【概況】
【業況判断】 業況判断最悪を更新
【売上高】【経常利益】売上高、経常利益ともに悪化。サービス業の悪化目立つ
【在庫】「増加」超過幅拡大し、「過剰感」増す
【価格変動】【取引条件】価格低下、取引条件悪化の傾向続く
【資金繰り】「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ
【施設稼働率】【設備過不足】稼働率大幅に悪化
【雇用】「不足」超過幅縮小
【経営上の力点など】引き続き「民間需要の停滞」がトップ
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)
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景況調査報告(1998年2月)第17号(PDF:587KB)
【概況】
業況が更なる悪化を示しています。業況判断を「よい」とする企業は全体の13%と前回(10%)に比べわずかに増えましたが、「悪い」と答える企業が54%と全体の半分を超えてしまいました。前者から後者を差し引いた「業況判断」DIは今回41を示し、97年2月以来5期連続で悪化する結果になっただけでなく、調査開始(1994年2月)以来の最悪水準を更新することになりました。
こうした調査結果は何よりも消費需要の一層の落ち込みを反映したものと考えられます。金融機関の大型破綻、「貸し渋り」などによる企業倒産の増大、リストラの拡がりを懸念した雇用不安の高まりなどが、消費を一層慎重にさせていると思われます。今回のヒアリング調査によっても、個人消費に近い業界ほど「痛み」の激しいことが確認できました。
また、好調だった設備関連の製造業にも今年に入ってからかげりがみえはじめています。国内最終需要の低迷に加え、アジアの経済危機が企業の投資活動に影響し始めたことを看取できます。この結果、業種間の格差は依然としてあるものの、業況感の悪化は全業種押し並べての傾向となりつつあります。
財政出動による景気対策が実行に移されたとしても、その効果が出るのは本年秋以降になるものと考えられますし、所得税減税の効果も、「不安」に覆われた現状では限定的なものとならざるをえず、当面の景気状況は厳しさが続くと予想せざるをえません。そうした中で、「勝ち組み」「負け組み」と称される企業間格差は一層拡大すると考えられます。各企業があらためて事業展開の方向をしっかり見定める時期にきているといえます。
[調査要項]
1.調査時 1998年2月26日~3月3日
2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
4.回答企業 612社より、179社の回答をえた(回収率29.2%)
(建設業30社、製造業71社、流通・商業37社、サービス業41社)
5.平均従業員 24.7人
なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。
【業況判断】
業況判断最悪を更新
「今月の状況」DIは2期連続で調査開始以来最悪の結果となった。5期連続で「悪い」超過幅が拡大し、前回調査比9ポイント悪化の△41となった。これは「よい」と答えた企業が前回比3%増加したものの、「さほど」と答えた企業が16%減少し、「悪い」と回答した企業が全体の54%に達したためである。業種別では流通業が10ポイント回復(△49→△39)したものの、他の3業種は押し並べて悪化した。なかでも前回比32ポイントと大幅な悪化を示したサービス業では、「悪い」と回答する企業が全体の60%を超えている。また建設業は7ポイント(△41→△48)、製造業は8ポイント(△25→△33)の悪化であった。前年同月比でみても△50と前回比5ポイント悪化し、調査開始以来の最悪の結果となった。流通業と製造業ではそれぞれ回復が見られたが、建設業では17ポイントの悪化(△48→△65)、またサービス業では32ポイント(△31→△63)と大幅に悪化した。また次期見通しも(全業種)でも△37と、依然として先行き悪化を見通す企業が大勢を占めている。
【売上高】【経常利益】
売上高、経常利益ともに悪化。サービス業の悪化目立つ
売上高DI(前年同月比)は△26と前回比11ポイントの大幅な悪化を示した。売上高DIが3期連続で悪化するのは調査開始以来初めてのことである。業種別で見るとサービス業が41ポイントと大幅な悪化を示し△39と再び「減少」超過に転じた。また、製造業も15ポイント悪化し3期連続(30→25→△2→△17)の悪化となった。一方、建設業は16ポイント回復(△30→△14)し、流通業は横ばいの△38であった。また次期見通しにおいても49%の企業が「減少」を見通しており、先行き不安感はぬぐえない状態が続いている。
