活動報告

第22回あいち経営フォーラム 分科会紹介

【第1分科会】激変する金融環境の中で永続企業を目指す

~今、経営者に必要なこととは

蟹江 晃男氏  カニエ電機(株)(知多北部地区)

蟹江 晃男氏

冒頭、座長から、東京商工リサーチの記事を題材に、2024年の廃業増加傾向やその理由、永続企業を目指す上での金融の重要性、経営者の姿勢が問われていることが問題提起されました。

続いて蟹江晃男氏による報告では、環境変化に対しての具体的な実践として、積極的に情報を取りにいき常にアンテナを張っておくこと、仲間としての金融機関との連携、自社内での仕組み化と従業員との関わり率の3点が強調されました。中でも金融機関についてはビジネスパートナーとして活用する視点を提示。適切なコミュニケーションをとることによって、外部の第三者が自社をどのように評価しているかだけでなく、経営指針の開示によって経営方針に対してのフィードバックや企業間連携のヒントなど、多様な情報をもたらしてくれる存在であり、次の施策に対する融資を受けやすくなる可能性が報告されました。

金融アセス運動や委員会にも触れられ、同友会は情報の宝庫であり活用することの重要性が共有されました。これら内部・外部の情報をもとに次なる施策を考え、社員との関係性を深め、継続可能な仕組みづくりを続けていくことが企業の永続性に寄与することが示されました。

グループ討論では、参加者がこれらの内容を自社に置き換え、情報取得の方法や経営者としての姿勢、金融機関との関係性について、活発な経営談義に発展。地区内ではあまり取り上げられないテーマ設定で、出席者の意識の高さが感じられ、参加会員すべてが自社の経営を語っていくことで報告と連動した討論の展開がなされました。

本分科会の内容が、各会員の実践につながることを期待しています。

(株)ChMコンサルティング  田村 隼人

【第2分科会】持続可能な社会を目指す上での企業活動を考える

~気候変動や平和についての問題を自分ごと、自社ごとに

山本 登美恵氏  富士凸版印刷(株)(守山地区)

山本 登美恵氏

印刷市場は2分の1に縮小する過渡期の中で、山本登美恵氏は自社の存在意義を幹部社員と徹底的に話し合い、現在の事業内容を超えて「豊かな社会を未来につなぐ」という社会的使命にたどり着きました。その上で、経営者として自分の人生観を会社に重ね合わせていきたいと考えました。

山本氏は特異体質を自然療法で克服した幼少期の経験があり、事業承継後の激務で身体を壊した時には、シルクと出合って健康な肌と身体を取り戻したそうです。その経験から、人はいずれ死ぬこと、健康寿命が一番大切だということを悟り、経営者としての生き方を見つめ直します。

本業の印刷で社会的価値を提供することを目指し、社員が社会課題の本質を見極め自分ごととして捉えられるよう、全社でのSDGs勉強会を3年間、毎月1回開催しました。また、印刷業の環境への負荷と働く社員の負担に向き合い、一般印刷から環境印刷への移行を決断しました。コロナ禍で利益を圧縮されている中、環境印刷へ舵を切るにあたり、特にコストの問題は経営者にとって大きく、決断には時間がかかりました。その決断を後押ししたのは、本気で社会的使命を実現するという強い意志でした。その結果、環境負荷をマイナスからゼロに近づけてきました。

次のステップとして、社会的使命の実現のために、自身を救ってくれたシルクを溶かす技術を使ったスキンケア商品の開発・販売を開始。今後は休耕地を利用した養蚕業で絹を通しての循環型産業・地域づくりを進めていきます。

今の企業1社1社の営みが未来の社会をつくります。社会・地域・自然・地球全体の利益になることを経営者が考えて行動し、その行動が全社運動につながり、その社風が企業姿勢として現れ、社会から評価される時代に入ったことを学びました。

