景況調査

第39号-2003年8月-
回復期待強まるも、足下微改善。過剰反応に警戒の声も。

【概況】
【業況判断】「今月の状況」・前年同月比ともに改善。見通しも明るい
【売上高】【経常利益】売上高DIの改善傾向に歯止め
【在庫】在庫過剰感弱まる
【価格変動】【取引条件】「低下」超過幅縮小するも,取引条件は悪化
【資金繰り】資金繰りは横ばい
【設備過不足】【施設稼働率】施設稼働率は改善。設備は「不足」超過幅拡大
【雇用】「不足」超過へ
【経営上の力点など】「販売先からの値下要請」がトップに
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)

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景況調査報告(2003年8月)第39号(PDF:1.01MB)


【概況】

 業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は△3となり、前回調査に比べ5ポイント改善しました。これは「よい」と答えた企業が1%増加したことに加え、「悪い」と回答した企業が3%減少したためです。また前年同月と比べても7ポイント改善しており、見通しも4と「悪い」見通しを「よい」見通しが上回りました。
 業況改善の要因として、ヒアリング調査の中で指摘されたのは、「トヨタの好調さ」です。国内では小型車販売が伸び悩むものの、大型車の販売が好調のようで、国内販売が5月から7月にかけて右肩上がりに増加しています。また、海外での自動車販売も好調で、この8月には新車販売台数で第三位に食い込みました。輸出は5月以降増加の一途を辿っているとともに、海外での増産も計画されており、愛知県下の自動車関連の製造業にプラスの影響を与えることが期待されます。また、住宅需要にも動きが出てきたようです。「セキュリティ完備」「都心型」「高級」「高層」といった高付加価値型に人気が集まっており、マンションを中心に賃貸・分譲ともに好調な売れ行きのようです。
 とはいえ、手放しで喜ぶことはできません。先行きを懸念させる要因として、以下の四点が指摘できます。第一に、住宅需要を巡る動きは都心マンション関連などごく一部に限られており、全面的な回復には至っていないことです。このことは建設業の売上・利益DIからも確認でき、「二極化」を強調する参加者が数多くいたヒアリング結果もそれを裏付けています。第二に、「売上高」DIの悪化です。これまで「利益なき繁忙」が続いてきましたが、「売上高」DIの改善傾向に歯止めがかかりました。第三に、「官公需の縮小」です。今回ヒアリング調査でも、官公需が完全に息切れしているとの声が数多く聞かれました。「緊縮財政路線」の継続で、当分官公需による下支え効果は期待できません。第四に、「米国経済の不安定性」です。米国経済は国と家計が借金を増やすことで、これまで支出を賄ってきました。ところが、雇用環境は一向に改善せず、金融・財政政策も既に限界に達している状況です。
 株価は1万円の大台を突破し、景気回復を示す経済指標も出始めており、国全体に明るい見通しが急速に広まりつつあります。しかし、ヒアリング調査でも、明るい兆しは一部に限られたものであり、その一部の伸びが波及効果を持って景気全体をひっぱりあげるとの見通しは得られませんでした。最近の株価上昇は一部の改善指標に過剰反応したものにすぎないとして警戒すべきたとする声も聞かれました。自社を取り巻く経済環境を冷静に分析する姿勢を崩さないことが必要です。

[調査要項]
 1.調査時  2003年8月28日~9月1日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
 4.回答企業 2,370社より、327社の回答をえた(回収率14.3%)(建設業47社、製造業120社、流通102社、サービス業58社)
 5.平均従業員 36.7人
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、藤田彰男・赤津機械(株)社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行・立教大学経済学部教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
「今月の状況」・前年同月比ともに改善。見通しも明るい

