社員のために頭を使ったり時間を設けたりと、まず相手のために時間を使うことで、社員の信頼が得られるのだと思います。

また、同友会での経験を通して「すべての原因は自分にある」ことを学びました。「社員は仕事をするべきだ」のように「『こうするべき』と思わなければ、腹は立たないよ」と先輩会員に教えてもらったことで、責任を自分に求めるようになりました。何か問題が起こった時に、その社員が悪いのではなく、私がどうすればこのような問題が起きなかったのかを考えるようになり、常に改善することができるようになっています。

社員と向き合う中で、シングルマザー、仕事をバリバリこなす人、やる気がなかなか出ない人など、一人ひとりの幸せの形が本当に違うことを痛感しています。みんなが納得する会社をつくるのは簡単ではありませんが、互いを人間として尊重し、長所を生かし、短所を補い合い、それぞれのやり方で会社に貢献してほしいと願っています。

経営者としての変化と会社の変化

入会後に様々な学びを得て自分が変わってきたことで、会社も本当に変化しました。

まずは離職率の激減です。このおかげで採用計画が立てられるようになり、経営計画が形になってきました。

次に、社員の自主的な行動や、挑戦する風土が形成されてきたことです。挑戦することが楽しく感じられるように、挑戦した結果失敗したとしても怒らず、なぜ失敗したのか、次はどうしたらいいのかを一緒に考える風土を心がけています。

また、社員が増えたことにより、以前は自分がしていた「緊急性が高くて重要な仕事」が社員の仕事になっていきました。おかげで「緊急性が低くて重要な仕事」に取り組む余裕ができ、会社の将来を考える時間をとることができています。

2019年に改定した経営理念

変革と挑戦

さらなる成長を目指して、2019年に経営理念を変更し、経営指針発表会を開催しました。そして、1社依存を脱却するための課題を協力会社と共有することで、新たな挑戦への一歩を踏み出したのです。

当社の2030年ビジョン策定においても、社員一人ひとりと「10年後どうなっていたいのか」「年収はどれだけ欲しいのか」などをトコトン話し合い、10年後のために今やるべきことまで落とし込んで考えることができました。ビジョン実現に向けて、一歩ずつ社員と共に頑張っていきたいと思っています。

すべての人間が本気・本音で生きていると思いますが、何に対して「本気・本音」なのかがとても大切です。

京セラ創業者の稲盛和夫氏の「考え方×熱意×能力」という言葉があります。この「考え方」には、マイナスもあります。「考え方」が間違っていれば、昔の私のように大きくマイナスに振れることになります。私が「考え方」をプラスに持っていけたのは、同友会を通して色々な役を受け、様々なことを体験から学べたからです。

ただし、学ぶだけでは会社は変わりません。同友会での学びを自身や企業で実践するからこそ、会社は変わり、その変化が社員の幸せな人生につながるのだと思います。これからも素直に学び、1つひとつ実践を積み重ねていきたいと思います。

社員と心ゆくまで話し合い策定したビジョン

【文責:事務局・服部】