景況調査

第18号-1998年5月
景気底割れで、サバイバル競争激化か

【概況】
【業況判断】業況判断最悪を更新
【売上高】【経常利益】売上高、経常利益ともに最悪を更新
【在庫】「減少」超過に転じ、「過剰感」薄らぐ
【価格変動】【取引条件】価格の低下続く
【資金繰り】「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ
【施設稼働率】【設備過不足】設備「過剰」超過に転じる
【雇用】「過剰」超過に転じる
【経営上の力点など】引き続き「民間需要の停滞」がトップ
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)

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景況調査報告(1998年5月)第18号(PDF:581KB)


【概況】

  業況がさらなる悪化を示しています。業況判断を「よい」とする企業は全体の1割にも満たない8%まで落ち込んだのに加えて、「悪い」と答える企業が全体の 6割を超えてしまいました。前者から後者を差し引いた「業況判断」DIは△53を示し、1997年2月以来6期連続で悪化する結果となっただけでなく、3期連続で調査開始(1994年2月)以来の最悪水準を更新することになりました。

 こうした調査結果は、1.景況悪化の契機となった国内消費需要 の落ち込みが生産・投資の停滞をもたらしたことで、これまで相対的に好調を維持してきた製造業にも不況感が広がったこと、2.内需の落ち込みを輸出増で補 うという従来の方式が、アジアの経済危機の発生とともにもはや困難になったこと、3.貿易摩擦再燃の懸念からアメリカ向け輸出のむやみな増加も避けなけれ ばならないことなど、内外需の低迷を反映して日本が現在深刻な「閉塞状況」にあることを示しています。財政出動による官公需の増加も、こうした「閉塞感」 を払拭するほどの効果は期待できず、ある程度の下支え効果はあっても、消費や投資を積極化させるほどのものではないと思われます。

 すでに「需要 低迷→企業間競争の激化→価格低下→利益縮小」という循環も見られ、今回のヒアリング調査でも「他社が倒産しなければ、価格も下げ止まらず、収益率は上昇 しない」との声が多く聞かれました。需要増ではなく、倒産などによる供給側の整理・縮小に期待せざるをえないこと自体、今後も、当分の間は、深刻なサバイ バル競争の展開を含む厳しい状況が続くことを予感させます。政府には、今こそ「閉塞感」を打破しうるような鮮明な国家ビジョンの提示が求められます。

[調査要項]

 1.調査時  1998年5月26日~6月3日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
 4.回答企業 645社より、192社の回答をえた(回収率29.8%)
       (建設業26社、製造業71社、流通・商業57社、サービス業38社)
 5.平均従業員 26.2人
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
業況判断最悪を更新

  「今月の状況」DIは3期連続で調査開始以来最悪の結果を更新した。6期連続で「悪い」超過幅が拡大し、前回調査比12ポイント悪化の△53となった。こ れは「よい」と答えた企業が前回比5%減少したのに加え、「悪い」と答えた企業が全体で7%増加したためである。業種別では、前回大幅に悪化したサービス 業が43ポイントの大幅な回復(△53→△10)を示したものの、他の3業種は押し並べて悪化した。なかでも流通業では74%の企業が「悪い」と答え、前 回の△39から今回△74と35ポイントの大幅な悪化を示した。また、建設業(△48→△65)、製造業(△33→△52)においても大幅な悪化を示して いる。前年同月比でみても全業種で△59と前回比9ポイント悪化し、調査開始以来最悪の結果となった。サービス業が大幅な回復を示した以外は、流通業 (△48→△80)、建設業(△65→△72)、製造業(△40→△59)とそれぞれ悪化を示した。建設業と製造業では7割強の企業が、流通業においては 85%の企業が前年同月比で「悪化」したと答えた。また、次期見通し(全業種)においても△50と、先行き悪化を見通す企業が大半を占めている。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
売上高、経常利益ともに最悪を更新

  売上高DI(前年同月比)は前回比11ポイントの大幅な悪化を示し△37となり、調査開始以来最悪の結果となった。業種別で見ると建設業が57ポイント悪 化(△14→△71)し、製造業(△17→△44)も27ポイント悪化とそれぞれ大幅な悪化を示した。流通業は3ポイント改善の△35、サービス業は34 ポイントと大幅な改善を示して△5となった。また次期見通しにおいても半分以上の企業が売上高の「減少」を見通しており、先行き不安感のぬぐえない状況が 依然として続いている。
 経常利益DI(前年同月比)も6ポイント悪化の△32と3期連続で調査開始以来最悪の結果となった。売上高同様、建設業 (△30→△46)製造業(△15→△39)で大幅な悪化を示し、流通業(△43→△34)サービス業で(△27→△5)改善が見られた。次期見通しにお いては、流通業を除く3業種で「赤字」を見通す企業が「黒字」を見通す企業を上回っている。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
「減少」超過に転じ、「過剰感」薄らぐ

