【概況】
【業況判断】 4期連続の悪化。製造業の悪化目立つ
【売上高】【経常利益】 売上高・経常利益の悪化続く
【在庫】 在庫過剰感弱まる
【価格変動】【取引条件】 価格低下・取引条件悪化続く
【資金繰り】 「窮屈」超過幅さらに拡大
【設備過不足】【施設稼働率】 5割以上の企業で稼働率が低下
【雇用】 雇用過剰感さらに高まる
【経営上の力点など】 「販売先からの値下要請」が問題点のトップに
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)
※全文のPDFファイルはこちら
景況調査報告(2001年11月)第32号(PDF:917KB)
【概況】
景気下降が続いています。業況悪化のテンポは弱まったものの、底入れの目途が立たない状況が続いています。業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は△33となり、前回調査に比べ1ポイント悪化しました。これで業況感は4期連続の悪化となりました。業況を前年同期との対比でみたDI値も前回調査に比べ5ポイント悪化し、△48となっています。また、先行きに対する見通しも深刻で、5割を超える企業が「悪い」と見通す結果となりました。
特に製造業については危機的状況に近づきつつあります。前年に比べて「よい」と回答した企業は13%減少し、「悪い」と答えた企業は42%も増加しています。その結果DI値は17ポイント悪化の△54となり、近年で最悪であった98年8月の水準(△65)に近づきつつあります。この最大の要因はIT関連投資の失速です。ヒアリング調査でも、ここにきてIT関連の受注が完全にゼロになったとの声が数多く聞かれました。また、IT関連だけでなく、工作機械全般の受注減少も報告されており、製造業全体が落ち込みを鮮明にさせつつあります。
こうした設備投資の鈍化に加え、内外需の縮小が景気に暗い影を落としています。小売業の販売額が前年比で3~5%減となっているように、個人消費が大きな落ち込みを示し始めています。企業倒産の増加・失業率の上昇を考慮すれば、当面個人消費の回復は見込めない状況です。さらに、米国の景気後退も大きな懸念材料です。企業部門の悪化で始まった米国の景気後退は、同時多発テロを契機に個人消費の落ち込みに連動しています。大幅に上昇し始めた失業率を勘案すると、個人消費の持ち直しは見込めません。米国の景気後退は対日輸入の縮小となって現れており、今後とも日本経済にデフレ圧力を加える最大の要因です。
以上のようなデフレ環境のなかで、小泉政権が実施しようとしているのはさらなるデフレ政策です。今回調査で製造業の落ち込みをカバーし、全体の業況悪化テンポを鈍化させたのは建設業の大幅な業況改善でした。ヒアリング調査では、建設業の改善を支えたのは民需ではなく官公需とのことでした。小泉政権による財政構造改革は、このような下支えを取り払ってしまう可能性があります。また金融面からのデフレ政策も深刻な影響を与えつつあります。不良債権処理の加速化要請や中小金融機関の閉鎖は、中小企業の金融環境を悪化させています。実際に、今回の資金繰りDIは△40と調査開始以来最悪の水準に達しつつあります。前回資金繰りDIが同様の水準に落ち込んだ98年に実施された、特別信用保証制度などの政策措置の実施も見込めず、先行き資金繰りはさらに困難化することが予想されます。同友会はビジョンなき構造改革にしっかりと異を唱え、将来への不安を払拭するような政策措置を日本政府に求めていく必要があります。
[調査要項]
1.調査時 2001年11月26日~11月29日
2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
4.回答企業 1010社より、195社の回答をえた(回収率19.3%)
(建設業29社、製造業77社、流通38社、小売・サービス業51社)
5.平均従業員 26.9人
なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものである。
【業況判断】
4期連続の悪化。製造業の悪化目立つ
「今月の状況」DIは前回の△32から1ポイント悪化し、△33となった。これで業況の悪化は4期連続となった。これは「悪い」と回答した企業が横ばいであった一方で、「良い」と答えた企業が2%減少したためである。業種別にみると、製造業が前回の△37から△54へと17ポイント悪化し、サービス業も△9→△10と1ポイント悪化した。その一方で、建設業は前回の△24から△4へと20ポイント改善し、流通業も△52→△42と10ポイント改善した。前年同月比DI(全業種)もまた△43→△48と5ポイント悪化した。製造業(△46→△61)とサービス業(△24→△39)がともに15ポイント悪化する一方で、建設業は11ポイント(△32→△21)、流通業は10ポイント(△65→△55)改善した。先行きに対して楽観的な業種はなく、どの業種においても半数以上の企業が「次期の業況は悪くなる」と見通している。とりわけ製造業(△48)と流通業(△47)の見通しが厳しい。
【売上高】【経常利益】