(株)トヨコー  戸田 啓二

【第3分科会】中小企業が地域づくりの主役となるために

~魅力ある中小企業への変化と進化

山本 康弘氏
(株)おかだや(中村地区)
(株)ワイマーケット

山本 康弘氏

報告者の山本康弘氏は酒類・食品の卸販売、クラフトビール、不動産の事業に取り組んでおり、お酒と食の楽しさを発信し、お酒を楽しむ人の裾野を広げ、新たな時代の飲食シーンを創造することを経営理念としています。お酒は飲んで楽しむだけでなく、他人に贈呈して人と人とをつなげ、生活を豊かにする効果もあるといいます。

他社との差別化を図ることと名古屋駅前柳橋中央市場を活性化させることを考え、クラフトビール醸造所を建設した山本氏。クラフトビール事業を始めた当初は他に取り組んでいる会社はなく、世間もクラフトビールを取り上げるようになったことで「名古屋市でクラフトビールと言えばおかだや」と注目を浴びるようになりました。他社との差別化を図るためには情報を広く分析し、自社がどの方向に向かって経営していくかを考えること、他社を真似するのではなく、真似される側になることへの意識を持つことが重要だと語りました。

本分科会は「地域づくりの主役」がテーマであり、山本氏は地域との関わりについても紹介。他の企業・団体と協力し、地元の商材を使用したお酒の開発や、若者に興味を持ってもらうためのイベント開催などを通じ、地域活性化にも取り組んでいるといいます。

将来はお酒の需要減少の予測がある中、新たな付加価値創造に挑戦し続けることを大事にし、業界内でナンバーワンを目指すと語られました。また、社員の夢を集めて社内全体で大きな夢を描き、楽しく実現できる会社づくりを目標にしているそうです。今後どのように事業を大きくしていくのか楽しみに思います。

(株)イシダ工芸  石田 真由

【第4分科会】どうすりゃいいのか事業承継

~激変の時代に事業承継を考える

辻 孝太郎氏  昭和鋼機(株)(昭和地区)

辻 孝太郎氏

報告者の辻孝太郎氏は44歳の時、先代の父親に「来期から社長をやれ」と告げられるまでは社長就任を全く想定しておらず、役員会で後継者に選ばれて覚悟を決め、会社の舵を取ることになりました。就任後、先代との経営スタイルの違いで「勝手なことをするな」と叱られることもありましたが、経営者の責任を全うするため自分の信念を貫いたといいます。

同友会に入会後、経営者として成長するために学び、経営指針の発表や共育講座への参加を行います。先代との事業承継に4年かかった経験から、承継は若いうちに始めた方がよいと思っていた時に、面接に来た23歳の男性への直感を信じて採用に踏み切りました。

同友会の共同求人にその社員も同行させ、採用できなかった結果に対して「課題がわかったから私にやらせてください」と言うので任せてみたら、翌年は採用できたといいます。その時に、自分で考え行動する主体性のある社員だと感じて、会社を任せようと腹を決めたそうです。

当分科会には、受け継ぐ側より、渡す側の人の参加が多かったように思います。辻氏は、後継者がいないから会社を継いでくれる人材を求めて発信や採用活動をしてきたそうです。私自身も2代目で次に渡す役割ですが、まだ後継者がおらず、辻氏の報告は大変勉強になりました。

事業承継は、会社がなくなったら誰が困るのか、会社をどうしていきたいかなど、企業の社会的責任をしっかり受け止め、事業を継続していくために必要なことであると改めて認識でき、気づきや学びの多い分科会でした。

(有)シミズ工機  清水 優

【第5分科会】個人事業主から同友会らしい企業づくり

~商売人から中小企業家へ

酒井 訓拓氏
(株)フリマ―(豊橋南地区)
(有)コンベルティー酒井

酒井 訓拓氏

経営理念「食の楽しさをクリエイトし、感謝の気持ちを大切に学び成長し続け地域社会に貢献します」を掲げ社業に邁進している酒井訓拓氏ですが、かつては拝金主義で、傲慢だったといいます。

大手冷凍食品メーカー退職後、30歳で独立するも、安定的な収入が得られず事業継続を断念。勤め人時代の実績は全て自分の力と過信していたと、当時を振り返ります。

生きるため小さな食品会社へ勤めたものの、収入も少なく生活に余裕はありません。そうした中、食品業界の先輩や交流のあった経営者から背中を押され、40歳の時に2回目の独立をします。寝る間を惜しみ邁進した結果、順調に売り上げは伸びましたが、利益追求に走り、「人間尊重」とはほど遠い経営を行っていたため、採用を重ねるも社員は定着しませんでした。