 「今月の状況」DIは前回の△8から5ポイント改善し、△3となった。これは「悪い」と答えた企業が3%減少したことに加え、「よい」と回答した企業が1%増加したためである。業種別に見ると、建設業が△18→0と18ポイント、製造業が△6→9と15ポイント、流通業が△27→△23と4ポイント改善した。一方、サービス業は19→2と、17ポイント悪化した。前年同月比DIも改善している。DI値は前回の△16から7ポイント改善し、△9となった。業種別ではサービス業だけが0→△9と9ポイント悪化し、その他の三業種は押し並べて改善した。流通業が△39→△18と21ポイント、製造業が△8→3と11ポイント、建設業が△22→△20と2ポイント改善した。次期見通しについても、明るい見通しが大勢を占めている。次期の業況を「良い」と見通す企業が「悪い」と予想する企業を4ポイント上回った。次期見通しのDI値が「良い」超過となるのは、2000年8月期調査以来12期ぶりのこととなる。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
売上高DIの改善傾向に歯止め

 売上高DI(前年同月比)は前回の△6から1ポイント悪化し、△7となった。4期ぶりの悪化である。業種別にみると、流通業で前回の△30から△9へと21ポイントの改善が見られ、製造業でも△4から今回の0へと4ポイントの改善が確認できた。一方、建設業は前回の0から22ポイント悪化し、△22となり、サービス業は前回の10から△5へと15ポイント悪化した。全業種の次期見通しについては、「減少」見通す企業が「増加」を見通す企業を3ポイント上回る結果となった。業種別に見ると、「減少」見通し超過であるのは建設業だけで(△41)、流通業(5)と製造業(3)では「増加」見通しが超過している(サービス業のDIは0)。
 経常利益DI(前年同月比)は前回の△9から1ポイント改善し、△8となった。8期連続の改善である。業種別にみると、製造業が前回の△4から7ポイント改善し、3となった。製造業の経常利益DIが「好転」超過へと転じるのは、2000年8月期調査以来、12期ぶりのことである。同様に改善が見られたのは、流通業と建設業である。流通業は12ポイント(△21→△9)、建設業は6ポイント(△28→△22)改善した。一方、サービス業は前回の12から△17へと29ポイント悪化した。一方、経常利益の「今月の状況」DIについては11→4と7ポイント悪化する結果となった。業種別で見て改善しているのは製造業だけであり、その他三業種は押し並べて「赤字」超過であった。製造業のDI値は前回の7から今回の11へと4ポイント改善した。一方、サービス業は28ポイント(37→9)、流通業は6ポイント(12→6)「黒字」超過幅が縮小した。また、建設業は前回の△11から今回△29へと「赤字」超過幅が拡大した。次期の利益見通しについても建設業だけが「赤字」見通し超過(△20)で、他三業種は押し並べて「黒字」を見通している。最も「黒字」見通し超過幅が大きいのは流通業であった(20)。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
在庫過剰感弱まる

 在庫感DI(今月の状況)は前回の28から16ポイント「過剰」超過幅が縮小し、12となった。業種別にみると、流通業は前回の32から今回の13へと19ポイント「過剰」超過幅が縮小し、製造業も26→12と14ポイント「過剰」超過幅が縮小した。前年同月比についても11→1と10ポイント「増加」超過幅が縮小した。業種別では流通業が11→3と「増加」超過幅が8ポイント縮小した。また、製造業は「増加」超過(11)から「減少」(△1)へと転じた。次期見通しについては、製造業(11)・流通業(7)ともに「過剰」見通し超過であった。

【価格変動】【取引条件】
「低下」超過幅縮小するも,取引条件は悪化

 価格変動DI(前年同月比)は前回の△55から今回の△43へと12ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別に見ると、流通業は△51→△34と17ポイント、サービス業は△44→△31と13ポイント、建設業は△69→△57と12ポイント、製造業は△57→△52と5ポイント「低下」超過幅が縮小した。一方、次期の価格見通しは、△38と大幅な「低下」超過状態にある。最も「低下」見通し超過幅が大きかったのは建設業で(△55)、全体の6割の企業が「価格」が先行き低下すると予想している。
 取引条件DI(前年同月比)は前回の△18から1ポイント「悪化」超過幅が拡大し、△19となった。業種別にみると、建設業は△22→△30と8ポイント、製造業は△9→△17と8ポイント「悪化」超過幅が拡大した。一方、流通業は△23→△16と7ポイント、サービス業は△21→△18と3ポイント「悪化」超過幅の縮小した。次期の取引条件についても、「悪化」を見通す企業が「好転」すると見る企業を19ポイント上回る結果となった。取引条件「悪化」見通しの超過幅が最も大きかったのは、半数の企業が「悪化」を見通している建設業(△41)であった。

