【概況】
【業況判断】大幅な改善を示す。建設業はプラスに
【売上高】【経常利益】売上高・経常利益ともに改善するも、見通しに厳しさ
【在庫】過剰感高まる
【価格変動】【取引条件】価格「低下」超過幅縮小
【資金繰り】窮屈感高まる
【設備過不足】【施設稼働率】設備過剰感和らぎ、施設稼働率の「低下」超過幅も縮小
【雇用】「過剰」超過幅が大幅に縮小
【経営上の力点など】「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が上位を占める
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DI値推移一覧表(PDF 133KB)
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景況調査報告(1999年11月)第24号(PDF:350KB)
【概況】
業況が「よい」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を差し引いた業況判断DI(「今月の状況」)は前回の△43から△23へと20ポイントの大幅な改善を示しました。これは、「よい」と答えた企業が14%増えたことに加えて、「悪い」と回答した企業が6%減少したためです。依然前者が後者を下回ってはいるものの、これで1998年11月調査以降の5期連続の改善、そして業況判断DIの大幅な底上げが実現したことになります。
今回調査で最も特徴的であったのは、前回調査で息切れを示しつつあった建設業が一転して大幅な改善(△53→4)となったことです。業況判断DI(「今月の状況」)が10期ぶりにプラスに転じたのをはじめ、売上高、経常利益ともに他業種に比べて大幅な改善を示しています。こうした建設業の改善が全般的な業況改善の重要な支えになっていると言えます。景況分析会議におけるヒアリング調査では、個人住宅の需要が伸びたこと、大型小売店の出店が相次いだことなどが報告されており、こうした民間需要の伸びが業況改善に大きく寄与したと考えられます。また、99年に入って以降順調な改善を続けてきた製造業も、今回大幅な改善(△40→△14)を示しています。
しかし、注意を喚起しておかなければならないのは、こうした好転を体験しながらも、なお多くの中小企業経営者が先行き不安を示しており、業況が今後引き続きトントン拍子に改善していくとは思っていないということです。実際、今回建設業の業況判断の重要な改善要因となった大型小売店の建設増は、個人消費が低迷している以上、出店再規制に対応した一時的なものでしかないとする考え方もできますし、個人住宅の建設増も時限措置として導入された住宅取得促進税制の期限切れ(この優遇措置は結局延長されることになりましたが)を目前に控えた「駆け込み的」なものである可能性が払拭できません。製造業についても、はっきりと光が当たっている範囲は、なおも情報機器関連など一部に限られており、国内での民間設備投資は依然低迷しています。さらに、2000年入り後は大企業のリストラがより本格化するとの予測もあり、個人消費の一層の落ち込みが懸念されています。また、「特別信用保証制度」導入以降改善を続けてきた資金繰りが再び悪化し始めるなど、別の側面から不安要素も発生しています。
今回業況判断DI(「今月の状況」)がプラスに転じた建設業でも、2月の見通しでは△28を示しており、「悪い」と予測する企業がを「良い」と予測する企業を大きく上回ています。また、前回調査では、11月の業況見通しがプラスであった製造業でも、2月の見通しでは△11と、再び「悪い」と予測する企業が上回る結果となっています。いずれにしても、今秋体験した「改善」にもかかわらず、サバイバル競争の激化に備える姿勢を崩すわけにいかないことだけは確かなようです。
[調査要項]
1.調査時 1999年11月27日~11月30日
2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
4.回答企業 626社より、164社の回答をえた(回収率26.2%)
(建設業25社、製造業64社、流通33社、小売・サービス業42社)
5.平均従業員 29.6人
なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。
【業況判断】
大幅な改善を示す。建設業はプラスに
「今月の状況」DIは前回の△43から今回△23へと20ポイントの大幅な改善を示した。業種別では、サービス業が△27→△51と24ポイントの悪化を示した一方で、57ポイントの大幅な改善を示しDI値がプラスに転じた建設業(△53→4)をはじめ、流通業(△59→△27)と製造業(△40→△14)でも改善が見られた。しかし、先行きに対する見通しは依然厳しく、全体の43%が次期の業況は「悪い」と回答している。
【売上高】【経常利益】
売上高・経常利益ともに改善するも、見通しに厳しさ