同友会に入会後、フォーラムでの経験や会員経営者との出会いを通じ、経営姿勢に大きな変化が起き始めます。経営理念を掲げ、周りへの「感謝」を重視する経営へと転換していきました。社員との関係も好転し、今では社員と共に経営指針を作成し、社員との関係性を重視した組織づくりに努めています。

「商売人とは、利益を出すことに焦点をあて、儲けたお金は自分中心に考えて商売をする人。企業家とは、組織全体の長期的成長や利益を見据え、儲けたお金を会社・社員のために考えて商売をする人」とまとめた酒井氏。現在は後継者育成が重要課題で会社の将来像を社員と共有し、食品ロス問題などSDGsへの取り組みや異業種への挑戦を視野に、新たな価値創造を目指しています。

(株)くらしカンパニー  松山 吉伸

【第6分科会】会社発展の原動力は社員との共育ち

~社員の成長や特性を生かす場所を作り永続企業を目指す

古田 伸祐氏  (有)城西(中区南地区)

古田 伸祐氏

会社が発展するためには、社員の成長は欠かせません。一方で、具体的にどのようにしたら共に育ち合う会社にすることができるのか、という課題は尽きません。さまざまな業種や業態、会社規模の経営者が自社の課題へのヒントを求め、この第6分科会に参加しました。

かつてはワンマン経営だったと話す古田伸祐氏は、社員への「評価」ではなく「期待値」、それは誰かのために自分の力を役立てるという意識を育てる仕組みを取り入れ、例えば営業成績は個人の成果ではなくチームの成果ということにこだわり続けることで、社員が一体となって成長するきっかけとなり、会社の発展にもつながりました。

古田氏は社員とのコミュニケーションの場をさまざまな形で設け、常に「傾聴・共感・支援」ということを大切にし、社員1人1人と向き合っています。個人面談では、その社員との話が尽きるまで、長い人では丸1日かけて面談をしているとの話はとても印象的でした。

社員たちが会社を信頼し、安心して働くことができるのは、古田氏の「会社を私物化しない」という考えでの財務公開による経営の透明性にもあるのではないでしょうか。さらに10年後には次の世代につなぐための強い組織づくりにも取り組まれています。

社員自らが自身の能力に気づき、それを発揮できる社風づくりに必要なことは、経営者の姿勢そのものにあるのではないかと、改めて自分自身を見つめ直すきっかけとなる第6分科会でした。

(株)GrandSTAR  粥川 朋子

【第7分科会】地域課題から自社課題、ビジョンを考える

~自社と地域が共に発展できる「独自戦略」とは

湯浅 直樹氏  talo-K(瀬戸地区)

湯浅 直樹氏

第7分科会では、瀬戸地区所属でtalo-K代表者の湯浅直樹氏より、分科会テーマである「地域課題から自社課題、ビジョンを考える」について、湯浅氏がどう考え、同社でどう実践しているかを報告いただきました。

同社はエクステリアの販売・施工を主柱とする会社ですが、もう1つの柱として社屋を活用した雑貨店を営んでいます。ここでは全国各地から「これだ」と感じた独自商品を取り寄せ、その制作者を招いてイベントを恒常的に開催しています。この取り組みによって同社は、瀬戸と他地域が交流する拠点として賑わい、地元でよく知られる存在となっています。

湯浅氏が地域を意識した独自戦略を考えることとなったきっかけは、同友会瀬戸地区のメンバーで2019年に策定した「中小企業家の見地に立つ瀬戸市ビジョン」に関わったことだといいます。「ビジョン」では瀬戸市の現状と地域資源を洗い出し、豊かで夢の持てる瀬戸市実現に向け、各社がどのような実践をすることで実現していくかがまとめられています。