【資金繰り】
資金繰りは横ばい

 資金繰りDI(今月の状況)は前回から横ばいの△28であった。業種別にみると、流通業だけが△20→△31と11ポイント「窮屈」超過幅が拡大したのを除いては、三業種押し並べて改善が見られた。サービス業は△36→△31と5ポイント、製造業は△22→△18と4ポイント、建設業は△40→△39と1ポイント「窮屈」超過幅が縮小した。次期の資金繰り見通しは「窮屈」見通しが「余裕」見通しを32ポイント上回る結果となった。最も厳しい資金繰り見通しを立てている業種は、建設業(△41)であった。

【設備過不足】【施設稼働率】
施設稼働率は改善。設備は「不足」超過幅拡大

 設備過不足DI(今月の状況)は前回の△8から今回△13へと、「不足」超過幅が5ポイント拡大した。「不足」超過幅が拡大するのは3期連続となる。業種別にみると、サービス業だけが△14→△13と1ポイント「不足」超過幅が縮小した以外は、三業種押し並べて「不足」超過幅が拡大した。流通業は△1→△10と9ポイント、製造業は△3→△10と7ポイント、建設業は△18→△22と4ポイント「不足」超過幅が拡大した。設備の次期見通しについては、「不足」見通しが「過剰」見通しを15ポイント上回る結果となった。「不足」見通し超過幅が最も大きかったのはサービス業であった(△21)。
 施設稼働率DI(前年同月比)は△15と、前回の△9から6ポイント「低下」超過幅が縮小した。業種別で見ると、流通業は△31→△23と8ポイント「低下」超過幅が拡大し、製造業は△6→3と「上昇」超過へと転じた。次期の稼働率見通しは「低下」見通しを「上昇」見通しが5ポイント超過する結果となっている。

【雇用】
「不足」超過へ

 雇用動向DI(今月の状況)は1→△12と「過剰」超過から「不足」超過へと転じた。業種別にみると、建設業は前回の3から今回△18へ、製造業は7から△12へ、流通業は3から△8へと転じた。サービス業は△11→△16と5ポイント「不足」超過幅が拡大した。次期の雇用見通しについては、「不足」見通しが「過剰」見通しを13ポイント上回る結果となった。全業種押し並べて「不足」見通しが超過しているなか、最も「不足」見通し超過幅が大きかったのは建設業(△23)であった。

【経営上の力点など】
「販売先からの値下要請」がトップに

 全業種で見た「経営上の問題点」は「販売先からの値下要請」(49%)がトップとなった。それに「民間需要の停滞」(43%)、「取引先の減少」(22%)、「新規参入者の増加」(20%)、「大企業の進出による競争の激化」(17%)が続いた。業種別で特徴的であったのは、建設業が問題点として第二位に「官公需要の停滞」を、製造業が第三位に「熟練技術者の確保難」を、第四位に「管理費等間接費の増加」を、サービス業が第四位に「人件費の増加」を指摘している点である。その他文書回答では「法律改正による影響」「年金・雇用保険等の値上」などが問題点として取り上げられている。
 「経営上の力点」は「新規受注(顧客)の確保」(65%)が引き続きトップであった。それに「付加価値の増大」(55%)、「社員教育」(32%)、「人材確保」「財務体質の強化」(19%)が続いた。建設業が問題点として第四位に「人件費以外の経費節減」を、第五位に「情報力強化」を、製造業が第四位に「得意分野の絞り込み」を、サービス業が第五位に「新規事業の展開」を指摘している点である。その他文書回答では、「在庫の圧縮」「社内業務の簡素化」などが力点として取り上げられている。

<会員の声(業種別)>

(1)建設業
●「今月の業況」判断DIは△18から±0に改善し、「前年同月比」DIも△22から△20と若干改善しています。しかし「次期見通し」DIを見ると他業種が軒並み改善を示しているのに対し、建設業は△10から△22と、12ポイントも悪化を示しています。「概況」の中で先行き懸念要因として、住宅需要を巡る動きは都心マンション関連などごく一部に限られており、全面的な回復には至っていないことを指摘しています。業界全体としては依然として厳しい状況にあるということかと思われます。建設業会員の生の声を聞いてみました。