売上高・経常利益の悪化続く
売上高DI(前年同月比)は前回の△30から3ポイント悪化し、△33となった。これは「減少」と回答した企業が1%減少したものの、「増加」と答えた企業もまた4%減少したためである。売上高DIの悪化はこれで5期連続となった。業種別にみると、製造業が△39→△51と12ポイントの大幅な悪化を示したのが目立つ。またサービス業は△5→△9と4ポイント、流通業は△38→△39と1ポイント悪化した。建設業のみが△35→△17と「減少」超過幅を18ポイント縮小させている。先行きについては、全業種押し並べて売上高の「減少」を見通す企業が半数を超えている。とりわけ製造業の見通し(△49)が厳しい。
経常利益DI(前年同月比)は前回の△34から△42へと8ポイント「悪化」超過幅が拡大した。経常利益DIの悪化はこれで6期連続となった。業種別にみると、製造業が△44→△57と13ポイント、サービス業が△12→△24と12ポイント、流通業が△39→△41と2ポイント「悪化」超過幅が拡大した。一方で、建設業は△37→△34と3ポイント「悪化」超過幅が縮小した。経常利益の「今月の状況」DIもまた△6→△9と3ポイント「赤字」超過幅が拡大した。業種別では、流通業が14→△15と「黒字」超過から「赤字」超過へと転じた。その一方でサービス業は7→12と5ポイント「黒字」超過幅が拡大し、建設業は△22→△14と「赤字」超過幅が縮小した。製造業は前回から横ばい(△19)であった。次期の利益については、44%の企業が「赤字」を見通している。
【在庫】
在庫過剰感弱まる
在庫感DI(今月の状況)は前回の34から今回の31へと3ポイント「過剰」超過幅が縮小した。業種別にみると、流通業で33→13と20ポイント「過剰」超過幅が縮小する一方で、製造業は34→40と6ポイント「過剰」超過幅が拡大した。前年同月比については14→15と1ポイント「増加」超過幅が拡大した。製造業で14→22と8ポイント「増加」超過幅が拡大した一方で、流通業は13→0と「増加」超過状態が解消した。次期見通しについては、製造業で「過剰」見通しが優勢な(24)一方で、流通業では「不足」見通しが優勢(△3)であった。
【価格変動】【取引条件】
価格低下・取引条件悪化続く
価格変動DI(前年同月比)は前回の△70から今回の△73へと3ポイント「低下」超過幅が拡大した。「低下」超過幅の拡大はこれで3期連続となる。製造業では「上昇」と回答する企業が全くない一方で「低下」と答える企業は8割を越えた。製造業は△73→△83と10ポイント「低下」超過幅が拡大した。同様に「上昇」回答が皆無であった建設業(△68)と流通業(△74)はともに前回から横ばいであった。一方、サービス業は△61→△59と2ポイント「下降」超過幅が縮小した。次期見通しは全体で7割の企業が価格の「低下」を見通しており、DI値は△69であった。
取引条件DI(前年同月比)は△29→△33と4ポイント「悪化」超過幅が拡大した。取引条件の悪化はこれで4期連続となる。業種別にみると、製造業で16ポイント(△27→△43)、建設業で9ポイント(△39→△48)、サービス業で5ポイント(△21→△26)「悪化」超過幅が拡大した。一方、流通業では△31→△11と20ポイント「悪化」超過幅が縮小した。次期についても取引条件の好転を見込む企業は少なく、「悪化」見通しが「好転」見通しを35ポイント上回る結果となった。
【資金繰り】
「窮屈」超過幅さらに拡大
資金繰りDI(今月の状況)は前回の△36から今回の△40へと4ポイント「窮屈」超過幅が拡大した。これは「窮屈」と回答した企業が3%増加したことに加え、「余裕」と答えた企業が1%減少したためである。業種別にみると、流通業で△26→△35と9ポイント、製造業で△34→△41と7ポイント、サービス業で△36→△40と4ポイントの窮屈超過幅の拡大がみられた。一方、建設業は前回の△58から今回△43へと15ポイント「窮屈」超過幅が縮小した。次期の資金繰りについての見通しは全業種押し並べて厳しい。とりわけ建設業では4分の3の企業が次期の資金繰りは「窮屈」であると見通している。
【設備過不足】【施設稼働率】
5割以上の企業で稼働率が低下
設備過剰感が大幅に高まっている。前回「過剰」超過に転じた設備過不足DI(今月の状況)は2→12と、「過剰」超過幅が10ポイントも拡大した。業種別にみると、製造業で17→28と11ポイント「過剰」超過幅が拡大し、流通業とサービス業はともに△11→6と「不足」超過から「過剰」超過へと転じた。一方、建設業は0→△14と「不足」超過に転じている。次期見通しは、前回調査では製造業だけが「過剰」見通し超過であったのが、今回は全業種に「過剰」見通し超過が広がっている。
施設稼働率DI(前年同月比)は前回の△32から今回の△42へと10ポイント「低下」超過幅が拡大した。稼働率が低下したと回答する企業が全体の過半数を占めたのは、調査開始以降初めてのことである。業種別では、流通業が△26→△36と10ポイント、製造業は△35→△44と9ポイントとそれぞれ「低下」超過幅を拡大させている。次期見通しについても「低下」を見通す企業が多く、製造業では52%の企業が「低下」を見通している。
