活動報告

第20回あいち経営フォーラム特集「基調講演」

進化を追究し、輝く永続企業へ
~自社の存在意義を見直し、いかなる環境でも乗り越える

久賀 きよ江氏
(株)メガネマーケット代表取締役
(埼玉同友会会長/中同協・女性部連絡会代表)

久賀 きよ江氏

昨年11月17日にオンラインで開催された第20回あいち経営フォーラム。久賀きよ江氏による基調講演の概要、分科会速報と現地の様子をお伝えするフォーラムのハイライトを掲載します。

素人経営のはじまり

自社は、眼鏡・コンタクトレンズ・補聴器の販売、併設のコンタクトクリニック(診療所)を営んでおります。創業30年、現在は埼玉県と千葉県で6店舗、社員数は27名です。

眼鏡業界は全国で約1万2000店舗あります。そのうちおよそ8割は大企業のチェーン展開による低価格帯のディスカウントショップです。

眼鏡の需要は様々ですが、自社は価格の安さではなく、専門性を高めて販売しています。医療的な見地から専門的な眼鏡を販売している店舗は意外と少ないのが現状です。

私は40歳まで眼鏡店でサラリーマンとして勤め、バブル崩壊直後に起業しました。幸いにもその影響は小さく、5名で起業し、約10年間で4店舗まで拡大。順調に経営してきたつもりでした。

しかし、社員の不正が発覚しました。仕事ができると思って店長に任命していた社員が、現金の使い込みをしていたのです。その後、社員の退職もあり、人員不足に陥ります。不正に気づくことができなかった経営者としての責任を痛感し、自分自身の無知に落胆しました。素人経営の限界を感じ、崖っぷちに追い込まれたのです。

同友会に入会して

「経営の勉強がしたい」と探したところ、同友会に出会い、入会後は必死に学びました。ちょうど経営革新支援制度が始まり、私も経営革新計画を策定するために、同友会の勉強会に参加しました。そこでは先輩経営者が、何もわからない私に徹底的に教えてくれました。

人材計画も盛り込み、共同求人委員会に参加しました。新卒採用なんて無理だろうと諦めていましたが、初年度に1名採用することができました。しかし、入社4カ月後には「この会社に将来性を感じません」とその新入社員は言い、退職してしまったのです。中途採用のマニュアルをそのまま活用し、新入社員を放っておいたことを深く反省しました。

分科会の各テーマが散りばめられた久賀氏の報告に集中する

自社の存在価値を探る

2008年にリーマンショックが起こりました。時を同じくして、アパレル雑貨業界から眼鏡業界に参入してきた大企業の多店舗展開により、市場に激震が走りました。これまで8000億円と言われていた市場が3900億円に落ち込んだのです。

低価格路線の大企業の参入で眼鏡の価格は崩壊し、眼鏡商品に対する価値観が変わりました。これまで自社を利用していた顧客も離れていき、社員からは「価格で勝負した方がいいのでは」と不安視する声も上がり、モチベーションも低下していきました。

私は急遽、全社員を集めてSWOT分析で自社の強みを明確にしました。中小企業が大手と価格競争をしても、勝てる見込みはありません。改めて「価格競争はしない」と認識を一致させ、自社の存在価値は何なのか、お客様がなぜ選んでくれているのかを考えました。その結果、店舗拡大から地域密着型経営の戦略に転換しました。

業界の激変を受け、自社の強みを見つめ直し、隣接異業種へ挑戦

暮らしに寄り添う「こと」の提供

経営理念も作り直し、「わたしたちは、お客様の目や耳を通じて地域の皆様の快適生活をサポートします」としました。一人ひとりのお客様の要望を丁寧に聞き取る中で、目と同様に耳にも不自由を感じている方が多くいることがわかりました。

そこで、隣接異業種である補聴器事業に挑戦。より快適な生活を提供したいとの思いから、医療性の高い専門的な補聴器を販売するために、社員の資格取得や設備投資に力を入れました。

その結果、「妻や孫の声がよく聞こえるようになり、生活が楽しくなった」など、喜びのお声も頂けるようになりました。これからの時代は、眼鏡や補聴器のような「もの」の提供にとどまらず、人々の暮らしに寄り添う「こと」の提供が求められてくるのだと思います。補聴器事業に参入して6年が経ち、眼鏡の3分の1まで売上げが伸びてきました。

需要に応じた専門的なサービス

スマートフォンやテレビゲームの普及により、現代の子供たちは目に良くない環境に晒されています。生まれつき視力の弱い子供や視力低下に悩む子供に喜んでもらえる眼鏡を提供できないだろうかと考え、子供用眼鏡の専門店「こども眼鏡館」を若い世代の多い地域に出店しました。

そこでは視力矯正のための眼鏡はもちろん、安全でデザイン性の高い、掛けたくなる「お洒落眼鏡」の品揃えに力を入れてきました。豊富な品揃えと専門性が功を奏し、出店直後からお客様の口コミにより東京や千葉県からも来店され、需要の高さを実感しています。

一方、高齢者の多い地域の店舗では、商品を購入してから1年以内のお客様に電話をかけ、眼鏡の調子や生活で不自由なことがないかを聞き取ることにしました。

すると、コロナ禍で外出を控えている高齢者が多く、修理にも来られないということがわかりました。そこで、出張メンテナンスサービスを実施することにしました。

地域の中でビジネスをさせてもらっていることに感謝し、お役に立てることをするという姿勢が大切です。顧客のニーズを把握し、地域に合わせたサービスへ変えていく必要があると思います。

地域特性をはじめとする環境変化を捉え、「人を生かす経営」で企業の成長へ

環境変化に対応した企業づくり

同じ商品を購入する際にも「あそこがいい」と言ってもらえる店づくりで差別化するためには、やはり「人」が重要です。そのためにも働く環境や待遇を整え、長く働ける職場にする必要があります。

ワークライフバランスの推進や短時間勤務の導入など、多様な働き方を推進し、「埼玉県多様な働き方実践企業」として最高のプラチナ認定を頂きました。外部評価によって社員の意識も高まり、学生や地域社会からの企業評価も良くなります。

コロナ禍で価値観や生活様式も激変しました。時代の変化とともに、経営の在り方も変わっていきます。そこで、中心都市にあった本部を移転して家賃を削減し、社員に還元できるように内部改革に取り組んでいます。

これからの経営には、「読む力、問う力、つなぐ力、感じる力」の4つの要素が鍵になってくると思います。まさに感性を磨き続け、環境変化に柔軟に対応してこそ生き残ることができるのです。

男性・女性の区別なく、誰もがより働きやすい環境を整え、ジェンダーを超えた人材価値の創造を通して、社員が幸せになれるよう、企業を永続させていけるように邁進していきましょう。

【文責:事務局・伊藤】

(株)メガネマーケット 会社概要

設立:1991年
資本金:1,000万円
従業員:27名
事業内容:眼鏡・コンタクトレンズの販売、補聴器の販売、こども眼鏡館
URL:https://www.megane-market2.com/