1.A社(総合建設業)
・都心のマンションが売れている。賃貸の物件もすぐに埋まるようだ。これは都心回帰が進んでいるからと言われている。当社は官公需の関係は厳しいが、民間の設備投資もかなり出ている。従って人手が足りないくらい忙しいが、一つ一つの規模が小さく、利益も少ない。
2.B社(電気工事業)
・現在の仕事は賃貸マンションが中心。確かに今仕事はあるが設備投資関係は少ない。
3.C社(総合建設業)
・今月の業況は横ばいと言った感じ。前年対比では昨年が忙しすぎたので悪化。寒い時期の営業が良くなく、春以降の営業成績が良くなったので、今現在はヒマだが、次期見通しは、忙しくなることが予想される。
4.D社(住宅設備業)
・業況は体感的には良くない。前年対比でも良くない。特に粗利が少なくなってきている。 メーカーも粗利を削っているので、お互いの利益の食い合いと言った感じ。次期見通しは、駆け込み需要が若干見込めるので、少しは良くなる見通し。分譲住宅の購買層の低年齢化がすすみ20台後半になっている。これは親だけでなく祖父母からの生前贈与が受けやすくなったという政策的なものだが、就職の青田買いと同じで決してよいこととは思えない。
5.E社(給排水衛生設備業)
・価格競争により利益の出ない物件が増えている。他社と同じことをやっていれば、いずれ淘汰されるのでは、との危機感を持っている。
6.F社(建築業)
・相変わらずまとまった仕事が少なく、受注量が増えない。小型化により忙しさだけが目に付いている。

● 最近こんな話を聞きました。「住宅業界はまだバブル。年間着工件数が80万戸になってもやっていける(選んでもらえる)企業にならねばならない」。いかがですか。 (事務局 山田)

(2)製造業
●業況判断DIは今月の状況(△6→9)と15ポイント、前年同月比(△8→3)と11ポイント、そして前年比売上高、前年比経常利益、次期見通しともに改善を示しています。しかし「仕事は出ているが利幅が薄くて、人も設備も増やせず、治具や工程の工夫や残業で回している(自動車部品金属加工)」という声にあるように、設備と雇用の不足超過幅拡大(昨年比DI)および「値下要請」を問題点とする割合が、特に製造業に顕著な数字となって出ています。  また、改善傾向は全製造業ではなく、自動車部品金属加工業と一部大手設備関連の動きが、全体数値をプラスに引き上げていると考えられます。プラスチック、電気電子および食品、雑貨などでは二極化傾向の拡大が見られます。繊維、一般印刷業(特殊印刷関連を除く)においては特に厳しい状況が個別回答に寄せられています。

<経営上の問題点>

  製造 建設 流通 サービス
1位 販売先からの値下要請 57.5% 民間需要の停滞 53.2% 民間需要の停滞 53.9% 販売先値下要請 36.2%
2位 民間需要の停滞 36.7% 官公需の停滞 40.4% 販売先値下要請 49.0% 新規参入者増加 31.0%
3位 熟練技術者の確保難 ☆ 20.0% 販売先値下要請 40.4% 取引先の減少 25.5% 取引先の減少 31.0%
4位 管理費等間接費の増加 ☆ 17.5% 新規参入者増加 23.4% 大企業参入激化 23.5% 民間需要の停滞 29.3%

※間接費については、ISOや環境対応および社会保障関連費値上げ等を指摘する声

<経営上の力点>

製造業の第4位=「得意分野の絞り込み」19.2%は特徴的

– 以下、会員企業からの声を紹介します。 –  (事務局 加藤)

