活動報告

第20回あいち経営フォーラム 分科会速報

【A分科会】経営者としての正しい姿勢とは

経営環境に左右されない強い組織へ

鋤柄 修氏  (株)エステム(南地区)

同友会運動に捧げた半生を語る鋤柄氏

A分科会では「経営者としての正しい姿勢とは何か」をテーマに据えて、エステムの名誉会長・鋤柄修氏に報告いただきました。

鋤柄氏は10年にわたり中同協の会長を務め、人生の半分を同友会運動に捧げてきました。報告では、そうした歩みと連動させて、自社の変化が語られました。会社で労働組合が発足したことをきっかけに同友会に入会し、前向きに役を受け愚直に学んできたこと。同友会運動をする中で、社会情勢の変化に対応し、新卒採用した社員への事業承継や女性社員の社長就任に取り組んできたことが報告されました。

鋤柄氏の「学ぶだけでは意味がない。実践しなさい」「1万時間勉強する」という言葉と熱量に感化されたのか、グループ討論は大いに盛り上がりました。また、座長の鳥越豊氏(鳥越樹脂工業)のまとめでも、「良い話を聞いたと満足するだけでは意味がない。実践しましょう」と強調されました。「学んで実践」がシンプルに重要だと再認識できる分科会でした。

(株)ねじのスーパー大和  木村 亮

【B分科会】永続企業を目指す上での事業承継

渡し手の責任・受け手の覚悟

荒川 亨氏  (株)石川製作所(豊明地区)

事業承継には各社各様の課題がある

永続企業を目指す上で、避けては通れない事業承継。B分科会では事業承継計画を遂行中である「渡し手」の荒川亨氏に、自身の取り組みと思いを報告いただきました。

20年勤めた会社を退職して他人創業の会社を承継した荒川氏。社員からの信用も不足し、赤字経営という厳しい状況の中、同友会での学びを実践し、社員の信頼を得て会社を育ててきました。後継者は、勤めていた会社を辞めて入社した長男で、入社後すぐに事業承継10年計画を作成。多数の株を保有する創業者一族へ対応しながらも、社長交代に向け、後継者と共にローカルベンチマークや経営デザインシートを作成し、自社のさらなる磨き上げに取り組んでいます。

「渡し手の責任は、同友会での学びを実践し、会社の維持・発展を目指すこと。社員・顧客・協力会社との信頼関係を築き、10年先に希望が持てる経営をし、創業や後継時から事業承継を考え、経営状況の見える化を行い社員とも共有。自社株を分散せず、計画的に譲渡することが大切」だと結ばれました。

グループ討論では、「バトンを渡すことを見据えて人を育てる、人に渡せる会社にしなければ」「渡し手と受け手は今を語るのではなく将来を語ると仲良くなれる」など、それぞれの立場から前向きな考えを聞くことができました。

新大和税理士法人 名古屋事務所  佐久間 とう子

【C分科会】集団から組織へ、そして永続する強い企業へ

加藤 千雄氏  (株)アルタ(熱田第2地区)

組織の成長過程を説明する加藤氏

報告者の加藤千雄氏は大手の銀行員を経て起業しました。しかし、銀行時代の高い基準を一方的に社員に求めたため退職者が絶えず、目先の仕事にも失敗して5年もの間、暗雲低迷します。人はなぜ組織を作るのかを考え抜き、新たにアルタを設立。躍進的に会社を発展させました。

加藤氏はマズローの欲求5段階説を読み解き、社員が今どこを求めているのかを見極め、段階的に組織を成長させていきます。創業ステージ、拡大化ステージ、公式化ステージ、最適化ステージと、組織の成長過程がグラフで説明されました。

企業の組織化について、群れから集団になるためには共通目的として「経営理念」や「ビジョン」が必要なこと。集団と組織の違いは貢献意欲とコミュニケーションが加わることで、役割分担を明確にし行動すること。正しい経営方針を示し、好ましい企業風土を築き、共同求人を活かし共育していくことで、永続する強い企業がつくられる、とまとめられました。

その後、「組織化を目指し強い企業にするために何が大切か」を討論し、学びを深められる分科会でした。

寺村商事(株)  寺村 元之

【D分科会】10年ビジョンで輝く未来を描く

経営者の想いを共有し、一致団結しよう

川中 英章氏  (株)EVENTOS(広島同友会)