経常利益DI(前年同月比)も5ポイント悪化の△26と2期連続で調査開始以来最悪の結果となった。前回大幅に悪化した流通業は2ポイント回復したものの、△43と依然として大幅な「悪化」超過である。他の3業種は押し並べて悪化したが、中でもサービス業は△27と18ポイントの大幅な悪化を示した。次期見通しにおいては建設業(△23)とサービス業(△8)で「赤字」を見通す企業が「黒字」を見通す企業を上回った。
【在庫】
「増加」超過幅拡大し、「過剰感」増す
在庫DIは前年同月比で5と前回調査から3ポイント「増加」超過幅が拡大した。在庫が「減少」したと答える企業が3%増加したものの、「増加」したとする企業が6%増えたためである。業種別では流通業が△6→3と「増加」超過に転じたのに対して、製造業は11→6と「増加」超過幅を縮小させた。また「在庫過剰感」も前回の10から今回16へと高まった。「次期見通し」DIも16と先行き在庫過剰を見通す企業が減少を見通す企業を大幅に上回っている。
【価格変動】【取引条件】
価格低下、取引条件悪化の傾向続く
価格変動DI(前年同期比)は4期連続で「低下」超過幅が拡大し、全業種で6ポイント悪化の△48となった。業種別では前回大幅に悪化した流通業で9ポイント改善の△45となった以外は、他3業種とも悪化した。とりわけ、サービス業では△35→△54と19ポイントの大幅な悪化を示している。また取引条件DI(前年同期比)も3期連続で「悪化」超過幅が拡大した。4業種とも軒並み悪化する中で、サービス業が△40と前回調査に比べ23ポイントの大幅な悪化を示したのが目立つ。次期見通しでも依然として先行き価格低下・取引条件悪化を見通す企業が多い。
【資金繰り】
「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ
資金繰りDIは前回調査比5ポイント悪化し、△32となった。全業種で悪化が見られたが、サービス業の16ポイント悪化(△30→△46)が突出している。また建設業も△48と依然として厳しい状況が続いている。また「次期見通し」でも50%の企業が「悪化」を見通しており、DI値も△38となった。金融機関の貸出先選別が強まり、今後とも厳しい状況を予想する企業が多いことを示している。
【施設稼働率】【設備過不足】
稼働率大幅に悪化
施設稼働率DIは前年同期比で△4→△19と前回調査に比べ15ポイント悪化した。製造業では21ポイント、流通業では6ポイントとそれぞれ悪化を示した。また、次期見通しでも△17と先行き稼働率「低下」を見通す企業が「上昇」を見通す企業を大幅に上回っている。また、設備過不足DIは△5から△4へと1ポイント「不足」超過幅が縮小し、5期連続の「不足」超過幅縮小となった。業種別では、流通業(△6→△10)とサービス業(△8→△18)で「不足感」が増す一方、建設業では「不足」超過から今回8と「過剰」超過に転じた。
【雇用】
「不足」超過幅縮小
全業種で見た雇用動向は△8→△6と、「不足」超過幅が縮小した。不足と答える企業が8%増えたものの、過剰と答える企業が11%増えたためである。業種別ではサービス業が△37と大幅な「不足」超過であるのに対して、それとは逆に需要低迷を反映してか建設業と製造業では「過剰」超過に転じている。
【経営上の力点など】
引き続き「民間需要の停滞」がトップ
「経営上の問題点」の項目では、引き続き「民間需要の停滞」が1位であった。業種別では他業種が横ばいもしくは減少を示している中で、建設業のみが10%の増加を示しているのが目立っており、民需落ち込みの打撃が大きいことを窺わせている。第2位は前回に引き続き「販売先の値下げ要請」であった。「経営上の力点」については、依然として「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が高い比重を占めている。
<会員の声>
(機械部品製造) 97年11~12月はバブル期に匹敵するほど忙しかったが、1・2月と仕事量が低下し、売上げが30%ダウン。アジア向けの生産設備の輸出が半分以下に減少している。工作機械も良いとは言われているが、金額ベースで70~80%というところ。
(家電部品製造) 家電の製造は海外にシフトし、国内では小ロット・短納期のものは国内生産に。しかし値段はアジア・レートで、採算が合わない。また家電は対前年比20~25%の購買力ダウン。往復ビンタ状態。
(不動産業) 名古屋市内の約80%の不動産仲介業者は仕事にならない状況にある。住宅地の値下がりは昨年あたりから止まったが、安すぎて皆売ろうとはしない。また、愛知万博・新国際空港ではそれほど土地の値上げはないだろう。