①自動車関連(金属部品加工)
・トラック排気ガス規制による1.5倍の増産が6月以降続いている。しかし設備投資できないのが現状。中小企業が生き残るには、人・物・金のバランスが取れ、有形無形の資産が必要。資金力は時間が稼げ、創造的技術力は仕事の確保が保証される。(A社)
②自動車関連(プラスチック部品)
・自動車は、特に北米などの輸出関連を中心に堅調に推移。新車の立ち上りや新規製品の増加があるが、経費がかさみ、投資の仕方が難しい。(B社)
・二次部品メーカーでは、量、単価、品質とがんじがらめの中で悪戦苦闘している。 (C社)
③機械、設備関連、金型製造
・5月頃から好転し売上高が半年前の倍になったが、先行き不透明感が強い。どこまで特急対応できるかが問題で、価格より納期優先の仕事が増えるだろう。(D社)  
・今年はコスト低減要請が一段と厳しい。昨年の半値で設備メンテを指示される。(E社)
・廃業や人員削減が進み、業界全体のキャパが縮小して、特に難しい仕事への対応力が落ちてきている。今が勝負どころ。海外に負けない技術と工夫を構築する。(F社)
④一般印刷業
・取引先に対する過剰サービス(在庫即納体制,低価格戦略)が恒常化。同業者間での首の締めあいに。他の業種も同様に景気は悪いので本業をがんばるしかない。(G社)
・大手同士の競争激化で一斉に値下要請。得意先倒産による損金増加、集金に苦労。(H社)
⑤木製品製造、食品加工
・採算の合わない物件は受注しない。稼働率低下部門は縮小。関連新規事業の立上げ。(I社)
・社員やパートさんが最近やっと仕事に対して真剣に向き合うように。まだ従来型経営が多い業界で、我が社にとっては追い風に。消耗戦に巻き込まれない特色と戦略を。(J社)

(3)流通業
●業況判断DIの今月の状況は(△27→△23)と4ポイント、前年同月比売上高DI(△30-△9)、経常利益DI(△21-△9)ともに改善を示しています。特徴的なのは、5月調査での次期(8月)見通しで、全調査項目が悪化の見通しだったのが、今回(8月)の次期(11月)見通しでは、売上げと経常利益の好転に合わせて、設備と人材の不足を予測しています。景気の回復傾向といえるのか、それとも別要因などがあるのか、個別会員企業の声をききました。

1.衣料卸
・いま、何でも揃う事を打ち出している卸業は、どこにでもあるものしか扱っていないと、小売店(専門店)に相手にされず生き残れない。客層を絞りこみ、小売店ごとの小口の特注・別注にも即対応できる国内製造ルートを確保している。物を左右するだけでなく企画・デザインを強化し、自社ブランドも立ち上げている。しかし、この夏の売上げは2割ダウン。原因を冷夏と不況のせいにせず需要変動をキャッチしたい。
2.機械・工具卸
・単価の下落というより利益率の大幅なダウンが響いている。単なる商品の右左では商売として成り立っていかないので、新たな分野を企画中です。
3.運送業
・環境問題のNox.PM法、リミッター装置取付設備投資が余儀なくやらざるをえません。その中での新規顧客の開拓、人件費の節減と今後の我々輸送業界は厳しい材料ばかりで期待が持てません。この危機を乗り越えれば明るい未来があることを期待しています。
4.食品卸
・既存客先の売上ダウンが続いている。新規確保に重点は置いているが、配送コストがかさみ苦しい。天候の悪さを理由にしている所が多いが、競合激化、売り方のマンネリなど他に理由があるように思われます。勝ち抜くには何が必要なのか大きな悩みです。
5.製鉄原料卸
・「循環型社会」の形成に向けて、社会経済システムの変革が求められている。こうした状況下でリサイクル業界の将来は明るいものがある。ただし、個々の企業にとっては社会の要請に答え得る企業体質と整備・規模を整える必要がある。設備効果と出店効果による業況は上向きであるが、業種柄、人材面に苦慮している。一方、仕入単価では一部で値上げ要請も出てきています。

● 同一業種でも明暗が分かれます。しかし、景況が改善を示しても、課題解決に危機感 を持って当たり、悪化のところでも、安易に原因を天候不順や不況のせいにはしないとの経営姿勢で問題分析を行っている姿に、経営者の矜持を見ました。(事務局 服部)