  前年同月比でみた在庫DIは△6と「減少」超過に転じた。これは在庫が「減少」したとする企業が3%増加する一方で、「増加」したと回答する企業が8%減 少したためである。業種別では製造業(6→△2)流通業(3→△11)ともに「減少」超過に転じている。また「在庫過剰感」も16→15と若干薄らいだ。 次期見通しでは6と、先行き在庫過剰を見通す企業が減少を見通す企業を上回っている。

【価格変動】【取引条件】
価格の低下続く

  価格変動DI(前年同月比)は5期連続で「低下」超過幅が拡大し、全業種で3ポイント悪化の△51となった。業種別ではサービス業(△54→△18)で大 幅に「低下」超過幅が縮小したが、それ以外の3業種では押し並べて悪化を示した。なかでも建設業においては8割近い企業が「低下」と回答し、DI値は △54→△72と「低下」超過幅が大幅に拡大したのが目立つ。需要低迷の中での生き残りをかけた競争激化が価格低下をもたらしているものと考えられる。一 方、取引条件DI(前年同月比)は△29→△27と2ポイント改善したものの、依然として大幅な「悪化」超過状態にある。次期見通しでも先行き価格低下・ 取引条件悪化を見通す企業が多い。

【資金繰り】
「窮屈感」増す。見通しにも厳しさ

 資金繰りDIは △32→△34と2ポイント悪化し、97年11月調査以来2期連続の悪化となった。業種別で見ると、サービス業(△46→△8)が大幅な改善を示したほ か、建設業(△48→△41)でも改善が見られた。その一方で、製造業(△19→△28)で9ポイント悪化し、流通業(△28→△51)では23ポイント の大幅な悪化が見られた。また「次期見通し」においても半分以上の企業が「悪化」を見通しており、DI値も△43となった。

【施設稼働率】【設備過不足】
設備「過剰」超過に転じる

  前年同月比でみた施設稼働率DIは△19→△31と前回調査に比べ12ポイント「低下」超過幅拡大した。流通業は1ポイント、製造業では22ポイントと大 幅に「低下」超過幅が拡大し△43となった。また、次期見通しでも△30と先行き稼働率「低下」を見通す企業が「上昇」を見通す企業を大幅に上回る状況が 続いている。また、設備過不足DIは前回の△4から今回8へと、94年11月調査以来の「過剰」超過に転じた。業種別では、建設業(8→△6)で「不足」 超過に転じる一方、流通業(△10→△5)とサービス業(△18→△4)で「不足」超過幅が縮小し、製造業では前回の0から今回25と大幅な「過剰」超過 に転じた。

【雇用】
「過剰」超過に転じる

 全業種で見た雇用動向は△6→12と、95年5月調査以来の「過剰」 超過に転じた。これは雇用が「不足」していると答えた企業が9%減少し、加えて「過剰」であると判断している企業が9%増加したためである。業種別では、 サービス業が依然として「不足」超過状態にあるものの、他の3業種では「過剰」超過幅が拡大した。とりわけ、建設業(4→28)と製造業(4→28)での 「過剰」超過が目立つ。

【経営上の力点など】
引き続き「民間需要の停滞」がトップ

 「経営上の問題点」の項目で は、引き続き「民間需要の停滞」が1位であった。業種別では全ての業種で増加が見られたが、とりわけ建設業では81%の企業が問題点としてあげているのが 目立っており、民需落ち込みの打撃の大きさを窺わせている。第2位は前回に引き続き「販売先の値下げ要請」であった。「経営上の力点」については、依然と して「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が高い比重を占めている。

<会員の声>

(OA機器関係)  業界ではウインドウズ98がリリースされるということは明るい話題です。しかし95の時のように大ブレイクするかは疑問です。二千年問題が迫り、コンピュータの保守で現在忙しい状況です。
(金型部品卸)  金型関係では、今秋までは仕事は少ないし、仕事のある人、ない人の格差が激しい。3年以内に約半数が倒産するのではないかと言われています。
(旅行業)  旅行代理店は互いに単価のたたきあいをし、互いの首を絞めている。ワールドカップのため、フランス便が大手に独占され中小業者では取れない。また煙害でインドネシア・マレーシアには旅行者が行かないため、単価が下がっている。
(保 険代理店)  今年七月までの自由化で今までの認可制が届出制になり、外資系が入ってき、業界の整理が行われている。もうすでに値下げ競争が進行しており、全国で損保 代理店は五十万件あるが、一千万円以下の取り扱い額の代理店は大手から取引を拒まれ、数年先には1/3の十五万件くらいになるだろうと予想されている。