売上高DI(前年同月比)は△25→△23と、「減少」超過幅が2ポイント縮小した。これは売上高が「増加」した企業が1%増加し、「減少」したとする企業が1%減少したためである。業種別にみると、サービス業で26ポイントの大幅な悪化(△20→△46)が見られたものの、流通業(△35→△12)、建設業(△23→△8)、製造業(△24→△19)はそれぞれ改善した。しかし、次期の売上高に対しては厳しい見通しを立てる企業が多い。とりわけ、建設業とサービス業では5割を超える企業が次期の売上高が減少すると見ている。
経常利益は5期連続で改善する結果となった。DI値(前年同月比)は△23→△17と、「減少」超過幅が6ポイント縮小した。これは「好転」したと答える企業は横ばいであったものの、「悪化」したと回答する企業が5%減少したためである。業種別では、売上高DI同様、サービス業で悪化が見られた他は、52ポイントの大幅な改善を示した建設業を含む3業種でそれぞれ改善が見られた。しかし、次期見通しDIは△7と「赤字」見通し超過の状態にあり、売上高同様、右肩上がりの改善が見通せない状況にあることを示している。
【在庫】
過剰感高まる
前回調査で大幅に後退した在庫過剰感が、今回調査では再び高まる結果となった。在庫感DI(今月の状況)は△20→△23と3ポイント「過剰」超過幅が拡大した。また前年同月比DIにおいても、△2→6と「減少」超過から「増加」超過へと転じている。業種別(前年同月比)に見ると、4→△2と「減少」超過に転じた製造業に対して、流通業では△12→22と大幅な「増加」超過に転じた。次期見通しにおいても16と、先行き在庫が「過剰」になると見通す企業が「不足」と見る企業を上回っている。
【価格変動】【取引条件】
価格「低下」超過幅縮小
価格変動DI(前年同月比)は△51→△47と「低下」超過幅が4ポイント縮小した。前回調査に引き続いての「低下」超過幅の縮小であるが、その縮小のテンポは大きく鈍化している(前々回△72→前回△51→今回△47)。製造業(△60→△49)・流通業(△50→△39)・建設業(△58→△50)でそれぞれ「低下」超過幅の縮小が見られた一方で、サービス業だけが「低下」超過幅が再拡大している(△33→△48)。次期見通しDIは△38と、大半の企業が競争激化と販売先の値下げ要請などの圧力により価格が低下する状況が今後とも続くと見ている。
取引条件DI(前年同月比)は△28→△18と「悪化」超過幅が10ポイント縮小する結果となった。業種別では32ポイントの大幅な改善を示した流通業を含む3業種で改善が見られたが、製造業は△22→△24と悪化する結果となった。次期見通しDIは△17と、「好転」を見通す企業を「悪化」と見る企業が上回っている。
【資金繰り】
窮屈感高まる
特別信用保証制度の導入以降、資金繰りは改善を続けてきたが、ここにきてそうした傾向に歯止めがかかりつつあることを示す兆候が現れた。資金繰りDI(今月の状況)は△17→△24と7ポイント「窮屈」超過幅が拡大した。これは、資金繰りに「余裕」があると答えた企業の割合が1%減少したことに加え、「窮屈」と回答した企業が7%増加したためである。業種別では、製造業(△17→△16)と流通業(△14→△9)で「窮屈」超過幅が縮小したものの、サービス業では21ポイント(△22→△43)、建設業では20ポイント(△16→△36)と大幅に「窮屈」超過幅が拡大した。また、先行きに対する見通しも深刻で、5割弱の企業が3ヶ月後の資金繰りが「窮屈」になると見通している。
【設備過不足】【施設稼働率】
設備過剰感和らぎ、施設稼働率の「低下」超過幅も縮小
前回調査で調査開始以来最大の「過剰」超過幅を記録した設備過不足DIは、今回調査で若干の改善を示した。設備が「不足」する回答した企業の割合は前回と変わらないものの、「過剰」であると答えた企業が減少したために、設備過不足DIは11→6となった。このような動きは全業種一様に生じているわけではなく、業種間で大きな格差がある。建設業(13→△8)やサービス業(0→△18)は「不足」超過に転じる一方で、流通業(△19→12)は「過剰」超過に転じる結果となった。次期についても見方は分かれ、「不足」と見る企業が多い建設業(△16)とサービス業(△10)に対して、製造業(23)と流通業(3)は「過剰」と見る企業が多い。
3期続いていた施設稼働率DI(前年同月比)の「低下」超過幅の拡大に歯止めがかかった。「低下」超過幅は前回の△28から今回△13へと15ポイント縮小した。これは施設の稼動率が「上昇」したと回答した企業が4%増加する一方で、「低下」したと答える企業が10%減少したためである。業種別では、流通業は29ポイント(△33→△4)、製造業は17ポイント(△25→△8)の「低下」超過幅の縮小であった。しかし、次期見通しにおいて「上昇」と見通す企業を「下降」とみる企業が上回っている(△12)ことからもわかるように、今後稼働率の一方的な改善が続くことは見込めない。
【雇用】
「過剰」超過幅が大幅に縮小