ビジョン実現に取り組む川中氏

「食」に関わる幅広い事業を営む川中英章氏は、2004年に広島同友会へ入会。採用がしたいと共同求人に参加し、6人が入社しました。しかし職人集団のため「誰も教えようとしない」状態で、1年未満で全員が退職。そこで経営指針の作成に取り組み、「夢添加」というビジョンを描きます。さらに社員を巻き込んで深化させた第2弾の10年ビジョン「From Farm To Table」を掲げます。ビジョン実現に取り組むことで、ライバルとの決定的な差別化に注力し、広島県の働き方改革実践企業にも認定されました。

昨年はコロナ禍でイベントがなくなり、仕事ができない日々が続きましたが、10年ビジョンを前倒ししてキッチンバスで新たなサービスを提供。一方で、未来が見えなくなったレストランは閉店を決意します。また事業定義の見直しで、「食を通したエンターテイメント業」から「食を通した地域活性化業」へ転換。その中で島根県の自治体と協力、有福温泉再生プロジェクトを始動させ、ビジョン実現に向けて進んでいます。

グループ討論では、「経営者も社員もワクワクする10年ビジョンとは」「周りを巻き込むために取り組むべきことは」を話し合いました。改めて10年ビジョンと社員の巻き込みの大切さを認識できる分科会となりました。

(株)活コンサルタント  松田 英一

【E分科会】金融機関との関係づくり

金融機関も取引先、本音と建前を知って賢い経営者になろう

張 おさむ氏  (株)まるみや(知多青同)
出原 直朗氏  日研工業(株)(千種地区)

出原 直朗氏、張 おさむ氏

E分科会では、張おさむ氏(まるみや)と出原直朗氏(日研工業)から金融機関とのより良い関係の構築に関する報告をいただきました。両氏に共通するのは、金融機関を自身の経営にとっての良いパートナーと考え、実践している点でした。

また、グループ討論では金融機関との関係性を良好に保つための具体的な実践例など貴重な意見が出されました。普段は掘り下げる機会が少ないテーマで、新鮮な気持ちで議論に参加でき、知識の引き出しも増えました。

金融機関を重要な取引先の1つとして捉え、融資だけでなく経営の伴走者という位置づけでサポートを受けることを目的に、経営者の考えや方針、計画を自発的に表現し、理解を得ていくことの重要性を再認識できました。

(株)ディーテック  佐藤 佑樹

【F分科会】共に育つ永続企業

実践から生まれる自律と発展

山田 茂氏  (株)山田製作所(大阪同友会)

労使見解を手に経営者の責任を説く山田氏

大阪同友会から山田製作所会長の山田茂氏を報告者に迎え、共に育つ永続企業について学びました。

機械商社の営業を経て家業を継いだ山田氏。社員がアルバイトをしなければ生活できない自社の現状を重く受け止め、同友会に入会して経営指針の成文化に取り組みます。労使見解「経営者の責任」の中から信頼関係に着目し、社員同士の信頼関係、会社への帰属意識、協力してモノづくりをしていることを、仕事を通して実感することが重要と考えます。そもそも、経営者と社員の間に信頼関係が築けているのか、社員が経営者を信頼する時、何を見ているかなどを自問しました。

決めたことを最初に破っていたのは自分だと気づいた山田氏は、言ったことは必ずやると心に誓います。そして「例外をつくらない」をモットーに、「全員で守ることを決めて、全員で決めたことを守る」を実践。会社見学会の際にもそれを貫き、朝礼である様子を目にした見学者から「山田製作所のすごいところを見た。ここには人を育てる文化がある」と評価され、企業風土の定着を実感しました。「本当に社員に支えられて今の会社があると思えた」と報告を締めくくりました。

(有)春日井加工  春日井 公成

【G分科会】認め合い、補い合い、誰もが活躍できる風土づくり

人を生かす経営の追求

小串 康博氏  (株)オグネット(大分同友会)

障害者雇用で自社の変化を語る小串氏

小串康博氏は同友会の仲間から障害者の実習受け入れの誘いを受け、最初は「絶対に無理」と思ったそうです。しかし、仲間の会社の実習を見学し、「誰が障害者かわかる?」と聞かれ、障害者=身体障害者と考えていた認識を改めます。施設職員からの勧めもあり、実習生の受け入れを決断しました。また障害者に汚れ作業をさせるのは「差別」につながるのではないかと考えていましたが、施設職員に「それも立派な仕事」と言われ、徐々に考え方が変化していきました。

