あんたんとこの会社にほんま価値あるん?
~「選ばれる企業」への挑戦
山川 剛氏 (株)ヤマカワ

昨年11月20日~21日に開催された中同協第53回青年経営者全国交流会in香川の1日目に、第12分科会の報告者として山川剛氏(三河第3青同)が登壇しました。以下にその報告概要を紹介します。
付加価値とは
私は1985年生まれの39歳、同友会には2014年に入会して11年目になります。
株式会社ヤマカワは、祖父が1960年に創業、1982年に法人化したもので、現在は愛知県の岡崎市に本社があり、社員数は25人です。事業内容は検査治具や金型の製作で、例えば自動車は100社以上から持ち寄った300点以上の部品を組み立てますが、その部品を成型するための金型や測定するための治具を製作しています。もう1つの事業は、現物からデータを起こすリバースエンジニアリングで、精度の高いデータを提供しています。
経営理念は「明日につながる創造性~新たな発想と思考で、未来へつながる新しい価値を生み出すことを目指す」、10年ビジョンは「Made in YAMAKAWA~社会に選ばれる企業へ」です。経営指針は私が同友会に入会したことをきっかけに成文化し、指針発表会は今期で7回目になります。
この分科会のテーマは「付加価値」ですが、私は付加価値とは「新たに生み出された価値」と定義しています。そのために「他社との違いを明確に示すこと」が重要で、それを生み出すのが「強いブランド力」です。これらが結合して顧客にとって意味のある価値を提供することができます。
当社にとっての付加価値は、「創業60年の実績とノウハウによる高付加価値な精密製品の提供」「時代に合わせて常に新しいものを創造し続ける柔軟性」「10年ビジョンを実現し、企業・人・地域社会から選ばれる会社」の3つです。

自社が選ばれる理由とは
2008年に私が当社に入社した当時は、社員数12名、社員の平均年齢は40歳、売り上げは約1億円、顧客は4社でしたが、うち1社に売り上げの80~90%を依存する会社でした。私は入社した初日に、その最大の客先に出向することになりました。
出向先の3年間で多くのことを学びました。当社が作った製品を使用する側の立場に立てたこと、競合先や自社の情報を客観的にインプットできたこと、出向先を通して顧客とのつながりを得ることができたこと、です。自社の価値を外部から見ることができたことと、外部からの視点を持てたことは、私自身の成長の第一歩でした。
当社に戻り、SWOT分析をやってみました。強みは経験と技術力で要求される品質に対応できること、弱みは営業部署がないこと、機会は出向先で作った顧客とのパイプ、脅威は実績がなく参入できないこと、でした。
当時の当社の市場でのポジショニングは、多様性は中位でも安価な領域にとどまっていました。高価格の領域に広げるために競合先との差別化を図ろうと、自分が採用した社員と「自社が選ばれる理由」を考えました。
リーマンショック後のアジアは安価が正義の時代になっていて、競合先の見積もりは当社の半額でした。そこで、日本製の品質を評価し信頼してくれる北米市場のニーズに注力することになりました。付加価値を向上させるため、グローバル化を促進し、新たな価値を創造できる企業を目指すことになりました。
当時の私は、プレーヤーとしては成果を出していましたが、経営者目線が欠如しており、古参社員ともよく対立しました。しかし、同友会に入会して先輩会員から指摘を受けることで、利己的だった私が利他的になることができ、後継者としての自覚も生まれたと思います。経営方針発表会を始め、目指す方向を社員と共有し、組織を作り、ミーティングを開始し、生産管理システムも導入しました。
経営者として働き甲斐のある環境をつくっていく中で、企業としての成長を実感していました。自社の市場でのポジショニングも高価格の領域に進出できていました。顧客も24社に増え、売り上げも4億を越えました。
逆境を機に変革を
2020年、コロナ禍で売り上げがダウンしました。顧客を増やしすぎた結果、顧客が期待する価値を提供することができなくなり、顧客からの信頼が低下し、社員は疲弊していきました。不具合や成功事例を社内会議でフィードバックし、社員1人1人に当事者意識を持ってもらいました。同時に社内体制を整備して付加価値を高められる人づくりに取り組みました。
その結果、2022年には顧客は30社、売り上げは4億8000万円、と回復したように見えました。
2023年、売り上げが3億2000万円にまで減少しました。目先の計画ばかりで長期視点での経営ができていなかったこと、景気が良かった業界の波にただ乗っていただけだったこと、など、自身の課題が浮き彫りになりました。仕事がなければ付加価値も生まれないことに気づきました。
以前からやってみたいと思っていたBtoCへのきっかけに、と思い、企業展に出展したことで、業界にとらわれず、変化ではなく進化するために、挑戦するビジョンを作りたい、という思いが芽生え、付加価値を高めるきっかけになりました。
社会に選ばれる企業へ
2020年に作った10年ビジョンは、「目指せ10億企業~中小企業の希望の星へ」でした。中小企業のうち売り上げが10億円以上あるのは3%と聞いて、その3%に入ろうと掲げましたが、3%に入ってどうするというビジョンがなく、結果として「10億」という数字だけが独り歩きしていました。
2024年に10年ビジョンを改訂し、「Made in YAMAKAWA~社会に選ばれる企業へ」としました。ここでいう「社会」とは、人、企業、地域、の3つです。経営理念の「明日につながる創造性~新たな発想と思考で、未来へつながる新しい価値を生み出すことを目指す」と合わせて、当社で働くことが社員自身のブランディングにつながる企業を目指して、社員が企業と共に成長できる場を企業として提供することが経営者の役割だと思っています。
新たな市場を創造するためには業界にとらわれない動きが必要だと感じ、企業展にも出展しています。売り上げを作ることは考えていませんでしたが、出展してマインドが変わりました。当社の製品や技術力を提供することを目的とし、市場のニーズを事前に調査して準備した結果、チョコレート製の食べられるネジや古民家の建具を模した木製品、凹型ではなく凸型の手形など、3年間で売り上げの10%を占める事業に成長しました。
既存事業の価値も強化しています。製品の精度を従来の半分(±0.2のものは±0.1、±0.1のものは±0.05)で製作することで、国内外の新たな顧客とマッチングしました。
現在は、社員数25名、社員の平均年齢は35歳、顧客は30社以上になり、売り上げは4億円、メインの顧客への依存度は30%、市場でのポジショニングは幅広い価格帯で多様性の高い領域に進出することができています。
より付加価値を高めるために、溶接メーカーをM&Aで買い取り、新たな柱を創ろうとしています。当社の強みである設計力と掛け合わせて、1社ではできない新たな価値を創造できる、と考えています。また、世界と共存できる企業を目指して、北米に新たな拠点として法人を設立する計画です。
これまでの既存事業にこれらの新規事業を加えて、ビジョンの最終年度である2030年には売り上げで10億円を達成する計画で、結果として最初に掲げたビジョンも達成できる見通しです。