湯浅氏は自社課題について「小規模・知名度がない・お金がない」だといい、これらは弱みにも見えますが、湯浅氏は「ビジョン」をヒントに発想を転換して「小さい事」を「特別感・希少価値・愉しみ」に変える戦略を立てました。そして企業間・行政・各種団体、そして市民と連携し、「瀬戸のtalo-K」にしかない魅力を発信しています。ファンが増え、瀬戸へ訪れる人が増えるきっかけになってきているといいます。

グループ討論では、参加者が互いの地域自慢を披露したほか、人口減少が進む中で自社の認知度を上げるために必要なことは何かについて討論。インターンシップやスタートアップスクール、育成や共育、地域、行政、交流、連携など、多岐にわたる話題で盛り上がりました。自社と地域が共に発展するために必要な姿勢や目指すべき方向性を学べた第7分科会でした。

ワンビジョン  永田 ゆか

【第8分科会】一人ひとりが生き合う真の人間尊重を

岩山 佳代氏  (株)ダイプラン(中川地区)

岩山 佳代氏

第8分科会では、ダイプラン代表取締役の岩山佳代氏より、人間尊重をテーマに自社の取り組みを報告していただきました。

2010年に同友会に入会した岩山氏は、当時は人間嫌いで他人を信用することが難しく、「会社のみんなを守りたい」という想いはあったものの、経営状況はあまり良くなかったそうです。入会後はさまざまな役に挑戦し、その活動体験から学びを得て、社業にいかしていきました。社内のさまざまなトラブルを乗り越えながら、そのトラブルをも会社を良くするきっかけに変換しています。

現在では、社員が定着し、求人は既存社員からの紹介がほとんどであるなど、人が人を呼ぶ環境が確立できているといいます。「湯たんぽのような企業になる」というダイプランのビジョンが示す通り、岩山氏を中心として団結している社員の話からは、大きな家族のような温かい企業風土が感じられました。

グループ討論では、社員との関わりにおける失敗を切り口に課題を抽出し、課題改善方法を皆で話し合いました。成功ではなく失敗を切り口にすることで、初対面の会員同士の距離が縮まり、本音で話し合える良い討論となり、大いに盛り上がりました。

最後に、「偏見を持たずに、ありのままを受け入れ向き合うことが大切」と、さらりと話していた岩山氏。頭では分かっていてもなかなか体現することが難しい人間尊重経営のヒントを多く学ぶことができました。

行政書士法人 想
澤田 和徳

【第9分科会】人口減少時代における採用活動とは

~地域の若者育て、未来に希望の持てる地域を作る

川中 英章氏  (株)EVENTOS(広島同友会)

川中 英章氏

川中英章氏は今分科会報告者で唯一の他県同友会所属であり、基調報告もしていただきました。採用難のこの時代、各社が選ばれる企業になるためにはどうすべきかを考える良い契機になり、地域の課題を自社経営と結び付け解決するヒントも頂き、地域での採用について学びました。

川中氏の会社は10年ビジョンを掲げ、その実現に取り組むことで、ライバルとの決定的な差別化に注力し、圧倒的な商品力が儲けやすさ・働きやすさにつながり、若者が集まりました。

また事業定義の見直しで、「食を通した地域活性化業」へと転換。島根県の江津市と協力し有福温泉再生プロジェクトを始動させ、ビジョン実現に向けて進んでいます。

グループ討論では「地域の若者が働き続けたいと思える企業は」「そのために何をしていくか」をテーマに活発な意見交換がされました。その中で、就職活動の実態、時代の波に流される若者の姿があらわになり、未来や生き方をわかりやすい言葉で若者に伝える大切さを認識できました。また、社員と向き合うためには経営者の自己変革と、綺麗な決算書、わかりやすい指針が必要だと納得しました。

同友会での共同求人の意味は、会員企業と共に採用と社員教育活動を行い、自社の不足を知り、進化を決意することです。そして、信頼ある選ばれる企業になることが重要です。

最後に川中氏は「中小企業の採用にハウツーはない」「採用活動は人を生かす経営の実践」と締めくくりました。

座長からは、「条件で採用をやめよう。誇り、やりがいが大切」とまとめられました。

(株)鶴田工業所  鶴田 修一