実習生を社員として雇用する中で、小串氏は従来からいる社員たちの心の変化や成長を感じたといいます。障害者雇用をボランティアとせず、戦力として仕事をしてもらうことにより、会社の仕組みを見直すことができたと報告をまとめました。

私はこの分科会を通じて、人間としての尊厳や命の重さは皆同じで平等であること。また、会社の中では仕事は公平なこととして位置付けることの重要性を学びました。

(株)松浦紙器製作所  松浦 邦彦

【H分科会】10年先への未来に紡ぐ変革と挑戦

付加価値の創造とビジネスモデルの構築

坂野 豊和氏  (株)まるは(知多地区)

理念を軸としたさまざまな挑戦を語る坂野氏

コロナ禍によって世界は変わり、価値観の多様化は加速しました。H分科会では、その中で挑戦し続ける坂野豊和氏(まるは)に、未来を見据えた取り組みや、その土台となる環境づくりについて報告いただきました。

また後半は、坂野氏と座長の加藤三基男氏(サン食品)との対談形式で経営者としての姿勢や考え方について深く掘り下げ、グループ討論を行いました。

今回、名古屋第5支部が行っているYouTube配信「中小企業が見る未来」にて、まるはの新しい付加価値である新連携事業の内容や、その本質を取り上げました。分科会への参加と併せて動画を視聴することで、より深い学びの機会となりました。

分科会を通じて見えてきたのは、坂野氏の経営姿勢の根本にある「知行合一」の姿勢です。一貫したこの姿勢によって社内や関係する人々に信頼が生まれ、その間で理念・ビジョンは深く共有されています。我々中小企業が付加価値を創造し、変革と挑戦をし続けていくためには、テクニックではなく、経営者としての姿勢やその積み重ねこそが大切であると学びました。

(株)SANBO  磯村 英治

【I分科会】未来への展望と対応

情勢をつかみ取り、経営に活かす

宇佐見 孝氏  宇佐見合板(株)(中川地区)

身近な情報を価値に変える重要性を語る宇佐見氏

宇佐見合板の宇佐見孝氏は同友会歴37年。バブル崩壊、ガット・ウルグアイラウンド交渉、リーマンショックと、過去3度の経済危機にあっても情勢を的確に読み解き、企業を変革し乗り越えてきました。現在のコロナ禍では、不況の時こそチャンスと捉え、会社を買収するなど投資をしているといいます。

その行動には、常に最善の経営判断を下すため、同友会の情報が活用されています。まずは定時総会で発表される「情勢と展望」。ここにはその年に起こったことなどが集約されており、会員なら絶対に学ぶべきだと宇佐見氏は断言します。次に、四半期ごとに発行される景況調査の報告書を挙げ、資料の読み解き方を解説。これら身近な情報と、仲間と刺激し合って実践する同友会活動によって、会社が成長できたと報告しました。

グループ討論では、各自の業界の変化や対応、明日から実践できることを話し合いました。今後、参加者の会活動への姿勢が変化するといえる分科会であったと思います。

(株)エルインターナショナル  本多 秀次

【J分科会】BCP(事業継続計画)に取り組み、災害時でも粘り強い経営をしよう

自社の屋台骨を守り抜け!

林 康雄氏  (株)林商店(江南・岩倉地区)

BCPと経営指針実践について語る林氏

J分科会では林商店の林康雄氏より、自社におけるBCP(事業継続計画)の取り組みについて報告していただきました。

同社では、取引会社から認定工場になってほしいと依頼を受けたことをきっかけに、BCPに取り組んだといいます。防災計画からスタートし、BCPは災害だけでなくあらゆるリスクに備えるものという理解を深めていきました。また、BCPは経営指針の実践に非常に近いことに気づいたといいます。会社を存続させることは、命、社員の生活、顧客の信用、地域経済の活力を守ることとして、社員にBCPを落とし込んでいると報告しました。

今後、BCPへの取り組みが付加価値となり、地域において選ばれる企業となることにつながることも予想されます。また今回、グループ討論で使用したBCPチェックリストは精度も高く、経営指針書を作成する際にも有用であると思われます。どんなきっかけでもいいので、一度真剣に自社のリスクを洗い出すことが、BCPの取り組みへのスタートといえるのではないかと思います。

(株)ナカシマ  中島 圭

「第20回あいち経営フォーラム」ハイライト

「第20回あいち経営フォーラム」ハイライト(全体会・基調講演、分科会、全体会)