あんたんとこの会社、ほんま価値あるん?
私自身の成長の過程を振り返って感じたことは、付加価値は今ある価値を理解してこそ見出せる、ということです。顧客がいなければ付加価値は生まれませんし、そのためには自社の強みを理解することと、業界にとらわれないことです。
価値を生み出す根っこはヒト(社員)であり、付加価値向上のためにはヒトづくりを通したモノづくりをすることで、そのことで選ばれる企業になれると思っています。
そのためには、長期的な視点を持つことで、理念を追求し、ビジョンを掲げ、全社一丸の経営をすることです。
当社の付加価値は、潜在的な付加価値である「創業60年の実績とノウハウ」「常に新しいものを提供する柔軟性」に、「企業、人、地域から選ばれる企業を目指す」という新たな付加価値が加わりました。
最後に、今日のテーマである「あんたんとこの会社、ほんまに価値あるん?」と皆さんに問いかけて、報告を終わります。
■座長まとめ
青木 佑太氏
(有)青木住宅設備(三河第3青同)
付加価値とは企業の価値そのものだ、と思います。製造業では、高性能の機械があればモノ作りはできる、と思われるかもしれませんが、結局その機械を動かす人や、その前の設計をする人の思考が付加価値につながっていきます。
当社は75年続く住宅設備屋ですが、最近は大手の進出やネット販売などどこでも同じものを買うことができます。そんな中で、お客さんが当社に何を期待して問い合わせてくるかを考えますと、「地元の会社に気持ちよく安心して依頼できること」ではないかと思います。その役割は、現場に出向く職人や、電話対応する事務員など、社員が担っていると思います。
こうして考えますと、新市場に進出する際も、実は「今まで通りのことができる」ことが必要とされ、それが新たな価値につながっていく可能性がある、ということに気づきます。
【文責:事務局 井上一馬】