【雇用】
雇用過剰感さらに高まる
雇用動向DI(今月の状況)は前回の5から今回の10へと5ポイント「過剰」超過幅が拡大した。業種別にみると、製造業で19→34と15ポイント「過剰」超過幅が拡大し、流通業では0→14と14ポイント「過剰」超過幅が拡大した。一方、建設業は0→△14と14ポイント、またサービス業では△9→△16と7ポイント「不足」超過幅が拡大した。次期に対する見通しについても見解が分れた。「過剰」見通しが多い製造業(32)と流通業(13)に対して、建設業(△19)とサービス業(△17)では「不足」見通しが多かった。
【経営上の力点など】
「販売先からの値下要請」が問題点のトップに
「経営上の問題点」としては、「販売先からの値下要請」を56%の企業が指摘し、トップを占めた。とりわけ、製造業(73%)でこの問題点を取り上げる企業が多かった。次いで「民間需要の停滞」(53%)「取引先の減少」(26%)を問題点として指摘する声が多かった。
「経営上の力点」としては、前回調査同様「新規受注(顧客)の確保」(64%)を取り上げた企業が最も多かった。それに「付加価値の増大」(47%)と「社員教育」(31%)が続いている。
<会員の声>
※「最近の景況や経営課題について」の設問への会員の皆さんからの文書回答です。
(1)建設関連
(住宅建築)
住宅リフォームにおいてリピーターの増大は喜ばしいことですが、一方では将来のリピーターとなるべき新規顧客の取り込みが落込んでおり、長期的には心配している。やはり世相から消費マインドの落ち込みを感じています。
(土木)
銀行が金を貸さなくなってきた。建設業にはどうも貸すことがきびしいのではないか。6月決算でトントンであり銀行借入も減らしているが思うように動かない。
(鉄筋工事)
今年も危機感を持ち続けながらなんとか年を越せそうです。この数年間毎年同じことを繰り返しているような気がします。いったいいつになったら危機感を抱かずに仕事ができるようになるのでしょうか。
(2)製造
(印刷)
この11月は大変な状況である。昨年までは発注があったものがどんどん経費削減のため無くなっている。この事は一般企業、官公庁共同じである。この状況がいつまで続くのか心配である。
(ばね製造)
自動車業界では値下要請が更に厳しくなるのに加え、品質重視の考えから品質・検査業務による人件費が増加している。それをカバーするだけの新規受注が難しくなってきた。
(金型部品)
やたら海外生産(特に中国)の話を聞くが、国内生産を前提にしてもっとがんばらなければ。空洞化がますます早まることになるのでは。
(自動車部品)
大企業経営者の目先的な横暴が目立つ。例えば大幅人員削減などモラルの欠如に警鐘を鳴らしたい!!
(自動車部品)
同友会会員はやがて来る不良債権処理後の金融機関の「貸ししぶり」に対応すべく資金の調達にもっと熱心にならなくてはいけない。生き残りの決め手は手元に流動性の資金がどれだけあつかで決まる。
(制御盤)
最近の各種事件は景況を大変厳しくしている。企業はコスト競争の末に赤字決算なら銀行が手を引く為に人件費や退職金で悩み、黒字で利益が出ても現在の税制では概算税率50%を現金で100%納税である。利益は全部が現金預金で残るわけではなく、在庫、売掛金、その他に姿を変えている為、銀行をお友達にしない限りやっていけなくなる。またその銀行が危ないときている。大変な時代である。現在、金融アセスメントの問題などで行なっている同友会の運動がどれ程大切なことか。
(3)流通
(新・中古車販売)
とにかく経費節減を実行しているが、銀行の借入難で四苦八苦している。銀行によって考え方、レベルが違うので色々紹介などで対応している。
(和装卸)
勝ち組負け組といわれてきたが我々の業界では組ではなく一人勝ちの様相を呈してきている
(繊維卸)
中国進出のため日本国内企業の空洞化加速。景気は良くならない!!
(自動車ガラス)
ここ数カ月の自動車業界(とくにアフターサービス)はとても厳しい状況です。とにかく仕事が今までの半分くらいに減っています。経営課題としてはいかに低コストのサービスを数こなすかという業界内での智恵くらべとそれの実現だと思います。
(食品添加物)
食品業界は第2の狂牛病発生でムード悪化。年末需要期を迎えても活気なく、やたら値下げ要請が多くなった。内橋さんの云うた安ければ良いは間違いだ、には共感。どう体力を温存するか、一連の対策を講じているが2月までは更に悪化するだろう。
(4)サービス
(イベント企画)
アメリカのテロ以来業界では全国的に前年度20~30%の受注減になっている。銀行は貸し渋りをしているが同時に融資先が減少しているため決算が黒字の企業には融資も積極的に進めているようです。
(建物調査)
当社は集合マンションの改修と改装を自社営業してマンションの管理組合等と契約施工しているが、近年大手ゼネコンがこの分野に参入してきており2000万クラスの工事にも参入してきており少なくて7社、多くて10社くらいの競合となっている。その中でチャンピョンを取らねばならないので小企業は小企業なりの戦略で戦っております。