前回調査で調査開始以来最大の「過剰」超過幅から9ポイント縮小した雇用動向DI(全業種)は、「過剰」超過幅が16→3と13ポイントの大幅な縮小を見せた。これは雇用が「過剰」な状態にあると回答する企業が33%から23%へと減少する一方で、「不足」していると答えた企業が17%から20%へと増大したためである。業種別に見て最も大きな変化を見せたのは建設業で、大幅な「過剰」超過から「不足」超過へと転じた(33→△4)。流通業では22→9、製造業では20→13とそれぞれ「過剰」超過幅が縮小し、またサービス業では△6→△13と「不足」超過幅が拡大した。ただ、次期(3ヶ月先)見通しにおいては、先行き雇用が「過剰」になると見る企業が「不足」すると見通す企業を9ポイント上回っており、今後も一方的に「過剰」超過幅の縮小傾向が続くと見ることはできない。
【経営上の力点など】
「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が上位を占める
「経営上の問題点」としては、依然として「民間需要の停滞」が最上位を占めている。建設業では特に、76%と他業種に比してその割合が高かった。2番目に多かったのが「販売先の値下げ要請」であるが、流通・製造両業種でその割合が高く、流通業においては61%と「民間需要の停滞」と回答した企業の割合を上回った。3位以下は、「新規参入者の増加」「取引先の減少」などが続いている。
「経営上の力点」においては、前回調査同様「新規受注(顧客)の確保」(63%)、「付加価値の増大」(49%)、「社員教育」(33%)、「財務体質の強化」(30%)が上位を占めた。
<会員の声>
(1)建設関連
(アルミサッシ等販売施工)取引条件が厳しくなり、辞退すれば他社が引き受ける等で、全体的に粗利の少ない仕事が多いため苦労している。
(空調・給排水設備)製造業よりサービス産業(スーパー、生保等)の経費削減策が顕著となってきた
(プラント設計・施工)つまるところ企業は人が動かしているということです。この頃一番出来、不出来が問われる人は社長でしょう。次に幹部社員の人達であります。共に育つ共育から企業の発展の推進者を何人育てるかがカギとなると思います。
(店舗設計施工)地球化で日本だけの事では解決しにくいのだろうが、それにしてもドルに“ほんろう”される円は弱いのか強いのか。製造物以外のマネーゲームの方が金額が多いのはおかしい!
(2)製造
(段ボール用原紙製造)大手企業(大手製紙会社、大手商社、大手流通業者、大手コンバーター)の合併、統合が激化し、流通を含めた流れが大きく変化しつつあるなか、系列やグループに属さぬ中小企業の生き方そのものと、製品を含む付加価値への転換が重要となりつつある。
(プラスチック成形加工)新車の立ち上がりで底は脱したが、先行きは不透明な部分が多い。整理統廃合等の話も出ており、ISO取得が一つの条件になってきている。
(自動車部品製造)このところ生産量は伸びているが、値下げ要請があり売上は横ばい。従って相当な経費削減を含む原価低減を図っていかないと利益確保が難しい。
(金属加工)短納期、低価格が定着していて、その対応に大変である。
(省力化設備製造)自動車関係設備は競争益々激化する。自動車関係の仕事は比率を下げ50%くらいにする必要あり。
(自動制御装置設計製作)販売価格の下落などのデフレ経済下では意識やシステムの改革が急激なスピードで経営課題になっていることを実感している。
(印刷)総じて良い景況感はなし。設備投資とリストラにより利益率をアップさせて維持している。受注状況が短気集中型となり過去の季節データがまったくあてにならなくなってきている。
(工作機械製造)政府は国債を増発し続けています。これだけ国民からの借金がふくらむとやがて借金棒引きのためにインフレの引き金を引くのではないかと気にしています。
(3)流通
(自動車用品卸売)俗にいう定番商品の売行きが非常に悪く、価格の安いものしか売れない(高い物を利益を薄くした商品)。消費者はよく商品を見ている。
(靴下製造卸売)上場企業や一部の業種では底打ち感あるも衣料は底打ち感なし。今年ボーナス前年よりダウン。
(食品加工品卸)我々の業界は平均的に前年比10%前後売上ダウンです。政府が言うがごとき下げ止りの感じはまったくなし。私共はたまたま商品がヒットしたので、売上も昨年並みか少々水面上に出るかどうかの境目です。
(食品製造用資材販売)食品関係は暖冬の影響で鍋物用食品不調。超マンモススーパーの出店でスーパー戦争激化。値下げ要請の可能性。健康食品好調。
(4)サービス
(工作機器販売)金融市場の再編成に1年かかるとして来年の後半くらいから少しづつ景気上向きになるのでは?
(不動産仲介)規制緩和の名のもと管理強化、手間ひまの増加と費用の増加となっている。本来の規制緩和に展開することを望む。
(保険代理業)損保(元請会社)の合併による強化策が代理店に与える影響は未知数だが、大型化をめざすことは確かだ。商品価格競争の後(2~3年)は良いか?そこまで頑張って生き延びること。
(建造物解体工事)建設業界の値下受注合戦で受注金額の低下で売上・利益とも悪化。下請にしわ寄せが来ている。キビシイ!!
(中古車販売)見積要求増、ただ聞くだけ。車販、新型発表あれど購買力弱し。代換先延ばし。